shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

レッツ・ゴー「運命」 / 寺内タケシとバニーズ

2010-03-13 | エレキ・インスト
 昨日に続いて今日も寺内バニーズでいこう。アルバムは私ですら知っている超有名クラシック曲をエレキ・インスト化した「レッツ・ゴー・運命」である。ジャズやロックのミュージシャンの中にはごくたま~にクラシックかぶれの連中がいて、 “クラシックのジャズ化” とか “ロックとクラシックの融合” とかいったエラソーな能書きを垂れてジャズでもクラシックでもロックでもない中途半端な音楽を作って喜んでいるが、彼らに共通するのはクラシックを一段上に見て、自らのアイデンティティをどこかへ置き忘れてきたかのように卑屈なまでにクラシックに擦り寄っていってることである。MJQのジョン・ルイスしかり、ディープ・パープルのジョン・ロードしかり、ELPのキース・エマーソンしかりである。この手の異種音楽交配において、他人の土俵で相撲を取って上手くいった例を私は知らない。やはり自分の世界に引き込んで堂々と勝負してこそプロと言えるのではないか?
 そこで登場するのがエレキの神様、寺内タケシである。クラシックがナンボのモンじゃいとばかりに超速弾きで存在感を示し、クラシックの名曲群をあくまでも素材として扱い、バニーズと共にロックのフィールドで堂々と勝負する... それで出来上がったのが1967年9月に前作「世界はテリーを待っている」からわずか3ヶ月(!)でリリースされたこの「レッツ・ゴー・運命」なのだ。
 全12曲中、クラシックを聴かない私が元々知っていたのは①「運命」、②「白鳥の湖」、⑨「カルメン」、⑫「エリーゼのために」の4曲のみ。エレキ・インストを本格的に聴き始めてベンチャーズ経由で④「熊蜂の飛行」、⑧「ハンガリー舞曲第5番」、⑩「ドナウ川のさざなみ」を知ったというから何をかいわんやだ。残りの5曲③「ペルシャの市場にて」、⑤「ショパンのノクターン」、⑥「剣の舞」、⑦「未完成」、⑪「ある晴れた日に」は初めて耳にするメロディーだ。
 まずは何と言っても①「運命」、コレに尽きるのではないか?誰もが知っているあのメロディーを鬼神のような速弾きプレイで聴ける驚異的なヴァージョンだ。そのテンションの高さはハンパではなく、これでもかとばかりにガンガンギュンギュン弾き倒している。ベートーベンがコレを聴いたら何と言うだろう(^.^) ベンチャーズも演っていた④「熊蜂の飛行」は敢えて彼らとは違うアプローチというかアレンジで攻めているようで、バニーズ独特の重いビートとうねるようなグルーヴ感がたまらない... (≧▽≦) ベンチャーズと言えばこの⑧「ハンガリー舞曲第5番」を改題した「ラップ・シティ」でのノーキー・エドワーズの神業プレイが忘れ難いが、このバニーズ・ヴァージョンでは一味違う寺内流アレンジが楽しめ、ベンチャーズ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。
 ⑩「ドナウ川のさざなみ」は0分20秒で入ってくるリード尺八が鳥肌モノ。負けじと1分25秒から炸裂する寺内御大の針飛び状態フレーズにも言葉を失う。名曲は名演を呼ぶというが、まさに曲良し、アレンジ良し、演奏良しの三拍子そろったキラー・チューンだ。ラストの⑫「エリーゼのために」もファズをバリバリに効かせた絵に描いたようなガレージ・ロックに昇華されており、ジミヘンもブッ飛びそうな凶暴なギター・サウンドが快感だ。特に後半で爆発するアドリブは烈火の如き凄まじさで、原曲をモノの見事に破壊し尽くしている。きっとベートーベンも草葉の陰で髪を振り乱してヘッドバンギングしていることだろう。(←するかそんなもん!)

運命


ドナウ川のさざなみ
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世界はテリーを待っている / 寺内タケシとバニーズ

2010-03-12 | エレキ・インスト
 私が好きな日本のエレキ・インスト・バンドといえば、日本が誇るエレキの神様、テリーこと寺内タケシ率いるバニーズである。もちろん彼の40年以上のキャリアの大半は “寺内タケシとブルージーンズ” (←第1期から第3期まである...)として活動してきているのだが、1966年から1969年のわずか3年弱の間彼が率いていたバニーズこそが歴代寺内バンド中最強だと思うし、一度聴いたら忘れられないような強烈なインパクトを持った傑作が集中している。
 恥ずかしい話ながら私は長い間、彼のことを “歌のない歌謡曲” 専門のギタリスト、というとんでもない誤解をしていたのだが、エレキ・インスト物にハマッて色々と聴き進むうちに彼に辿り着いた。 “同じインストでもどーせカラオケっぽい演奏ちゃうん?” と思いながらも “どんな曲を演ってるんやろ?” と思いアマゾンで調べてみると、コレが驚いたことにヒット・ポップスを始めとしてジャズのスタンダード・ナンバー、クラシック、そして民謡に至るまで、ありとあらゆるジャンルの素材をエレキ・インスト化しているのだ。試聴してみると、出てきた音は私の予想に反してめちゃくちゃカッコ良い(^o^)丿 ソリッドな音色で繰り広げられる迫力満点のプレイはクラシックであろうが民謡であろうが容赦なくバリバリのロックンロールに仕立て上げている。コレはエライこっちゃとばかりに私は彼のCDを買いまくった。う~ん、まいった。ハズレはほとんどない。中でも私が一番気に入ったのが1967年にリリースされたこの「世界はテリーを待っている」である。
 このアルバムはジャズやフォークのスタンダード・ナンバーを巧くアレンジし、バニーズ流エレキ・サウンドで表現した快作で、凡百のエレキ・インスト・バンドとは激しく一線を画す豊かな音楽性が封じ込められている。収録曲は全12曲で、アルバム全編を通して彼らの最大の武器である轟音が響きわたり、彼らにしか出せない独特のグルーヴ感が横溢しているところが素晴らしい。血湧き肉躍るサウンドとはこういうのを言うのだろう。
 まずは何と言ってもジャズ・ファンなら知らぬ者のいない超有名スタンダード・ナンバー③「朝日のようにさわやかに」と⑤「モーニン」の2曲が凄まじい。へヴィーなビートに乗ってラウドでアグレッシヴなギターが轟わたるそのサウンドは圧巻で、オルガンのうねるようなグルーヴも快感を呼ぶ。穏健派のジャズ・ファンが聴いたら驚倒するだろう。この凶暴なまでのガレージ性を剥き出しにした「朝日」と「モーニン」を聴けるだけでもこのアルバムを買う価値があると思う。
 更に驚くのが②「朝日のあたる家」で、ギターとオルガンのイントロに続いていきなり耳に飛び込んでくる尺八に耳が吸いつく。その哀愁舞い散るメロディーに心を奪われていると絶妙なタイミングでギターへとソロが引き継がれ、エンディングに向かって盛り上がりまくるのだ。隠し味的に使われているヴァイブも効果抜群で、この曲の隠れ名演と言い切ってもいいくらい素晴らしいヴァージョンだ。楽器を持ち替えて寺内御大がドラムを担当する⑫「カミン・ホーム・ベイビー」もめちゃくちゃジャジーでカッコイイ(^o^)丿 オリジナルはハービー・マンのフルートの独壇場だったが、ここでは尺八がメロディを奏で、ヴァイブが縦横無尽にアドリブを連発するという実にスリリングな展開だ。このあたりにも寺内バニーズの音楽的な懐の深さを垣間見ることができる。
 ベンチャーズやスプートニクスといった大物エレキ・インスト・バンドがこぞって取り上げている①「ライダーズ・イン・ザ・スカイ」でも一聴してそれとわかる寺内節が炸裂、先の2大バンドに遜色ない躍動感あふれるヴァージョンに仕上がっている。メンバー紹介が入る⑦「ナイト・トレイン」はタックスマンなリズム(笑)が時代を感じさせるし、キューバン・ボーイズっぽい雰囲気の⑨「ブルー・ムーン」やムード満点の⑩「スターダスト」も面白い。軽快な2ビートに乗って本家レス・ポールも顔負けの自由奔放なプレイを繰り広げる④「世界は日の出を待っている」、一転してガット・ギターによる静謐なプレイに息をのむ⑥「シャイン」、トワンギーなギターの音色がエキゾチックな味わいを醸し出す⑧「夕陽に赤い帆」、ワイルドなギター・プレイがイタ気持ち良い⑪「ムーン・リバー」と、聴きどころ満載だ。
 エレキ・インスト・バンドは “シングルは面白いけどアルバム1枚聴くのは単調でちょっとキツイかも...” というケースが多いが、バニーズのこのアルバムは実にバラエティーに富んでいて何度聴いても聴き飽きないガレージ・ロックの名盤だと思う。

