shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

The Dance (DVD) / Fleetwood Mac

2010-01-30 | Rock & Pops (80's)
 フリートウッド・マック/スティーヴィー・ニックス・ウイークもいよいよ最終回、今日は1997年の奇跡的なリユニオン・コンサートの模様を収録した DVD「ザ・ダンス~グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」である。洋楽暗黒時代の1997年にこのフリートウッド・マック再結成ライヴが出た時、ラップやオルタナだらけの洋楽とほぼ絶縁状態にあった私はそのリリースすら知らなかったし、たとえ知っていたとしてもそれまでと同じような期待感を持って CD を買いに走ったとは思えない。過去に栄華を極めたスーパー・グループの再結成、リユニオンというのは全盛期が凄ければ凄いほどその凋落ぶりが浮き彫りにされ、あまりの落差にガッカリということが多かったからだ。だからその後何かでこのアルバムの存在を知った時も食指は動かなかった。リンジー抜きの「ビハインド・ザ・マスク」(90年)がとてもマックとは思えないようなトホホなアルバムだったこともあって、私の中ではマックは87年の「タンゴ・イン・ザ・ナイト」で既に終わっていたも同然だったし、ライヴ盤なら80年の「フリートウッド・マック・ライヴ」があるから今さら同窓会的なリユニオン・コンサートのライヴ盤を聴いてもしゃあないわ、と思ったのだ。
 そんなある日のこと、ゲオの100円キャンペーンで店内を物色していた時、音楽 DVD コーナーで偶然この「ザ・ダンス~グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」DVD を見つけた。“マックか... 懐かしいなぁ... そー言えば DVD は1枚も持ってへんかったから試しに借りてみよか...” という軽~いノリでこの盤を借りてきた。私は単なる “懐メロ” と割り切って楽しもうと思っていたのだ。そんな気分は1曲目の①「ザ・チェイン」を見終わった時には完全に吹き飛んでいた。これは...凄い。金目当てのお気楽な同窓会なんかじゃない。その真剣勝負のテンションの高さがビンビン伝わってきてゾクゾクしてしまう。名曲②「ドリームス」は20年の時を経てその輝きを増しているように思えるし、大好きな③「エヴリホエア」は「タンゴ...」収録のスタジオ・ヴァージョンよりも活き活きと響く。クリスティンに寄り添うスティーヴィーとリンジーのバック・コーラスが絶妙な味を出しており、やっぱりマックはこの3人が揃ってナンボやなぁと改めて実感させられる1曲だ。
 このライヴで一番強いインパクトを残したのは大好きなスティーヴィーでもなければクリスティンでもなく、間違いなくリンジーだった。そのヴォーカルといい、ギター・プレイといい、全盛期を凌ぐ切れ味を見せており、 “リンジーってこんなに凄いギタリストやったんや...(゜o゜) ” と再認識させられた。⑤「アイム・ソー・アフレイド」における入魂の、そして大名曲⑧「ジプシー」(←典雅に回るスティーヴィーもたまりません!)における変幻自在のプレイも凄いが、何と言ってもコンサート中盤に設定された2曲のソロ・パフォーマンスが圧巻だ。他のメンバーが一旦ステージから引き揚げ、リンジーが語り始める;“次の曲を書いた時、僕はマックでの終わりを迎えていた。グループを抜けるのはツラかったけど、成長するためでもあった。そして皆成長し、僕も昔の自分とは違う。演奏の仕方も変わった...” と言っておもむろにアコギの弾き語りに突入... ⑨「ビッグ・ラヴ」だ。我々の知っているあの完全無欠なポップ・ソングがまるで違う曲のように聞こえる。心の内にあるものを曝け出すかのような彼の魂の叫びが会場に響き渡り、オーディエンスも水を打ったように静まり返っている。凄まじいまでの緊張感だ。彼が歌い終わると万雷の拍手が湧き起こり、何とここでスタンディング・オベーション! 続く⑩「ゴー・インセイン」も原曲の片鱗はもはやなく斬新なアプローチで歌い演奏される。その鬼気迫るパフォーマンスに表現者としてのリンジーの進化が表れているように思う。オーディエンスは連続スタンディング・オベーションという形で彼に最大限の賛辞を贈ったが、私も心を大いに揺さぶられた。この2曲だけでもこのライヴを見てよかったと思えるほどだ。
 再びメンバー全員がステージに揃って後半はヒット曲のアメアラレ攻撃で、中でも私が一番好きなのが⑫「セイ・ユー・ラヴ・ミー」だ。ポップスの楽しさ、素晴らしさをこれ以上ないぐらいに見事に表現したウキウキするようなメロディーを持ったマック屈指の名曲を、メンバー全員がステージに横一列に並んで楽しそうに歌い演奏するのだ。“ウ~ ラン ララ~♪” というコーラス・ハーモニーもたまらない(^o^)丿 フリートウッド・マックでどれか1曲選べと言われたら私は迷うことなくコレを選ぶ。⑯「オーヴァー・マイ・ヘッド」もグッとくる。この曲を聴いていると、クリスティンのホンワカしたヴォーカルこそがフリートウッド・マックというバンドに必要不可欠なものだと改めて痛感させられる。彼女抜きの今のマックは私にとってはもはやマックではない。
 アンコールでは南カリフォルニア大学のマーチング・バンドとの共演で⑳「タスク」と(21)「ドント・ストップ」を披露、会場はもう大盛り上がりだ。どちらもスタジオ録音版を遥かに凌駕するダイナミックで躍動感に溢れるヴァージョンに仕上がっている。音楽ってエエなぁ...と思わせてくれるこの素敵なライヴ盤は全米アルバム・チャート初登場1位を記録、結局500万枚を売りつくしマックにとって久々の大ヒットとなったのだが、まさにフリートウッド・マックという偉大なバンドの最後を飾るに相応しい傑作ライヴだと思う。尚、 CD よりも5曲多く収録された DVD が絶対的にオススメだ。

Fleetwood Mac - Say You Love Me - The Dance -1997


FLEETWOOD MAC/Сhristine McVie. Everywhere.


Fleetwood Mac - Big Love (Live: The Dance)


Fleetwood Mac - Go Insane - The Dance -1997


Fleetwood Mac "the Dance" TUSK

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2 コメント

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魅惑のフリートウッドマック (モスフォレスタ―3)
2010-01-31 22:26:08
実に充実したフリートウッドマック/スティーヴィー・ニックス週間でしたねー。ありがとうございました。勉強になりました。

ぐいぐいと引っ張りこむ、力と洞察、そして愛にあふれた記事にすっかり酔わされ、フリートウッドマック、そしてメンバーソロのを聞き逃しては一生の損であり、網羅すべきであるという確信を持つにいたりました。
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恐縮です (shiotch7)
2010-02-01 18:13:08
モスフォレスタ―3さん、こんばんは♪

もったいないお言葉ありがとうございます。
私の方こそ、大好きなマックを通して同好の方と
色々とお話しできて嬉しいです。
今回集中聴きして、ますますハマッてしまいました。
マックはホンマに奥が深いです。
こんなグループはもう2度と出てこないでしょうね。
リアルタイムで彼らを体験できたことを嬉しく思います。
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