館林ロストシティーランブラーズ・フォークソングシングアウト

フォークを歌って43年の坂を今登坂中。世間に一言あってこそフォーク。軟弱アコースティックミュージックにシングアウトだ!

「レモンとねずみ」石垣りん。

2008-09-12 06:57:27 | 生活雑感


驚きとともに、舞い上がるほどの嬉しさだった!
石垣りんさんの、未刊詩の詩集が出た。

しかも、350編ほどの未刊詩が残っており、今秋・「未刊詩全集」が出ると言う。

うれしいったら、うれしい。

実にうれしい情報にGO!

とりあえず・2編、紹介だす。

見事な詩だ!!!!!!!!


洗う

母親は洗う
家族の衣類を
子供のからだを。
食器を洗い
流し場を洗う。
母親は洗う
泥のついた野菜を
魚や鳥の血を洗う。

それらは台所や井戸端
いつも家のうしろがわで
人目にたたないところで
洗う。

ことに人間のからだから
にじみ出る汚れなどは
自分の目にふれるのさえ恥ずかしいほどに、
こっそり洗い落とそうとする。

キレイにしようとする。
母親はそうして
よぶんなもの
不潔なもの
暮らしの中で取り去ったほうがよいものを
せっせと洗う。

外で働く人は一生懸命世間を駆けぬけ
獲物を下げて帰ってくる。
それが冨であり
必需品であっても
一日が終わるとき世の中は少しよごれる。

母親は笑顔で
ときには不機嫌に
朝着せて出したものをぬがせ
ひろげた腕の中に受け取る。

お母さん
あなたが洗い続けたものは何と何でしたか?
おかげさまで
まだまだ新しい。
風も新しい。

あなたが
抱きかかえた赤ん坊の顔を洗うとき
その手のひらに不確かな首筋をもたせかける。
ちいさい地球のようなものは
「明日」です。



母の景色

母は
花のように美しくなくていい。

花は四季を忘れるほど
咲き競っているけれど。
人に心を温室に入れるほど
産業は発達していない。

冷たい波に洗われて
岩石の表情になっても
濡れた白砂の横顔でもいい。

やさしさは侵食され
愛は打ちくだかれ
希望は流されても。

半島のゆるぎなさで
あなたは母でありさえすればいい。

いのちの大陸につづく
ちいさなちいさな陸地、
母たち。
手をつないでください、
すばらしい海岸線が見えてくる。


2005年2月7日・御茶ノ水の山の上ホテルでの「石垣りんさんのさよならの会」では、谷川俊太郎氏と茨木のりこさんの「弔辞」が読まれ、感銘を受けたが、その弔辞も、この「レモンとねずみ」に収録されています。

石垣さんの、ファンの皆様。ご報告です。
コメント (4)
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