朝日のようにさわやかに


朝日のあたる家

Swingin' Creepers ! - A Tribute To The Ventures -

2010-03-11 | エレキ・インスト
 ついこのあいだまで “春のフレンチ祭り” で萌えてたのに、気がつきゃいつの間にか “春だ!エレキだ!ベンちゃんだ!” と、ベンチャーズ祭りに突入。まぁこの無軌道無責任ぶりこそが明日なき暴走たる所以、昭和歌謡にイエイエにテケテケと、毎日が大好きな音楽三昧で楽しーなったら楽しーな(^o^)丿 ということで、今日はアメリカで作られたベンちゃんへのトリビュート・アルバム「スウィンギン・クリーパーズ ~ア・トリビュート・トゥ・ザ・ベンチャーズ」である。
 まずは何と言ってもジャケットに注目だ。目の覚めるような赤色をバックに 60'sっぽいロゴ、無意味な美女とお約束のモズライト・ギター... そしてこれでどーだとばかりにジャケット上端には “... visual sound STEREO” の文字が躍っている。もうコレだけで十分ベンチャーズ・ファンの心をワシづかみである。秘孔をブチ抜いている。ここはもう “ひでぶ!” と言って砕け散...るんじゃなくて聴くしかないだろう。とにかくアイ・キャッチャーという点でもこのジャケット・デザインのセンスは最高だし、実際のところこの盤はジャケ買いしたようなものだ。
 中身の方はガレージ系のバンド23組によるベンチャーズ・トリビュートで、ベンちゃんの硬派なロックンロール・バンドとしての側面にスポットライトを当てている。それが如実に表れているのが選曲で、「パイプライン」も「ワイプ・アウト」も、そしてあろうことか「10番街の殺人」すら入っていない。「二人の銀座」なんか論外だ(笑) 日本のレコード会社の企画なら即却下だろう。何と言ってもアルバム・タイトルからしてマニアックな「スウィンギン・クリーパーズ」なのだ。さすがはロックンロール発祥の国、アメリカである。
 まず圧倒的に素晴らしいのがキング・ファズことデイヴィ-・アラン & ジ・アロウズの⑮「木の葉の子守唄」だ。参加アーティストの中で私が唯一知っていたのがかつて「アパッチ'65」のヒットを飛ばした彼らなのだが、さすがは年の功というべきか、こんなアグレッシヴな「木の葉」は中々おまへんで(^.^) 特にギターのフレーズがユニークで、めっちゃ気に入っている。ちょっとベースとドラムスのリズム隊が弱いのが玉にキズだが、それでも他のバンドとは次元が違う。格が違う。私はこの演奏を聴いて、ベンチャーズに潜むガレージ性を再認識した。とにかくカッコイイ、このアルバム中一番好きなトラックだ。
 ザ・ヒプノマンの⑧「若さでゴー・ゴー」とザ・ミステリー・アクションの⑲「バード・ロッカーズ」もエエ感じ。どちらもファズ・ギターを活かした演奏で、「ベンチャーズ・ア・ゴー・ゴー」や「ノック・ミー・アウト」といった私が一番好きな60's中期の音作りに挑んでいるのがいい。やっぱりベンチャーズ・サウンドは歪んだギターの音に限るわ(^.^)
 逆に、このアルバム中一番の有名曲カヴァーであるジョン & ザ・ナイトライダーズの⑪「ダイアモンド・ヘッド」だが、何と肝心カナメの “テケテケテケ~♪” がない!当然 “テケテケテケ~♪” が出てくるものと期待しているところへドラム・ロールでは腰砕けになってしまう。これではまるで気の抜けたビールではないか!そういう意味では②「ウォーク・ドント・ラン」も不完全燃焼なスカスカのサウンドで、イマイチ盛り上がりに欠けるのは否めない(>_<) 
 全23曲一気聴きしてみて感じたことは、玉石混交でそれも石の方が多いこと。特にイマイチなのがドラムスで、本家ベンチャーズがメル・テイラーという屈指の名ドラマーを擁していたせいもあるが、とにかくグルーヴ感があまり伝わってこない平板なドラミングのオンパレード(⑯「イエロー・ジャケット」をカヴァーしたサターン・V のリズム隊はかなり良かったけど...)にはガッカリ(>_<) 比べるのも失礼なハナシだが、改めて本家ベンチャーズの凄さが実感できるし、日本のカヴァー・バンドである Dr.K プロジェクトやエド山口&東京ベンチャーズのレベルの高さが浮き彫りになるという実に皮肉なオムニバス迷盤だ。

