ついに、本年最大のイベントであったポゴレリチ来日公演が終わった。
今回の最大の収穫はシューマン。
遺作変奏曲でこのうえない敬愛を込めて過ぎ去った時間を懐古し、
本編の交響的練習曲で人生の様々な光景を描く、
……という構成のように感じられた。
練習曲はどれも短調なので、本編で語られるものは各々、
趣は違っても切なく、哀しく、
しかしひとつひとつに美しい起伏と相応しい結着があった。
それが終曲(変ニ長調)になった途端、
なんと俄に次々と光が射してきて、
力が漲り、聴いているこちらはまるで、
Hold your head high! (顔を上げろ)
Stick your chest out! (胸をはれ)
と励まされている気持ちにさえなった。
目を見張るばかりの、輝かしい音楽だった。
ああ、そうだったのか、
この曲は人生の様々な出来事を弾き手とともに改めて味わい、
幸せばかりではなかったことも敢えて受け入れ肯定したのちに
祝祭をもって送り出されるというものだったのか。
だからフィナーレだけが燦々とした長調なのか!
あのポゴレリチに、これほど力強く肯定的に、背中を押される日が来ようとは!
幾度、拍手でステージに呼び出されても、アンコールは無し。
大阪と名古屋では終演後、楽屋出を見送ろうと集まったファンに対して、
快くサインに応じてくれたが、演奏後の御本人は、穏やかで気怠げで、
やはり、あの、何年越しかといういつもの服装だった(^_^;。
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