西国三十三所の年1回の「先達研修会」というのに初めて参加した。
この研修会は西国三十三所の先達の「総会」のようなもので、今回で第13回である。私は2015年の12月に西国三十三所を初めて満願して、翌年明けに先達に補任したが、その年の研修会は平日開催のため参加できなかった。そのため今回が初めてである。なお今年の先達研修会は当初9月10日の開催とあったが、その日は会社行事と重なっていて参加が厳しいかなと思っていた。ところが案内状で、10月1日に変更とあった。第18番の六角堂(頂法寺)の「月参り巡礼」の日と重なったためである。これは私にとってはありがたいことだった(もちろん、開催日が変更されて行けなくなった方もいらっしゃるだろうが)。
会場は梅田の新阪急ホテルの紫の間。このホテルの大宴会場といったところである。11時開始で、30分ほど前に会場に着くと8割ほどの席がすでに埋まっていて、まだ空席の目立つ最も奥のテーブルに陣取る。ただ開始時刻が近づくとこちらのテーブルも埋まってきて、全体にほぼ満席となった。事務局発表では425名出席ということだった。この日は先達用のオレンジ色の輪袈裟、名札着用がルールだが、中には法衣姿の人や白衣・笈摺姿の人も目立つ。こういう人たちは常連さんのようでもあり、あちこちで挨拶も交わされる。全般的にはやはり年齢層は高めで、私などは若輩の部類に入る(はず)。
まずは第22番の総持寺の住職の先導にての読経。開経偈~般若心経~延命十句観音経~南無観世音菩薩~回向文と続くが、400人以上の先達が同じフロアで般若心経を唱えるというのも厳かしい。逆に、部外者から見れば結構引く光景かもしれない。その後は寺参りでの作法のレクチャーが行われた。般若心経など何遍も唱えて憶えている先達も多いだろうが、どんな位の先達といえども、あるいはプロの僧侶であっても、仏前では経本は「読む」ものだという。確かに、経本は漢字の羅列でそれをリズムよくなぞっていけばいいのだが、元々は「文章」である。
この後は特別講演。毎回いろいろな方が講演されるそうだが、今回は「夜回り先生」として知られる水谷修さん。私も「夜回り先生」という言葉は聞いたことがあるがそれだけのことで、水谷さんの講演を聴くのは初めてである。「私は26年間、皆さんのいらっしゃる『昼の世界』とは真逆の『夜の世界』に身を置いてきました」というところから、歯切れのいい口調での講演が始まった。
その中で私の印象に残った点をいくつか書きとめたのだが・・・
・朝起きてから、美しいもの、いいものを1日30個見つけるようにしよう。
・世の中全体が攻撃的になっている。特にバブル崩壊以降、大人のイライラや攻撃性が家庭の中に持ち込まれ、子どもたちの心を奪っている。
・健全な身体に健全な精神は宿る。人間は本来「心身一如」であるべきところが、今の世の中は「心身分離」の状態になっている。日常生活を規則正しいものにすることが、どんな精神カウンセリングや薬よりも効くものである。
・今のような世の中だからこそ、昔から日本に根づいて受け継がれてきた「信仰」や「宗教の力」を改めて見直してほしい。
・皆さん、そして子どもたちの「命」というのは、これまで長年の、多くの人たちの命の糸がつながっているものである。命を大切に。
・子どもたちに、少しでもいいので優しい言葉をかけてあげてほしい。それだけでも、「自分を見てくれている大人がいる」と子どもは感じてくれる。
・・・いろいろなことを、時には笑いもまじえ、一方では水谷さんが相談に乗ってあげた子どもたちの例を出しながら話す。宗教や信仰について、そして先達としてどうする?というのは、この研修会に合わせた触れ方である。ただ、中には残念な最期をなった「教え子」たちもいる。そうしたところでは会場内からも鼻をすする音、目頭を押さえる姿もあり、聴いていてこちらが辛くなるところもあった。見る限り居眠りするような人はいなかった。
やはり「優しさ」と「命の尊さ」かな。
さて、講演が終わった後は特任大先達に昇補された方3名の表彰である。ちなみに西国の先達にはいくつかの階級がある。まず1巡して申請すると先達である。今の私はもちろんこの「ヒラ」の先達。
現在、先達として存命、住所が有効というのは8803名いるそうで・・・
・先達 7080名
・中先達 445名(先達で2巡=通算3巡)
・大先達 688名(中先達で3巡=通算6巡)
・特任先達 268名(大先達で5巡=通算11巡)
・特任権中先達 84名(特任先達で6巡=通算17巡)
・特任中先達 65名(特任権中先達で6巡=通算23巡)
・特任権大先達 75名(特任中先達で6巡=通算29巡
・特任大先達 49名(特任権大先達で5巡=通算34巡)
・徒歩巡礼先達 44名
・徒歩巡礼中先達 3名