木の葉の子守唄


若さでゴーゴー

On Stage Encore ! & Live Again / The Ventures

2010-03-10 | エレキ・インスト
 ベンチャーズ日本公演のライヴ盤は、かの有名な「ベンチャーズ・イン・ジャパン」以降、日本でのベンチャーズ人気を反映して毎年のようにリリースされてきたが、ノーキー、ドン、ボブ、メルという最強ラインナップのオリジナル・メンバーによる録音は私の知る限り4枚('65~'67)しか存在しない。小雪の舞う中ギターを抱え、神社の前で蛇の目傘を持った着物姿の女性と談笑するジャケが印象的な「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol. 1」('65 Jan)、茶室と思しき部屋でメンバー4人があぐら姿でニッコリ微笑む「イン・ジャパンVol. 2」('65 Jul)、神社の石段の前でハッピ姿で腰をかがめて“ハイ、ポーズ!”的なジャケが笑える「オン・ステージ・アンコール」('66 Jul)、そして何の工夫もないスタジオ・ライヴっぽいジャケが悲しい「ライヴ・アゲイン!」('67 Jul)である。内容的にはやはりヒット曲満載で彼らの絶頂期をピンポイントで捉えた1965年録音の前者2枚が一番充実しており、ベンチャーズのライヴ盤といえばこの2枚!みたいな感があるが、ほとんど話題に上らない66~67年のライヴ2枚だって少々問題はあるにせよ決して悪い出来ではない。ということで、今日は “ベンチャーズ歌謡” つながりでこの2枚を収めた 2 in 1 CD を取り上げたい。
 まず66年夏のライヴということになっている「オン・ステージ・アンコール」だが、コレはスタジオ演奏に拍手を被せた疑似ライヴ。この盤だけ他のライヴ盤と明らかに音が違うし、何よりも拍手の入り方がめっちゃ不自然だからだ。まぁ私としては演奏さえ良ければ別にどっちでもエエのだが...(^.^) 曲目は①「ラ・バンバ」、②「蜜の味」、③「秘密諜報員」、④「カリフォルニア・ドリーミン」、⑤「バットマンのテーマ」、⑥「ナポレオン・ソロのテーマ」、⑦「二人の銀座」、⑧「君といつまでも」、⑨「夜空の星」、⑩「007-0011」、⑪「ワイプ・アウト'66」で、65年のライヴ盤と重なるのは⑪のみというのも嬉しい。雰囲気としてはそれまでのリフ主体のスリリングな演奏から流れるようなメロディを重視した演奏へとシフトしつつあり、③⑤⑥⑪といったメロディアスなロックンロールや⑦⑧⑨といった一連のベンチャーズ歌謡モノがメインの選曲からもそういった路線変更がハッキリと見て取れる。私はポップな曲を辛口に処理した演奏が好きなので、この路線は大歓迎(^o^)丿 かったるい甘さが苦手な⑧以外は全て好きだが、中でも疾走系の③⑨⑩で聴ける超絶技巧のアメアラレ攻撃は圧巻だ。
 67年夏のライヴ盤「ライヴ・アゲイン!」は本物のライヴ音源から取られているようだが、どういうわけか全12曲のうち「二人の銀座」、「ラ・バンバ」、「カリフォルニア・ドリーミン」、「蜜の味」の4曲は先の「アンコール」と全く同じ音源を流用しているのだ。これって詐欺やん!まぁ疑似ライヴの件といい、同一音源流用の件といい、東芝EMI のやることは全くワケがわからないが、そういった諸々の理由でこの2枚のアルバムが黙殺されているのだろう。演奏自体は良いだけに勿体ない話だ。先の4曲を除く収録曲は①「ブルー・シャトウ」、②「北国の青い空」、③「ブラック・サンド・ビーチ」、④「恋はちょっぴり」、⑤「ウリー・ブリー」、⑦「涙のギター」、⑪「夕陽が沈む」、⑫「ダイアモンド・ヘッド'67」の8曲で、②では奥村チヨがフィーチャーされるなど、かなり日本色の濃い内容になっている。ちょうど本国アメリカではビートルズの「サージェント・ペパーズ」が発売され、ロックそのものの価値観が変わろうとしていた時期で、インスト・ロック・バンドとしてのベンチャーズは苦しい時期を迎え試行錯誤を繰り返していただけに、日本における歌謡路線推進に拍車がかかったのかもしれない。この盤の収穫は、スタジオ録音盤ではイマイチ生気に欠けていた①⑦⑪といった日本の曲にライヴならではのグルーヴ感が宿ったことと、モンキーズの④やファラオズの⑤をライヴ・ヴァージョンで聴けることだろう。取って付けたような⑫に思いっ切り違和感を感じてしまうのは、わずか3年という短期間のうちに彼らがそれだけ遠くへ来てしまったということだろう。それでも聴かせてしまうのは彼らの高い演奏力の賜物という他ない。
 ということで色々と怪しい点はあるが、細かいことさえ気にしなければ66~67年のベンチャーズのヒット曲の数々が手軽に楽しめる超お買い得盤といえる。ただ残念なことに、イギリスの See For Miles というレーベルから復刻された一連のこの2 in 1 CD シリーズはすぐに廃盤になり、今となっては法外なプレミアが付いてしまっているのだが...(>_<)

秘密諜報員


007-0011

Pops In Japan No.1 & No.2 / The Ventures

2010-03-09 | エレキ・インスト
 私はベンチャーズが大好き。若い頃は彼らのことを誤解していて単なるテケテケ・ギター・インスト・バンドだと思っていたが、数年前に plinco さんのおかげで彼らが偉大なるロックンロール・バンドだということを知った。特に60年代のアルバムはどれもこれも傑作揃いでロック・ファンは必聴だ。彼らが凡百のインスト・バンドと決定的に違っていた点は、ロック・シーンの流れを敏感に読んで様々なスタイルの楽曲をカヴァーすると同時に、いち早くフェンダー一辺倒を脱して高出力ピックアップ搭載のモズライトへとギターを変え、独特のベンチャーズ・サウンドを確立、更にファズをかけたり多重録音をしたりとアグレッシヴな姿勢でザ・ワン・アンド・オンリーな世界を築き上げたところにあると思う。それでいて他の追従を許さない圧倒的なグルーヴとドライヴ感... これこそがまさに若き日のジミー・ペイジやエディー・ヴァン・ヘイレンが夢中になったベンチャーズ・サウンドの魅力なのだろう。
 そんな彼らにはもう一つ大きな引き出しがあった... 作曲の才能である。66年のアルバム「ゴー・ウィズ・ザ・ベンチャーズ」に収められた「ギンザ・ライツ」は昭和歌謡のエッセンスがギュギュッと凝縮されたようなオリジナル曲で、特に日本を意識して書いたワケではないが出来上がってみるとどことなく日本的な感じがしたのでこういうタイトルを付けたのだという。彼らの前世はきっと日本人だったに違いない(笑) ヘタな日本人作曲家の作る曲よりも遥かに日本的なメロディーを持ったこの曲に目を付けた東芝EMIは永六輔による歌詞と「二人の銀座」という邦題を付けて、山内賢 & 和泉雅子のデュエットででリリースし大ヒット、これこそまさに “ベンチャーズ歌謡” の始まりだった。
 この「ポップス・イン・ジャパン」というアルバムは、ベンチャーズによるジャパニーズ・ポップスの集大成というべき内容で、1960年代後半になって新たなアプローチを模索していたベンチャーズがGSやフォークソングを中心とした当時の日本のヒット曲を演奏したもの。この企画は70年代に入っても続編が次々と制作されていき、アルバム5枚ぐらい出ていたように思う。私はベンチャーズに開眼してレコードやCDを集めまくっていた時に、今はもう閉店した大阪梅田のDisc JJ でベンチャーズの超入手困難 2 in 1 CDシリーズ を大量に発見(←何と1枚1,000円だった...)して狂喜したことがあるが、この「ポップス・イン・ジャパン №1 & №2」もその中の貴重な1枚だ。
 №1の方では⑤「東京ナイト」、⑩「横浜の灯は遠く」、⑪「ブラック・サンド・ビーチ」、⑫「銀色の道」の4曲がオススメ。期待していた GS 歌謡の最高峰①「ブルー・シャトウ」はスローなテンポ設定が災いして生気に欠けるし、③「涙のギター」は悪くはないが、スプートニクス版の方が優れているように思う。それ以外はまるで “歌のない歌謡曲” みたいな感じで、何でベンチャーズがこんなことせなアカンねん!と言いたくなるようなトホホなトラックだ。 №2の方では⑬「いとしのマックス」、⑳「青空のある限り」、(22)「風が泣いている」といったGS系の曲がいい。リズム歌謡屈指の名曲⑲「真っ赤な太陽」はベンちゃんらしさが発揮できず今一歩といったところ。この曲をもっとドライヴさせて聴かせてほしかった。⑭「小指の思い出」はハッキリ言ってちょっと堪忍してほしい(>_<)
 ボートラ7曲の中では上記の(26)「二人の銀座」と(28)「夜空の星」の2曲が抜きん出て素晴らしい。特に加山雄三&ランチャーズの「夜空の星」は哀愁をまき散らしながらハイスピードで疾走するキラー・チューンで、「ベンチャーズ・EPコレクション」という4枚組ボックスの中に入っていたこの曲を初めて聴いた時の衝撃はとても言葉では言い表せない(≧▽≦) もちろん加山ヴァージョンも素晴らしいが、ベンちゃんのヴァージョンはスピード、パワー、テクニックの切れ味と、全ての面で最高のロックンロールに仕上がっており、当のベンチャーズですらこのヴァージョンを超える「夜空」を出していない。とにかく全ベンチャーズ・ソングの中で私的トップ3に入るほど大好きなナンバーがこの「夜空」であり、私に “60年代ベンチャーズの音源を根こそぎ全部イクぞ!!!” と決意させ “テケテケ地獄”(笑)へと引きずり込んだ張本人(?)なのだ。

