まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

『最長片道切符の旅』をたどる机上旅行~第9日(米沢~釜石)

2018年07月07日 | 机上旅行
宮脇俊三の『最長片道切符の旅』を40年後に同じルートでたどるとどうなるかの机上旅行。このシリーズはあくまで机上旅行のため、別に毎日旅行記として更新しなければならない・・というものではない。ここに来て、私の勤務先企業で大きな不祥事(隠蔽)が発覚したり、西日本で数十年に一度の大雨が降ったりと、そちらのほうに気が向いたりしたこともあった。

北海道の広尾を出発して通算9日目は米沢から出発する。『最長片道』では、8日目終了時点で秋田県に戻った横手まで行っているので、まずはそれを追いかけることにする。『最長片道』では米沢16時09分発の特急「つばさ3号」で一気に横手に向かっている。途中、蔵王山を見る区間を走るが、あいにくの天気で山を見ることはできなかったようだ。また、特急の車内に酒類だけを積んだワゴンの車内販売がやって来た時に、「ぼくに水割り頂戴!」と元気よくワゴンを呼び止める声がした。その声が妙に高いので宮脇氏が振り返ってみると注文の主は女の子だった・・・という件がある。

「水割りをくださ~い」で始まる堀江淳さんのヒット曲『メモリーグラス』がヒットするのは1981年のことで、『最長片道』とは関係のない話だが、そのやり取りを見ると、この「女の子」は堀江淳さんのような人だったのかなと勝手に想像する。当時の特急には水割りが売っていたのだろうか。2018年版では特急でも車内販売が乗ることのほうが少なく、またウイスキーといっても売るのは缶入りのハイボールだろう。

で、2018年版では第8日に米沢に泊まった後でどうするか。ご案内の通り、奥羽本線のうち福島から米沢、山形を経由して新庄までの区間は山形新幹線として、狭軌の奥羽本線を広軌にすることで東京まで直通する新幹線が走っている。一方で新庄から大曲までは鈍行のみのローカル区間になった。その先も、大曲から秋田までは秋田新幹線として、そして秋田から青森までは特急も鈍行も走る区間ということで、路線そのものが結構ズタズタにされた感じである。

ローカル区間である新庄から大曲までの区間を走るなら、新庄10時18分発の鈍行になる。その前は7時台の発車なので、米沢からだと間に合わない。これを逆手にとって、新庄にそれまでの時間に着くように移動するということで、もっともゆったり発車となる米沢8時20分発の山形新幹線「つばさ121号」に乗る。鈍行にこだわるならそれより早い時間に出る列車に乗ればいいのだが、ここは『最長片道』当時とはまた違った特急の乗り心地を味わうのもいいだろう。米沢の牛肉の駅弁は8時すぎでも売っているだろうか。

県庁所在地の山形も一気に通過し、将棋の駒の産地で知られる天童も過ぎる。9時55分に新庄に到着。山形新幹線と、この先の奥羽本線の横手・大曲方面、さらには陸羽西線、陸羽東線のホームが向かい合うように並ぶ造りの駅である。そして向かう奥羽本線は完全なローカル区間となっている。大曲までのおよそ2時間、ここもロングシート車両に揺られることになる。

大曲からは12時46分発の「こまち20号」に乗る。朝の山形新幹線に続いて今度は秋田新幹線に乗る。秋田新幹線といっても盛岡までの線路の名称は以前と同じ田沢湖線である。角館、田沢湖と、秋田県北東部の観光名所をたどる路線である。角館も小ぢんまりとしているが北国の城下町の雰囲気がよいところ。久しぶりに訪ねてみたいところである。

大曲から1時間で盛岡に到着。2018年版ではここでダッシュすることになる。「こまち20号」が盛岡に着くのは13時48分。そして在来線ホームから出る山田線の宮古行き快速「リアス」は13時51分発。ここは「間に合わせる」という気持ちで、新幹線ホームから在来線ホームに走ることもやむを得ないだろう。この快速「リアス」を逃すと、次の列車は4時間後。宮古までなら行くことはできるが、山田線の区間は真っ暗である。まあ、「リアス」に乗れなければいっそのこと盛岡宿泊にして、わんこそばと盛岡冷麺とじゃじゃ麺を食べまくる路線に変更してもいいだろう・・・。

山田線の盛岡~宮古は元々人口の少ないエリアを走る。当時は「日本のチベット」と称されたところである。今こういう表現をしたら猛反発を喰らうだろうな。『最長片道』では、急行「そとやま」に乗っている。これが変わった列車で、盛岡を出て宮古、釜石、遠野、花巻と岩手県内を行ったり来たりして盛岡に戻るという循環列車である。ちょうど切符のルートを乗り換えなしで走るということで、宮脇氏も「好都合な列車」としている。盛岡から花巻までの急行券を車内で買おうとすると車掌が「え、お客さん、これ宮古回りですよ」と愕然としたように言われたとある。車掌も乗り間違えをした客と思ったのだろう。

かつて岩泉線が出ていた茂市を過ぎる。岩泉線も豪雨災害で線路が寸断され、そのまま廃止となった路線である。トンネルの出口で土砂崩れに遭遇して立ち往生した列車の姿が岩泉線の幕引きになった形だ。

2018年版では宮古に15時58分着。宮古で1泊してもいいが、ここはもう少し先の釜石まで進む。この先も山田線に乗るところだが、すでにご案内の通り、東日本大震災の津波被害で運休が続く区間である。ではどう移動するか。現在はバスが出ており、宮古16時05分発の岩手県北バスに乗る。山田線に沿う国道45号線を行くのだろう。リアス式海岸の広がるところで、穏やかな入江と内陸のアップダウンを繰り返して走ることになる。

バスは釜石まで直通ではなく、途中の道の駅やまだで乗り継ぎとなる。この先釜石までは岩手県交通が担当。乗り継ぎが20分ほどあるので、道の駅で三陸の土産物の買い物くらいはできるだろう。なお、2015年から復旧工事が行われている山田線だが、2018年度中には工事が完了し、その後は三陸鉄道に譲渡されるという。この机上旅行では代替バスの乗り継ぎとなったが、「もし行くなら」その時は三陸鉄道の車窓でリアス式海岸を楽しめることだろう。

バスは18時16分に釜石駅前に到着。この日はここで宿泊とする。釜石というと鉄の町のイメージだが、三陸に面しており、海の幸をいただける店もあるだろう。

2011年の東日本大震災以降、三陸に行ったのは2013年の夏が最後。この時は宮城県をベースにレンタカーで被災地のその後の様子を訪ねたが、それから5年が経つ。復興の様子について報道されることもほとんどなくなったが、どのような状態なのだろうか。三陸については机上旅行ではなく、いつかまたリアルに訪ねてみたい気もする・・・。

※『最長片道』のルート(第9日)
横手6:30-(奥羽本線)-6:52大曲6:56-(田沢湖線)-8:50盛岡8:58-(急行「そとやま」)-14:16花巻(以下次回)

※もし行くならのルート(第9日)
米沢8:20-(つばさ121号)-9:55新庄10:18-(奥羽本線)-12:06大曲12:46-(こまち20号)-13:48盛岡13:51-(快速リアス)-15:58宮古16:05-(岩手県北バス)-17:07道の駅やまだ17:28-(岩手県交通)-18:16釜石
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