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クラシック音楽オデュッセイア

2025年正月、ついに年賀状が1通も来なくなった“世捨て人”のブログ。クラシック音楽の他、日々のよしなし事をつれづれに。

心電図検定1級のレベル(5)~小児の心電図、先天性心疾患

2022年04月23日 | 心電図検定
第7回心電図検定1級の問題を振り返るシリーズ。今回は、小児の心電図と先天性心疾患について。

●小児の心電図

当ブログ主が今でも思い出せる範囲だけに限ると、小児心電図に関する問題は、2つ。1つは、「何か大事(おおごと)かと思わせながら、実は単なる洞不整脈」という心電図。これについては、特になし。

問題は、もう1つの方。これがエグい。例えば胸部誘導の陰性T波が出されたなら、『公式問題集&ガイド』で、おそらく誰もが勉強済み。年齢を確認しながら、正常という診断を出していく。右軸偏位や右室肥大など、いわゆる右心負荷を示唆する波形についても同じ。これも、(年齢を鑑みながら)基本的には正常扱いで良いことが多いというのも、1級受検者なら皆勉強済みだろう。ところが今回出題されたのは、QTが長い心電図。何がエグいって、先の2例と違って、これは心電図だけにとどまらず、更なる精査が必要とされるケースが必ずあるように思われるから。つまり、先天性QT延長症候群を、その子が持っている可能性。その事が脳裏をよぎったので、当ブログ主は「正常」という選択肢を選べなかった。而(しか)して正解は、「子どもなら、これぐらい長いQTでも正常」【注1】。・・・やられた。あな、くちおし。(おや、どこからか負け犬のオーボエが)・・・ねえ~、遺伝子検査は~?いいの~?しなくて~。

【注1】 「正常な心電図」をここでの正解と認めた根拠は、今回の試験でマイスター認定を取ったT @t_cardio_ecgさんという方が、『マイスターチャンネル』の新井陸先生に寄せたツイートで、この問題に対して「正常」を選んだ旨書いておられること。)

―さて、当ブログ主が持っている本の中で、小児心電図の独立した解説ページを持っているものは・・・

◎『日本医師会雑誌 第144巻・特別号(2) Electrocardiography A to Z 心電図のリズムと波を見極める』より、S268~S277 [4]小児の心電図

単に「小児の心電図」という漠然とした言い方でなく、胎児期、新生児期、幼少期と順を追って、それぞれの心電図的特徴を述べるところから記事が始まる。まあ、さすがと言うか・・。その後、「どういう状況(あるいは、条件)が揃ったら、病的意義を認めるか」の解説に移っていく。医師向けにsome tipsを与える良記事になってはいるが、必ずしも心電図検定に直結する物ではなさそう。

◎『レジデントノート 2016-4 Vol.18 No.1 救急の心電図 どう読む?どう動く?』(羊土社)より、68~81ページ 【各論】小児の心電図判断

救急搬送されてきた子どもの症例を3つ取り上げ、レジデント向けの助言を行なっている。例えば、「近医で胃腸炎の診断を受けた女の子が、その後も状況の改善がなく、搬送されてきた。心電図をとったらVT(心室頻拍)で、それが全然収まらない。更なる検査により、劇症型心筋炎と判明。緊急入院となった」とか。怖。この特集もあまり検定向けの物とは言えなそうだが、実臨床に即した好企画の記事ではある。

●先天性心疾患

続いて、小児の心電図と強い関連性を持つテーマ。先天性心疾患。今回は(も?)、ASD(心房中隔欠損症)が出た。・・・で、やはりと言うか、レア症例の一次孔欠損よりも発生率がずっと高い、二次孔欠損の方が登場。問題の心電図所見は、右軸偏位と不完全右脚ブロック。ただ、もう一つASDに特徴的とされる“クロシュタージュ・サイン【注2】”は、今回の問題図には見られなかった(と記憶している)。孤立性の陰性T波は・・・忘れた。w ちなみに、『心電図・心エコー コンパクトナビ』 (一色高明&杉村洋一著 医学教育出版社)の103ページに、一次孔欠損と二次孔欠損の違いを簡略化して描いたモデル図がある。興味の向きは是非、ご参考に。

【注2】 クロシュタージュ(crochetage)=「錠破り、ピッキング等に使う鉤(かぎ)針」を意味するフランス語。

―さて、先天性心疾患についての検定対策お勧め本。やはり何と言っても、これ↓だろう。

◎『心電図の読み方 パーフェクトマニュアル』(渡辺重行・山口巖著 羊土社)

検定試験のネタとして妙に偏愛されている心房中隔欠損(ASD)をはじめ、心室中隔欠損(VSD)、動脈管開存、肺動脈弁狭窄、Fallot四徴症(ToF ※指定難病215)、エプスタイン奇形(※指定難病217)、修正大血管転位(※指定難病208)、さらには心内膜床欠損まで、主立った先天性心疾患を手広くカバーしている。作りが受検生向きでありがたいのは、各疾患の波形的特徴を簡潔な文とフローチャートにまとめてくれていること。例えば、「ファロー四徴症は、尖状P波+右軸偏位+右室肥大」「エプスタインは、WPWのB型+肺性P波」「修正大血管転位はV5、V6でq 波がなく、V1で認められる。時に、房室ブロックを併発」等。いずれも覚えやすく、「このうちのどれかに、本番で出会えたら嬉しいねえ」と思わせるほど、実際の試験に即している。学習者の間でライバル視されることもある『実力心電図』との比較だが、先天性心疾患に関しては、『パーフェクトマニュアル』の圧勝と言ってよさそうだ。その一方で、心電図検定では『実力心電図』に準拠した物が多く出されるという毎度の傾向を考えると、「ASD、VSD、ToFの3つは絶対、頭に入れておかねばならない」ということも、間違いなく言えるだろう。

―次回のテーマは、電解質異常。実は今回出題のこれ、受検者たちの間から試験後に疑義が続出し、かなりcontroversial(物議を醸すよう)な問題であることが判明したのだった。詳しくは、次回。

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