夜空の星(Yozora No Hoshi・Live Version)・・・ザ・ベンチャーズ (The Ventures)


Ginza Lights(二人の銀座)・・・The Ventures (ザ・ベンチャーズ)

永遠のギターキッズ LIVE Vol. 2 / 加山雄三

2009-07-22 | エレキ・インスト
 言うまでもなく第一印象というのは重要である。ファースト・コンタクトで間違ったイメージを持ってしまうと、後々までその先入観が邪魔をして真の姿が見えてこない。私の場合、そういった偏見がもとで長いこと加山雄三というアーティストを誤解していた。いや、アーティストどころか、私は数年前(!)まで彼をただのヤニさがったオッサン歌手だと思っていたのだ。それもこれも初めて彼の歌を聞いた時(かなり昔の話だが...)にいきなり極度の嫌悪感を抱いてしまったからだ。その歌とは「君といつまでも」である。例の “二人を 夕闇がぁ~♪” で始まる彼の代表曲だ。あの歌の中の “幸せだなぁ... 僕は死ぬまで君を離さないぞ...云々” という語りの部分がもうブツブツが出るほど嫌いで、あんなキモいセリフを公共の電波に乗せんなよ!とラジオでかかるたびに音を消していたくらいだ。
 そんな先入観が吹き飛んだのが数年前のこと、ベンチャーズにどっぷりハマッて聴きまくっていた時、「EPコレクション」という4枚組CDの中に入っていた「夜空の星」という曲がめちゃくちゃカッコ良く、ライナーの解説を読むと “加山雄三の自作自演曲” とあったのでビックリ(゜o゜) 何であんなオッサンがこんなカッコエエ曲を??? と不思議だった。そのすぐ後、今度はアルバム「ポップス・イン・ジャパン」に入っていた「ブラック・サンド・ビーチ」がカッコエエなぁと思っているとこれまた “加山雄三とランチャーズ” がオリジナルだという。天下のベンチャーズが加山雄三の曲を何曲もカヴァーしているなんて... ここにきて初めて自分がとんでもない誤解をしていたことに気づいた私は慌ててヤフオクで彼のCDをゲット、それでやっと彼が日本のテケテケ黎明期のパイオニアだったということを知った次第。いやはやホントにお恥ずかしい(>_<)
 それ以降、私は加山雄三という名前に対してはリスペクトの念を持って接するようになり、「夜空の星」は私の中で “この曲が入ってるCDは全部買う” レベルの、いわゆるスーパー愛聴曲のリストに加わった。ということでネットで「夜空の星」検索をしていて偶然見つけたのがこの「永遠のギターキッズ LIVE Vol. 2」である。曲目を見ると愛聴曲ばっかりだ。試聴はできなかったけど、このメンツでこの選曲なら悪かろうはずがないという確信を持ってポチッとオーダーした。
 このCDは1999年の東京中野サンプラザホールでのライブ盤で、加山雄三&ハイパーランチャーズが①②⑨⑩⑪の5曲、Dr.K Project が③④の2曲、ノーキー・エドワーズ& Dr.K Project が⑤⑥⑦⑫⑬の5曲、加山雄三&ハイパーランチャーズ with ノーキー・エドワーズが⑧1曲、そして⑭⑮はこの日の出演者全員で演奏している。
 コンサートはデル・シャノンの①「悲しき街角」でスタート、もう1曲目からノリノリである。本家ベンちゃんのカヴァー・ヴァージョンに迫る勢いの疾走感溢れる演奏だ。続く②「ナッティ」はチャイコフスキーの「くるみ割り人形」をベンチャーズが見事にテケテケ化したもので、ELPの「展覧会の絵」に入っている「ナットロッカー」はこのベンちゃんアレンジをアダプトしたものだと思うのだが、加山雄三&ハイパーランチャーズは①に続いて絶好調なプレイを聴かせてくれる。ドラムスがメル・テイラーよりもカール・パーマーしちゃってるのが笑えます...(^.^)
 ③「カンダリバー・ツイスト」はかぐや姫の「神田川」をインスト化したもので、「木の葉の子守唄」なイントロから、現われては消え、消えては現れる珠玉のベンちゃん・フレーズに彩られながら、日本人なら誰でも知っている四畳半フォークの名曲が見事なアレンジ(テケテケテケ~♪が絶妙なタイミングで炸裂!)でエレキ・インスト化されている。これはめちゃくちゃ面白い(^o^)丿 Dr.K Project のリーダー、徳武氏の音楽的センスには脱帽だ。続く④「萌え萌えのテーマ」は徳武氏のオリジナルで、ベンチャーズのエッセンスをギュッと凝縮したような曲想が楽しい。さすがは日本におけるベンチャーズ研究の第一人者である。
 ここからノーキーが加わって再びデル・シャノンの名曲⑤「キープ・サーチン」だ。ベンチャーズがリアルタイムで取り上げていてもおかしくないほど(「ファビュラス・ベンチャーズ」あたりのサウンドにピッタリ!)しっくりくるテケテケ・ヴァージョンに仕上がっている。演奏といい、アレンジといい、こういうのを匠の技というのだろう。我が超愛聴曲⑥「秘密諜報員」は水を得た魚のようなノーキーのプレイに息をのむ。ノーキー + Dr.K の組み合わせは強力にして完璧だ。間髪を入れずに始まる⑦「京都の恋」、いやぁ~この日本的メロディを超絶エレキ・インストで聴ける幸せをどう表現すればいいのだろう?それにしても好きな曲ばかりこうも立て続けに出てくると嬉しくって仕方がない(^o^)丿 名曲名演のつるべ打ちとはこのことだ。
 のどかな感じのするミディアム・テンポの⑧「WANNA BE CHET」は初めて聴く曲だが、それまでの曲に比べると印象が薄くなるのはしゃあないか。加山さんのヴォーカル入り⑨「旅人よ」、⑩「ブーメラン・ベイビー」の2曲ではそれまでのテケテケ路線はすっかり影を潜めて大ナツメロ大会に早変わり。そしてキタッ!!! 日本生まれのテケテケ・スタンダードの大傑作⑪「夜空の星」だ。何回聴いてもエエもんはやっぱりエエなぁ... (≧▽≦)
 続いて再びノーキー + Dr.K の演奏で、泣く子も黙る⑫「十番街の殺人」へと突入、例のイントロからドラムソロ、そしてテケテケテケ... とベンちゃんファンには涙ちょちょぎれる演奏で、2分11秒があっと言う間に過ぎ去っていく。⑬「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」は私の知っているスプートニクスの曲とは同名異曲で、いかにもノーキーが好きそうなカントリ・フレイバー溢れるナンバーだ。
 ラスト2曲⑭「お嫁においで」と⑮「ワイプ・アウト」はアンコール・ナンバーで、特に⑮での日米スーパー・ギタリスト総出演による大テケテケ大会はこの素晴らしいコンサートの締めくくりに相応しい夢の饗宴だ。長嶋さんじゃないが “テケテケは永遠に不滅です!” って言いたくなるような楽しさ溢れるライブ盤だと思う。

