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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

ヘイト企業「フジ住宅」断罪判決とその限界

2021年11月22日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    
 大手不動産会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市、今井光郎会長)が在日コリアンの女性従業員に対し、差別文書などで繰り返しヘイトハラスメントを続けてきた問題で、大阪高裁(清水響裁判長)は18日、その違法性を断定し、文書配布の差し止めと132万円の損害賠償を命じました。1審・大阪地裁堺支部の判決(2020年7月2日)に続く有罪判決です。

 「フジ住宅」の卑劣で執拗な手口などについては、2020年7月14日のブログをご参照ください。(https://blog.goo.ne.jp/satoru-kihara/d/20200714

 今井会長(写真右=同社HPより)のハラスメントがエスカレートしてきたのは2013年からですが、前年の12月には第2次安倍晋三政権が発足しています。これはけっして偶然ではないと思います。

 日本の大手企業が職場で繰り返しているヘイトハラスメントに対し、司法が断罪した意味はきわめて大きいものがあります。しかし同時に、判決には見過ごせない限界もあります。

 原告の女性は2審判決後、こう語りました。
「1審判決が出てから、会社は何も変わらなかった。いくら司法が良い判決を出したとしても、受け止める会社側が変わらなければ、同じようなことが続く。正直、今も不安でいっぱいです」(18日に朝日新聞デジタル)

 「フジ住宅」が判決を踏みにじって恥じないのは、今井会長のレイシズムだけでなく、現行法制度の不備の反映でもあります。

 もともと1審の有罪判決にも、「(今井会長のヘイト文書配布を)原告個人に向けられた差別的言動とは認めなかった。…人種差別の本質・問題性を理解していないといわざるを得ない」(弁護団「声明」)という弱点がありました。

 今回の2審判決でも清水裁判長は、「女性個人に対する差別的言動とは認められない」としたうえで、同社が東証1部上場企業であることから、「職場で民族差別的思想が醸成されない環境作りに配慮することが社会的に期待される立場にもかかわらず、怠った」(同朝日新聞デジタル)として、民事の損害賠償を科したのです。

 これでは1審判決同様、「人種差別の本質・問題性」を理解しているとは言えません。
 これはたんに裁判官の問題ではなく、日本の法制度の根本的欠陥にかかわっています。それは、日本には人種差別自体を違法として禁じる差別禁止法がないことです。

日本では、社会生活上の人種差別を明文で禁止した法律がない」「(国連の)人種差別撤廃委員会はこれまで日本に対して、包括的な人種差別禁止法を制定し、ヘイトスピーチについても禁止規定をおくべきことを繰り返し勧告してきた」「この法律(2016年成立のヘイトスピーチ解消法―引用者)は、差別的言動が「許されない」と前文で理念的に宣言しているものの、ヘイトスピーチを違法として禁止する明文規定はなく、当然罰則もなく…人種差別撤廃条約で求められている対策を履行したものとは言い難いものだ」(シン・ヘボン(申惠丰)青山学院大教授『国際人権入門』岩波新書2020年)

 人種差別撤廃条約(「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」)は1965年に国連で採択されました。日本政府は1995年にやっとこれに加入しました。しかしそれは形だけで、一貫してその義務を果たそうとしていません。日本で人種・民族差別がなくならないどころか逆に強まっている原因の1つはここにあります。

 人種差別撤廃条約に基づく人種差別禁止法を早急に制定することは日本の責務です。


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DHCヘイト・辛淑玉さん勝訴が示すもの

2021年09月04日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

   

 沖縄・高江の米軍ヘリパッド建設反対運動をめぐり、DHCテレビジョン(山田晃社長)が制作した番組「ニュース女子」(2017年1月2日)で、「テロリスト」「黒幕」などと誹謗中傷された辛淑玉(シンスゴ)さん(在日コリアン3世、写真左)が、同社などを訴えていた裁判で、東京地裁(大嶋洋志裁判長、写真中)は1日、名誉棄損を認定し、550万円の支払いとウェブサイトへの謝罪文の掲載を命じました。

 画期的な判決です。辛さんのたたかいが実りました。辛さんは番組で攻撃されただけでなく、その後もSNSでヘイトスピーチを浴びせられ、脅迫を受け、身の安全のためしばらく海外へ移らなければなりませんでした。命がけのたたかいでした。

 1日の記者会見で辛さんは、「私を使って沖縄の平和運動を愚弄する、最も悪質なフェイクニュースでした」「反戦運動に声を上げること、沖縄に思いをはせること。そこを巧みに利用された」(2日付沖縄タイムス)と述べました。

