寝坊してホテルをゆっくりチェックアウトし
東京駅の、魚の粕漬けのお店『銀鯱』で昼食を取り、
それから八重洲ブックセンター本店に行った。
入り口で三人は別行動になり、各自見たい売り場へ散った(笑)。
主人や娘がどこに行ったか知らないまま
私はまず語学の棚を覗いてから東洋思想のコーナーに行ってみた。
こういう広い本屋には、えてしてとてもマニアックな本があるので
漢詩絡みで何かないかと期待していたのだ。
果たしてきょうは門玲子・著『江馬細香』というのを見つけた。
江馬細香というのは、化政期に優れた漢詩を残した女性なのだが
私にとってとりわけ彼女が魅力的なのは、
頼山陽の生涯の恋人であったという点だ。
山陽の人生には何人もの重要な女性が登場するが、
細香はその中でも、山陽の二度目の妻りえと「双璧」のように、
彼の精神生活に様々な影響を及ぼした存在だ。
あの時代に、自らの意志で独身を貫き、熱い恋愛感情を抱きつつも、
山陽との濃密な師弟関係を全うした細香は、異色の女性であったと思うし、
その細香を、女性や恋人としてのみ捉えるのではなく、
性別を超えて、彼女の詩才にまで惚れ込んでいた山陽もまた、
現代でも稀なほど「自由」な感性を持った男性であったのだと思う。
こんな評伝が出ていたとはきょうまで知らず、
これぞ出会いの本、と嬉しく思ったが、お値段なんと4200円……。
うぅむ、宝塚大劇場のB席を買ってお釣りが来るではないか。
しばし迷ったが、窓際の書見コーナーに持って行って、
少し落ち着いて目を通してみたあと、やはり買うことにした。
最初に店頭で手にとって中身を見る、という出会い方をしなければ、
なかなかこのような価格の本を買おうという決心はできないものだし、
心惹かれた本をその場で買わずに、『またそのうち』と先送りして
気づいたら絶版になっていた経験は、これまでたくさんあったからだ。
かくして、私の今回の東京みやげ(自分用)は『江馬細香』となった。
家族で二時頃集合し軽食をとって、午後三時半の新幹線に乗った。
午後七時半に広島着。
予報を見て覚悟したほどの雪にもならず
穏やかで良い二泊三日だった。
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