


ロシアでプーチン政権の弾圧に抗し、家族(夫)を戦場から取り戻そうとする妻たちのグループが運動を続けています。21日のNHK「国際報道2024」(BS、22日総合で再放送)が報じました。以下、番組から。
運動している妻たちの会は、「プーチ・ダモイ(わが家への道)」。昨年8月から活動を始め、SNSの登録者は7万2000人にのぼります。デモのプラカードには「動員兵たちは家に戻るべきだ」と書かれています。
会はマニフェストを発表しています。①部分動員の期限は招集から1年以内とする②国の指導部は問題を無視すべきではない―など。
代表のマリア・アンドレエワさんは、「夫たちはすでに十分に責務を果たしたと思う。政権もそれを認めるべきだ」とプーチン政権を批判します。
メンバーのひとりは、「子どもは1歳6カ月になるが、父親の顔を知らない。とても悲しい」と訴えます。
ロシア政治の専門家は、「動員兵の妻たちはナワリヌイ氏の支持者でも、昔から体制を批判してきた人たちでもない。この運動はクレムリンにとって危険なだけでなく、この社会の機運がどこへ行くかを示す重要な指標でもある」と指摘します。
「プーチ・ダモイ」を支持するジャーナリストは、「動員兵の妻たちはあらゆる手段で(社会の)変化をもたらそうとしている。戦争はすべての家族の生活に関わる問題。私たちの目的は、兵士たちを戦線から離脱させ戦争をやめさせること。できるだけ多くの人々を戦争に巻き込まれないようにすることだ」と強調します。
当局が警戒を強める中、アンドレエワさんはこう言います。
「祖国のために喜んで死ねるほど国を愛せという。私はこの極悪非道の愛国主義に反対です」「(当局の弾圧は)正直に言えば怖い。でも、自分の良心と向き合い、いつか自分が何もしなかったと自覚することの方が怖い。娘から「お母さんは何をしたの?」と一生問われ続けることの方がもっと怖い」(写真右)
以上が番組が報じた「プーチ・ダモイ」運動の概要です。
ウクライナで広がっている「徴兵拒否」、兵士の人権擁護を求める運動(22日のブログ)も、ロシアの「動員兵の妻たち」の運動も、夫たちを戦場から家族の元に取り戻したい、という願いで一致しています。それが以前からの活動家たちの反戦運動ではなく、市井の妻たちが停戦を求めて声を上げている点も共通です。
そこにあるのは、ロシアでもウクライナでも、「国・領土を守る」ためには兵士の犠牲はいとわないという「国家の論理」に対して、「人の命が第一。夫を1日も早く家族のもとへ」という「庶民の論理」の抵抗です。どちらの論理に立つのか。最も大切なものは何なのか。それが私たち一人ひとりに問われています。