 在日コリアンに対する差別に乗じて人権活動家を悪者に仕立て上げ、同時に沖縄の反基地運動を攻撃する。ここには二重の差別・レイシズムがあります。その相乗効果を狙ったまさに最悪のフェイトです。

 辛さんは会見で、声を詰まらせながら、こうも言いました。

沖縄で起きていることが見て見ぬふりをされるのは、どんな司法判断が出ても変えられない。私たち一人一人が真摯に目を向けなければ」(同沖縄タイムス)

 これは「本土」の日本人へ向けた言葉です。この訴訟は、けっしてDHCを裁くだけのものではありません。沖縄、そして在日朝鮮人に対する差別に無関心な日本人、結果、差別に加担している日本人と日本のメディアに対する警告でもあります。そこにこの裁判の重要な意味があります。

 辛さんは以前、ある雑誌にこう書いたことがあります。

「耳を澄ましてほしい。見えていないものを見てほしい。そして、一人でも泣いている人がいたら、その人のそばに寄り添ってほしい。それが、ジャーナリストの仕事ではないだろうか」

 これが辛さんの一貫したジャーナリズム論であり、人間論であり、思想です。

 DHCテレビジョンは「不当判決だ」と居直り、控訴するとしています。辛さんもまた、今回認定されなかった長谷川幸洋氏(番組司会)の名誉毀損や番組の配信停止を求めて控訴する意向です。

 辛淑玉さんのたたかいは続きます。一緒にたたかいたいと思います。とりわけ、差別・ヘイトスピーチを名誉毀損ではなく差別そのものとして罰する差別禁止法の制定は急務です。

 見て見ぬふりをすることは許されません。沖縄の構造的差別に対しても、在日コリアンに対する歴史的差別に対しても。問われているのは私たちです。


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日本社会が問われている「DaiGoヘイト」

2021年08月23日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    

 「メンタリスト」(意味不明!)のDaiGoなる人物は、見たこともなければ、名前を聞いたこともありませんでした。その彼がとんでもない差別発言を行ったことはニュースで知りましたが、まともに批判する気にもなりませんでした。

 しかし、それはやっぱりよくない、きっちり批判しなければならないと思い直しました。そう気づかせてくれたのは、稲葉剛氏(生活困窮者支援「つくろい東京ファンド」代表理事、写真中)のインタビュー記事(17日朝日新聞デジタル)でした。

 DaiGo氏は8月7日公開の動画でこう言ったといいます。「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めているんじゃない。生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救ってほしい。生活保護の人が生きていても僕は別に得をしないけど、猫は生きていれば得なんで」「自分にとって必要のない命は、僕にとっては軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい」…(写真左、同朝日新聞デジタルより)。

 典型的かつ古典的な「優生思想」であり、生活保護攻撃です。きわめて悪質なヘイトスピーチであることは明白です。彼は「著名なテレビタレント」で「ユーチューブのチャンネル登録者数は250万人に及ぶインフルエンサー」なのだそうです。稲葉氏は、「若い世代への悪影響は計り知れない」と警鐘を鳴らしています。

 稲葉氏は、「インフルエンサーの芸能人だけでなく、国会議員や大学教員など、社会に大きな影響力を持つ人が人の命の価値を否定するような発言をした場合『一発アウト』、その職を続けるべきではないと私は考えています。そういう対応を社会が積み重ねていかない限り、また同じような差別や先導が繰り返され、いつか暴力が誘発され、社会が壊される事態になってしまう」と述べています。まったく同感です。

 続けて稲葉氏はこう述べています。

「ただ、本当に重要なのは、DaiGo氏が今後どうするかということよりも、こうした問題に社会がどう向き合うか、だと思います

 稲葉氏ら生活困窮者支援をおこなっている4団体は、この問題で「緊急声明」(8月14日)を出しました。そこで5項目の要求をあげ、5番目にこう主張しています。

私たち市民は、今回のDaiGo氏の発言を含め、今後ともこのような発言は許されないことを共に確認し、これを許さない姿勢を示し続けること

 稲葉氏や「緊急声明」が最も強調しているのは、DaiGo氏個人の問題ではなく、そのヘイトスピーチ・差別発言を受け止める社会の問題、それを絶対許さないという日本社会の姿勢です。

 差別を傍観することは差別に加担するに等しい。それは自明のことと頭では分かっているつもりでしたが、「批判する気にもならない」と黙っていることは、結局、差別を傍観していることになると思い直しました。

 差別の現場に立ち合ったときの「アクティブ・バイスタンダー(Active Bystander)」の役割について考えましたが(8月8日のブログ)、それは至近距離での立ち合いだけでなく、社会の一員として、日本の中で、あるいは世界で起こったヘイトスピーチ・差別に対してどういう姿勢をとるかの問題であることを、あらためて胸に刻みたいと思います。