・徒歩巡礼大先達 2名
階級が上がるにつれてハードルも上がるわけで、その分人数は減る。今回表彰された方は34回西国を回ったわけで、その分尊敬に値する。私はとてもたどり着けない境地である。
この後は出席者の中から「コンピューターによる厳正な抽選」で選ばれた人たちが前に出て記念品の贈呈を受けたり、六角堂(頂法寺)からの一口法話があった。六角堂といえば池坊、日本の生け花発祥の寺であるが、花を自分のほうに向けて供えるのは「生者必滅」ということを改めて自分に理解させる行為である・・・というような話があった。
最後に本日出席の札所紹介(13か14所あった)、事務連絡である。その中で・・・
・西国三十三所の掛け軸について、現在の住宅事情等にあった何か新しいものを今後提案することを考えている。具体的にどうするかは「モニタリング」も含めて検討したい。
・この研修会とは別に「勉強会」の開催を検討している。その教材としてこのたび「観音霊場記図会」を復刻作成したので、ご興味のある方はお求めいただければ。
・特任大先達よりさらに上の階級の称号を設けることを検討したい。
とあり、先達委員会の今後の充実を図る提案報告の場であることもうかがえた。
これで一連の行事が終わり、昼食(参加費に含まれる)となる。折詰の弁当で、和食中心の中身だが結構ボリュームがある。これらをアテに一杯できるくらいの感じだが、もちろんそうしたものは出ない。食前の儀式等は特になく、順次食べ始め、食べ終えた人から流れ解散となる。周りの人と2、3言葉を交わしながら食事である。私もそうだが、初めての参加というのも結構いるようだ。JR西日本のスタンプラリーキャンペーンや、西国開創1300年記念行事という催しが西国を回るきっかけになっているかもしれない。
今回初めての先達研修会だったが、こういう集まりというのも悪くないものだと思った。これも観音さんが結ぶ人とのご縁というのかな。私もまだまだ学ばなければならないことも多いし、他の札所めぐりにも生かしていきたいものである。
さて、時刻は14時前。せっかく西国の関係で市内まで出るのだからと、実は先達用の納経軸もリュックに入れている。ここからどこか一つ行くことにしよう。この時間からでも手軽に行けるところ、そして2巡目がまだということで、目指すのはあの札所である。ということで、新阪急ホテルを出てすぐ横の阪急梅田の改札を抜ける・・・・。
この研修会は西国三十三所の先達の「総会」のようなもので、今回で第13回である。私は2015年の12月に西国三十三所を初めて満願して、翌年明けに先達に補任したが、その年の研修会は平日開催のため参加できなかった。そのため今回が初めてである。なお今年の先達研修会は当初9月10日の開催とあったが、その日は会社行事と重なっていて参加が厳しいかなと思っていた。ところが案内状で、10月1日に変更とあった。第18番の六角堂(頂法寺)の「月参り巡礼」の日と重なったためである。これは私にとってはありがたいことだった(もちろん、開催日が変更されて行けなくなった方もいらっしゃるだろうが)。
会場は梅田の新阪急ホテルの紫の間。このホテルの大宴会場といったところである。11時開始で、30分ほど前に会場に着くと8割ほどの席がすでに埋まっていて、まだ空席の目立つ最も奥のテーブルに陣取る。ただ開始時刻が近づくとこちらのテーブルも埋まってきて、全体にほぼ満席となった。事務局発表では425名出席ということだった。この日は先達用のオレンジ色の輪袈裟、名札着用がルールだが、中には法衣姿の人や白衣・笈摺姿の人も目立つ。こういう人たちは常連さんのようでもあり、あちこちで挨拶も交わされる。全般的にはやはり年齢層は高めで、私などは若輩の部類に入る(はず)。
まずは第22番の総持寺の住職の先導にての読経。開経偈~般若心経~延命十句観音経~南無観世音菩薩~回向文と続くが、400人以上の先達が同じフロアで般若心経を唱えるというのも厳かしい。逆に、部外者から見れば結構引く光景かもしれない。その後は寺参りでの作法のレクチャーが行われた。般若心経など何遍も唱えて憶えている先達も多いだろうが、どんな位の先達といえども、あるいはプロの僧侶であっても、仏前では経本は「読む」ものだという。確かに、経本は漢字の羅列でそれをリズムよくなぞっていけばいいのだが、元々は「文章」である。
この後は特別講演。毎回いろいろな方が講演されるそうだが、今回は「夜回り先生」として知られる水谷修さん。私も「夜回り先生」という言葉は聞いたことがあるがそれだけのことで、水谷さんの講演を聴くのは初めてである。「私は26年間、皆さんのいらっしゃる『昼の世界』とは真逆の『夜の世界』に身を置いてきました」というところから、歯切れのいい口調での講演が始まった。
