クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

ガルデッリ、ギーレン、ロスバウト

2014年12月31日 | 演奏(家)を語る
先週、愛用のCDプレイヤーが修理から戻ってきた。しかし、年末の忙しさにより、不本意ながらずっと箱詰めのまま放置。で、昨日(12月30日)の夜になってようやく梱包を解き、ラックの定位置にセットする作業ができた。久しぶりに、フルコンポでCDの音を聞く。やっぱり、いいなあ。名曲の名演を、良い音で聴く。これが何よりである。あの民主党暗黒政権の時代から政治経済の動きを常に気にかけ、果ては日本の行く末にまで心を悩ますようになってしまった私だが、そういう気の重くなるような問題から離れ、好きな音楽に集中して耳を傾ける時にこそ、無上の喜びを感じる。やはり、私は本質的にノンポリ・クラヲタなのだ。

さて、今年は4月の消費税増税以来ほとんど音楽CDを買わなくなってしまったので、この1年を振り返っても、これといって話題にできるような目ぼしい音源が出てこない(苦笑)。その中でも、期間限定の超特価で10月に買ったランベルト・ガルデッリの指揮によるヴェルディの歌劇<ナブッコ>全曲(デッカ盤)は、久々に聴き直して感銘新たとなるものだった。デッカ・オリジナルスの24ビット・リマスターで、音が抜群に良くなっている。ウィーン国立歌劇場合唱団の圧倒的な威力や、エレナ・スリオティスが歌うアビガイッレの物凄さはもう改めて言うまでもないが、今回はオーケストラの鳴りっぷりの良さも見直すこととなった。LPレコードや初期CDの頃には、「オケの響きに、不満あり」という感想をずっと持っていたのだが、どうしてどうして、結構立派に鳴っているではないか。今はもうレギュラー価格に戻ってしまっているこの素晴らしい一組、これを廉価で買い直しできたことは、今年の大きな収穫であった。

当ブログでも既に触れたアバドやマゼールの追悼特番以降で、今も印象に残るFM音源としては、去る10月5日(日)に放送されたミヒャエル・ギーレンの特集が一番に挙げられようか。ドイツ風味に仕上がったユニークな<ダフニスとクロエ>も面白かったが、何よりもシェーンベルクの<5つの小品>Op16が最高だった。新ウィーン学派によるこの種の曲はどれもつまらなくて、いつも大抵退屈してしまうのだが、ギーレンの演奏で聴いたら、全く飽きることなく楽しめた。この番組が終わった後、数年前の購入以来ずっとお蔵入りになっているピエール・ブレーズの「シェーンベルク録音全集」(ソニー盤)をCD棚から取り出し、同じ曲をかけてみた。・・・・つまらない。w やっぱり、つまらない。ww この曲、つまんねえ。www ―ということは、鋭利な響きでギーレン、ギーレンした演奏だったからこそ、私はこれが楽しめたということなのだ。早速、ネット通販サイトをあちこち探索。結果、ギーレン氏はブレーズのようなまとまったシェーンベルク録音集みたいな物は作っていないらしいことが判明。ちょっと残念。

ついでの話ながら、このギーレン氏と少し似たタイプの指揮者が昔、一人いた。ハンス・ロスバウト(1895~1962)である。一部マニアの間で「元祖マッド・サイエンティスト」みたいに評されているロスバウトだが、この人に比べてギーレン氏がどういう点で幸福だったかといえば、それはやはり、生まれた年代だったろうと思う。微に入り細を穿(うが)つような鮮明な音像への志向がデジタル録音の技術によってしっかりと記録され、多くの人にわかりやすく伝わるようになったからである。一般に知られたロスバウトの録音としてはベルリン・フィルとのシベリウス管弦楽曲集(G)などがあるが、それよりもむしろコンセルトヘボウ管との<ペトルーシュカ>あたりの方が、演奏内容の点では(少なくとも私にとっては)よほど聴き栄えがする。で、惜しまれるのは、1960年代初頭・初期ステレオ時代のフィリップス系録音により、これがかなりマイルドで温和な音に録音が仕上がっていること。同じ時代のデッカあたりがこれをもっとシャープな音で記録していたら、この演奏にはきっと熱心なファンがついていたんじゃないかと思えるのである。そう言えば、ロベール・カザドシュのピアノ独奏によるベートーヴェンの<皇帝>でもロスバウトらしい鮮烈なオケ伴奏が堪能できるが、特にあの第2楽章の冷酷さ!聴いていて身震いしながらも、ついつい笑ってしまう。ちょっと生まれる時代が早すぎちゃったですかね、ロスバウト先生。

―今回は、これにて。
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