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ヘイトスピーチと「名前」

2021年07月01日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    

 在日コリアンの母を持つ川崎市在住の中根寧生(ねお)さん(大学1年)が、ネットの投稿で受けたヘイトスピーチを訴え、損害賠償を求めた民事訴訟の控訴審判決が東京高裁でありました(5月12日、写真中は高裁へ向かう中根さん=中央)。
 白井幸夫裁判長は、「投稿は著しく差別的、侮辱的。個人の尊厳や人格を損ない、きわめて悪質」と認定し、加害者の大分市の男(68)に130万円の支払いを命じました。

「判決後の記者会見で中根さんは「匿名の卑怯な差別を許さず発信することで、差別的攻撃を受けている人の勇気や力になりたい」と実名を公表。代理人の師岡康子弁護士は「差別を人格権侵害と認定し、差別されず平穏に生活する権利を認めた画期的な判決」と評価」(5月13日朝日新聞デジタル)しました。

 中根さんが控訴審で意見陳述を行う決意をした経緯を、月刊「イオ」(朝鮮新報社発行)最新号(7月号)で中村一成(イルソン)氏が紹介しています。

 <(警察の聴取のなかで、中根さんは)名前を愚弄された悔しさに話が至ると、肩が震え、涙が止まらなくなった。親の希望が詰まった名、地域で皆から呼ばれ、名乗ってきた名前を踏み躙られたのだ。帰路でオモニが言った。「私が朝鮮人だからこんな思いをさせてしまって、ごめんね」。思いもよらぬ、悲しく悔しい言葉だった。その思いを法廷で述べることにした。「オモニは悪くない。悪いのは朝鮮人ではなくて差別なんだって伝えたかった」>

 中根さんのオモニ(お母さん)は崔江以子さん(写真左は中根寧生さんと崔江以子さん、「イオ」7月号より)。崔さんは川崎市ふれあい館の館長で、ヘイトとたたかい続け多文化共生社会をめざしています。

 男はネットで、中根さんや崔さんの名前を晒し、「在日という悪性外来寄生生物種」「通名などという『在日専用の犯罪用氏名』など許しているものだから、面倒くさい」などとヘイトスピーチを繰り返しました。

 裁判当日、中根さんはこう陳述しました。
「僕は悪性外来寄生生物種ではなく、家族に愛されて、家族を大切に思う人間です。僕は母が朝鮮人であることは自慢ではあるけれど酷いなんて思ったことはない」

 中根さんの名前は、<オモニの信条「丁寧」の寧、朝鮮語のアンニョン(安寧―引用者)の寧を取り、寧生と名付けられた。出会いを丁寧に積み重ね「安寧」な人生を送って欲しい。両親の願いが込められていた>(中村一成氏、同上)

 中根さんの悲しさ、悔しさは、親の愛情がこもった名前を愚弄されたことにあります。名前―それは在日コリアンに対する差別の標的であり、歴史的に、日本の植民地支配の重要なツールでした。日本は朝鮮民族の名前を奪い、「日本名」を強制することで同化政策を推進してきました。それは今も継続しています。

 たとえば、大阪府の「ピースおおさか」(大阪国際平和センター)には、大阪大空襲(1945年3月13日)で犠牲になった在日コリアン(1500人以上)を追悼する銅板がありますが、そこに刻まれているのは「日本名」です。関係者は「本名こそが人間の尊厳を表す」と、本名(民族名)の記載を要求しています。

 ことしの大阪大空襲の追悼式で、水野直樹京大名誉教授は「本名で追悼することの意味」と題して講演しました。

「日本は植民地支配秩序の維持、強化を目的に「民籍法」(1909年)、「創氏改名」(1940年)といった「名前政策」を実施してきた。日本は朝鮮人の名前、アイデンティティを植民地権力の都合に合わせて統制してきた。植民地支配の罪科を明らかにし、それらを踏まえたうえで朝鮮人犠牲者を本名で追悼することの意味を考えるべきだ」(月刊「イオ」5月号)

 個人と民族の尊厳にとって「名前」がいかに重要であるか。だからこそそれを奪うことが日本の植民地政策の中心の1つでした。そして「名前」は、今もヘイトスピーチ、在日コリアン差別のテコになっています。そのことの意味を直視し、ヘイトスピーチを根絶しなければなりません。


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「路上生活女性殺害事件」を3つの視点で再考する

2020年12月21日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    

 「路上生活」をしていた大林三佐子さん(当時64歳)が見ず知らずの男に殺害された事件(11月16日、東京・渋谷区)。現在のコロナ禍社会との関係性についてはすでに書きましたが(11月28日のブログ)、この事件について改めて3つの視点から再考したいと思います。

