殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

ミヤ子無念

2010年05月19日 07時43分32秒 | みりこん童話のやかた
むかしむかし、あるところに

けゆきミヤ子という中年の村会議員がおりました。

これといった主義思想は無いものの

ミンミン党きれいどころコレクションの一員として

議会に華を添えていました。


ミヤ子は、ミニスカートが好みです。

カモシカのようでない、肉厚でむっちりした足の方が

かえって男心をくすぐることを、よ~くわかっているのです。


その日は、ミヤ子に大舞台が用意された、大事な日でした。

今回は特に、足を出す必要がありました。

ミヤ子は、これぞミニスカート!といった年代物を引っ張り出しました。

「これでいこう!」


やれ…と、はっきり命令されたわけではありません。

「わかってるね?」と言われただけです。

以心伝心が通用する所を見せたい…

ここは頑張って、存在感をアピールしておかなければ。


委員会の傍聴応援として潜入し

首尾良く、騒動の中心部分のポジション取りに成功。

頃合いを見計らって、トライ!

…支点、力点、作用点をまったく無視した、反物理的な転倒は

北斗の拳やドラゴンボールを連想させ

気と気のぶつかり合いのような華やかさでした。


車椅子や、身長に合わない松葉杖も用意されました。

転倒前は、作戦失敗も考慮して、目立たない保護色の服装でしたが

転倒後は、何が何でも断然目立つ黄色を選びました。

ケガを強調するために、さらに短めのスカートも必須アイテムです。


「できるだけ痛々しく…」の要望どおり、ミヤ子は頑張りました。

この役どころは、見栄えを考慮して、顔で決めたので

今まであんまりケガをしたことのないミヤ子にとっては、難しい演技でした。

ドラマやマンガで見た「ケガ人」というのを演じるしかありません。

痛みに顔をゆがめる…階段をわざわざ松葉杖で降りて、大げさに転んで見せる…

そういうわかりやすい行動をとるしかなかったのです。


同志が駆け寄り、抱き起こし、おんぶ…一同こぞっての渾身の演技。

しかし結果的にそれは、姥捨て山のワンシーンを彷彿とさせたばかりか

ミヤ子の細面(ほそおもて)とは裏腹の

豊富なぜい肉を露見させたに過ぎませんでした。

その上、ぜい肉の割に胸は貧弱という裏切りは、軽い失望を生みました。


裏腹、裏切りの効果というのは

見苦しいと思っていたものが、実は魅力的だった場合には非常に有効ですが

逆だと、一気に氷点下です。

その急速な冷却は、ミヤ子が本来持ち味としていたはずの魅力…

“血統の良さと、しどけない妖しさの裏腹同居”までも、疑問に変えていきました。


さらに党をあげて、彼女を突き飛ばしたとされる野党議員を糾弾し

懲罰問題へと発展させたのがアダとなりました。

転倒の仕方や、その後の言動、あの大きな足を露出する必要の是非までが検証され始め

自作自演…売名行為…事態は、ミヤ子が絶対に避けたい方角へ向かって行ったのです。


同志と思っていた仲間も、つるんでいては自分も危ないと思ったのか

パッと離れて行きました。

「私はあのおかたの起訴問題から、村民の目をそらすために

 協力しただけなのに…」

一夜にして手のひらを返したような仕打ちに、ミヤ子は悔しい思いでいっぱいでした。


ケガをしたくないのに、はからずも負傷した者は

避けられなかった自身の鈍さを恥じるものです。

患部が人目につくのを嫌い、人に気を使わせたり、手を借りるのはもっと嫌がり

無理にでも平静を装います。

一般人でもそうなのだから、公人なら、なおさらだったのです。

その心理を研究していれば…と悔やまれます。

何年か前、不祥事の弁明にバンソウコウ姿で現われ

議員生活から永久に葬られた男がいたのに…それを忘れていました。


ヤワラカちゃんが議員になったら、受け身を教わろう…

ミヤ子はそう決意するのでした。

しかし、次がもう無いことには、気づいていないミヤ子でした。


          この物語はフィクションであり、実在の団体や個人

          実際の出来事とは、関係ありません。
コメント (12)
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