昨夜、主人の部屋に夕食後にコーヒーを持っていったら、
例によって、テレビが、がんがんについていた。
だがひとついつも違ったことは、やかましいバラエティではなく、
画面には、緑深い山岳地帯が映っていたことだった。
そして、満々と水をたたえ音もなく流れる大河。
私「何これ?『中国漢詩紀行』?」
夫「いや、『サウンド・オブ・ミュージック』(^_^;」
主人は何を思ったか、この不朽の名作映画を観ていたのだった。
美しい風景というのは洋の東西を問わず共通した要素があるのか。
私の目には、「ただ見る長江の天際に流るるを」の世界も、
「エーーーデル、ヴァイス」の世界も同じように見えた。
それともうちのテレビの映り悪くてボケているだけか?
さて物語が始まり、画面では、修道女見習いのマリアが院長から、
トラップ家の7人の子供達の家庭教師になるようにと言われ、
ギターを持ったメアリー・ポピンズみたいなナリで出発していた。
娘「なんでギター持ってるの?」
私「まあ、ええやん。慎ましい彼女の、数少ない所持品のひとつだよ。
何もないけど、いつも音楽と一緒だった、ってな感じ」
娘「けど凄いよ~、危ないよ~、傘もギターもぶんぶん回してるよ」
私「みーちゃんは絶対に真似しては、いけませんよ」
娘「遠心力で飛んでいきそうだよ~~。まわりドン引きだよ~~」
マリアが到着してみると、トラップ家はエキセントリックな一家だった。
退役軍人でもと海軍大佐だという厳格な父親は、合図のホイッスルで
子供達を呼び出し、整列させ、軍隊さながらの教育を施していた。
娘「へ~、器用なヒトだね。口笛が凄いね~」
夫「ちゃうって。笛、ちゃんと持っとんじゃて」
娘「な~んだ!きゃははは!!」
私「ったく、江戸屋猫八かよ」
娘「おかーさんのおらん家なんだね?」
私「気の毒だが、亡くなったらしいよ」
娘「7人も生んで疲れたから?」
夫「なるほど~。それはあったかもしれんな」
いたずら好きな子供達は、初めての晩餐のとき、
マリアの椅子のうえに、松かさをこっそり置いておく。
知らずに腰掛けて、悲鳴をあげて飛び上がるマリア。
それは修道院の行儀ですかと大佐はマリアに呆れるが、
彼女はすぐ気を取り直し、臆せず「歓迎ありがとう」と子供達に言う。
と、それを聞いて子供たちが、次々に泣き始める。
娘「なんで泣くの?」
夫「子供らのイタズラを、大佐に口づけせんかったからやろ」
娘「・・・・・・・・???」
夫「おまえ分かれよ、それくらい状況みて」
娘「・・・・・・・・????」
私「(口づけじゃなくて告げ口だろーが(--#))」
さて大佐は翌日からウィーンへ。
何日かして、婚約者の男爵未亡人を連れて大佐が帰宅してみると、
留守間に子供達はすっかりマリアになついて大騒ぎ。
マリアは子供達に歌を教え、ピクニックに連れ出し、
存分に戸外の空気を吸わせて生き生きと遊ばせていたのだった。
規律が守られていないと大佐は激怒し、マリアに解雇を言い渡すが、
その刹那、子供達がマリアから習った歌を歌う美しい声が聞こえてきて、
大佐もまた、忘れていた音楽を思い出し、頑なだった心が溶け始める。
子供達と声を合わせて歌い、実に久しぶりに心触れ合うときを取り戻し、
自分の教育の考え方は間違っていたと、マリアに謝罪する大佐。
私「こういうとこは、ころっと、あり得んほど素直な男やねんな。
コケンに関わるとか、意地を張らんとこは、立派や」
夫「まあ大佐の教育理念は、実にその場限りの適当なもんじゃと」
次第にマリアと大佐は惹かれ合い、大佐は男爵未亡人との婚約を解消。
そして大佐は、ある夜、庭園にひとり佇むマリアに求愛し、
『私が貴女を愛し始めたのは、貴女が、
あの松かさの上に座って悲鳴をあげたときからだ』
という意味のことを告白する。
私「ほんまか?松かさのとき、『それは修道院の流儀か』とか、
いぢわる言いよったやないか」
夫「だいたい最初から子供らのイタズラじゃとわかっとったんかい。
あんとき、気づかんフリしてイヤミ言うたっつーことじゃろ」
私「そうそう。男爵夫人を招待したのも、松かさ事件より後やしな」
夫「ほうよ!結婚しよ言うて、男爵夫人クドきよったのにな」
私「マリア、こんな男、信用したら、あかんで。
一曲歌っただけで、えらい簡単に物わかりようなったけど、
もともとヒトのこと、笛吹いて呼びつけよったような男やろ。
あれも間違いなくこの男の一面や。
この先、いつまたホイッスル持ち出すか、わからへん」
ウェディング・ドレスをまとい『マリア(Maria) 』の歌に包まれ、
今度こそ本当に修道院を出るマリア。盛大な結婚式。
名門フォン・トラップ男爵家の威光を伺わせる大勢の参列者、
バージンロードの彼方には、海軍の正装をして花嫁を待つ大佐。
娘「マリアの身の上は、明かされた?」
夫「いいや。身よりはなさそうな感じじゃけど、わからんまま」
娘「結婚式なのにパパママが来ないから、マリアはひとりなんだね」
私「『家庭教師ですってよ!どうやって取り入ったのかしら!』」
夫「『どこのウマの骨ともわからない娘!財産目当てよ、きっと!』」
年齢の差、境遇の隔たりを越え、愛によって結ばれた二人。
しかし、幸福な新婚旅行から戻った途端、いよいよ、
ナチス・ドイツによるオーストリア併合を目の当たりにし、
愛国者である大佐は、時代の流れに失望を感じる。
そしてついに、軍人としての高い地位や財産のすべてを捨てて、
自由の地スイスに家族で亡命することを決意する。
私「着の身着のまま。マリア、たった一瞬の玉の輿だったねえ」
夫「『亡命!?うそ、なにそれ!いやよ、約束が違うわ!!』」
ころもんだったら反対しまくるよねー。
ころもんにとっては、思想的なワガママよりとにかく富よね富。
こんな物凄いお屋敷と庭園と資産と、男爵の身分があったのにねーー。
ザルツブルク音楽祭に出演したトラップ一家の合唱は、
観客の感動を誘い、熱狂的な拍手の中、表彰式の騒ぎに乗じて、
一家は亡命のために会場から姿を消す。
マリアが以前いた修道院に逃げ込み、かくまって貰う一家、
追って来るナチスの親衛隊。
院内の墓地の柱の陰に一家は身を隠し、声を殺して体を寄せ合う。
近づく親衛隊の靴音、息詰まる恐怖の瞬間!
マリアに抱かれた、一番幼いグレートルが無邪気に囁く。
「怖い。お歌をうたってもいい?」
私「いっ、今は、ダメっっ!!」
夫「ももももうちょっとオリコウになりましょうね(^_^;」
命からがら追跡の手を逃れた一家は、国境に向かい、
山岳地帯を越え、ついに目前に広がるスイスを目指す。
夫「これ、実はドイツに向かってる」
私「えええええ~」
夫「撮影とか風景の関係で、そういう方向で歩くことになったらしい」
私「つかまりに行くわけだ、これから」
娘「え。これで終わり?」
夫&私「そう」
以上、娘が、この名作に対して何か大きな誤解をしなかったかが、
見終わって最も心配になったことだった。
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