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ヴォーリズ建築の岡家住宅見学

2023-04-02 | 建築巡り・街歩き【その他】
滋賀県の日野にあるヴォーリズ建築の岡家住宅の見学会へ。
実は先週、交通事故に遭い、まだ万全ではないので、あまりの遠出は避けたかったが、だいぶ前から予約していたしと迷っていたら、哀れに思ったのか?珍しく旦那が車を出してくれることになったので、行くことにした。


岡家住宅は、昭和14年にヴォーリズ設計により建てられた木造2階建ての和風住宅。
現当主の岡さんご夫妻に迎えていただいた。
お庭の桜が見ごろと伺っていたので、きっと見学者も多いのだろうかと思いきや、この日は自分一人だけで、(翌日は埋まっていたそうだが)有難くもマンツーマンで案内して頂くことに。
ご夫妻は、こちらのお家に20年暮らされ、その後20年は別の地に移り住まわれたが、現在はご自宅と行ったり来たりの2拠点生活で、定期的一般公開されているという。


正面から見て、手前、奥の屋根共、切妻造りで、和風を強調するべく、妻面には柱が表面に現れる真壁造りになっているのが特徴だという。


2階には虫籠窓がつくなど、こちらもまた和風色が出ている。


瓦は今はもう生産されていない塩焼き瓦。
この米を二つ重ねたようなマークは謎だそう。



ストックの瓦を間近で見せて頂いた。
旧杉江製陶所の塩焼きのクリンカータイルを思わせる色。
塩だけで、このような自然釉が一様にかかるのがやはり不思議。


そしていよいよ玄関へ。


玄関の両脇の腰壁には、泰山タイルがびっしり。これが見たかった。
3寸5分という少し大き目な布目タイルが存在感を放つ。
落ち着いた渋めの色合いのタイルに
ほんのりと赤いベンガラ入りの目地で、少し華やかさが加わる。




造り付けの下駄箱もちゃんともうけられている。


床面にはヘリンボーン状に貼られたマットなベージュ色のタイル。こちらも泰山タイルだそう。あまりノーマルな泰山タイルを見たことがなかったので、こんなタイルも作っていたのだなあと。


玄関は、採光の為、ガラスが入った格子の引き戸で、欄間にもガラスが入り、
玄関灯は、一つの明かりで内側と外側共通になっているという工夫が。


玄関からサンルームへ。
サンルームの窓は、上げ下げ窓でも引き戸でもなく、観音開きの扉で、上部につけられた窓も90度に回転し、最大限の通風が考えられているという。


造り付けの飾り棚は、壁の裏が玄関の為、玄関の下駄箱と共有していて、下部の引き戸を開けると、下駄箱部分が収まっていて、それがうまく棚に利用されていた。



飾り棚の下部には、洋風の柱装飾が、


上部の棚には和風の柱飾りが入れられていて、一つの棚に和洋の様式を組み入れるという実験的なデザインだったのでは?と、
ヴォーリズ研究者の山形先生がおっしゃられてたとのことだった。


サンルームは、元々テラスのあった方に建て増しされていて、薪ストーブのダクトも取り付けられている。
当初の設計では、お部屋はもう少し広くとられ、暖炉も考えられていたそうだが、
戦時下ということもあり、贅沢だと建築許可が下りなかったのだとか、、
もし許可が下りていたら、、ひょっとすると泰山タイルの暖炉が見られたのかも?!


サンルームのもう一方の出入り口からは、廊下が通り、和室が並ぶ。
廊下の天井は、軒先まで化粧垂木が通しで入り、その軒の角度が絶妙だそう。冬は、部屋の奥まで日差しが差し込み、夏は、部屋まで日が差し込まないよう計算されてるという。


座敷の床の間は、通常のバランスからすると、床柱は、もう少し右手の方に付くらしいが、襖を開けると、中に仕込まれている仏壇を壁面の中央に配置する為に考えられたバランスなのだとか。



次の間との間には、渋沢栄一が書かれた書が掛けられている。
関わりの深かった御先祖さまがおられたようだ。
岡家の初代は栃木県の佐野市で醤油醸造業を営んでおられたとのこと。


