世界は良くなっていく(希望的観測)

2016-11-12 18:16:43 | Weblog


エントロピー理論によれば、

世界は悪くなっていく・・・・のだ。

それはつまり、エネルギーの劣化の問題で、

例えばガソリンが燃えると、エネルギーと排気ガスに変化して、

それは二度と もとに戻ることはない。

太陽だっていつかは燃え尽きる。全ての恒星がそういう運命を辿る。


だから、一億年前の方が一億年分、世界は新鮮であったのであって、

一秒後は一秒分、一年後は一年分、一億年後は一億年分、

世界は劣化していく。

最終的には宇宙全体のエネルギーが尽きて、

宇宙は「熱的死(ヒート・デス)」を迎える。


それは恐らく、必然であるだろう。


ただ、

生物の存在、というものが「反エントロピー」的な性質を持っていて、

我々は「再生」することが出来る。

猥雑な世界のものごとを整理整頓して再構築して、新しく「何か」を作り出すことが出来る。

良くないところは改めて、進化することが出来る。

宇宙全体のエネルギー劣化には勝てないかもしれないけど、

ささやかな抵抗として我々は

世界全体を良いものに変えていける、とアタシは

ちっぽけなただのオカマだけれど、信じている。

うそうそ、オカマじゃないけど、信じてるのは本当だわよ。


そういう我々人間が作り出した「社会」、というものも、

成熟すればするほど、良くなっていくのだ、と俺は信じている。

楽観的過ぎる、という批判はあるだろうが、

悲観的に生きていくより、希望的観測を持って生きていくほうが

より「反エントロピー的」である。


唐突だが、宮沢賢治だってそういう風に思っていた。

作品のところどころに、そういう思想が顔を出す。


ひとつだけ、それが、そのことがまっすぐに書いてある文章を紹介したい。


「宮沢賢治文学の極北」と、俺は呼んでいるのだが

「なめとこ山の熊」という素晴らしい童話がある。

淵沢小十郎という熊取名人の猟師が主人公の話で、

野生動物(熊)と人間の共存をめぐる戦いを描いていて、重く、苦しく、切ない。

本当にハードで辛い話なのだが(息を呑むほど美しい場面も数多くある)、

その話の中盤、強い男である小十郎が、町の荒物屋へ熊の毛皮と肝を売りに行く場面で

荒物屋の主人に頭が上がらず、てんで安い値段で毛皮と肝を買い叩かれてしまう場面で、

作者が思わずナレーションを離れて、自身の心情を吐露している部分がある。

そこを抜粋する。


以下引用------------------------------------------------------------------



いくら物価の安い時だって熊の毛皮二枚で二円はあんまり安いと誰でも思う。

実に安いしあんまり安いことは小十郎だって知っている。

けれどもどうして小十郎はそんな町の荒物屋なんかでなしにほかのひとへどしどし売れないか。

それはなぜか大ていのひとにはわからない。

けれども日本には狐けんと言うものもあって狐は猟師に負け猟師は旦那に負けるときまっている。

ここでは熊は小十郎にやられ小十郎が旦那にやられる。

旦那は街のみんなの中にいるからなかなか熊に食われない。

けれどもこんないやなずるいやつらは世界がだんだん進歩するとひとりでに消えてなくなって行く。

僕はしばらくの間でもあんな立派な小十郎が二度とつらも見たくないようないやなやつに

うまくやられることを書いたのが実にしゃくにさわってたまらない。



(角川文庫クラシックス宮沢賢治選集「風の又三郎」収録「なめとこ山の熊」より)


引用終わり---------------------------------------------------------------------






この「なめとこ山の熊」という話、体裁は童話なので、そんなに長い話ではないし、

読んだことのない人には読んでみることをおすすめしたい。



そう、「ずるいいやなやつら」は、消えてなくなっていくのだ。


例えば、差別、ということをとってみても

実際・・・・身の回りのこと考えてみても、俺がもっと若かったころに比べて

あからさまな差別は、減っているように・・・・・・・俺は、思う。


(「富裕層と貧困層の絶望的な格差、というのは昔からあったし、今後もっと減ってほしいけど。)


人種差別については現代においては、

「ヘイトスピーチ」みたいな、恥知らずな行為もあるけど、

アレに近いようなことを昔は一般の、そこらへんの人々が口にしていたのを俺は覚えている。

今現在、そういう事を言う人は減った。ちゃんとした人は、言わない。

「ヘイトスピーチ」に対しては、「カウンター」の人々がちゃんと、居てくれる。





だから、だから。



希望的観測を持って生きて行きたい。





もう寒くなってしまったから、例によって・・・・風邪なんかひかないように。

暖かくして過ごしておくれよ。




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする