転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨日は、十数年ぶりにOSKを観た。
昔、あやめ池遊園地の円形大劇場でOSKを観たことがあって、
「遊園地と歌劇を合体させるというのは関西の発想なのかな~」
と、宝塚との類似性に感心したことがあった。

私は関西生まれだが兵庫県人なので、宝塚歌劇は身近だったが、
OSKのほうは、近鉄沿線でちょっと系統が違った。
休日に「宝塚行こかー」「阪神パークで遊ぼかー」はアリだったが
「あやめ池まで出かけよかー」とは、うちの家族は言わなかった
(余談だが、私は兵庫県人としての地元意識があるので、
宝塚を「大阪」と呼ぶ人たちの杜撰さは、どうも好きになれない・爆)。

そういうわけで、OSKに関しては、その存在を意識しつつも、
何となく横目で見ながら、実体を知るチャンスがなかったのだが、
ある程度大人になって、かなり本気で(^_^;宝塚にハマったとき、
友人と私は、「これは是非、OSKのほうも観にいかねば」と、
急に思い立って、あやめ池を訪ねたのだ。
旧宝塚大劇場がまだあった頃だから、92年以前だったと思う。

そういえばこのとき、出かける前に、
チケットの買い方や、公演時間など問い合わせようと、
劇団事務所に電話をしたら、男性が出て、
「はい。OSK、ニッポン、歌劇団ですぅ」
と、この1行で関西人とハッキリわかるイントネーションで、
応答して来たのが、私にはオオウケだったものだ(^_^;。

さて、ヅカ仲間から、OSKのほうがアットホームだとは聞いていたが、
行ってみたら、感じとしては宝塚の地方公演版くらいの編成で
(あやめ池と近鉄劇場の二手に別れて公演していたせいもあったが)
最初は、何もかも小規模なのかな?と早合点しそうになった。
が、観てみると、同じ女性だけの歌劇団でも、これは宝塚とは違う、
と私は感じた。

専門家ではないし、うまく言えないのだが、振り付けひとつ見ても、
OSKと宝塚ではコンセプトが違うと私は思った。
男役の概念も、OSKと宝塚では多分、別の要素がかなりあると思われた。
それに伴って、娘役(女役)のあり方も、OSKと宝塚では違った。
OSKはベースに「生身の女性」というのがはっきりとあるので、
男役は「女性が演じる男性」、女役は「女性が演じる女性」であり、
両者はともに魅力的な役者さんによって演じられるという点で対等だった。
客席に男性客が結構多かったのも、生き生きとした女性が演じる舞台、
という面がアピールしていたからではなかっただろうか。

これに対して宝塚は、一分の隙もなく飾り立てられた、
徹底して虚構の世界の男女が、
壮麗で巨大なガラスケースの中で公演しているようなものだ、
というのが私のとらえ方だった(今でも、だいたい、そう思っている)。
そこに描かれるのは、現実には存在しないからこそ価値のある、
女性の究極の夢の姿だ。
だからほぼすべての物語の主軸は、女性の憧れとなる「男役」が
「私もあんなふうに愛されたい」という女性達の夢を叶えるものであり、
「娘役」は、観客にかわってその愛を受け取るフィルターだ。
観客は舞台上で男役に愛される娘役に自分を内心で投影し、
決して当事者にはならない気楽さをブレンドしつつ、見とれているのだ。

誤解を恐れずにいえば、宝塚は、女性にとって都合の良い夢を
最も甘美なかたちで舞台にして表現したものだと思うのだ。
これは単に劇場の規模の問題ではなかった。
宝塚はバウだろうと地方公演だろうと、徹頭徹尾、虚構だったのだから。

そうした虚構とは別次元で、躍動する女性たちが観客を魅了するOSKは、
初観劇の私にとって大変、印象的だった。
だが、結局、私はこのあと、宝塚の贔屓が退団したことにより、
観劇の熱意そのものが、やや沈静してしまい、
OSKに関しても、数回、見にいったけれども終わってしまった。
だからOSKが劇団としては一旦、解散し、しかし有志によって地道に支えられ、
NewOSKとして再生するまでの年月を、私はリアルタイムでは共有しなかった。

せっかくあやめ池時代に知ったOSKだったのに、勿体ないことをしたかな、
とも思うが、しかし、もし当時OSKにも宝塚と同時にハマっていたら、
OSKは宝塚よりさらにファンとの距離が近い世界であるだけに、
私はもう、楽しすぎて抜け出せず、大変なことになっていたかもしれない。
たぶん、これで良かったのだ(^_^;。

ちなみに、私のOSK初観劇時のトップスターは、東雲あきらさんだった。
当時、舞台歴から言うとベテランの域に達していらした方で、
舞台姿に余裕があり、華やかな存在感があって、
さすがに主役を張る人はひと味違うなと思ったものだった。

で、完全に余談なのだが、90年代半ばになってから、
ある日、この東雲あきらさんの退団が発表された。
その話題を、テレビのワイドショーか何かでやっていて、主人が、
東雲あきら、やめるんだってさ~」
と私に教えてくれた。だが私は当時、育児で寝ていなかった。
思いっきり寝不足のボケた頭で、私は、東雲あきらさんを、
なぜか、小林旭さんだと思い、

「そういえば、芸能生活40周年って言ってたよねー」

と、おまぬーな返事をしてしまった。
主人は私の言うことなど聞いていなかったのでスルーだったが、
私はあとで自分で気が付いて、涙をおとしそーになった(T.T)。

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