カンダリバー・ツイスト

Feed Back / Dr.K Project with friends

2009-06-19 | エレキ・インスト
 ボブ・ボーグルの死を悼んで昨日から “一人ベンチャーズ祭り” 開催中なのだが、本家ベンチャーズだけでなく彼らのフォロワーたちの盤も何枚か聴いた中で改めてその出来の良さに唸ってしまったのがドクターKこと徳武弘文さん率いる Dr.K Project のアルバムだ。
 徳武さんは日本におけるカントリー・ロック、ベンチャーズ系エレキ・インストの第一人者で、様々なアーティストのレコーディングに引っ張りダコのスタジオ・ミュージシャン。ノーキー・エドワーズやジェリー・マギーといったベンチャーズの歴代リード・ギタリストたちのワザを身につけた彼は90年代に入って自らのバンド Dr.K Project(外人ミュージシャンが “トクタケ”を“ドクターK”と呼んだことからこのニックネームが付いたという)を結成、その唯一無比のビートとグルーヴでベンチャーズの屋台骨を支えたドラマー、故メル・テイラーの遺志を継ぐ三浦晃嗣さんと共にエレキ・インストの楽しさを21世紀に伝えんと精力的にライブ活動を行っていた。そんな彼が96年のメル・テイラーの死に際し、ベンチャーズ、そしてメル・テイラーのグルーヴとスピリットを次の世代に伝えようという趣旨で開催したのが “メル・テイラー・トリビュート・ベンチャーズ・ナイト~僕らはエレキにしびれてた~” であり、その時の実況録音盤がこの「フィード・バック」なのだ。
 この2枚組CDには約110分にわたってベンチャーズ・クラシックスのカヴァー36曲が収録されており、Dr.K Project の5人をベースにベンチャーズ・フリークのミュージシャン達が入れ替わり立ち替わり客演するという形を取っている。尚、このライブでは “加山雄三&ハイパー・ランチャーズ” のステージもあったらしいが、権利関係がクリアできず残念ながらCDには未収録。その代わりと言っちゃ何ですが、加山さんが本家ベンチャーズと共演した98年のライブの模様がYouTubeにアップされてたので一緒に貼っときます。テケテケ・オールスターズって感じでエレキ・インスト・マニアは涙ちょちょぎれまっせー(T_T)
 Disc-1 は①「クルーエル・シー」でスタート。「ベンチャーズ・イン・ジャパンVol.2」を意識した選曲だろう。②「ブルドッグ」、③「バンブル・ビー・ツイスト」、④「朝日のあたる家」、⑤「007-0011」と、小気味よいテンポで繰り出される名曲名演の連続パンチに目も眩む。本家ベンチャーズから “日本一のエレキ・インスト・バンド” と賞賛されただけのことはある完璧なテクニックでエレキ・インストの楽しさを伝えてくれる。大好きな⑦「星への旅路」で展開される“温故知新”サウンドはダブル・ピックでトレモロ的な効果を出しながら音楽をグイグイ引っ張っていく Dr.K の独壇場。ベンチャーズの数少ないオリジナル曲の中でも屈指の名曲を見事に料理している。⑩「ペネトレイション」では現在の日本のエレキ・インスト・シーンを牽引する若手バンド、サーフコースターズのリード・ギタリスト、中シゲヲさんがゲスト参加、エレキ・インスト・バンドの定番曲とも言えるこの曲をガンガン弾きまくっている。続く⑪「ペダル・プッシャー」でもその熱いプレイは聴く者を圧倒する。これこそまさに60'sベンチャーズが体現していたロックンロール・スピリットだ。⑭「レッツ・ゴー」はベンチャーズのオリジ・ヴァージョンでも感じたことだが、 “レッツ・ゴー!” という掛け声が何かこそばゆい感じ。ましてやベタな日本語発音で “レッツ・ゴー!” と叫ばれた日にゃー、気恥かしさすら感じてしまう(>_<) ⑮「十番街の殺人」からドラマーが東原力哉さんに代わるのだが、全く破綻のないスムーズな演奏を聴かせる東原さんに対し、メル・テイラーのあのツッコミ気味の前ノリ・ドラムの再現は三浦さんに一日の長があるように思う。2度演奏された⑫(三浦)と⑲(東原)の「アパッチ」で2人のドラマーのプレイを聴き比べるのも一興だ。
 Disc-2 では③「ザ・クリーパー」を実に見事にステージで再現しているのにビックリ。これはマジで凄いです(≧▽≦) ドラマーは再び三浦さんにチェンジしているが、やはりメル・テイラーのグルーヴを出せるのは彼しかいないと改めて実感した次第。我が愛聴曲⑬「秘密諜報員」で聞ける渾身のプレイではその一打一打で金粉が飛び散るかのような凄まじさだ。⑦「サーフ・オン・ギター’96メドレー」ではベンチャーズの代表曲を14曲数珠つなぎで一気呵成に聴かせてくれる。とにかく全曲こんな感じでベンチャーズに対する深い愛情とリスペクトがダイレクトに伝わってくるこのアルバム、廃盤のままにしておくのはもったいないエレキ・インストの隠れ名盤だ。