 第1に、大林さんと私の、少なくない共通点です。

 1つは、大林さんも広島県の出身でした。ニュースで知って驚きました。
 2つ目は、60代だということ。
 3つ目は、60代でも働かなければ食べていけないこと。64歳だった大林さんは来年からは年金が支給されるはずだったのでしょうか。そうだとすれば無念さが募ります。私はすでに年金受給者ですが、それだけでは生活できません。 

 そして4つ目。大林さんはバスの最終便が行ったあとにバス停に来て、朝、始発便が来る前に立ち去っていたといいます(写真左)。近所の人は「人に迷惑をかけまいとしていたようだ」と語っていました。
 「人に迷惑をかけないように」。これはわれわれの世代に共通の“人生訓”ではないでしょうか(広島の地域性も相乗しているかどうかは分かりません)。いいえ、われわれの世代だけではなく、日本人に共通、と言った方がいいかもしれません。小さいころから親に「人に迷惑をかけるようなことだけはするな」と言われてきました。それが染みついています。

 しかし、「人に迷惑をかけない」ことはほんとうに“美徳”なのでしょうか。「迷惑」という言葉は「依存」に通じ、「依存」は「支え合い」に通じます。「迷惑をかけない」生き方とは、知らず知らずのうちに、自らを「自己責任」人生に追い込み、無自覚のうちに正当な権利の主張を自己抑制し、政治・行政の怠慢・責任放棄を黙認・容認することになってはいないでしょうか。
 それは、やがて自分にも訪れる「介護」や「終末期医療」にも通じる問題です。

 第2の視点は、大林さんと私の決定的な違いです。

 それは大林さんが女性で、私が男だということです。男の「ホームレス」が見知らぬ者に襲われることもありますが、男と女では圧倒的に女性の方が危険であることはいうまでもありません。もし大林さんが男だったら、加害者は1人で襲ったでしょうか。
 女性は路上生活においても、男より不利な状況におかれています。ここに見逃してはいけないジェンダーがあります。

 ホームレスにおける女性の比率は小さい(2014年厚労省調査では3・5%)といいます。しかし、それは女性の貧困率が低いことを意味しません。比率が小さい理由の1つは、「女性世帯(女性が世帯主の世帯)が形成されにくいこと」(丸山里美立命館大准教授、『ジェンダーで学ぶ社会学』世界思想社2015年所収)、すなわち背景に「男社会」があるということです。

 「ホームレスという概念も男性を前提につくられたものであり、ジェンダーの視点をもちこむことによって、それ自体を問いなおす必要が出てくるのである。このことは…不可視化された女性の貧困を問題化していくことにもつながるだろう」(丸山氏、同)という指摘に学びたいと思います。

 そして第3の視点は、日本社会の盲点・タブーです。

 大林さんの事件が、柳美里さんの『JR上野駅公園口』の全米図書賞受賞と時期を同じくして起こったことは、単なる偶然とは思えません。柳さんのこの作品の主要テーマは天皇制であり、執筆のきっかけは天皇はじめ皇族の巡行時に上野公園一帯で行われる「山狩り」と称するホームレス排除でした(12月3日のブログ参照)。

 大林さんが殺害されたのもホームレス排除、いわば渋谷の市街地における「山狩り」です。それが「市民」の手で行われた。大林さんを殺害した加害者と、天皇巡行時に「山狩り」を行う政府・行政との間に、どれだけの“距離”があるでしょうか。

 ホームレス排除は殺人事件になればニュースになりますが、そうでなければ誰も見向きもしません。天皇制を頂点とする日本の政治・社会の差別性。それが無意識のうちに沈殿し、「市民」を染めていきます。この事件はその恐ろしさを告発しているのではないでしょうか。


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差別を上塗りするNHK(広島)の“謝罪文”

2020年08月26日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    
 NHK広島放送局が「ひろしまタイムライン」なる企画で在日コリアンに対するヘイト・差別を行い問題になっていることについて(昨日25日のブログ参照)、同局は24日、HPに“謝罪文”を載せました。
 その要旨は、次の通りです。

< 6月16日および8月20日のツイートについて、多くの方々から、さまざまなご意見をいただきました。「差別を助長しているのではないか」というご批判も多数いただきました。戦争の時代に中学1年生が見聞きしたことを、十分な説明なしに発信することで、現代の視聴者のみなさまがどのように受け止めるかについての配慮が不十分だったと考えています。

