熊本県立美術館においての、東京大学史料編纂所の金子拓先生の上記講演会に出かけた。信長研究の金子先生がなぜガラシャに興味をもたれたのか、それは太田牛一の著になる「関ヶ原御合戦双紙」の研究を通してだそうだ。それと「内府公軍記」「太田和泉守記」との比較である。確かな資料による解説は説得力があり、大変面白い。
細川家に伝わる「ガラシャの最後」は、ガラシャの孫光尚の要請に応えたあの「霜女覚書」によっている。一方夫忠興が得た情報が、宇土細川家に伝わったのではないかと思われる節が在る。宇土細川家は本藩とは別に、いろいろ調べたらしい。宇土の史料は、水害や戦火に遭い散逸しており、残されたものは九州大学の所蔵するところとなっている。
こちらの史料からはいささか趣を異にする情報が伺える。稲富祐直の逃亡などは、弟子達が集まって屋敷からの退散を促したのだという。又兼見卿記における、ガラシャと思われる人(与一郎女房衆)の安産祈願に関する記事など、大変興味深く拝聴した。
今回の講演は参加者が一番多かったそうで、資料が足らず担当者が右往左往する有様で、開演が遅れるという事態が起きた。さすがに女性の参加が目立った。
質問の時間に「小須賀覚書」その他一二をお尋ねしご丁寧な回答をいただいた。帰り際に一言ご挨拶を申し上げて、帰途に着いた。詳しいレジュメは有難い資料としてわが本棚に並ぶことと相成った。