まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

宇佐神宮に参拝

2021年01月09日 | 旅行記H・九州

宇佐神宮の駐車場にレンタカーを停めて、仲見世通りを歩く。屋台もあれば店舗もあり、大分名物もいろいろと取り扱っているようだ。ただ、現在の時刻が9時前で、別府からのフェリーが13時となると昼食を取る時間はない。まあ、売店で何か買って、フェリーの中で食べることになるのだろう。

その参道脇に蒸気機関車があるのを見つける。明治から昭和にかけて活躍したドイツ製の車両で、かつて、豊後高田から宇佐を経て宇佐神宮まで結んでいた大分交通宇佐参宮線という路線を走っていたとある。かつてはあちらこちらに「参宮線」「参宮鉄道」が存在していたが、宇佐神宮にもあったとは。

機関車の奥には、天台宗の法塔、天台座主の記念碑が建っている。神宮で天台宗とはどういうことかと思うが、天台宗を開いた最澄が遣唐使船で唐に渡る時、航海の安全を祈って宇佐神宮に参拝し、無事に帰国した際に再び参詣して法華経の講義を行った。そうした縁で宇佐神宮は天台宗とのつながりがあり、歴代の天台座主も宇佐神宮で「法華八講」(直近では2018年)を行うという。これもある種の神仏習合である。

長い参道を歩く。このくらいの人出であれば密になることもなく、スムーズに進む。例年は初詣でおよそ40万人が訪れるというが、それを思えばやはり少ないといったところだろう。

石段を上がり、宇佐鳥居と西大門をくぐり、本殿がある上宮に入る。

宇佐神宮のシンボルともいえる南中楼門にて手を合わせる。もっとも、神が祀られる本殿はこの奥にあり、しかも手前から一之御殿(八幡大神=応神天皇)、二之御殿(比売大神)、三之御殿(神功皇后)と並ぶ。これらは奈良時代から平安初期にかけて建てられた御殿だが、神功皇后の伝説などと合わせると、宇佐自体が大陸にも近くて早くから開けていたことがうかがえる。

そして、ここでの作法が、2礼「4拍手」1礼である。「4拍手」といえば出雲大社だが、宇佐神宮もそうなのか。ただ、なぜ宇佐神宮が「4拍手」なのかは神宮の方でも詳しいことはわからないそうだ。せっかくなので一之御殿から順に3回繰り返す。

上宮を後にして、摂社である若宮神社に手を合わせる。こちらの祭神は仁徳天皇。仁徳天皇は応神天皇の皇子とされているから「若宮」なのだろう。

初詣期間中で一部ルートが一方通行のため自然と流れたのだが、下宮にもお参りする。こちらではやたら「お帰りには下宮にもお参りを」との案内が目立つ。こちらは嵯峨天皇の勅願で創建されたが、上宮の神たちをそのまま分けている。「下宮参らにゃ片参り」という言葉もあるそうだ。何だか、伊勢神宮で内宮だけでなく外宮も参らにゃというのと同じである。

下宮も一之御殿から三之御殿まであり、祀られる神は同じである。ただ、上宮が国家の安泰、繁栄を願うのに対して、下宮は農業や一般産業の繁栄を願うという位置づけだそうだ。その点では、伊勢神宮の内宮と外宮の関係と似たようなものだ。

下宮の横で福みくじがあり、出た運勢によってさまざまな景品が当たるとある。運試しと1枚引いたが、「後吉」と出た。見慣れない呼び方だが、宇佐神宮においてはもっとも悪いという意味。他の神社なら「凶」とあるところだが、そうした字を使わず「ずっと後に吉がやって来る」という意味でこの言葉があるそうだ。「後吉」にも景品があり、縁起物の箸である。特別な料理の時に使いたいな。

八坂神社がある。元々は、この奥にある宇佐神宮の神宮寺である弥勒寺の守護神だった。八幡宮というところは神仏習合の歴史が長いのだが、明治の神仏分離で弥勒寺は廃寺、その守護神も八坂神社として現在にいたる。その弥勒寺の跡地も残っている。

宇佐神宮といえば、奈良時代後期の歴史の舞台に「ご神託」が登場する。宇佐八幡のご神託として、当時称徳天皇の寵愛を受けて勢力を持っていた弓削道鏡を次の皇位につけるべしというのが奏上された。それを確かめるべく称徳天皇は和気清麻呂を宇佐神宮に遣わすが、「わが国は開かれてから君臣のことは定まっている。皇位は必ず皇族の者から立てよ」とのご神託を持ち帰る。怒った称徳天皇は清麻呂を流刑にするが、道鏡が皇位につくことはなく、称徳天皇が亡くなると藤原氏の手で左遷された。

「ご神託」が政治の世界で都合よく利用されたというもので、当の宇佐神宮はホームページにて「道鏡がうその奏上をさせた」とバッサリ切り捨て、「宇佐神宮の国体擁護のご神徳と、和気公の至誠の精神とが皇室をご守護することとなりました」と讃えている。宇佐神宮の公式見解とすればそうなるだろうが、まあ、当時はさまざまに都合よく利用されていたところがあったのかもしれない。

これで国東半島の歴史文化の原点といえる宇佐神宮を後にして、半島めぐりとする。時刻は9時40分、13時に別府からのフェリーに乗るとなると見どころも絞らなければ・・・。

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