Dr.K Project ♪♪ 十番街の殺人


The Ventures Nokie Edwards.Kayama Yuzo Hyper Launchers.Dr K Project.Shigeo Naka

Ventures In Japan

2009-06-18 | エレキ・インスト
 昨日plincoさんからベンチャーズのベーシスト、ボブ・ボーグルが亡くなったと知らされた時は寝耳に水で本当に信じられない思いだった。私が聴く音楽はロックであれジャズであれ50~60年代に活躍したバンドやシンガーが多いので、それから約半世紀が経ち、このような訃報に接することも仕方がないと言えばそれまでなのだが、それにしてもやはり寂しい。特にロック・バンドで一人減り、二人減りしていくのはファンとしては身につまされる思いだ。私はビートルズでこの悲哀をイヤと言うほど味わったが、ベンチャーズもメル・テイラーが逝き、今度はボブ・ボーグルが鬼籍に入ってしまった。ベンチャーズといえばどうしてもノーキー・エドワーズの神業プレイやドン・ウィルソンの “テケテケテケ~♪” に注目が集まりがちだが、あのドライヴ感溢れるロック・サウンドの根幹を成していたのは間違いなくメルとボブが生み出す強烈無比なグルーヴだったように思う。
 今日は仕事から帰ってきてずーっと彼らのアルバムばかりガンガン聴いているのだが、やっぱりどれもエエねぇ... 心にグッとくるねぇ... たまらんねぇ...(≧▽≦) ボブさんの追悼として50枚近く持っているアルバムのどれにしようかと迷ったが、こんな時こそ辛気臭さを吹き飛ばすような痛快なロックンロールということで、彼らの魅力を1枚にギュッと凝縮したような全盛期のライブ盤「ベンチャーズ・イン・ジャパン」にしよう。
 まずはライブの定番メドレー①「ウォーク・ドント・ラン~パーフィディア~木の葉の子守唄」からスタート、何と言ってもイントロのドラムの連打が凄すぎて言葉を失う。メル・テイラーの真骨頂というべきプレイが圧巻だ。この3曲はベンチャーズ結成当初からのレパートリーということでリード・ギターは多分ボブだったと思うが、トレモロ・アームを多用したプレイがめっちゃスリリング。②「ドライヴィング・ギター」は2分弱の短い曲だが様々なギター・テクニックの品評会のようなベンチャーズらしい1曲。③「ブルドッグ」はシンプルかつストレートなロックンロールで、ノーキーの変幻自在のギター・テクニックが満喫できる、ベンチャーズのエッセンスを見事に凝縮したようなナンバーだ。この曲が終わると “変な外人” の草分け的存在ビン・コンセプションの怪しい日本語によるMCが入るのだが、これがめちゃくちゃアホくさくて面白い。オーディエンスの反応ものどかな時代を感じさせるものだ。④「パイプライン」はイントロだけでもう鳥肌モノで、彼らの代名詞とでもいうべきモズライト・ギターのトレモロ・グリッサンドが圧巻だ。そのワイルドでダイナミックな “テケテケテケ~♪” は永遠に不滅なのだ。⑤「アパッチ」はシャドウズの代表的なレパートリーで、このベンチャーズ・ヴァージョンでは “ヒュッヒュッ、ヒュッヒュッ” という弦を爪でこすったような音が効果的に使われている。
 ⑥「10番街の殺人」は元々超スロー・バラッドだったブロードウェイ・ミュージカル曲をスリリングなロックンロールへと生まれ変わらせた、ベンチャーズ・アレンジの最高傑作!コードのスライド・ダウンで始まる強烈なイントロからメル・テイラーのイケイケ・ドラミングへとつながるあたりで私はもう完全にノックアウト(≧▽≦) とにかくカッコイイとしかいいようのない、ベンチャーズ屈指の名演だ。続くは⑦「ウォーク・ドント・ラン’64」、もう名曲名演のこれでもか攻撃だ。ボブ・ボーグルはこの曲のチェット・アトキンス・ヴァージョンを聴いてギターを本気でやる気になったということで、 “世界で一番好きな曲” だと公言している。ドン・ウィルソンの “テケテケテケ~♪” が最高だ。⑧「バンブル・ビー・ツイスト」はクラシックの有名曲「熊蜂の飛行」をビー・バンブル&ザ・スティンガーズがカヴァーしたものをツイストにアレンジ、絶妙なトレモロ・プレイで蜂が飛んでいる様子を見事に表現しているのはさすがと言う他ない。こういうのを本物のテクニックというのだろう。⑨「ワイプ・アウト」はドライヴ感溢れる3コード・ロックンロールで、メル・テイラーの真価がハッキリとわかるダイナミックなドラミングが最大の聴き所。ラストはお約束アンコール・ナンバーの⑩「キャラバン’65」で、長尺ドラム・ソロを含む8分弱の大作だ。ノーキーの縦横無尽に弾きまくるギターやドンの正確無比なリズム・カッティングも凄いが、やはりメルの豪快なドラミングに尽きるだろう。コンサートの締めに相応しいナンバーだ。
 彼らをただの “オールディーズ・テケテケ・バンド” “夏になるとやって来て全国を廻る出稼ぎバンド” などと思っている人がいたらとにかく一度このアルバムをフル・ヴォリュームで聴いてみることだ。驚倒するだろう。ジミー・ペイジが、エリック・クラプトンが、そしてエディ・ヴァン・ヘイレンが愛してやまないロックの原点がここにある。ベンチャーズがいなければ、多くのロック・ファンの人生はきっと違ったもの、それもかなり味気ないものになっていただろう。素晴らしい音楽をありがとう!R.I.P. Bob Bogle.

Slaughter on 10th Avenue (10番街の殺人)- The Ventures


The Ventures "Walk Don't Run '64"

The Ventures Play the Batman Theme

2009-04-06 | エレキ・インスト
 以前“苦手な名盤”について書いたことがあった。世評はめっぽう高いのに自分にはまったくその良さが分からない困った盤のことである。逆に何でこんなエエ盤が話題に上らへんねやろ?と思わず首をかしげたくなるような、いわゆる“自分だけの名盤”も多い。私にとってそんな私的名盤の1枚がこの「バットマン・テーマ / ベンチャーズ」である。
 ベンチャーズの名盤と言えばまず頭に浮かぶのが「ライブ・イン・ジャパン」であり、スタジオ録音盤なら「ウォーク・ドント・ランVol.2」、「ノック・ミー・アウト」といった中期の傑作だが、この「バットマン・テーマ」だって負けてはいない。しかしこのアルバムを褒めるどころか話題にするレビューや感想にすらお目にかかったことがないのだ。それは何故か?考えられる理由は3つ:(1)「ラップ・シティ」「ウォーク・ドント・ラン'64」「10番街の殺人」といった“この1曲!”と呼べる超有名曲が入っていない、(2)“TV番組のテーマ・ソング集”ということで軽視or無視されている、(3)トホホな超手抜きジャケットがチープ感を更に増幅している... そんなところだと思う。私だって実際に聴いてみるまではこの盤の存在など歯牙にもかけなかった。たまたま「EPコレクション」で聴いた「秘密諜報員」が気に入ってこのCDを買ったのだが、聴いてビックリとはこのことだ。とにかく収録されている楽曲群の充実度は上記のアルバムに引けを取らないと思う。
 ①「バットマン」は原曲が単調なメロディーの繰り返しなので女性コーラスやキーボードを多用するなどアレンジに工夫が見られるが、わざわざベンチャーズがやらなアカンほどの曲とは思えない。マーケッツで十分ではないか。まぁ曲の知名度だけは高いので一種の話題作りだろう。②「ゾッコ」はどっかで聴いたリズム&メロディーやなぁ...と思ったらゼッペリンの「移民の歌」(日本ではブルーザー・ブロディーのテーマとして有名?)にそっくりやん!ジミー・ペイジがベンチャーズの大ファンやというのは知ってたけど、これほどとは(゜o゜) ③「ジョーカーズ・ワイルド」は007のテーマにそのまま使えそうな曲。だだし時折挿入される変な笑い声は不要だと思う。④「ケープ」はチャンプスの「テキーラ」みたいなリズムに乗せてスパイ映画の主題歌みたいなメロディーが奏でられる不思議な曲。メル・テイラーの律儀なドラム・プレイが爽快だ。⑤「007-0011」は文字通りジェームズ・ボンドの007とナポレオン・ソロの0011を合わせたようなカッコイイ曲想がたまらないキラー・チューンで、個人的には全ベンチャーズ曲でトップ3に入るほど愛聴している。過小評価されがちなベンチャーズの作曲能力の高さを改めて思い知らされる1曲で、本盤収録の他のTVテーマ曲が霞んでしまうほどのクオリティーだ。⑥「ナポレオン・ソロのテーマ」は①と同様単調なメロディーをごまかすための女性コーラス・フィーチャーがミエミエで、LPならA面ラストということでまだ救いがあるがCDで聴くと⑤と⑦に挟まれて間延びした印象しかない不憫な曲。⑦「秘密諜報員」はノーキー・エドワーズの縦横無尽なギター・プレイが堪能できる文句なしのロックンロール。単なるTVドラマ主題歌をここまで見事なロックンロール・ナンバーに昇華させたベンチャーズの手腕には脱帽だ。⑧「ホット・ライン」、待ちに待った“テケテケテケ...”がついに出たぁ!!! これだけでもうメシ3杯は喰えそうだ(笑) ⑨「ヴァンプキャンプ」は「ミナミの帝王・エンディング・テーマ」の原型とおぼしきイントロから始まるミディアム・スローなロック曲。演奏はエエねんけど、③と同様に気持ち悪いサウンド・エフェクトは不要だ。⑩「若さでジャンプ」はドン・ウィルソンのリズム・ギターがカッコいい。⑪「それ行けスマートのテーマ」は何か②と⑨を足して2で割ったような感じ... ということはゼッペリンの元ネタをたどっていくと... あかん、考えんとこ(>_<) ⑫「グリーン・ホーネット’66」はアルバムの最後を飾るに相応しいノリの良い演奏で、ここでは女性コーラスも効果的に使われている。
 このようにいいことづくめのアルバムなのだが、日本盤CDはマスターテープ不良のためか数曲で明らかに音がこもる箇所があるので×、東芝EMIはCCCDに固執して姑息な策を弄してる暇があったらまずこーいった不手際を正せと言いたい。

