まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第1番「青岸渡寺」~西国三十三ヶ所巡り・4(上)

2014年10月05日 | 西国三十三所
西国三十三ヶ所巡りも、4ヶ所目にしてようやく「第1番」札所の青岸渡寺に行くことになった。

青岸渡寺と言われてピンと来ない方でも、世界遺産である熊野古道、那智の滝、那智大社のあるところにある寺と言えばわかるだろうか。私も那智は何回か行っているが、横にある青岸渡寺は言葉は悪いが「そう言えば、そんな寺もあるな」という感じで軽く手を合わせるというくらいのものであった。それが今回の三十三ヶ所巡りでは、栄えある?第1番である。

那智は古くから神仏習合の修験の場として開かれたところで、三十三ヶ所に由来のある花山法皇がここで修業をしていたと言われることや、江戸時代に江戸の人が伊勢、熊野などを回り、その後で三十三ヶ所を巡礼するという時の道順で1番目に当たるというところから第1番となったとされている。

以前の記事でも書いたが、大阪から青岸渡寺まで列車と路線バスの乗り継ぎだと交通費がかかる。それと、さまざまな特典があるということで、ここだけは阪急交通社のバスツアーに参加することにした。JRの三十三ヶ所巡りのキャンペーンのスタンプは青岸渡寺の境内にも置いてあるようだ。恐らく同じような事情でJRで行かない人たちへの配慮だろうか。

さて、バスツアー当日となった9月の連休。集合場所である天王寺公園前の広場に向かう。天王寺発着のバスツアーの集合場所の定位置となっているようで、いろいろな旅行会社のツアー参加者で賑わっている。伊勢神宮へ向かうとか、熊野古道ツアーに向かうとか。その中で、阪急交通社の男性添乗員が青岸渡寺へのツアーの集合受付を行っている。やはりこういうのに参加するのは結構ご年配の方が多いようで・・・。

受付で座席の指定を受けて、バスに乗り込む。私の隣は同じくらいの年恰好の男性。結構あちこちの札所を自力で回っているようだが、さすがに青岸渡寺だけは時間と費用を考えてバスにしたとのことである。

このバスは天王寺・三国ヶ丘発着ということで、阪神高速の堺線でいったん堺で降り、三国ヶ丘駅で残りの参加者を乗せる。添乗員発表では38人というから、バスの座席もほぼ埋まっている。中には金剛杖を持ち、菅笠に笈擦(おいずる)という白装束姿の女性も見える。えらい熱心な方がいるもんやなあと見ていると、バスの最前列に座る。この方が添乗員とは別にバスに乗車して、この日のツアーを案内する「先達」さん。三十三ヶ所を全て回り結願となった人は、朱印帳などで結願の確認証明を受け、それを持って申請すると「先達」の資格が得られる。後は結願の回数に応じて先達のランクも上がっていく仕組みになっている。三十三ヶ所の有段者とでもいうのかな。ただ、先達という言葉の一般的な意味からしても、巡礼や札所に関する正しい知識を持ち、参拝者の模範になること、お参りでは先頭に立って皆の案内をすること、それらの活動を通して多くの人を巡礼に誘う・・・という役目がある。単にスタンプラリーやJR乗りつぶしの達成者というだけでは、真の意味での先達にはなれない(別に、先達になるのに資格試験や面接があるわけではないが)。

今度は阪神高速湾岸線から阪和道などを乗り継いで、一路和歌山を目指す。・・・目指すと言っても半島の裏側である。バスの運転手も2人体制である。

ツアーとしてはシリーズの「第1回」ということから、添乗員と先達の両方からいろいろと案内や解説がある。また、第1回参加の特典として、三十三ヶ所の地図、勤行次第、納め札、数珠玉が配られる。その中で添乗員から「納経・ご朱印はこちらで代行します。ただし、お一人につき朱印帳、納経軸、笈擦それぞれ各一点まで。お金と品物を一緒に預かります」というのがあった。朱印を代行していただくのはよいが、JRのキャンペーンに関する散華は、納経所でないともらえない。添乗員に代行してもらって大丈夫なのかという思いと、やはり自分で書いてもらいたいなというのがあったため、それは見送る。別に個人で朱印をもらうのも構わないそうだ。

続いて先達から、「これは単なる観光のバスツアーではありません」と先にクギを刺された上で、「ツアーでは、行きはツアーの出発時、次いで札所でお参りする時、そして札所を回り終えて帰途に着く時、それぞれでお勤めを行います」とある。「今日は第1回ですので、いろいろと説明をさせていただいた上で行いますが、第2回からは出発したらすぐ行いますよ」と。・・・ということで、紀ノ川のサービスエリアでのトイレ休憩の後で、朝のお勤めを行うことになった。

