shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Live In Japan / The Mustangs

2010-07-11 | エレキ・インスト
 私はLP であれ CD であれ、ジャケットを人一倍重視する。もちろん音楽である以上、中身が主役なのは言うまでもないが、少なくとも音楽とその器であるジャケットが一体となって一つのパッケージ商品として流通している以上、両者は密接に結びついており、まさに不可分なものだと言えるだろう。「アビー・ロード」と言えば真っ先に頭に浮かぶのは個々の曲ではなく4人が横断歩道を渡る例のジャケットだし、「サージェント・ペパーズ」もあの絢爛豪華なジャケットなしには考えられない。「クリムゾン・キングの宮殿」の衝撃性はあのグロテスクなジャケットあってのものだし、ピンク・フロイドの「狂気」やディープ・パープルの「イン・ロック」、デレク&ザ・ドミノスの「いとしのレイラ」などは、ジャケットだけで既に名盤のオーラを発している。昨今流行りのミュージック・ダウンロードなどというものは、私に言わせれば音楽文化の破壊以外の何物でもない。
 ビートルズに比べるとベンチャーズのアルバム・ジャケットには “何じゃいコレは???” というものも無いことはないが、中にはキラリと光るジャケ名盤も少なくない。私が一番好きなのは、ヌッと突き出た3本のモズライト・ギターのヘッドとハトが豆鉄砲を食らったような表情の金髪美女とのコントラストがたまらない「ノック・ミー・アウト」で、バリバリと歪んだモズライト・ギターのサウンドが聞こえてきそうな名ジャケットだ。ライヴ盤では「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」が断トツに素晴らしい。神社の前で蛇の目傘を持った着物姿の女性と談笑する4人の姿が印象的なこのジャケット、何と言ってもベンチャーズ自身が「ベンチャーズ1999-2006」(青盤)でセルフ・パロディしているぐらいだから相当気に入っているのだろう。
 そんなある時、 “エレキ共和国” という、エレキ・インスト・ファンの聖地のようなサイトを見ていて上記の「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」のパロジャケと思しき CD を発見!それが今日取り上げるムスタングスの「ザ・ムスタングス・ライヴ・イン・ジャパン」である。彼らは1980年代から活躍しているフィンランドのエレキ・インスト・グループで、同じ北欧出身の先輩バンドであるスプートニクス直系の透明感溢れるサウンドが特徴だ。
 この「ザ・ムスタングス・ライヴ・イン・ジャパン」はほとんどの曲が3分以内なので一気呵成に聴き通せてアッと言う間に全22曲63分が過ぎ去っていく。のっけからザ・サウンズの①「エマの面影」、そしてベンチャーズ歌謡の定番②「二人の銀座」という哀愁の名曲2連発で一気に彼らの世界に惹き込み、その後は全盛期のスプートニクスが現代に蘇ったかのような北欧系エレキ・サウンドのアメアラレ攻撃で気持ちエエことこの上ない。特に哀愁舞い散る⑪「Ajomies」(霧のカレリア)なんかは絶品だ。
 ライヴの後半ではベンチャーズというよりも小山ルミで有名な⑯「さすらいのギター」、太田裕美の⑲「さらばシベリア鉄道」、そして加山雄三&ランチャーズの⑳「夜空の星」と、まさに怒涛のような昭和歌謡の嵐に涙ちょちょぎれる。この流れの中で聴くとロシア民謡の⑰「ダーク・アイズ」(黒い瞳)だって、聴きようによってはザ・ピーナッツの「恋のフーガ」に聞こえなくもない(笑) そういえば彼らは他の盤で黛ジュンのカヴァーなんかも演ってたし、私のような昭和歌謡好きのエレキ・インスト・ファン(←結構多いと思う...)は要注目のバンドだろう。
 パロジャケ盤は玉石混交で、これまでも面白そうなジャケットに釣られて買ってカスをつかむこともあったが、虎穴に入らずんば虎児を得ず(←そんな大袈裟な...)、このアルバムは買って大正解だった。ただ、録音がキレイすぎるのが玉にキズで、もっと野太い音で録っていれば60'sのバンドみたいなギザッとくるサウンドになったとは思うが、それ以外は文句ナシ。特に「さらばシベリア鉄道」~「夜空の星」と続く昭和歌謡版疾走系エレキ・インストの真髄が聴けるだけでこのアルバムは超愛聴盤なのだ。

The Mustangs - さらばシベリア鉄道


The Mustangs - さすらいのギター

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