その中で私の印象に残った点をいくつか書きとめたのだが・・・
・朝起きてから、美しいもの、いいものを1日30個見つけるようにしよう。
・世の中全体が攻撃的になっている。特にバブル崩壊以降、大人のイライラや攻撃性が家庭の中に持ち込まれ、子どもたちの心を奪っている。
・健全な身体に健全な精神は宿る。人間は本来「心身一如」であるべきところが、今の世の中は「心身分離」の状態になっている。日常生活を規則正しいものにすることが、どんな精神カウンセリングや薬よりも効くものである。
・今のような世の中だからこそ、昔から日本に根づいて受け継がれてきた「信仰」や「宗教の力」を改めて見直してほしい。
・皆さん、そして子どもたちの「命」というのは、これまで長年の、多くの人たちの命の糸がつながっているものである。命を大切に。
・子どもたちに、少しでもいいので優しい言葉をかけてあげてほしい。それだけでも、「自分を見てくれている大人がいる」と子どもは感じてくれる。
・・・いろいろなことを、時には笑いもまじえ、一方では水谷さんが相談に乗ってあげた子どもたちの例を出しながら話す。宗教や信仰について、そして先達としてどうする?というのは、この研修会に合わせた触れ方である。ただ、中には残念な最期をなった「教え子」たちもいる。そうしたところでは会場内からも鼻をすする音、目頭を押さえる姿もあり、聴いていてこちらが辛くなるところもあった。見る限り居眠りするような人はいなかった。
やはり「優しさ」と「命の尊さ」かな。
さて、講演が終わった後は特任大先達に昇補された方3名の表彰である。ちなみに西国の先達にはいくつかの階級がある。まず1巡して申請すると先達である。今の私はもちろんこの「ヒラ」の先達。
現在、先達として存命、住所が有効というのは8803名いるそうで・・・
・先達 7080名
・中先達 445名(先達で2巡=通算3巡)
・大先達 688名(中先達で3巡=通算6巡)
・特任先達 268名(大先達で5巡=通算11巡)
・特任権中先達 84名(特任先達で6巡=通算17巡)
・特任中先達 65名(特任権中先達で6巡=通算23巡)
・特任権大先達 75名(特任中先達で6巡=通算29巡
・特任大先達 49名(特任権大先達で5巡=通算34巡)
・徒歩巡礼先達 44名
・徒歩巡礼中先達 3名
・徒歩巡礼大先達 2名
階級が上がるにつれてハードルも上がるわけで、その分人数は減る。今回表彰された方は34回西国を回ったわけで、その分尊敬に値する。私はとてもたどり着けない境地である。
この後は出席者の中から「コンピューターによる厳正な抽選」で選ばれた人たちが前に出て記念品の贈呈を受けたり、六角堂(頂法寺)からの一口法話があった。六角堂といえば池坊、日本の生け花発祥の寺であるが、花を自分のほうに向けて供えるのは「生者必滅」ということを改めて自分に理解させる行為である・・・というような話があった。
最後に本日出席の札所紹介(13か14所あった)、事務連絡である。その中で・・・
・西国三十三所の掛け軸について、現在の住宅事情等にあった何か新しいものを今後提案することを考えている。具体的にどうするかは「モニタリング」も含めて検討したい。
・この研修会とは別に「勉強会」の開催を検討している。その教材としてこのたび「観音霊場記図会」を復刻作成したので、ご興味のある方はお求めいただければ。
・特任大先達よりさらに上の階級の称号を設けることを検討したい。
とあり、先達委員会の今後の充実を図る提案報告の場であることもうかがえた。
これで一連の行事が終わり、昼食(参加費に含まれる)となる。折詰の弁当で、和食中心の中身だが結構ボリュームがある。これらをアテに一杯できるくらいの感じだが、もちろんそうしたものは出ない。食前の儀式等は特になく、順次食べ始め、食べ終えた人から流れ解散となる。周りの人と2、3言葉を交わしながら食事である。私もそうだが、初めての参加というのも結構いるようだ。JR西日本のスタンプラリーキャンペーンや、西国開創1300年記念行事という催しが西国を回るきっかけになっているかもしれない。
今回初めての先達研修会だったが、こういう集まりというのも悪くないものだと思った。これも観音さんが結ぶ人とのご縁というのかな。私もまだまだ学ばなければならないことも多いし、他の札所めぐりにも生かしていきたいものである。
さて、時刻は14時前。せっかく西国の関係で市内まで出るのだからと、実は先達用の納経軸もリュックに入れている。ここからどこか一つ行くことにしよう。この時間からでも手軽に行けるところ、そして2巡目がまだということで、目指すのはあの札所である。ということで、新阪急ホテルを出てすぐ横の阪急梅田の改札を抜ける・・・・。