紀ノ川では出発時間を過ぎても一人戻って来ないようで、添乗員、先達、運転手がサービスエリアを捜して回る。完全に集合時間を10分遅く勘違いしていたようだ。そういえばこの方、天王寺でバスに乗った時にも、座席指定にも関わらず適当に座っていて席の持ち主に注意されていた。うーん、絶対いるな。

さて気を取り直して出発である。ちなみにこの日は阪急交通社の青岸渡寺向けツアーは、天王寺・三国ヶ丘の他に京都、そして神戸出発の計3台が向かっているそうである。そんな中で読経である。先達のリードに従って読む。「開経偈(かいきょうげ)」、「懺悔文(さんげもん)」、「般若心経」、「延命十句観音経(3回)」、「ご本尊真言(3回・・・注:各札所それぞれのご本尊の真言であり、ご本尊のいないバス内ではオールマイティーに使える「南無大慈大悲観世音菩薩」である)」、「回向文」。結構あるが、全部で5~6分くらいだろうか。それでも、バスの車内で40名近くがお経を広げて読経しているって・・・傍から見たらシュールかもしれない。いやいや、そんなことを言っているようでは巡礼の旅にならないな。お経を挙げていれば、そのバスは事故することはない・・・だろう。

大阪から和歌山へ南下する阪和道、湯浅御坊道路というのは渋滞が起こることで知られている。連休の中日とあって和歌山方面に向かうクルマで結構混んでいる。まあ、今回はその中で西国三十三ヶ所巡礼の歴史や基礎知識、さらにはお参りの作法など、先達からいろいろと解説が聴けるので退屈はしない。納め札の書き方についても教えてくれる。もちろんこの手のバスツアーに参加するのは初めてなので比較はできないが、いろんな方のブログなどを見ると、先達の良し悪しによってツアーの印象や雰囲気も変わってくるようである。今回同行した方は、きちんとした話をされるし、特段悪い感じはしなかった。

三国ヶ丘を出て3時間で紀伊田辺に到着。ここで休憩を兼ねた立ち寄りスポットである中田食品に停車。梅を扱っているところで、さまざまな種類の梅干しや梅酒、梅味の菓子類などが並ぶ。バスツアーにつきもののお買い物タイムで、せっかく来たのだから私も梅干しを購入する。いろいろ試食したが、昔ながらの塩辛いのもあれば、蜂蜜など混ぜて甘くしたものもあり、いろんな嗜好に合った味がいろいろと出ている。

座席に戻ると昼食の弁当が座席の上に置かれていた。ここから中辺路に入るが「ここからカーブのきつい区間が多いので、なるべく早く召し上がってください」とのこと。富田川に沿い、だんだんと道も狭くなってくる。ただルートとしては熊野古道巡りで、通過するバス停にも「○○王子」というのが見える。

時折先達の解説も挟まるが、車内はだいぶぐったりとした雰囲気が出てきた。私も途中ウトウトをし始める。気が付けば熊野川沿いに走っている。熊野本宮からは下流に位置するところで、そういえば奈良の大和八木から新宮までの「日本一長い路線バス」に乗った時に通ったなと思い出す。ようやく新宮の市街地に出た時には13時を回っていた。

ツアーでは青岸渡寺に行く前に那智の滝に立ち寄る。さらにその前に休憩ということで、滝の手前にあるかまぼこセンターに立ち寄る。今度は練り物や水産加工品の買い物タイムである。私も普段はそんなに土産物を買わないのだが、この日に限ってはいろいろと買い込んでしまう。後でこれがアダとなる出来事があったのだが・・・。

2011年の台風12号では紀伊半島で大きな被害が出たが、ここ那智勝浦でも土砂崩れや家屋倒壊の被害があった。確かJRの線路も流されたのではなかっただろうか。先達の解説では「周りには空き地があったり、新しい感じの家が目立ちますが、これらは全部大雨で流されて、その後で新しく建てられたものです」とある。最近、毎年のようにあちらこちらで豪雨による大規模な水害、土砂災害が起こっている。あまり続くものだから、どこがいつ、どんな被害があったかまでいちいち憶えていない。ニュースもその後の復旧状況まではいちいち伝えないが、被災地にとっては深刻な問題である。観光の足は戻っているのだろうが、河川は現在もあちらこちらで改修工事中である。

さて、大阪から6時間かかり、14時となってようやく那智の滝に到着。いよいよ、ここからお参りである・・・。


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