クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

心電図検定1級のレベル(1)~電極の付け間違い、アーチファクト

2022年03月26日 | 心電図検定
2022年3月26日。今回から、第7回心電図検定1級に出た問題の具体例に触れながらのお話。―と言っても、既にその殆どが、YouTube動画『心電図マイスターチャンネル』の「【復元】心電図検定1級 第7回 今年も受験してみました!」【2022年1月10日投稿】の中で解説されている。なので、こちらではブログ主が独自のコメントを書ける題材に絞って語っていくことにしたい。

●電極の付け間違い箇所を答えさせる問題

電極に関する今回の1級の出題ポイントは、「正常な心電図の基本的な姿を、ちゃんとイメージできているか」を確かめることにあったようだ。言わば心電図の出発点、足元の確認である。胸部誘導の波形はまず、V1の小さなRと大きなSで始まり、V2、V3と進むにつれてRが伸びる一方、Sが小さくなっていく。そしてV3からV4あたりでRとSの電位が等しくなる移行帯(←お彼岸のお中日みたいなやつ)を経て、V5、V6で逆転。RがSよりも大きくなる。Rは通常V5で最大となり、最後のV6でちょっと縮む。・・・この図柄が頭に入っていれば、今回の出題図を見てすぐに、「V4とV5が逆だろ、これ」と正解に気づけるわけである。検査技師さんの実臨床に沿った言い方をすれば、「秋組(あきくみ)の、明道君(あきみちくむ)」と付けていく電極のうち、今回は、「ち(茶色)」と「く(黒)」の順番を間違えてしまった心電図ということになろう。

●アーチファクトの種類を鑑別させる問題

アーチファクト問題は去年の第6回2級でも出ており、検定試験で好まれる題材の1つらしい。2級では『公式問題集&ガイド』とほぼ同じ絵柄で出題された(※正解は、接触不良だったかな?)けれども、1級は下記のようにちょっと捻(ひね)りが加わる。

「アカシジアの症状を示す患者の、この心電図から何が読み取れるか」。

えっ、アカシジアって、何? 見知らぬ言葉に一瞬あせるが、肢誘導に何やらケバケバした細かいノイズが見つかることで解決。「ああ、これは筋電図を拾ったな」と。『公式問題集&ガイド』にはパーキンソン病による振戦を起こしている老人の心電図が出ていて、正解が「筋電図」になっていた。それだ。当ブログ主は全くの素人なので、アカシジアなんて知る由もない。が、おそらく『公式』に出ていたパーキンソン病と同じように、本人には抑えがたい震えを起こす疾患なのだろうと。・・・5つの選択肢の中で筋電図を含む物は1つしかなく、なお且つ胸部誘導で確認されるPVC(心室期外収縮)にも触れている。なら、答えはもう、これしかない。「筋電図と心室期外収縮」。

―さて、上記2つの題材を勉強できる教材。当ブログ主が実際に使った範囲では・・・

◎「トライ!12誘導心電図を読んでみよう (全158問)」 (医学の友社 HPから)

昨年の2級シリーズで既に登場した、ネット上のクイズ・サイト。全体的には2級受検向けのレベルだが、今回のような出題が1級でなされたとあっては、改めて注目してよいサイトだろう。2級レベルの題材として夙(つと)に有名な“肢誘導左右電極の付け間違いと、右胸心の鑑別”は勿論のこと、今回の1級問題に類似した“V2、V3誘導の電極付け間違い”も出てくる。また、いきなり初見では気づきにくい“紙送りの異常を起こした心電図”なんていうのも、ある。2級対策のみならず、1級受検のウォーミングアップ用にも十分使えるだろう。問題数が豊富であることと、無料で学習させてもらえることが魅力。使わない手はない。

(※いつ頃だったか随分前、2級の受検勉強をしていた時、「胸部誘導の付け間違いかと思いきや、実はこの方、漏斗胸」という、凄いネタの心電図を目にしたことがある。どこで見たっけかなあ・・。)

◎『いつでもどこでも心電図判読 88+11問 増訂版』(上嶋健治・著 克誠堂出版)

ジャンパーや白衣のポケットにすっぽり入るぐらいの、コンパクトな本(縦17cm、横13cm、厚さ2cm)。当ブログで次回扱う予定の「キャリブレーション(=較正)」から始まり、各種アーチファクトの知識確認を練習の最初に行なっていく。全体的なレベルは2級受検者向けと思われるが、上記の「トライ!」サイトと並んで1級の準備開始に使うのも良いと思う。実際、ページが進むにつれて問題のレベルもしっかり上がっていくので、1級を目指すレベルの人でも飽きることはないだろう。・・・ただ一点、小さな本の割にお値段がちょっと高め(¥3980+消費税)なのが、玉に瑕ではある。