 手記を提供してくれた方が、1945年当時に抱いた思いを、現在も持っているかのような誤解を生み、プロジェクトに参加している高校生など関係者のみなさんにも、ご迷惑をおかけしたことをおわびいたします。

 (中略―企画の趣旨の繰り返し)

 ツイートはすべて、NHK広島放送局の責任で行っています。今後は、被爆体験の継承というプロジェクト本来の目的を的確に果たしていくため、必要に応じて注釈をつける、出典を明らかにするなどの対応を取り、配慮に欠けたり、誤解が生じたりすることがないように努めます。>

 一読して明白なのは、NHKが「おわび」しているのは、「手記を提供した方」(新井俊一郎氏)と、「プロジェクトに参加している関係者」であり、肝心の被害者・在日コリアンに対する謝罪は一言もないことです。不誠実極まりありません。

 それでも「配慮が不十分だった」「誤解が生じた」ことは認めているのですから、少なくとも問題のツイートは直ちに削除すべきです。しかし、それには全く触れていません。これは事実上、問題のツイートは残すと宣言しているに等しいものです。これでは謝罪ではなくて開き直りです。

 上掲文章のもう1つの特徴は、問題のツイートがヘイト・差別であることについての認識・自覚がいまだにまったくないことです(昨日の拙ブログで述べた第3、第4の問題)。

 一方、上掲文章は、「戦争や原爆について考えていただく取り組み」「被爆体験の継承というプロジェクトの目的を果たす」などと繰り返しています。これは何を意味しているでしょうか。

 在日コリアンが戦前・戦中・戦後におかれている苦難・差別は、日本の植民地支配の結果にほかなりません。それは日本の加害責任です。NHKにはその認識がまったくありません。その一方で「戦争や原爆」の「体験の継承」を強調する。それはすなわち、NHKが「継承」するという「戦争や原爆」は、その被害の側面だけであり、日本の加害の側面は棚上げする、ということではないでしょうか。

 これは、NHKに限らず、「戦争や原爆」の「継承」におけるきわめて重大な誤謬・欠陥です。今回のツイート問題の根源は、実はここにあるのではないでしょうか。

 NHK(広島)は、ヘイトスピーチ・差別について、戦争・植民地支配の日本の加害責任について学習し直し、自らの過ちを認め、被害を受けた在日コリアンに謝罪し、問題のツイートを直ちに削除すべきです。


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黙過できないNHK(広島)の在日コリアン差別

2020年08月25日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    
 23日付の地方紙各紙(共同配信)で、NHK広島放送局(写真中)の企画で在日コリアンに対する重大なヘイト・差別が行われていたことを知りました。

 問題の企画は、「戦争・原爆の悲惨さや戦後の厳しい現実」を若い世代に「SNSを通じて知ってもらう」(同局HP)という「1945ひろしまタイムライン」と称する企画です。
 「1945年の広島を生きた3人の日々」を3つのツイッターアカウントでことし3月から発信。その中で、8月20日、「中学一年生の「シュン」」が、埼玉へ向かう列車でツイートした形をとり、次のように発信しました。

 < 朝鮮人だ!!
 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!
 「俺たちは戦勝国民だ!敗戦国は出て行け!」
 圧倒的な威力と迫力。
 怒鳴りながら超満員の列車の窓という窓を叩き割っていく
 そして、なんと座っていた先客を放り出し、割れた窓から仲間の全員がなだれ込んできた!
 あまりのやるせなさに、涙が止まらない。
 負けた復員兵は同じ日本人を突き飛ばし、戦勝国民の一団は乗客を窓から放り投げた
 誰も抵抗出来ない。悔しい…! >

 在日朝鮮人が暴力的だと描き、反感を掻き立てていることは一目瞭然です。

 同局に、「ヘイトをやめよ」など批判と謝罪・削除を求める声が集中しました。これに対し同局は、「手記とご本人(「シュン」のモデルとなった新井俊一郎氏―引用者)がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載した」(同局HP)と弁明。「広報担当者は取材に「偏見や差別との指摘があるが、そういう意図は全くない」と述べ、投稿を削除する考えはないと説明」(23日付共同配信記事)しました。

 24日午前、私も同局へ電話で抗議し、謝罪と削除を要求しました。が、「削除する考えがないことは変わっていない」との返事。電話は回答責任のある広報部ではなく、「意見を聞くだけ」の「ふれあいセンター」なるところへ回されました。抗議の電話・メールは広島局だけでなく、東京の本局(写真右)にも寄せられているといいます。

 問題は多岐にわたっています。

 第1に、問題のツイートにはきわめて恣意性があることです。

 同局はこの企画について、「終戦の年に広島で書かれた日記をもとに、75年前の人の暮らしや気持ちをTwitterで毎日発信」(同局HP)するものだと公言し、放送でもそうPRしてきました。