The Ventures - Secret Agent Man (1984)

The Spotnicks In London

2009-01-14 | エレキ・インスト
 自分が生まれた頃に流行っていた音楽、つまり60'sのオールディーズを後追いという形で遡って聴いていく場合、どうしても全米チャート主体になってしまい、日本やヨーロッパだけでヒットした曲が漏れ落ちてしまうというケースがしばしばある。あと10年早く生まれたかったと言ってみたところで仕方がない。幸いなことに私の場合、リアルタイムで60'sを体験された音楽マニアの先輩達が色々と貴重なレコードを紹介して下さるのでホンマにありがたい。いくら感謝してもしきれないくらい感謝してマス!
 私が初めてスプートニクスを聴いたのは約5年前のG3の時で、「エレキ欧米対決!」と題して plincoさんはベンチャーズを、901さんはスウェーデンのスプートニクスを持参された。その時聴かせていただいたのが「霧のカレリア」で、明らかにアメリカ産のノーテンキなテケテケとは違う、まるで歌謡曲のような哀愁を帯びた泣きのメロディーが印象的だった。それからしばらく経ってベンチャーズに本格的にハマッた私は「寝ても覚めてもテケテケ状態」に陥り、他のエレキ・インスト・バンドも聴いてみたくなった。そこで思い出したのがスプートニクスである。早速ベストCDをゲットして聴いてみると、これがもうめちゃくちゃカッコイイ。これはベスト盤だけではもったいないと思い、オリジナル盤を1枚また1枚と集めていった。彼らの全盛期は62年の「イン・ロンドン」から67年の「ライヴ・イン・ジャパン」辺りまでで、中でもデビュー・アルバムの「イン・ロンドン」は彼らの最高傑作といってもいいくらい素晴らしい。アルバム1曲目を飾る①「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」は元々はアメリカ東部を走っていた最高級列車 "オレンジ・ブロッサム・スペシャル号" を歌ったブルーグラスの名曲で、イントロから全開のリズム・ギターが機関車の走る音を巧く表現しているのが凄い。0分7秒と47秒でむせぶボー・ウィンバーグのギターはまるで汽笛のようだ。④「ナイトキャップ」は何故かバリバリのジャズ・ギターみたいなサウンドで、クールで粋なプレイがめっちゃカッコイイ。⑤「スプートニクスのテーマ」のイントロを聴くといつも「ゲバゲバ90分のオープニング・テーマ」を連想してしまう私って一体...(>_<) ロシア民謡の「ポーリュシカポーレ」をアレンジした⑧「ザ・ロケット・マン」(この曲が一番好き!!!)のイントロなんて、フェイド・インの仕方といい、ドラムのリズム・パターンといい、もろユーミンの「ルージュの伝言」だし、同じくロシア民謡の⑨「ダーク・アイズ」はテンポの速いマヌーシュ・スウィングの演奏では気付かなかったがこのスプートニクス・ヴァージョンで聴くとザ・ピーナッツの「恋のフーガ」そのものだ。この⑧⑨に関してはホンマに似てるんで実際にご自分の耳で確かめてみて下さい。めちゃくちゃ笑えます(^o^)丿 そーいえば大瀧詠一の「さらばシベリア鉄道」も「イン・パリ」に入ってた「空の終列車」にうりふたつだし、こーやって見ていくとスプートニクスって歌謡曲や J-POP の元ネタの宝庫なのかもしれない。いや~音楽ってホンマに面白いですねぇ(^_^)

Spotnicks - Rocket Man

The Ventures' Christmas Album

2008-12-23 | エレキ・インスト
 クリスマス・アルバム紹介シリーズ(いつシリーズ化したんや!)もビートルズ・パロディ、ウォール・オブ・サウンド、ジャズ・ヴォーカルとくれば後はもうテケテケしかない(何でやねん!) スプートニクスや寺内タケシ、エド山口にDr.K プロジェクトと、テケテケの有名どころは何故かみんなクリスマス・アルバムを出しているが、その音楽性の高さといい、内容の密度の濃さといい、本家本元のベンチャーズが65年に出した「ベンチャーズ・クリスマス・アルバム」に敵うものはない。このクリスマス盤の特徴は、当時のヒット曲のリフをそれぞれのクリスマス・ソングに用いていることで、その辺りにも彼らのアレンジ能力の高さと抜群の音楽センスが感じられる。いきなり「ウォーク・ドント・ラン」のリフで始まる①「スレイ・ライド」、クリスマス・ソングと自分たちのデビュー曲をミックスさせ、それを1曲目に持ってくるアイデアには脱帽だ。3拍子の「グリーンスリーヴズ」を8ビートで演奏した②「スノー・フレイクス」はゾンビーズの「シーズ・ノット・ゼア」のリフの使い方が実に巧い。③「サンタが街にやってくる」ではイントロがあのサム・ザ・シャム&ファラオズの「ウリー・ブリー」だ。イントロ当てクイズのネタに使えば大ウケすること間違いなし。レイ・チャールズの「ホワット・アイ・セイ」から始まる④「ジングル・ベル」は実にダンサブルな仕上がりで、エレキ・インストの楽しさを凝縮したような1曲だ。ビートルズの「アイ・フィール・ファイン」のリフから入る⑦「赤鼻のトナカイ」ではノーキー・エドワーズの神業プレイが十分に堪能できる。チャンプスの「テキーラ」と合体した⑧「フロスティー・ザ・スノウマン」はまさにトロピカル・クリスマスという感じで、ドン・ウィルソンの歯切れの良いリズム・ギターに耳が吸い付く。ジャッキー・デ・シャノンの「ウォーク・イン・ザ・ルーム」を使って軽快に仕上げた⑩「ブルー・クリスマス」ではノーキーお得意のカントリー奏法が炸裂。ラムゼイ・ルイスの「ジ・イン・クラウド」を模した⑫「楽しいクリスマス」ではメル・テイラーの小気味良いドラミングが最高だ。ラストの⑫「ホワイト・クリスマス」は「白い渚のブルース」をベースにしており、トレモロをかけたスティール・ギターの音色が雰囲気を盛り上げる。全曲クリスマス・ソングということで「テケテケテケ」や「キュキュッ」は聴けないが、非常によく練られたエレキ・インスト・クリスマス・アルバムだと思う。

The Ventures - Snow Flakes (What child is this)

