岡花見日記
イラストレーターの岡花見です
………イラストレーションのこと 製本のこと
 





父が使っていた機械時計ふたつを、オーバーホール&修理しました。
両方とも手巻きのゼンマイ式です。

ひとつは、1950年代のロレックス。
父は若いころ、何度もこの時計を質屋さんに預けたのだとか。
父の生活を支えてくれた時計です。
動かないまま、ずっと引き出しのなかで眠っていましたが、
オーバーホールして、ベルトも新しくして、30年ぶりに復活しました。

もうひとつは、1970年代のオメガの懐中時計。
「天芯」という、髪の毛よりも細い、小さな、けれどもとても重要な部品が壊れていたとのことで、それを制作し、交換してもらいました。

実は、懐中時計はふだん使うことはないので、はじめは修理しようと思っていなかったのです。
しかし、時計の裏蓋を開けた修理店の方が、内部を見せながら、
「これは素晴らしい」「オメガの美しさが詰まっている」などと絶賛なさるので、
わたしも、機械の美しさは動いてこそ輝くのだ、などと考え始め、
修理していただくことにしました。
やっぱり動いているほうがいいですね!

もうひとつ、クオーツの時計も直したかったのですが、
こちらは、手作業では修理不可能とのことで、あきらめました。
クォーツ時計の電子回路には寿命があり、
壊れたら電子回路全体を交換するほかないのだそうです。

ゼンマイ式の機械時計ならば、どんなに時がたち、古くなって壊れても、
後世の技術者の手で修理することができます。
時代を超え世代を超えて、人から人へ、それぞれの想いを刻みながら、実際に使い続けることができるのです。
これは、素晴らしくて、とても大切なことだと思いました。

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夏前に読んでいた、『日本の鶯 堀口大學聞書き』。
詩人堀口大學の最晩年のインタビューをまとめた本です。

色好みの老詩人が、若い女性インタビューアー相手に、
笑みを浮かべて、やさしく、軽やかに、
恋のこと、文学のこと、友人や師の思い出に、生い立ちや身辺のあれこれまでを、
悲しいことも美しく、かつ、とても贅沢に語ります。
初めは夢中で読んでいたのに、
だんだん読み終わるのが寂しくなって、ゆっくり読みすすめるようになりました。

読み終えたところで、
鎌倉霊園にある、堀口大學のお墓へお参りに行きました。
大學さんらしく、潔くて、美しいお墓でした。

さらに続いて、神奈川近代文学館へ。
訳詩集『月下の一群』の初版本と、その復刻版を手にとって見るためです。

大正14年に第一書房から出版された『月下の一群』は、
青緑色と金色の唐草模様の表紙、背は黒革に金箔押しの模様、
天金(てんきん)といって、本の上部には金箔が施されています。
本当に美しい本です。
こんな本が、自分の家の本棚に入っていたらなぁ、
と想像するだけで、しあわせな気持ちになるです。

写真は『日本の鶯』。
(および、それと無関係の「鶏型ドアノッカー」。
 大学生のころ、自室の扉に付けようと買ったものの、
 引き出しのなかで、鶏なのに時を忘れて眠り続けてきたものです。)

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横浜・伊勢佐木町にある「文明堂茶館ル・カフェ」へ。
ちょっとレトロな、趣のあるカフェです。

夏になると、わたしはここで、必ず「パッピンス」を食べます。
これはもう、夏の行事のひとつなのです。

「パッピンス」は、一種のかき氷。
抹茶茶碗のような容器に入っていて、アイスクリーム、果物、アンコともども、
思いきり、かき混ぜてから食べます。
ちょうど、フィリピンで食べた「ハロハロ」のようです。

嬉しいのは、いっしょに、温かいほうじ茶が付いてくるところ。
冷たい氷と温かいお茶は、真夏の最強タッグですね。

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ひさしぶりに「ローマステーション」に行きました。
横浜の山下公園近くにある、創業40年余のレストランです。

もう35年くらい前になるでしょうか、よくこのお店で食事をしていました。
注文するのは、いつも、名物料理「地中海鍋」でした。
土鍋のなかには、カニ、エビ、タコ、ムール貝など。
底にはパスタも入っていて、食べる地中海文明、といった趣向です。

さんざんかよった後、少し間をあけて行くと、なんと、お店が建物もろとも消えていて、
あぁ閉店したのか、と残念に思っていました。
ところがそれから二十年以上が過ぎた先日、
以前とまったく同じ場所に「ローマステーション」が開いていることに気づきました。
閉店ではなく、どうやらビルの建て替えをしていたようです。
二十年間も勘違いしていた!
開いているなら、行くしかない!
もちろんオーダーは「地中海鍋」!