 ところが問題の8月20日のツイートは、新井氏の日記によるものではありません。同局自身、「ご本人の日記は、8月17日~27日まで空白です」(HP)と認めています。そのうえで、「8月15日~21日までのツイートは、後年ご本人が書かれた手記インタビュー取材をもとに掲載しています」(HP)とのこと。この点ですでに上記の企画趣旨を逸脱しています。

 同局はツイートの内容、表現はすべて新井氏本人によるものだとしていますが、そうだとしてもそれは「後年」のものであり、しかも「インタビュー取材」という客観的検証が困難なものも含まれています。その過程でNHKの恣意的な表現、ニュアンスが混入した可能性は否定できません。

 第2に、仮にツイートの内容・表現が新井氏の述べた通りだとしても、それをそのまま載せていいわけではありません。なぜなら、当時13歳の少年の記憶を後年思い出したものに、記憶違い、認識の誤り、不十分さがあることは避けられないからです。例えば、ツイートでは朝鮮人を「戦勝国民」と表現していますが、これは明白な誤りです(当時在日コリアンは不当にも「日本国民」とされていた)。
 注釈などで訂正することもせず、誤りをそのまま流すのはメディアとしての責任放棄にほかなりません。

 第3に、「偏見や差別の意図は全くない」という同局の釈明自体の重大性です。

 偏見や差別を「意図」的に行ったと公言するは確信的レイシストくらいでしょう。たいがいは「意図はない」と言います。報道機関であればなおさらです。
 しかし、それが問題なのです。「意図はない」といいながら実際は重大な差別発言、ヘイトスピーチを行っている。その“無意識”の差別こそが大問題なのです。

 偏見・差別かどうかはそれを行った者(報道機関)の「意図」で決まることではありません。言論・行為の結果として生じることであり、それを判断するのは偏見や差別の被害者です。

 今回の場合、このツイートの内容が、在日朝鮮・韓国人への偏見・差別を助長する結果を生んでいることは明白です。NHKは公共の電波でヘイトスピーチに加担した(行った)責任を取らねばなりません。この点についてNHK(広島放送局だけでなく東京本局を含め)は責任ある見解を明確に示さねばなりません。

 第4に、このツイートが今日の日本社会でいかに重大な犯罪的意味をもつか、その認識・自覚がNHKにはまったく欠落していることです。

 在日コリアンに対する差別はまさに今日の日本社会の重大問題です。その典型は朝鮮学校の児童・生徒・学生に対する差別です。幼児教育・高校無償化からの朝鮮学校排除、コロナ禍の支援金制度からの朝鮮大学の除外など具体例は山積しています。

 広島の朝鮮学校の生徒たちもその差別の犠牲者であり、裁判にもなっています。よもやNHK広島がそのことを知らないわけではないでしょう。在日コリアン差別の一掃が日本社会・日本人にとって喫緊の重要課題になっている、まさにその中で起こったのが今回の問題です。それが在日差別根絶にとっていかに重大な障害・逆流になるか。NHKにその認識が微塵でもあれば、問題のツイートを垂れ流すことはできなかったはずです。

 以上、あらゆる角度からみて、問題のツイートをこのまま存続させることは許されません。NHKは謝罪して即刻削除すべきです。

ブログをアップしたあと、NHK広島が24日付でHPに“謝罪文”を掲載したことがわかりました。これについてはあす(26日)ブログで書きます。


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「コロナ禍」の今こそ差別禁止法を

2020年06月04日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

          
 新型コロナウイルスは、私たちに多くのことを気付かせ、要求しています。その1つは、「差別」に対する感覚の覚醒と、その根絶へ向けた取り組みの強化です。アメリカの警察官による黒人男性殺害事件に端を発した現在の事態を、けっして座視することはできません。

 「コロナ」があぶり出したとりわけ深刻な日本社会の差別は、外国人に対するものです。

 「新型コロナウイルス感染症による混乱の中、インターネット上で芸能人(志村けんさん―引用者)の死去を中国人のせいにしたり、朝鮮学校へのマスク配布報道(3月16日のブログ参照。写真左は差別に抗議する父母たち―同)に『出て行け』というコメントが付いたりと、外国人差別が目立っている」(6月1日付中国新聞)

 4年前(2016年)の6月3日、「ヘイトスピーチ解消法」(「本邦以外出身者の対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)が施行されました。日本初の反人種差別法といえるものですが、当初から不十分性が指摘されていました。それは、同法が理念法であり、実効性が乏しいことです。その弱点がこの4年間ではっきりしてきました。

