転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



実家母が白内障手術を受けることになっている眼科で、術前の説明があった。
実際の手術は来週と再来週とに分けて片方ずつすることになっているのだが、
それに先立って、先日いろいろと検査を受けたので、
きょうは、まずその説明から話が始まった。

以前から自覚のある近視乱視老眼のほかに、
両眼に加齢黄斑変性のあることがわかったが、
もともと積極的な治療のできる病変ではないうえ、
87歳にもなれば、年齢的な変化としてどうしようもないものなので、
これについては経過観察以外に何もすることがない、
と先生は仰った。残念だが尤もなことだった。
白内障が治療できても、変性の程度によっては、
完全な視力が得られない可能性があるとのことだったが、
それでも、白内障による視界の白濁が取れれば明るくはなる筈で、
全体として改善への期待は持てるという説明で、母も一応納得した。

目の微生物検査のほうは、グラム陽性球菌2+、グラム陰性球菌1+で、
手術までに抗生剤の点眼をして、目の感染症を防ぐことになった。
母は目薬をさすのが昔からひどく苦手なので、
目薬を1日に4回も点眼せねばならないと知り、がっくりしていた。
その他、血液検査にはさしたる異常はなかった。
貧血もなく血糖も正常で、肝機能も問題なく、
B型C型肝炎のウィルスもマイナスとのことだった。
ややクレアチニンが高めだったが(1.31)、
これはもう遙か以前からずっとこの値で、内科でも観察されているので、
良くは無いが眼科手術には特に問題はなかろう、ということになった。

それから、看護師さんによるオリエンテーションがあり、
『手術のあとは二日ほど眼帯をすることになるので
脱ぎ着のときに顔をこすらない、前開きの衣服を着て来て下さい』
という指示があった。
これを聞くと母は、俄に妙な自信を見せ、
「『持って逃げる服』が家に用意してあるので大丈夫です」
と、あまりにも唐突なことを言った。
母は、災害時に持って出るものを日頃から箱にまとめているのだが、
その中に、「前開きのシャツ」が入っているのだ。
非常時のためのこういう備えは、母の昔からの習慣なので、
母が何を言っているか、私はすぐに察することができたが、
看護師さんには恐らく、完全に意味不明であったことと思う。
しかし、そこをいちいち追求せず、
「そうなんですね」
と微笑んで済ませたのは、この看護師さんの立派なところだった。
大事なことのみを取り上げ、問題にならないことを即座に受け流す感覚は、
仕事をする上で大変重要なものだと、私は日頃から思っている(^_^;。

さて、諸々を終えてタクシーで家に戻ると、
母は早速、例の、災害時に持って出るために用意した箱から、
「前開きのシャツ」を取り出しておこうと言った。
足の不自由な母にかわって、私が、母の指示する押し入れを探した。
……が、そのような箱は全く見当たらなかった。
押し入れとは微妙に異なる、クローゼットの下段に、
『入院時必要なもの』と母の字で書かれたダンボール箱があり、
それを明けると魔法瓶(昭和っぽいヤツ)やスリッパ、ドライヤーと一緒に、
前開きのガーゼ寝間着のようなものは入っていたが、
母の言う「前開きのシャツ」は無かった。

「おかしいねえ。災害時に持って出る箱て書いて、用意しとったのに…」
と母は首をかしげたが、その箱は災害時に持って出るどころか、
こうして平時に在処を突き止めることさえ、困難であった(汗)。

Trackback ( 0 )