大きな窓を開け放した店内は、テラス席と一体化して、とてもいい気分。
建物こそ昔と違うものの、食器も壁面の飾りも、
ずっと使い続けているものらしく、ちょっと昭和のテイストです。
そんな変わることのない懐かしく寛いだ雰囲気が大好きなのです。

お店の人にお話をうかがうと、
ビルを建て替えてから、上階は、ワンルームのアパートになっているとのこと。
「ローマステーション」の上に住む! なんてステキ!
と思わず口にしたら、誰もがそう思うらしく、現在満室だそうです。

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三島のベルナール・ビュフェ美術館で、
「ロベール・クートラス展 僕は小さな黄金の手を探す」を見てきました。

フランスの画家クートラス(1930-1985)は、
近年、カルトと呼ばれる小さなカード状の作品で知られるようになりました。
今回の展覧会では、そのカルトはもちろんのこと、
グアッシュの作品もたくさん展示されています。

壁面に並べられたグアッシュの人物画は、
ヨーロッパのお城に飾られている、先祖代々の古い肖像画のようでもあり、
また、ロシア正教のイコンのようでもありました。
その一点一点に、ご挨拶でもするみたいに、
数歩あるいては立ち止まり、顔を見て、心のなかで言葉をかけて、また数歩……

平日だったせいもあるのでしょう、
静かに雨の降る森の、大きな木々に囲まれた美術館は、
しんと静まりかえって、
ときおり顔を合わせる巡回員の足音のほかは、
人の気配もありません。

こんなふうに黙って、ゆっくり、絵と対話している時間は、
とても貴重で、とても贅沢に感じられ、
もういちど来ようかな、と思いました。

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「築地活字」は、その名とは違って、横浜にある活字屋さん。
その築地活字で、活字を作る体験講座に参加してきました。

活字は、母型と呼ばれる凹の型に、鉛を流して作ります。
今回は、さらにその後、自分が鋳造した活字を使って名刺を印刷します。
活字は紙に食い込みます。
そのへこみを見ると、文字の持つ力、印刷という技術の尊さを感じないではいられません。

ところで、活字鋳造の元になる母型ですが、これは職人さんが彫って作るもの。
その職人さんが、今はもういないのだそうです。
母型ができないと、この世から活字が消えていくのを、座して待つばかり。
そこで近年、「3Dプリンターを使って母型作りができるのでは?」と考えられているそうです。
新旧テクノロジーの融合です!




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梅雨に入る少し前のこと、
ふと見ると、庭の小さな梅の木に、青い小さな球が、いくつも下がっていました。
毎年花が咲くのですから、毎年実をつけているのでしょうけれど
いつも花を楽しむばかりで、葉陰に実る青梅までは見届けていなかったので、
今さらですが、「あ、梅がなってる!」と、びっくりしてしまいました。

ひとつひとつ、もぎ取って、濡れ縁に並べてみると15個あります。
これだけあるのなら、と梅酒作りに挑戦することにしました。
初めての試みですから、いったいどうなるのか、一年先のお楽しみです。

そういえば、お茶のお稽古をしていたころは、
この時季になると、谷中のお菓子屋さん「喜久月」の
「あを梅」を先生が用意してくださったなぁ……
と、あの頃と今はもういない先生が、とても懐かしくなりました。

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ポール・エリュアールの詩集を製本しなおしました。

「工芸製本」と呼ばれる伝統的な手法ではなく、「くるみ製本」です。
(市販のハードカバーの本は、ほとんどが「くるみ製本」です。)

元は箱入りの立派な本でしたが、
長い時を経てだいぶ傷んでいましたので、
まずは本全体を解体して、しっかり綴じ直しました。

背と角切れは布にして、
平らな部分にはイタリアのプリントぺーパー、
花布は絹糸。

明るく軽やかなイメージに仕上げました。



この本は恋愛詩集なので収録していないのですが、
エリュアールの「自由」という詩は、よく知られていますね。
2015年のパリ同時多発テロのあとには、その「自由」の一節が、
ポンピドゥー・センターの正面に掲げられたと聞きました。

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写真は、先週作った、本型の箱。
名刺入れとしても使えます。

背と四隅は山羊革、表裏の表紙はマーブル紙、
小さいですが、製本と同じ技術、同じ材料で作ってあります。
今はもう手元にないのですが、別れを惜しんで、写真を撮っておいたのです。

古びてくれば、古書のような趣もでてくる、
本型の箱、秘密の箱、なぜだか昔から憧れています。

昔、お酒の小瓶とグラスがしまえる、本型の、古い箱を見ました。
本棚に本といっしょに並べておいて、
誰にも教えず、気づかれず、ときどきひとりで取り出して、
こっそり楽しんでいたんだろうなぁ、
なんて想像すると楽しくなります。

