国道53号線で岡山県に入り、奈義を過ぎて陸上自衛隊の駐屯地もある日本原を過ぎる。それにしても、日本原高原とは何とも雄大な名前だ。
昭和の初めに因美線が全通した時に設けられた駅で、その当時の木造駅舎が今も残っている。「昭和初期の標準的な小規模駅舎」という点が評価され、登録有形文化財にも指定されている。また、映画「男はつらいよ」のロケ地になったこともある。前回は列車で通過しただけだったので、今回久しぶりに立ち寄ってみることにした。
ちょうど訪ねた時はもう1台クルマが停まっていて、同じように駅舎見物に来ていた男性がいた。
駅としては当然無人なのだが、待合室は荒れることなくきれいに整理されている。こういうのは地元の人たちがボランティアで管理しているのだろう。ホームには花壇もある。
窓口や改札口の使い古した木の質感がいい。壁にはロケ当時の山田洋次監督や渥美清さんの写真パネルが掲げられているが、「美作滝尾駅ほど美しい駅はもう日本のどこにもありません」と、この駅をロケ地に選んだ山田監督の言葉が残されている。
そうした駅だけに、今もネットや雑誌でたびたび取り上げられる。私も中国地方一周、津山に来るのならということでこうして立ち寄った次第だ。
また、今は使われていないが貨物用の側線と上屋の跡もある。私は直接目にしたことがないのだが、昔はこうした小規模な駅でも貨物の取り扱い設備があり、小荷物の窓口もあった。その後、物流の仕組みが大きく変わったことでこうした小荷物の扱いもなくなったが、ここに来て、宅配貨物を新幹線やローカル列車、バス、タクシーに乗せる「貨客混載」が少しずつ増えている。利用客が少なく、採算が取れないローカル路線の維持と、運転手不足、環境対策を抱える物流業界の課題緩和が期待されている。
これで美作滝尾を後にする。この後は津山の扇形機関庫「津山まなびの鉄道館」でも訪ねようかと思ったが、市街地の東にある津山インターからそのまま中国自動車道に乗った。一応、これで中国観音霊場めぐりについては、おまけの部分も含めて結願とする・・・。
元号が令和になった直後の2019年6月に始めた中国観音霊場めぐり。当時は大阪に住んでいたが、日帰り、1泊2日での区切り打ちでシミュレーションしたところ、約20回で結願というルートとなった。実際のコース取りはいろいろ変わったが、20回で結願となったのは見立て通りである。最初は大阪からもっとも近い岡山県ということで日帰りが続き、広島県からは1泊コースとなった。
2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染拡大にともなう緊急事態宣言で春の中国行きを中断したり、一方で夏のGoToキャンペーンの恩恵を受けたりと、世の中の影響もあった。
ただそれよりも一番の影響は、2020年の10月に私自身が大阪から広島に異動になったことである。札所めぐりとしては出雲にさしかかったところだが、これはもう、中国観音霊場各本尊のお導きとしか思えない。残りの島根、鳥取両県については広島を起点に出かけることになったが、札所へのアクセスもあり、これを機に公共交通機関利用の原則もマイカー利用も可とした。そしてちょうど2年かけて特別霊場含む37の札所を回ることができた。久しぶりの広島勤務の中、中国地方で久しぶりに訪ねるところ、また初めてのところとさまざまあり、地域を知るきっかけにもなった。
・・さて、中国道を走り、真庭パーキングエリアで少し遅めの昼食とする。そしてこのまま中国道で広島に戻ると見せかけて、北房ジャンクションから岡山道に入る。
実は、中国観音霊場めぐりを終えた後の企画として、もう一つ別の札所めぐりを始めることにしたのだ。今度は「中国四十九薬師めぐり」。また新たな中国地方一周の始まりとなる・・・・。