激突!エレキ天国 2 / エド山口 & 東京ベンチャーズ

2008-12-17 | エレキ・インスト
 エレキ・インスト、通称テケテケにおいて最も大事なのは、聴いてて楽しいか否か... この一点に尽きる。内容的にはどこを切っても同じ金太郎飴状態なんだから、選曲が重要な要素になってくる。楽しくなくて何のテケテケか?極端な例を挙げれば「ベンチャーズ・ミーツ・フランクザッパ」とか「寺内タケシ・プレイズ・ピンクフロイド」なんてあり得ないのである。エド山口はタレント・俳優として活躍する一方で、96年に「エド山口 & 東京ベンチャーズ」を結成し、これまで7枚のCDを出してきた本格派のテケテケ・ギタリストである。何故かⅡⅣⅥという偶数番目のアルバムの出来が良く、奇数番目のアルバムはイマイチだ。出来の良い偶数盤に共通するのは「直球勝負の潔さ」とでもいうべきストレートなサウンドで、テケテケを聴く楽しさに溢れているところである。メンバー全員がベンチャーズの聖域に足を踏み入れ、大胆にその「型」を現代感覚で描写しているのだ。モダンなギミックを用いない素朴なギターのテクニックはノーキー・エドワーズの世界と伝統的なエレキ・インストの楽しさを伝え、骨太のドラムは墓場からメル・テイラーが甦ってきたかのような錯覚を与える。細かい部分に気を配ってベンチャーズ全盛期の感性を現代に復活させたのである。本家のベンチャーズでも、もうこれだけのベンチャーズ・サウンドは再現できないだろう。つまりエド山口&東京ベンチャーズは60年代中頃の一番美しかった時代のベンチャーズを彼らの感覚とオリジナリティで甦らせたのだ。特にこのⅡにはドライヴ感のある曲が並んでおり、本家のヴァージョンを凌ぐ勢いの「ディック・トレイシー」、クラシックの名曲をカッコ良くテケテケ化した「ドナウ川のさざ波」、ディック・デイルもぶっ飛ぶくらい躍動感に溢れる「ミザルー」、マヌーシュでも定番のロシア民謡「黒い瞳」(以前同僚に「このCD、黒い瞳入ってますねん!」って言うたら「え?黒木瞳入ってんの?」って聞かれて凹んだ)、アイデアの勝利といっていいテケテケ版007が斬新な「サンダーボール作戦」と、様々なジャンルの曲を通してエレキ・インストの楽しさを満喫できる。ただ、いくつか寒いギャグから始まる曲があるのが唯一の難点。コミックバンドじゃあるまいし、ノリノリの気分が台無しだ。それさえなければ「エレキ・インストのベスト!」と胸を張っていえる大傑作だと思う。

↓YouTubeに東ベンの動画がなかったので、代わりに LOVE FAR FAR AWAY っていうバンドの東ベン・コピーを貼っときます

ドナウ川のさざ波



津軽より愛をこめて / 小山貢・豊 Dr.K Project

2008-11-05 | エレキ・インスト
 カヴァーを成功させるには、素材を完全に自分のモノにしてしまう鋭いセンスと高い音楽性が要求される。確かなテクニックと適度な遊び心、そして何よりもカヴァーする対象へのリスペクト・愛情がモノをいう。それらが音楽的に高い次元で結びつくと、カヴァー・ヴァージョンの傑作が生まれることになる。
 ドクターKこと徳武弘文率いる Dr.K Project は日本のエレキインスト・バンドの第一人者で、これまでデル・シャノンの「太陽をさがせ!」からかぐや姫の「神田川」まで、ありとあらゆる素材をテケテケ化してきたが、ここでご紹介する「津軽より愛をこめて」はそれらを遥かに超える強烈なインパクトで迫ってくる。何と言っても副題が「津軽三味線 play ザ・ベンチャーズ」なのだ!エレキギターと三味線の共演といえば67年の寺内タケシと三橋美智也のコラボレーションによる「津軽じょんがら節」と「黒い瞳」が思い浮かぶが、あれから40年の時を経て、今回はアルバム丸ごと、それもすべてベンチャーズ・ナンバーというから興奮するなという方が無理な話だ。しかも津軽三味線は小山流家元(!)の小山貢師とその息子さんが親子で担当、①Caravan ではまだ軽い手合わせ程度のノリだったのが、②Diamond Head では「リード・三味線」と化して大暴れ(笑)、完全に主役の座を奪ってしまう。③Pipeline でもあのメロディーを津軽三味線で忠実に再現、間奏部分のたたみかけるようなノリがメチャクチャ楽しい。④Cruel Sea や ⑤Secret Agent Man では三味線とエレキギターが見事に一体化して独特なグルーヴを生み出しており、何より彼らが心から楽しみながらプレイしているのがダイレクトに伝わってきて聴いてるこっちまで楽しくなってくる。⑥Bulldog では掛け声を発しながらノリノリでホットな三味線・ソロをぶちかます小山師が最高だ。例の耳だこ・メロディーが三味線で演奏されると実に新鮮に響く⑧Walk Don't Run'64、まるで最初から三味線用の曲だったかのような違和感のなさに唖然とさせられる⑪Driving Guitars、そしてここまでやるかの徹底振りに頭が下がる思いの⑫Ventures Medley、ホンマにみんなベンチャーズ好きなんやね(^_^) ⑭Kickstandではもう笑うしかないほど三味線がピッタリとハマッてて、そのアレンジ・センスはさすがという他ない。こういう盤を肩肘張らずに面白がって楽しめる心の広い音楽ファンでよかったなぁ、と思う今日この頃である。

Another Smash / The Ventures

2008-10-25 | エレキ・インスト
 ベンチャーズは「懐メロ・バンド」なんかじゃない。れっきとした「本物のロックンロール・バンド」である。今でこそハッキリとこう断言できるが、そのことに気付いたのはほんの3年前。私、901さん、plincoさんというジャズ好き3人衆が「木の葉の子守唄」の名演を持ち寄ってウチの家で聴き比べ会をやった時のこと、ハードバップ・キングの異名を取るplincoさんが選んだのはしかし、意外にもベンチャーズだった。「え?ベンチャーズ?」... 当時の私にとってベンチャーズは「ダイアモンド・ヘッド」「ウォーク・ドント・ラン」「10番街の殺人」「パイプライン」「ワイプアウト」の5曲で十分の懐メロ・バンドにすぎなかった。差し出されたLPに針を下ろすといきなりメル・テイラーのドラム・フィルが爆裂!シンプルかつパワフルなドラムの連打が素晴らしいグルーヴを生み出し、トレモロを多用したボブ・ボーグルのギターもめっちゃスリリング!この瞬間に私のベンチャーズに対する偏見は木っ端微塵に打ち砕かれた。何と言うカッコ良さ!これこそまさにロックンロールの原点である。それから約半年間、私は熱に浮かされたようにeBayでベンチャーズの60年代オリジナル盤を買い漁り、徹底的に聴き込んだ。いやぁ~、まいった。今まで知らなかった名曲名演のオンパレード、ゼッペリンやELPといった70年代初頭のブリティッシュ・ロック・バンドの元ネタの宝庫ではないか!ベンチャーズに対して目を開かせてくださった plinco さんには足を向けて寝られない。そんなベンチャーズ再認識のきっかけとなったこのLP、まずはジャケットに注目である。何これ?Another Smash で「強打をもう一発」って... そのまんまやん!それもバイオリンで殴るか、ふつう...(>_<) そのせいか、2ndプレスからは大の字に手足を広げた人間のシルエットのジャケに差し替えられてるけどね。中身の方も「木の葉の子守唄」「ブルドッグ」「ライダーズ・イン・ザ・スカイ」といった傑作が目白押しだが、その中でも個人的に愛聴してるのがB-5のGinchy。元々「木の葉」のB面として発売されたもので、テンポをちょっと下げたら「二人の銀座」になりそうな(ならんならん!)物悲しいメロディーをフェンダー・ギターが奏でる隠れ名曲。この盤をお持ちの方は一度そういう耳で聴いてみて下さい。

The Ventures - Lullaby of the Leaves