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昨日は、横浜山手の「ガス山」に行ってみました。

小説家の中島敦が住んでいた(ことがある)と聞いていたので、
以前から、一度行ってみたいと思っていたのです。
桜も咲いたし、お花見散歩です。

ガス山という地名(通称)は、東京ガスのガスタンクが設置されていたから、とのこと。
行ってみると住宅地で、昔ガスタンクがあった場所は、公園になっていました。

ガスといえば、わたしは以前、経済産業省の「ガス管に関するパンフレットの仕事」をしました。
その時に作ったキャラクターが、このイラスト。

名前は「瓦斯山 管三(がすやま かんぞう)」、通称「ガス管」!!
そう提案したのですが、あえなく却下されました。

昨日ガス山を歩いているとき、ふと、管三さんの顔が目に浮かびました。

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一昨年11月から(足かけ3年!)製本していた『ベリー公のいとも華麗なる時祷書』
ついに、製本完了です。

外側は山羊革とマーブル紙、背には飾りのバンドを入れて、
花布は絹糸で編みました。

本のかたちはできあがりましたが、これからまだ、
革部分に金箔で線をいれたり、タイトルをいれたりと、装飾を加えていきます。
専用の箱も作らなければ……。

とはいえ、無事、本になりましたので、嬉しくてお披露目です。万歳!



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ひと月ほど前のことですが、金沢の21世紀美術館へ行き、「生誕百年記念 井上有一」展を見てきました。

井上有一は、1980年代の後半に、わたしが働いていた画廊が推していた書家です。
有一没後の展覧会(渋谷シードホールの「生きている井上有一」展、
京都国立近代美術館の「大きな井上有一」展等)、何冊もの作品集など、
いろいろなことに関わって、わたしにとって、とても思い出深い作家なのです。

金沢21世紀美術館の展示室で懐かしい作品たちと再会して、あのころの出来事のひとつひとつが、鮮やかによみがえってきました。

有一をはじめとして、何人もの美術家の展覧会、作品集作りが同時に進行していて、たいへんだったこと。
画廊に出入りしていたいろいろな方と、お話しする機会が持てたこと。
小説家の小島信夫さんの家に届けものをしたり、
文化人類学者の山口昌夫さんの原稿を受け取りに、新宿の文壇バーに出かけたり。
旅行でニューヨークに行ったときには、美術家の河原温さんのアパートで夕食をごちそうになったりもしました。

働いていた当時は時間に追われて、ただ目の前のことをバタバタとこなすばかりでしたが、
今こうして思い返してみると、素晴らしい作品に触れ、
素敵な方々とお話しすることができて、かけがえのない時間を過ごしていたんだなぁ……と。

金沢の21世紀美術館で、東京の20世紀の思い出を見つけてきたようです。

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子どものころから家にある、このガラス容器。
昔はたしか紅茶の葉っぱ入れに使われていました。

けれども、それから何十年も、何も入れず、何にも用いられず、
それゆえ手に取られることも、触られることもなしに、
ただ、棚の隅っこに置かれていました。

容器本体は八角形で、厚みのある、薄茶色のガラス。
それに、金属の蓋がついています。

子どものころからなんとなく好きで、おとなになっても、
いつも頭のどこかで気にしていた、色ガラスの入れ物、
わたしの部屋の机の上で、今は、花粉症の薬をしまってくれてます。

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買い物に出かけたら、古本屋さんの棚の上に「POPEYE 女のコ特集」(1981年2月)を見つけました。
しかも隣には、その9か月後、「POPEYE」の増刊として出版された「OLIVE」が!
懐かしい、と思う間もなく、手にとっていました。

この「OLIVE」、あのころ、夢中で読みました。
男の子の服を女の子が着ましょうね、という特集で、
ごつい服や、かっちりした靴の男の子っぽいファッションが
たくさん紹介されていました。
ほんとうにかわいくて、雑誌に紹介されているものは、どれも欲しくてたまらなかったなぁ。

実際に「OLIVE」を見て買った、青いチロリアンジャケット、デニムのジャケット、
編みこみのセーター、ダンガリーシャツ、デザートブーツ……
今は何も手元に残っていないけれど、
「OLIVE」を見ていると、その手触りも香りもよみがえってきます。
懐かしいなぁ。

年末なので、古い雑誌などを処分していたところなのに、
この二冊、つい、買ってしまいました。

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友人の依頼で、楽譜用カルトンを作っています。
持つ人・使う人を想像して、そのイメージに合うように、布の色や紙の柄を選んで、組み合わせていきます。

本を作っているときもそうするのですが、
いろいろな布や紙を、机の周りに思いきり広げて、
組み合わせを考える……そういうのって、本当に楽しいです。

そういえば、昔はよく、箪笥から着物を取り出して、
着るあてもないというのに、
着物と、半襟と、帯と、帯締め、あれこれ組み合わせて遊んでいましたっけ。

いくつになっても、やることは変わりませんね。

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