そもそも今回熱海へ来ようと思ったのは、まだ起雲閣へ一度も訪れたことがなかったから。起雲閣へ念願の泰山タイルをようやく見にくることができた。
起雲閣は大正8年、実業家根津嘉一郎、農商相・内田信也の別邸 別荘として建てられた。昭和22年からは旅館として営業していたが、平成12年からは熱海市所有の観光施設として公開されている。
大正8年に建てられた薬医門とよばれる造りの表門。
こちらの2階建ての和館は大正8年に、内田信也の別荘として建てられたもの。
目の覚めるような群青色の壁は旅館になってから塗り替えられたもので、「加賀の青漆喰」と言われる。
座敷を囲む座敷と同じ高さの畳廊下は、車いすで生活していた実母への配慮と考えらている。
庭園は、昭和になってから、実業家、根津嘉一郎により整えられたという。
庭園を取り囲むように建物が建つ。
舟底天井の渡り廊下を通って洋館へ。
突如目の前に開けた光が降り注ぐサンルーム。
ここが!泰山タイルが敷き詰められたお部屋だー
うおおぉーーー
なんとタイルが艶やかで美しいのか。
サンルームびっしりと、絨毯のように敷き詰められたタイル。
タイルの一粒一粒が生き生きと輝く生きているタイルだ。
得も言われぬ美しい均窯と抹茶のように渋い織部、発色のきれいなトルコ釉?この三つの取り合わせにベージュ系のタイルが織物のように美しく調和する。
サンルームに差し込む光に照らし出されたタイルはより一層美しく
輝きを増す。
最高ーのタイル部屋。
ステンドグラスの天井と共に屋根もガラスで葺かれ、それらは鉄骨が支えているそう。
天井と高窓には細やかなステンドグラスの模様が入り、
その間には唐草模様が刻まれた石膏の装飾がある。
下を見ても上を見ても、贅沢極まりない空間が広がっていた。
思わずこのタイル部屋で、大の字になって寝ころびたい衝動に駆られたが
我慢・・
サンルームは二代目の所有者、根津嘉一郎により昭和7年に建てられた洋館のこちらの「玉姫」と呼ばれる部屋につく。
折上げ格天井が豪華で、暖炉周りは、丸太が組まれたような和の雰囲気もある。
暖炉は大理石とタイルの組み合わせで、内側に貼られた深みのある発色の美しい均窯釉のタイルがすばらしい。
お隣の部屋「玉渓」は英国のチューダー様式に、名栗仕上げが施され、
ヨーロッパの山荘風に仕上げられているが、
暖炉上の仏像のレリーフなど、独特な取り合わせがみられる。
石で組まれた暖炉、床は茶系の渋いタイル。
金属の覆いにはサンスクリット語が書かれている。
ボウウィンドウが優雅な窓辺。
天井には名栗仕上げが施された太い梁が通る。
家具もこの部屋の雰囲気にぴったり。
ステンドグラスも。
暖炉横の太い丸柱は古い寺か寺社の柱か帆船の帆柱であったものともいわれている。
出入口の天井は煤竹を並べたものになっていて、和の要素も。
こちらは昭和4年に根津嘉一郎により建てられた洋館、「金剛」
重厚な石造りの暖炉、暖炉両脇には中華風の模様が入ったステンドグラスが
入れられている。
金剛に付く小部屋。
舟底天井にはステンドグラスのような細工が入っている。
そしてその床がこれまたタイルなのだ。
ベージュから茶系の色味のタイルはあまりにも渋過ぎて、超好み。
腰壁には櫛目が網目状に入ったタイル。
まるで絨毯の質感を表現するかのように、縁はドットで模様が描かれている。
当初はこの小部屋だけでなく、隣の「金剛」もタイル敷きだったとか。
小部屋にはこんなステンドグラスもあった。
そしてローマ風浴室へやってきた。
平成1年改築で、多くの部分が新しくなったそうだが、
こちらのステンドグラスの窓などはオリジナル。
浴槽は腰が掛けれるようになっていた。
床のタイルは茶色と白のツートーン。
こちらのテラコッタの吐水口もオリジナル。
何を表しているのか?ちょっとわかりにくい・・
こちらもテラコッタのハスの花の吐水口。
ステンドグラスのアーチ窓が並ぶ
窓の下にはアールデコ調の換気グリルが入っていた。
旅館時代の客室もいくつか残されていて、
こちらは大正8年に建てられた内田信也の別荘の一部。
旅館時代は、日本を代表する文豪たちにしばしば利用されていたという。
現在喫茶室となってるお部屋。
アール・デコ調の照明カバー。
アールヌーヴォーの鏡やチューリップのような照明が下がる。
1周ぐるりと回って見学が終了した。
念願の起雲閣は思っていた以上にすばらしく、
各部屋共個性的で興味深く、泰山タイルの敷き詰められたサンルームは
本当に美しくて感激した。