クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

<シンフォニア・タプカーラ>~山岡重信、原田幸一郎

2014年04月29日 | 演奏(家)を語る
去る4月26日(土)の夜、FM番組『クラシックの迷宮』を聴いた。これは今までにほんの数回聴いたことがあるだけの、それほど親しんでいるわけでもない番組なのだが、この日は特別。他の事をやっていてうっかり聴き逃したりしないよう、時計の目覚ましタイマーまでセットして待機した。なぜそこまでして聴きたかったかと言うと、その日は伊福部昭先生の<シンフォニア・タプカーラ>が予定されていたからである。しかもその演奏、当ブログ主が初めてこの曲に触れるきっかけとなった懐かしいもので、それも学生時代から30年以上も経っての再会となるものなのだ。山岡重信の指揮による、東京フィルの演奏である。

当ブログで<シンフォニア・タプカーラ>を語ったのは、過去2回。2005年4月23日と、同年10月14日。もう随分昔のことになる。で、その当時感想文が書けずにいた山岡演奏がここで久しぶりに聴けたので、今回の題材に取り上げてみようと思ったわけである。同じく、2005年当時未聴のためコメントできずにいた原田幸一郎&新交響楽団による1994年のライヴ録音も、この機会に併せて触れてみることにしたい。当ブログ主が知っている範囲での<タプカーラ>録音をここで改めて書き並べてみると、以下のようなラインナップになる。右端に※印が付いているものは当ブログの過去記事で既に語ったので、スルー。ということで、●のついた山岡と原田の録音が、今回の記事材料となる。

1.山岡重信&東京フィル(1982年2月12日放送のスタジオ録音)●

2.手塚幸紀&東響(1984年2月21日・簡易保険ホール)※

3.芥川也寸志&新響(1987年2月1日・サントリーホール)※

4.金洪才&大阪シンフォニカー(1987年9月13日・伊丹市文化会館)※

5.井上道義&新日本フィル(1991年9月17日・サントリーホール)※

6.石井眞木&新星日響(1991年12月13日・府中の森劇場)※

7.広上淳一&日本フィル(1995年)※

8.原田幸一郎&新響(1994年10月10日・東京芸術劇場)●

9.石井眞木&新響(2002年5月19日・紀尾井ホール)※

10.D・ヤブロンスキー&ロシア・フィル(2004年・ナクソス盤)※

―以降、このリストより新しい物については、当ブログ主不勉強のためデータ不詳。芥川也寸志の指揮による改訂版初演時の録音と、本名徹次&日フィルによる2007年3月4日(作曲家没後1周年公演)の全曲ライヴがとりあえずあるらしいことまでは分かっているのだが。あ、それと1984年11月23日の古稀記念コンサートでのライヴ録音(芥川&新響)。

●山岡重信&東京フィル(1982年2月12日放送のスタジオ録音)

番組主催の片山杜秀氏によると、今回伊福部作品を取り上げたのは、今年2014年が伊福部氏の生誕100年に当たることを記念してのことだそうである。「そうか、そういう節目になるのか」と感慨新た。で、この山岡演奏、30数年ぶりに聴いてみて、昔のおぼろげな記憶が大きく修正されることとなった。あいまい且つ無責任な記憶で、「薄い響きだった」とか「技術的に稚拙な印象だった」とか、そりゃ随分違うだろって。w  今回聴き直しての感想をまず一言で言えば、「非常に丁寧な演奏」。指揮者をはじめとする演奏家達の真摯な姿勢が、聴き手にはっきり伝わってくる。テンポ設定にしっかりした安定感があって、楽器のバランスも入念周到。譜面をじっくり読んで、よく吟味している感じである。第1&3楽章のヴァイオリン独奏、第1楽章のチェロ独奏が鮮明なのもうれしい。(コンサートのライヴ録音だと、オケ全体との音量バランスから、独奏パートが非常に小さく捉えられていることが多いから。)

敢えて不満を言うならば、この安定した演奏には“熱狂”という要素がかなり欠落している。それは特に終楽章で感じられることなのだが、整然とした演奏の佇まいが、ある種の物足りなさを生んでしまっているという印象なのだ。曲の姿をほぼ歪みなく捉えようとする上では、当演奏はレファランス的な価値を誇れるものであろうけれども、ライヴで得られるような激しい燃焼を求めることはちょっと無理ぽ(笑)といったところ。

(※意外だったのは、この演奏が1982年という比較的新しい年度の記録であったこと。私はてっきり、これはもっと古い音源で、改訂版楽譜が出る以前の物だとばかり思い込んでいた。その点でも、記憶の修正が必要となった。番組内でも、「1982年2月12日に放送された、スタジオ録音でした」みたいに紹介されており、これがかつてLPレコードとかになっていたのかどうかも定かでない。とりあえず私は、この演奏を学生時代と今回、合計2回のラジオ放送で聴いたのみ。CDの存在についても全く不明である。)

●原田幸一郎&新交響楽団(1994年10月10日・東京芸術劇場でのライヴ録音)

作曲家の傘寿(満80歳)を祝う一連のコンサート・シリーズを録音した音源で、これは長らく入手困難だったのだが、2012年、タワーレコードさんが企画CD(2枚組)の形で復活させてくれた。感謝、感謝。CD付属の解説書によると、指揮者の原田氏はかつて東京クァルテットのリーダーを務めていた人らしい。だからと言って、「室内楽的な、精妙な音楽作りをする人なのだろう」みたいな先入観を持ったら、それは大間違いということになる。とんでもんぺ。この人の演奏は粗削りだ。オーケストラがいわゆるアマチュア・オケということも関係してか、併録された<交響譚詩>ともども、何とも粗っぽい音作りになっている。テンポは基本的に速め、弦楽(特にヴァイオリン)群の弓の当たりが強め、そして随所で金管が派手なアクセントを添える、といった風情である。第1楽章終り部分のドタドタぶりはどことなく、ストラヴィンスキーの<春の祭典>第1部のエンディングみたいに聞こえる。良く言えば熱演ということになるのかもしれないが、私の感想としては、もうちょっと楽器のブレンドとか、オケ全体の響き方に“練り上げ”が欲しい。それゆえこの演奏、特に第2楽章に不満が多い。もう少し柔らかい音とゆっくり目のテンポを使って、しっとりと仕上げてほしいと思う。ちなみにCDの音質は、かなり優秀。山岡演奏をFMラジオの音で聴いた後だと、特にそう感じる。 

―というところで、今回はここまで。(この4月から消費税が8%になった。私の場合は、クラシックのCDを含め、買い物の量が格段に減った。世間の皆さんは、どうなのかな・・・。)
コメント (2)
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