地場・旬・自給

ホームページ https://sasamura.sakura.ne.jp/

与那国島には花酒がある

2023-12-18 04:15:25 | 地域


 与那国島には「花酒」と呼ばれる華やかな泡盛がある。何かの花を原料に入れたわけではない。与那国島以外では泡盛を名乗ることが許されていない60度の泡盛なのだ。アルコール度数が60度あるので泡盛とは言えず、スピリッツと呼ばれるらしい。伝統的なものである。作り方は泡盛なのだから、泡盛と表記できることに最近な成った物だ。

 泡盛の度数を政府が決めるというのもまたあこぎなものだ。もちろん酒税法が関係している。泡盛の特別税率は沖縄返還に際して、沖縄の地元企業を保護するために、行われた。しかし、いよいよその軽減措置も段階的になくなることが決まっている。花酒はそもそも軽減措置を受けていないお酒と言うことになる。

 花酒がかなり美味しいのだ。毎日泡盛以外飲まない泡盛好きが書くのだから、まあそれなりの根拠はあると思う。毎日泡盛を飲んでいると、泡盛の違いが分かるようになる。古酒のおいしさが分かるようになる。分かったから偉いというものではないが、自分の好みのお酒を飲みたくなる。

 花酒の値段は一升瓶で7800円である。これを2倍に水で薄めればおよそ普通の泡盛になる。普通の泡盛は1升2千円くらいからある。泡盛を造るときに最初に揮発され出てくるものがアルコール度数が高いらしい。この最初の泡盛が60度の花酒になる。

 昔はアルコール測定器がないから、アルコールの度数を見極める方法に、高いところから泡盛を器に流し込み、泡の出方で度数を決めたらしい。度数の高い泡盛は、あぶくが花のように開いた、一番度数が高い花酒になった。と、言われている。これは美しい泡盛の話だと思う。やはり度数の高いお酒ほど美味しかったのだ。

 特に花酒を古酒にすれば、100年経ってもアルコールが飛んで行くとしても、まだかなりの度数がのこり、美味しかったはずだ。本物の100年古酒は花酒でしか造れないと言えるのかもしれない。琉球王朝時代はそういうお酒で、中国からの使節を接待したのだ。琉球の文化の力を表現した花酒。

 与那国の地元の方に花酒の美味しい飲み方を伺ったところ、冷凍室で凍らすほど冷たく冷やすのだそうだ。十分冷えている花酒を、わずかおちょこについで、飲むと一番美味しいと言われた。60度もあるお酒なので冷凍室でも、まったく凍らないというのだ。

 与那国島は台湾まで111キロ、石垣島まで117キロあり、周囲には早い潮流があり、小さな舟では行き来できない島。与那国島だけに残った花酒の歴史。周りの島との交流が難しい中から花酒は生まれて、生きのこった。与那国島の独特の歴史を花酒は表わしている。

 離島であるがゆえに医薬品がすぐには手に入らず、高アルコールの花酒は医薬品の代用としても使われてきたらしい。高いアルコール濃度のお酒を作る文化は台湾にもあるらしい。台湾ではアルコール度数の高い 58度高粱酒を飲む習慣が昔からあった。花酒は台湾の影響を感じるお酒である。

 中国にも高いアルコールのスピリッツがあり、これでやたら乾杯をさせられる。これをどんどん受けると、なかなかすごい奴だと信頼されるのだ。田中角栄はこの強いお酒で、周恩来と何倍でも乾杯をしたそうだ。何倍飲んでも角栄はまったく酔わなかったという。それ程緊張していたと後に語っている。

 与那国島には現在3つの泡盛酒造所がある。そう書かれているが私は探したが2つしか分からなかった。崎元酒造所は、与那国島で一番歴史のある酒造所。1927年(昭和2年)に農業を本職とした17人の出資者が共同設立したとある。酒造所の存続と与那国島独特の花酒文化を守るために1971年に崎元酒造所に改名し現在に至る。

 現在崎本家一族で花酒を作っている。泡盛600年の歴史を伝承する昔ながらの古式地釜蒸留機を使用し、少人数で伝統的な手造り製法で泡盛、与那国島のみで造られる高濃度泡盛、花酒(はなざけ)を製造している。息子さん兄弟が跡を継いでいるので、未来に繋がっている。

 滅多に花酒を飲むことはない。特別なときの楽しみで花酒は飲む。普段は玉那覇酒造の玉の露43度の古酒である。引っ越してきて以来、甕で熟成させているのだ。これをほぼ飲んでいる。これもなかなか美味しいと思って満足している。

 ただ、泡盛は随分もらったし、何かの機会に買っている。買って小田原に行き、小田原からまた石垣に戻ってきたものもふくめてかなりある。それもすこしづつ飲んでいる。だから、自分の仕込んだ甕の泡盛が古酒になったのものを、ぐいぐい飲むのはまだこれからの話だ。

 先ずは様々な泡盛の瓶入り古酒を飲みきるのが先だ。ヤフーオークションで古酒を見るとつい買ってしまう。色々美味しいものだ。あまり買っているといつまで経っても、古酒の甕に行き着かない。まあ古酒が熟成されているから、それはそれでいいが、酒が飲めなくなる前に飲まなければ何にもならない。

 それでいいとは思うが、やはり特別の日には花酒だけは飲みたい。先日の石垣島祭りでは花酒を出す屋台があり、ありがたく飲ましてもらった。それは炭酸割だった。炭酸でわってもさすが花酒で美味しいのだ。あまりのおいしさにびっくりしてしまった。満天の星の下で飲んだせいかもしれない。

 泡盛飲み方には色々あるが、確かにハイボールのようにして飲むと、飲みやすい。水で半々ぐらいに割って、一晩あるいは数日寝かして飲むのを「前割り」というとか、通が書いている。これはどういう飲み方か不思議な気がする。アルコールがいくらか抜けてしまいそうで心配になる。

 この前割をさらに燗を付けて飲むという人もいるそうだ。何か変な飲み方だ。どうせ泡盛は60度もある強いお酒を水割りして34度あるいは25度を作っているのだ。これをさらに水で割ったからと言って、何が前割だ。何ともおかしい。しかし、酒というのはそういう運託を並べて飲むところが良いのだろう。

 炭酸割りでも十分のアルコール度があるから、飲み応えがすごいものだった。はなざけを飲んでいたら、路上寝に成りかねない。花酒を墓場に亡くなられたご先祖様と一緒に埋葬する。8年たつと洗骨を行う。そのときに花酒を使い洗うという。

 そして、ご先祖様の前で、酒盛りをする。それは味わい深いご先祖様の味がしただろう。洗骨の意味を感じる。伝えてゆく心がこもっている。そのためには花酒でなければだめだろう。強い酒を飲んで、はらわたに染みるて来る何かがあるに違いない。


 
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
«  第190 水彩画 日曜展示 | トップ | 久留米旅行と小田原行き »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

地域」カテゴリの最新記事