◎『実力心電図』(日本不整脈心電学会編)

心電図学習者界隈では知らぬ者なき、超有名本。「今回の題材が勉強できるから」という理由ではなく、ちょっとびっくりしたことがあったので御紹介。1月の試験後、何日か経ったところで何気なくこの本をbrowsingしていたら、62ページに何と、「V4、V5の電極付け間違い」という今回の1級出題ネタそのまんまの(但し、試験問題とは勿論違う)心電図が見つかったのだ。受検勉強中は気にもせず飛ばしていたページだったが、「こんな細かいところまで、自分たちが出している本からネタを引っ張り出すのか」と、もう驚くやら、笑っちゃうやら。w

―次回は、「キャリブレーションと、巨大陰性T波」。
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第7回心電図検定1級~試験当日【2022年1月10日】

2022年03月19日 | 心電図検定
2022年3月19日。心電図検定1級特集、開始。まず今回は、試験当日の様子について。今でも思い出せる事を、時系列に沿った箇条書きで並べてみることにしたい。

●昨年の2級試験日と同じ日付となる、1月10日。陽気が良かった昨年とは打って変わって、今年はかなり寒い。まあ、大雪とかにならなかっただけでも、良しとするべきか。前回同様、JR五反田駅に午後1時到着。駅を出てすぐに、橋を渡る形。ふと道の向こう側を見ると、周辺の風景に見覚えが。「ああ、去年の帰りには、あそこを通ったな」と。で、今回はほとんど迷うことなく足が進み、1時10分頃には会場に着いた。外で待っている人たちが、10数人~20人ぐらいいたかな。曇り空の下、寒そうにして立っている受検生たちの様子を見かねてか、1時12分頃に会場入り口のドアが開き、運営側の“中の人”と思われる男性が現れた。そして、「まだ開場時間(1:30PM)より前ですが、中にお入りください」と皆を招き入れる。おおっ、ありがたい!・・・建物の中はエアコンが良く効いていて、暖かい。ほっとする。今回もやはり、入ってすぐに手指消毒。そして、額に光を当てての体温チェック。その後受付を済ませ、自分の受検番号がある試験室へ。

●受検者の年齢層は、昨年2級の会場に集まった人たちよりも、少し高いように思えた。と言っても、30代が圧倒的に多い感じ。60代の老人はひょっとしたら、当ブログ主だけだったかも。ただ、ここで事実を率直に書いておくと、当ブログ主の外見はチビ、短足、童顔。生い立ちからして病弱だったこともあり、十分に発育できなかった子供(中学生)のような姿をしている。なので、30代が中心と見られる受検者グループの中にあっても、「一人だけ、お爺さん」には見えていなかったと思う。もし自分が目立っていたとしたら、それはむしろ着ている服の色が原因だったろう。鮮やかな黄金色のダウンコートを脱ぐと、テカテカと光沢のあるライムグリーンの薄ジャンパー。控えめに言って、派手。w ・・・そう言えばこの日、1級の会場に集まった人たちは総じて地味というか、大人っぽくて落ち着いた装いの人が多かった。また、女性の数も、2級の時以上に多く感じられた。その女性たち、皆真面目なタイプの女医さんか熟練看護師さん、あるいは技師さん風。一部、薬剤師さんもいたのかな。去年2級の試験会場で見かけた(例えば、ロングヘアをお団子にせず、なぜか夜会巻きにして出勤してくるような)ギャル系のナースさんっぽい人は、全く見当たらなかった。

●午後2時ちょうどに、昨年同様トイレへ。その後試験室に戻ってから、最後の確認勉強。テスト直前の緊張感の中、頭の中で突然、やたら古い昭和歌謡のメロディが流れ出す。「青い背広で、心も軽く~♪」。出だしの一節しか歌詞を知らない歌なのに、何故今こんなところで?・・・帰宅後ググって、答えを確認。藤山一郎が歌っていた曲だった。・・・藤山一郎。懐。『東京ラプソディ』『夢淡き東京』『青い山脈』『丘を越えて』『影を慕いて』『酒は涙か、ため息か』『燃ゆる大空』『長崎の鐘』等々。昭和44~46年、当時小学生だったブログ主がTVの懐メロ番組を夢中で見ていた頃、この人は毎度常連のおなじみさんだった。で、この歌、長いこと「希望する会社に就職できた青年が、胸を弾ませての御出勤かな」なんて漠然とイメージしていたのだが、とんでもんぺ。かわいい女の子とおそらく初めてのデートにこぎ着けた若者の、うきうきするような幸福感と切ない胸の内を描いた青春の歌だった。(※このブログを書いている男の人生には、全く想像がつかない世界。)・・・でも何で、この歌がこの日いきなり脳裏に蘇ったのか、その理由は未だに謎。