「解消法」施行後もヘイトスピーチ事件はあとをたたず、訴訟も各地で起こっています。

 たとえば、京都朝鮮第一初級学校に対する在特会らによる襲撃事件(2019年12月4日)の被告の1人である西村斉が再び同校(移転)前の公園でヘイトスピーチを行った事件。京都地裁は西村に「名誉毀損・50万円の罰金」判決を下しました(2019年11月29日)。

 また川崎市では、ツイッターで1年半以上ヘイトスピーチを行った者に対し、川崎簡裁が「神奈川県迷惑防止条例違反」で「罰金30万円の略式命令」を出しました(2019年12月27日)

 これらのヘイト事件が「名誉毀損罪」で起訴されるようになったことは一定の前進といえますが、問題点も表面化させました。

 「いずれの判決においても、財産刑の域を出ていないことからして、被害の本質を未だ十分に理解しているとは言い難い。現状のままでは、ヘイトスピーチしても『お金さえ払えば済む』という誤った認識を生じさせかねない。とくに略式命令に至っては、交通事犯と同等の違法性しかないと理解されかねない。

 ヘイトスピーチの本質は、社会的評価としての名誉の前提となる人間であることの保障・人間の尊厳に対する攻撃であり、その否定にあることに着目しなければならない。

 未だ日本の裁判では、人間の中核であるアイデンティティにターゲットを絞って攻撃するという卑劣な差別行為の重大性と、それによる被害者と同じ属性を有する人々に対する社会からの排除を促進させる危険性を看過している」(龍谷大学・金尚均氏、『日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書2020年版』(外国人人権法連絡会編集・発行、2020年3月)

 したがって、「解消法」の弱点・限界性を克服するためには、「人種差別撤廃基本法および差別禁止法など国際人権基準に合致する『差別を禁止し、終了させる』法整備が急務」(師岡康子弁護士、同上「白書」)なのです。

 国連で「あらゆる形態の人種差別撤廃条約」が採択されたのが1965年。日本は1995年12月15日にようやくこれに加入しましたが、それからすでに24年半が経過しています。

 金氏や師岡氏の指摘は、コロナ禍以前のものですが、「コロナ後」の新たな政治・社会のあり方として、その重要性・緊急性はますます大きくなっていると言えるでしょう。

 


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ヘイトスピーチ告発する記者への攻撃は許せない

2019年09月28日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

     

 25日付の沖縄タイムスに、こんな記事が載りました。
 ことし4月の神奈川県川崎市議選に出馬して落選した佐久間吾一氏(「在特会」の後継団体「日本第一党」最高顧問)が、選挙前の2月11日(「建国の日」―引用者)、公的施設で行った講演の中で、「いわゆるコリアン系の方が日本鋼管(現JFEスチール)の土地を占領」「革命の橋頭保になった」「闘いが今も続いている」などと演説。

 これを取材した神奈川新聞の石橋保記者は署名記事で、「悪意に満ちたデマによる敵視と誹謗中傷」と批判した。佐久間氏はこの記述には根拠がないとして2月25日に提訴。その第1回口頭弁論が9月24日、横浜地裁川崎支部で行われた。

 石橋記者側は佐久間氏の演説について、「在日コリアンが社会秩序を破壊する目的で違法に土地を占拠しているとの印象を与える」として、批判記事は的確な論評だと述べた。
 JFEは取材(沖縄タイムス)に対し、「不法占拠とは考えていない。話し合いで解決したい」と述べている。

 25日の神奈川新聞電子版(「カナロコ」)では裁判のもようをこう報じています。
 「石橋記者側は『佐久間氏の発言は事実に反している』と指摘。『そうした発言は在日コリアンを敵とみなし、在日コリアンを傷つける差別の扇動である』とした上で、『記事は、佐久間氏の言動が人権侵害に当たるとの意見ないし論評の域を出ていない』と反論した」(写真左は報告する石橋記者。同「カナロコ」より)。

  25日付の沖縄タイムスによれば、佐久間氏が「コリアン系が占拠」と言った地域は、「元は荒れ地だった。隣に工場を構えていた旧日本鋼管が戦前、朝鮮半島出身者の労働者らを住まわせたという話が伝わる。戦後にかけ、在日コリアンのコミュニティができた」(阿部岳編集委員、写真中)という地域です。

 佐久間氏がやり玉に挙げた地域は、朝鮮半島から日本(旧日本鋼管)へ動員された人々が住んだ(住まわされた)地域です。「占拠」どころか、日本による強制動員の歴史を示すものであり、佐久間氏の発言が事実を逆に描く暴言であることは明らかです。

