アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「ヘイトスピーチ」川崎条例案の画期性と「上からのヘイト」

2019年06月22日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

     

 大手全国紙はほとんど無視しましたが、19日、「ヘイトスピーチ」とのたたかいにおいて画期的なニュースがありました。
 「川崎市が本年度中の制定を目指す差別禁止条例案にヘイトスピーチ(憎悪表現)に対する刑事罰を盛り込む意向を、福田紀彦市長が19日、明らかにした」(20日付東京新聞)
 今後、パブリックコメントを経て、12月に市議会に提案されます。
 折しも、「ヘイトスピーチ解消法」が施行(2016年6月3日)されて丸3年です。

 「解消法」は「不当な差別的言動は許されないことを宣言する」とした重要な法律ですが、刑事罰を伴わない理念法であるため、取り締まりの実効性を伴わない欠陥があります。
 それに対し川崎市の条例案はヘイトスピーチに刑事罰を科すもので、国の法律の欠陥を条例が補う地方自治の快挙といえます。

 川崎市で一貫してヘイトスピーチとたたかっている「ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク」の崔江以子さんは同日市役所で記者会見し、「罰則は被害から守られるために必要。条例案は日本中で被害に遭っている人の希望になる」(20日付東京新聞)と評価しました(写真中=朝鮮新報より。写真左は月刊「イオ」より)。

 弁護士の神原元氏は、条例に罰則規定が入ることによって警察の捜査が可能になり、「何がヘイトなのか、最終的な結論を司法判断で決着をつけることができるようになる」として、「歴史的に極めて重要な一歩」(20日付朝鮮新報)と評価しています。

 また、師岡康子弁護士も「画期的」としたうえで、こう指摘しています。
 「啓発活動だけではヘイトを止められない。国際的にも許されない犯罪と規定するべきだが、ヘイトスピーチ解消法は理念法で罰則規定がない。条例で後押しする形で、国が解消法を改正するなど法整備するべきだ」(20日付東京新聞)

 さらに、この問題に詳しい金尚均・龍谷大教授(刑法)は、「(川崎市の)条例は…私人によるヘイトスピーチ『下からのヘイトスピーチ』に対処することを目的としている。…他の自治体及び国のヘイトスピーチ解消法の改正に連動することを期待する」としながら、こう述べています。
 「他方、朝鮮学校の高校生が授業料の無償・補助制度から除外されていることは、拉致問題などの個人に関係のない理由をもって、すべての朝鮮学校の学生を助成対象から排除する『上からのヘイトスピーチ』であることを認識しなければならない」(20日付朝鮮新報)

 「上からのヘイトスピーチ」――。それは朝鮮学校に対する差別だけではありません。
 自民党・杉田水脈衆院議員の「LGBTカップルは生産性がない」発言(「新潮45」2018年8月号)、沖縄・高江での大阪府警による「土人」発言と松井大阪府知事(当時)の擁護発言(2016年10月)、谷本正憲・石川県知事の「北朝鮮を餓死させねばならない」発言(2017年6月)など、政治家・公人による差別発言を「上からのヘイトスピーチ」と捉える必要があります。朝鮮学校に対する差別はその頂点といえるでしょう。

 前田朗・東京造形大教授は、「ヘイトの根っこには植民地主義とレイシズムがある」としてこう指摘します。
 「日本では国が率先してヘイトを行ってきた。そういう意味でまさにヘイトとは権力現象なのです」(月刊「イオ」2019年7月号)

 川崎市の画期的な条例案に続き、「上からのヘイトスピーチ」=国家権力によるヘイトを許さないたたかいを強めていく必要があります。


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