殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

うどん屋事情

2009年07月21日 10時58分40秒 | みりこんぐらし
知人の息子さんが数年前に始めたうどん屋さんは

今、存続の危機に瀕している。

その親に「行ってやって」と頼まれたこともあり、夫婦で出かけた。


「まだ大丈夫だよ。だって息子の車、新車じゃん」

などと言いながら、店に入る。

お客の車は当然ながら青空駐車だが

店主の車だけは、立派なガレージに入っている。

続かない店というのは、構想の段階から、その片鱗が出ていると思う。

ガレージも結構だが、奥ゆかしさやへりくだりの有無が

そのまま経営に現われるような気がする。


しゃれたファミリーレストランを意識したという

金をかけた大きな店舗は、日曜の昼時だというのに閑散としている。

これも危ない店の特徴で、どことなく薄暗い。

雰囲気に加え、電灯を節約しているのと

大きな窓の掃除が行き届いてないからだ。


おすすめのメニューは、開店当初から同じ、かやくごはん定食。

野菜の炊き込みご飯と、かき揚げうどん、昆布の佃煮のセットだ。

以前よりも、品数も彩りもぐっとお地味な組み合わせ…

わりと高級なお値段は据え置き。


うどんのダシで炊いたごはんと、ダシを取った後の昆布

小さなかき揚げは、かやくごはんの具の何点かを使用。

3品が、それぞれお互いの「使用後」で出来ている。

利益率が高いからであろう。

助け合いは歳末だけにしてくれ。


夫は、大好きなタマゴが入っている鍋焼きうどんを注文。

作るほうの気持ちや都合が多少わかるので

できるだけおすすめ品や、同行者と同じものを注文するのが私の主義だが

この時期に鍋焼きうどんは無理だった。


鉄鍋の中から、なぜかカンピョウあらわる…。

頭をひねる夫。

さらに糸こんにゃくもお出ましになる。

プププ…と笑う私。

夏にそんなもん食べるからじゃ。


もっと掘って!と言ったら、牛肉のかけらとニンジンも発掘された。

わたしゃ、もう大喜び。


ちょっと分けてもらって、さらに興奮。

元々濃すぎる味に、カンピョウや牛肉のダシが出て

思いっきりくどいお味。

うひゃひゃひゃ!味の物置小屋や~!


そこへ親登場。

「あら~!来てくれたの?ありがとう~!」

息子の店の様子を見に来たらしい。


「味はどう?

 なんでお客さんが来ないのかしら…やっぱり不況だからかねぇ…」

などと矢継ぎ早に言われるが

「そうねぇ…不況だからかねぇ…」

とオウムのように答えてごまかすしかない。


「何か気が付いたことがあったら、言ってね!」

…言えるわけがない。

かわいい息子のために土地を譲り、店まで建ててやったのだ。

えらそうに余計な口をたたこうものなら、絶対怒る。


自分のことならまだしも、我が子に関するあれこれを

他人から言われるのはつらいものである。

長くないであろうこの店の歴史に

瀕死の病人をムチ打った者として刻まれるのはゴメンだ。


知人は厨房へ入り、小鉢を持って戻って来た。

「これ、まかないなんだけど、よかったら食べて」

…肉じゃがだった。

爆笑したいのを必死でこらえる。

鍋焼きうどんに入っていたのは、この肉じゃがの一部であった。


残り物をまかないにするのは聞いたことがあるが

逆のケースは初めてだ。

どうせなら、いっそじゃがいもも入れて欲しかった。


肉じゃがは、うどんよりずっとおいしかった。

コメント (18)
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