まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

下関、大晦日の夜

2015年01月10日 | 旅行記F・中国
強風雨の仙崎からバスで長門市に戻る。するとどうだろう。強い雨が一気に小降りになった。何だか天気にもて遊ばれているようだ。ここで予定より一本早い美祢線の厚狭行きに乗る。キハ120の単行は全てロングシート。すでに8割方の席が埋まっている。

ふとホームを見ると「通商人の方へ」とある。通商人とは何とも時代がかった言葉である。ものの本では、山陰線は沿岸に漁業の町が多いのと、道路があまり整備されていないことがあって、昔は魚の行商が列車で行き来していたという。行商人が利用する早朝の列車もあったそうである。そんな人たちが長門市には今でもいるのだろうか。「線路横断はしないようにして下さい」はわかるとして、「ホームでの売買や品物を並べることはやめて下さい」というのは独特の注意だろう。それにしても通商人、何だか幕末の長州藩とか長崎商人といったものを連想させる言葉である。

美祢線に乗るのも久しぶりで、外はまた雨が降ったり止んだりである。ただ車内温度のせいか窓ガラスが前面曇り、外の景色もよく見えない。景色を見るなら前方あるいは後方の景色が見える車端部に行けばいいが、眠たくもなってきたし、そこまではいいかなと車両の揺れに身を任せる。

厚狭から下関に移動。これで山口西部の路線をぐるり一周してきたことになる。

大晦日と元日の2夜連泊するのは、下関駅前のヴィアイン。JR西日本グループのホテルチェーンで、シンプルな造りである。チェックイン時に、「年越しそばです」と、どん兵衛のそばのミニカップをいただく。いろいろホテルがある中でここにしたのは、夕食つきのプランがあることから。年末年始だと食事のできる店も限られるだろうし、せっかくなのでふくをはじめとしていろいろな料理を食べたい、かつ大衆的な店をということで、道路を挟んでホテルの向かいにある居酒屋「和や(なごや)」という店のコースメニューがついたプランを選択した。

予定より時間が繰り上がったが店のほうはすでに席を用意してくれていた。2人がけのテーブルにコンロも置いている。まだ早い時間なので、フリの客で来ても楽に入れる感じである。ホテルとのタイアッププランというわけか、料理が出るのが早い。元より飲み物は別料金だし、足りなければ単品の追加注文もできる。

まずはふくさし。高級店のように大皿にぐるりと切り身が並ぶ・・・というわけにはいかないが、おひとりさまで気軽に食べられる感じが良い。

続いてはくじらの赤身もある刺身盛り。そう、下関は鯨料理も多いところで、朝の唐戸市場でもずらりと並んでいたし、駅高架下のイズミゆめタウン(この紀行文ではよく出てくるな)にも当たり前に置かれていた。くじらは他に竜田揚げも出てくる。

そしてメインの鍋。このプランではふくちり・・・ではなく、乗っているのはあんこう。あんこうと言えば茨城のイメージがあるし、下関の魚と言えば何と言ってもふく。それにくじらもあるという感じ。それがこのところ、新たな地域観光資源としてあんこうも売り出しているそうだ。事実、下関漁港でのあんこうの水揚げは茨城~福島・相馬にかけての漁港と比べると2~3倍のトン数がある。まあ、下関の場合は日本海から対馬、中国にかけて広い漁場を持つ漁船の基地として規模が大きいから、そういう結果が出ているのかな。老舗の料理店でも、ふくのコースの他にあんこうのフルコースもあるとのこと。

セットメニューにはあん肝の味噌漬けなるものがあったが、これも結構いける。この頃にはビールからふくひれ酒に移っていたが、酒にもよく合う。

また酒と言えば、この店には最近人気で入手困難とされる「獺祭」が置かれている。ただ300mlで1500円と言われると、さすがにそこまでして飲もうとまでは思わない。細かな味の違いがわかるわけではないし・・・。それよりも珍しいなと思ったのが、ふくの骨酒。ひれとはまた違った香りが楽しめるのがよかった。

コースメニューも十分で、結局一品で追加注文したのはあん肝の味噌漬けのみ。最後はあんこう鍋の雑炊で締める。2014年最後の夕食、ご馳走様でした。

さてこれからどうするか。下関の水族館・海響館や対岸の門司港ではカウントダウンのイベントが行われるそうだ。ただ、水族館に一人行くのもどうかと思うし、門司港に行くと朝まで戻ってくることができない。まあ、年越しは部屋で行く年来る年でも見ることにするが、まだ部屋に戻るには早い。

そこで目に入ったのはネオンがきらめく建物。海峡ゆめタワーである。あそこに登って海峡の夜景見物とする。歩いて行くが結構風が強い。エレベーターで143mの展望台へ。カップルが数組いるが静かな佇まいである。

そして観る関門の夜景。展望台の照明も抑えられており、ガラスの向こうに展望台の光が反射することもほとんどなく落ち着いて観ることができる。これはいい眺めだ。

再びエレベーターに乗り、下に降りる。そこで見た案内に、翌日、元日の朝は6時半から営業を開始して、展望台から初日の出を見ようというのがあった。本当に見られれば素晴らしい景色だろうが、ただ元日の天気予報は良くない。日の出の予想は7時20分台だが、ちょっと期待薄かな・・・。

部屋に戻る。大晦日の夜に特定のどの局の番組を見るわけでもなく、モバイルパソコンをいじったりする。ただやはり朝からの疲れが出たのか、行く年来る年どころか、ベッドの中でウトウトするうちにそのまま寝入ってしまったようである。目が覚めたのは日付が変わって午前1時。これでは風邪を引いていかんと本式に眠ることにする。窓の外から笛のような音が聞こえる。どこかで新年の神楽でもやっているのかと思ったが、何のことはない、端の部屋ということでドアの外に窓があるのだが、そこが少し開いていて風が入ってくる音だった。これは寒い年明けになりそうだと、眠りに落ちながら思うのであった・・・・。

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