●会場まで、家から持って行った教材2種。心筋梗塞の責任血管部位や、主な先天性心疾患の波形的特徴などを整理した勉強メモ(※当ブログ主は酷い悪筆なので、ワープロ文書を作成)。それと、おなじみの『公式問題集&ガイド』。1級受検であっても、直前のチェックはやはり、この本を見るのがベスト。

●午後2時30分。試験開始。意外なほど滑らかに、答えが選べる。やけに考えさせられる問題、めちゃ簡単な問題、それらが混じって山あり谷あり。何これ、楽しい。w 気持ちが乗って、心が弾む。昨年の2級同様、最初の1回目はマークシートを薄く塗りながら、50問全体に目を通す。不思議と、今回の方が楽。ゆったり余裕で腕時計を見ながら、約50分で完了。続いて、今度はマークシートを丁寧に塗り直しながらの2回目。これもスイスイ。試験の最中なのに、またあの歌が脳内で流れ出す。「青い背広で、心も軽く~♪」。そんな調子で、2周目は20分で終了。時計を見ると、3時40分。終了時刻まで、あと20分。もうそんなに考え直したい箇所はなく、数分で1~2問塗り直したぐらい。最後の15分ほどは、ちょっと贅沢な“退屈気分”を味わった。・・・しかし、結果としてA判定には至らなかった。ここが、1級の1級たる所以。やはり、甘くない。本人が勝手にできたつもりでいても、「正解は、それじゃないんだよ~。残念でした~」とやられたパターンが、今回6個以上もあったのだ。(※後日、YouTubeで『心電図マイスターチャンネル』の【復元】動画を見たら、こちらが思っていた以上に深みのある難問が多く出ていたとわかり、冷汗三斗。また、「当該動画を見ても、問題図の波形を思い出せない物が多い」という事実にも、愕然とする。)

●午後4時。試験終了。いつも通り、回答用紙と問題用紙の両方が回収される。試験前の注意事項を読んだ監督者代表の女性(※どこかの医大の先生らしく、検定委員会の顧問みたいな人)が、締めくくりの挨拶。開口一番、「これをもちまして、今年度第7回心電図検定の、すべての日程が終わりました」。・・・テストが終わったばかりの受検生に向けた言葉としては、ちょっと違和感。思わず、その言葉の背後に隠れた話者の心理を探ってしまった。試験日までの様々な準備や調整、そして2日間に亘る監督業務のマネジメント。試験最終日に至るまでの主催者側の苦労はやはり、並々のものではなかったのだろう。その積み重なった心労と、「やれやれ、無事に終わった。ほっ」という安堵感が、その「全日程が終了いたしました」に込められていたように思えた。おそらくこの方、目の前にいる1級受検生たちよりも、自分自身に対して労(ねぎら)いの言葉を贈りたかったのだ。

●ふたを開けてみればB判定という結果だったが、試験終了時はガッチリした手応えを感じて合格を確信し、「A判定、取れるかも」と、すっかり上機嫌で帰宅の途についたのだった。全くもって、知らぬが花(苦笑)。

―次回から、第7回心電図検定1級に出た具体的な問題例をいくつか振り返りながら、「1級レベルは、何が要求されるのか」について、順次語っていきたいと思う。そのため、記事の内容は避けられずして、一部の医療関係者にしかわからないエソテリック(esoteric)なものになる。その点については予め、ご容赦を乞うておきたい。
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心電図検定1級合格

2022年03月11日 | 心電図検定
2022年3月11日(金)。今から約2ヶ月前、1月の10日に都心の五反田まで行って、心電図の検定試験を受けてきた。昨年の2級に続き、今年は1級に挑戦。その後、先月2月の14日にネット上で合否発表があり、自分の番号が合格者リストに載っているのを確認。夕方、ワインの小ボトル&ケーキで母としんみり祝った。

そして今日、合格証書と記念品の青色ハート型バッジが、郵送にて到着。判定はBランク。1級での満点獲得が難しいのは、プロの循環器医も含めて衆目の一致するところだが、当ブログ主はAランク入りも果たせなかった。問題を解いている最中は簡単そうに見えていても、やはり1級は1級。仕掛けがエグい。(※しかし、何だろう、この敗北感・・・。)

正味1年9ヶ月という長い日数はかかったけれども、ズブの素人が自宅一人勉強で、「検定1級合格」達成。B判定ではあるが、まあ、良くやった方だろうと思う。 Rallegramenti!

―次回は、検定試験当日のお話。思い出せる事を、箇条書きにて。
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