  石橋氏は一貫してヘイトスピーチ・差別を許さない立場で、在日朝鮮・韓国人らの権利を擁護する記事を書いている優れた記者です。石橋氏に対する攻撃は、報道に対する不当な攻撃であるだけでなく、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムに対する批判への攻撃であり、けん制です。

 元徴用工(強制動員)問題以来、安倍政権の対韓強硬姿勢は目に余り、それと歩調を合わせるように「嫌韓報道」が相次いでいますが、佐久間氏(「日本第一党」)による石橋記者攻撃はその一環といえるでしょう。

 また川崎市は全国に先駆けて、差別禁止条例にヘイトスピーチに対する刑事罰を盛りこんだ差別禁止条例案を12月議会で審議・制定しようとしている市です。石橋記者に対する攻撃はそれとも無関係ではないでしょう。

  石橋氏は、「原告は反差別の声を上げると面倒だという萎縮効果を狙っている。個人だけでもメディアだけでもなく、差別に反対する全ての人たちに対する攻撃だ」(25日付沖縄タイムス)と述べています。
 石橋氏とともに、横浜地裁に正当な判決を要求したいと思います。


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「ヘイトスピーチ」川崎条例案の画期性と「上からのヘイト」

2019年06月22日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

     

 大手全国紙はほとんど無視しましたが、19日、「ヘイトスピーチ」とのたたかいにおいて画期的なニュースがありました。
 「川崎市が本年度中の制定を目指す差別禁止条例案にヘイトスピーチ(憎悪表現)に対する刑事罰を盛り込む意向を、福田紀彦市長が19日、明らかにした」(20日付東京新聞)
 今後、パブリックコメントを経て、12月に市議会に提案されます。
 折しも、「ヘイトスピーチ解消法」が施行(2016年6月3日)されて丸3年です。

 「解消法」は「不当な差別的言動は許されないことを宣言する」とした重要な法律ですが、刑事罰を伴わない理念法であるため、取り締まりの実効性を伴わない欠陥があります。
 それに対し川崎市の条例案はヘイトスピーチに刑事罰を科すもので、国の法律の欠陥を条例が補う地方自治の快挙といえます。

 川崎市で一貫してヘイトスピーチとたたかっている「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」の崔江以子さんは同日市役所で記者会見し、「罰則は被害から守られるために必要。条例案は日本中で被害に遭っている人の希望になる」(20日付東京新聞)と評価しました(写真中=朝鮮新報より。写真左は月刊「イオ」より)。

 弁護士の神原元氏は、条例に罰則規定が入ることによって警察の捜査が可能になり、「何がヘイトなのか、最終的な結論を司法判断で決着をつけることができるようになる」として、「歴史的に極めて重要な一歩」(20日付朝鮮新報)と評価しています。

 また、師岡康子弁護士も「画期的」としたうえで、こう指摘しています。
 「啓発活動だけではヘイトを止められない。国際的にも許されない犯罪と規定するべきだが、ヘイトスピーチ解消法は理念法で罰則規定がない。条例で後押しする形で、国が解消法を改正するなど法整備するべきだ」(20日付東京新聞)

 さらに、この問題に詳しい金尚均・龍谷大教授(刑法)は、「(川崎市の)条例は…私人によるヘイトスピーチ『下からのヘイトスピーチ』に対処することを目的としている。…他の自治体及び国のヘイトスピーチ解消法の改正に連動することを期待する」としながら、こう述べています。
 「他方、朝鮮学校の高校生が授業料の無償・補助制度から除外されていることは、拉致問題などの個人に関係のない理由をもって、すべての朝鮮学校の学生を助成対象から排除する『上からのヘイトスピーチ』であることを認識しなければならない」(20日付朝鮮新報)

 「上からのヘイトスピーチ」――。それは朝鮮学校に対する差別だけではありません。
 自民党・杉田水脈衆院議員の「LGBTカップルは生産性がない」発言(「新潮45」2018年8月号)、沖縄・高江での大阪府警による「土人」発言と松井大阪府知事(当時)の擁護発言(2016年10月)、谷本正憲・石川県知事の「北朝鮮を餓死させねばならない」発言(2017年6月)など、政治家・公人による差別発言を「上からのヘイトスピーチ」と捉える必要があります。朝鮮学校に対する差別はその頂点といえるでしょう。

 前田朗・東京造形大教授は、「ヘイトの根っこには植民地主義とレイシズムがある」としてこう指摘します。
 「日本では国が率先してヘイトを行ってきた。そういう意味でまさにヘイトとは権力現象なのです」(月刊「イオ」2019年7月号)

 川崎市の画期的な条例案に続き、「上からのヘイトスピーチ」=国家権力によるヘイトを許さないたたかいを強めていく必要があります。


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