2009年最後の夜は高松で過ごすことになった。そろそろ日が西に傾き、夜の顔を見せだした高松駅に敬意を表する。
宿泊するのは駅前広場に面した・・・というよりは、元々宇高連絡船が就航していた時には高松駅そのものだったところに建つ全日空ホテル。年越しということで結構奮発することになったが、こういうことも滅多にないことなのでよしとしよう。
高松港から海が見える側の部屋もあるのだが、ネット予約で多少割り引かれているせいか、はたまたシングルがそういう配置なのか、私の割り当てられたのは駅のほうを向いている。それでも10階からということもあり、いい眺めを楽しませていただく。
さて夕食をということだが、少し歩いたところの兵庫町あたりからアーケード街に出てみるが、大晦日のこととて閉めている店が多い。うーん、やはりこういう日に出てくるのがあまりよろしくなかったかな・・・。
結局は「年越しそば」も兼ねて、兵庫町にある「はなまるうどん」に入る。讃岐うどんとはいっても昨今ブームの製麺所タイプの店の対極にあるチェーン店だ(東京にも大阪にもある)。こういうことをしていると、高松出身でうどんフリークでもあるロッテファンのI氏にどやしつけられそうだが、ここは旅行者ということでご容赦をいただきたい・・・。
その後コンビニで金陵やつまみなどを仕入れ、ここはまあ大晦日らしくホテルの部屋でテレビなど見て過ごすのがよろしいようで・・・・。
さてこの全日空ホテル、年越しプランということでイベントを用意してくれていた。ここに泊まろうと決めたのも、こういうことがあったからかもしれない。
早いもので時計は23時半を回る。宿泊は10階だが、ここで20階まで上がる。そこにはバーが設けられている。実はここで年越しのカウントダウンを行おうというのである。
バーそのものは夜の間開けられており、ここで食事を取っている人も含め、結構な人数が集まっていた。見下ろせばそこは高松港の旅客ターミナル。宇高国道フェリーをはじめとしたフェリー乗り場があり、夜でも出航する船の姿が見られる。ギンギラギンではないがちょっとした夜景も広がっている。
年越しにやってきた客にはスパークリングワインのサービスがある。これをチビチビとやりながらその時を待つ。グラスがなくなりかけたら係の人が自動的にお代わりを注ぎに来るのもよい。ステージではジャズピアノとバイオリンの生演奏に合わせて低音の女性ボーカリストが渋い歌声を響かせてくれる。こういうのも含めて今夜限り宿泊料の中に入っているのだ。普段だったら私の旅で絶対こういうことはありません・・・・。
気がつけば日付変更線が近い。「新しい年を皆さんの乾杯で迎えたいと思います」というボーカリストの発声とともに、カウントダウンが始まる。
そして、時計は0時ちょうど。2010年、新たな年の始まりである・・・・。あちこちで乾杯の歓声と拍手が起こる。
年が改まり、ホテルの支配人からの挨拶。何でもこの夜は300人からの宿泊があるとかで、ここ最近の年越しのスタイルを表しているかのようである。私もこんな感じで旅先で新年を迎えたのは久しぶりのことだ。
この後は新たな年を歌で祝おうということで、あらかじめ配られていた歌詞カードを元に、ボーカリストのリードでここに集まった人たちでコーラス。「上を向いて歩こう」「あの素晴らしい愛をもう一度」「世界に一つだけの花」などである。ちょうど外には、日付が変わって最初の便となるフェリーが宇野に向けて出航して行ったのが見えた・・・。
さてほろ酔い気分となった年越しの宴もそろそろお開きとなり、私も客室に戻って就寝。翌朝は日の出を見ないとな・・・。
6時半。今度は21階(最上階)のラウンジに姿を現す。ちょうど東側を向く構造で、窓に沿ってイスが並べられており、座りながら初日の出を見ようという趣向である。これに集まったのは総勢20人ほど。ただ外はかなり寒いようで、窓ガラスの曇り具合が激しい。係の人が何度も水滴を拭うのだが、一瞬外が見えてもまたすぐに曇る。そしてまた係の人が窓を拭いて・・・という繰り返し。
ふと思うのだが、全日空ホテルのすぐ横にはもっと高さのある高松シンボルタワーというのがある。ただ元旦にも関わらず建物全体が閉まっており、このタワーの屋上から初日の出を見ることができない。こういうところを時間限定でも開放すれば地元の名所として絶対人気が出ると思うのだが、どうだろうか。
さて外は少しずつ赤みを帯びてきた。ただ山のほうから厚い雲がどんよりと広がっており、太陽が見られるか心配である。予定では7時過ぎには日の出になるが、なかなか見られない。中には「もう出たけど、雲に隠れて見えなかったな」と早々と引き上げる人も。
私も一瞬あきらめかけたが、よく見ると雲の上のほうも切れて青空が見えているのである。そこから太陽が顔を出すかなと重い、もうしばらく待つことにする。そして7時20分頃になったようやく雲の上から太陽が顔をのぞかせた。これにはホテルのスタッフの皆さんも安堵の表情である。
世間はまだまだ五里霧中の中にあると言えるが、こういう感じで遅ればせながらでも一本の光が差し込むような、そんな世の中になってほしいなと、新たな年の初めに思うのであった・・・。(もう少し続く)
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