欄間の透かし彫り。


座敷と次の間に使われていた襖の引き手も、様々なデザインで趣向が凝らされている。


こちらは、小さな瓢箪の透かし模様が二つずつ連なる。




戸棚の引き戸に付けられていた引き手は、七宝焼きが入っていた。


主玄関の北に、勝手口があり、そのそばには女中部屋があったが、
こちらの部屋にも観音開きの大きな窓と、上部の換気窓がついていて通風も完璧。
小さな部屋ではあるが、造り付けの棚や、
廊下に出た所にも押入れがついていたり、十分な収納が考えられている。


こじんまりしていい部屋だなと思った。


台所は、調理台、流しなどがあった部分は取り払われ、増築されているが、
こちらの造り付けのキッチンカウンターは、建築当初からのもの。


隣の、お茶の間への配膳口も広く取られ、
上部の棚も、食器棚として、お茶の間からも取り出せるように扉が付くなど、使いやすい設計が考えられている。


棚にビルトインされていたのは、米びつ。
底にコマが付けられていて、容易に引き出すことができる。


この八芒星の物体は何?鍋敷きにしてはデカいな、、と思っていたら、
こちらは風呂場の天井の換気口の飾りに使われてたものだそう。
ヴォーリズ研究者の山形先生いわくヴォーリズの建物には、どこかに八芒星のマークが取り入れられてるという。
風呂場を改装した時に、偶然大工さんが取っておいてくださったとのこと。


そして、台所の隣の、家族団欒の間であるお茶の間。
建築当初は4畳半だった茶の間が、北側に増築されている。


お茶の間側から見た台所から通じる配膳窓。


お茶の間には、階段下のスペースを活用した造り付けの地袋、飾り棚があり、このスペースにより部屋の広がりが感じられる。



階段を挟んで、隣には暗室があり、
先代の趣味の写真用の部屋として使われていたという。


手前には、陶製の流しが取り付けられ、
窓に面して、机や棚も造り付けに。


階段下スペースを有効活用した階段箪笥を連想させるような引き出しが並ぶ。



階段状に並んだ小引き出しは、
その引き出しのサイズに合わせて、クリスタルのつまみの大きさを変えるというこだわり。


ドアノブもやはりヴォーリズらしいクリスタル。


2階へ上がる階段は、実際上がってみても体感するが、バリアフリーの基準値よりも勾配が緩やかで、優しい設計に。


2階の書斎には、窓周りにベンチ兼収納も。


そして、本棚。


隣の部屋との境には、竹をモチーフにした透かし彫り。


ベッドルームもとても明るい。
三方向に窓があり、通気もよい。
全ての部屋に共通するのは、最低二方向の出入口が設けられ、効率の良い動線や、換気が考えられている。



ベッドの間のサイドボード


こちらもやはり造り付けの箪笥。
クローゼット横のデッドスペースにぴったり収まっているのが気持ちいい。


クローゼットを開けると、中にも細かな細工が見られる。
こちらは見た目の美しさと共に、ポールを面で支える補強材としての役割も持つという合理性がすばらしい。



出入口ドアのストッパー。
細かな部分までデザインがされていて素敵。
先端のゴムも劣化してないそう。
又、2階では、寝室だけが板貼りになっていて、階下に音が響かないよう、床下に工夫がされていたり、



六甲山荘などでも見られたように、窓のサッシや敷居は、雨による侵入を防ぐために、水が外へ流れていくように勾配が付けられるなど考えられ、当時の大工泣かせだったそう。


お庭には、枝垂れ桜が満開。
現当主の娘さんが生まれた時に、植えられたものだそうだが二十数年の時を経て立派な枝垂れ桜に成長し、
訪れる人の目を楽しませているという。
この時期、夜のライトアップもされていたそうだ。



桜の木越しの岡家住宅。
いつか行きたいと思っていた岡家へ、この時期に訪れることができてよかった。
ヴォーリズの現役の和風住宅は、なかなか拝見することはできない貴重なものだが、きれいに維持され、公開されているのはとてもありがたい。
現当主の、貴重な建物を次世代に継承していこうとされる姿勢にも感銘を受け、詳しいご案内で、ヴォーリズの合理性や美意識を建物から十分感じることができた見学会だった。





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