第7回心電図検定1級に出た問題を振り返る特別記事シリーズも、今回で終了。極め付けの2つが、掉尾(ちょうび)を飾る。
●副収縮(※厳密に言えば、心室副収縮)
―いかにも、1級らしいネタ。副収縮。これの発生機序を理解するのは、かなり大変。「保護ブロックと進出ブロックの二重発生」という難しい概念を把握するには、相当高度な理解力が求められるから。正直、今のブログ主には無理。しかし、この副収縮、出題される波形自体は、そんなに難しいものではない。「PVC(心室期外収縮)が、一見ランダムなようだが、実は間隔が整数倍となる規則的なテンポを保ちながら出現している」というパターンなので、ディバイダーで尺を採れば一応の鑑別が出来るから。具体的な例は『パーフェクトマニュアル』の248~249ページ、あるいは『実力心電図』の246ページ等で見ることができる。今回の試験に出た心電図は、やはりという感じで、『実力心電図』に載っている物にとてもよく似ていた。あと、ネット上で無料閲覧できる物としては、下記↓のサイトに出てくる波形が理解しやすいと思う。
◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →一番右下にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-複雑な心電図の解析編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「第Ⅱ章 異所性収縮」をクリック →そこから「>」のクリックで、1ページずつQuestion & Answerを見ていく。
(※ちなみに、今回の心室副収縮よりもレアで、さらに高度な判読能力を要求される「心房の副収縮」についても、上記のサイトでその恐るべき姿を目にすることができる。興味の向きは、御参照の程。)
―さて、神がかり的な力を以て、『マイスターチャンネル』の新井陸先生が【復元】動画で再現した47問に加え、後日他の受検者たちから寄せられた情報により、残る3つのうち2つまでが埋まった。その2つとは、「マッギン&ホワイトのパターン、いわゆるSⅠQⅢTⅢ(エスいち、キューさん、ティーさん)が見られる心電図を基に、肺血栓塞栓症を選ぶ問題」と、「不安定狭心症を選ぶ問題」である。(※当ブログ主は狭心症を選んで塗った記憶が無いので、多分×になってしまった物だろう。どんな問題だったのか、全く思い出せないが。)これで、計49問が揃ったことになる。・・・で、“神の子”新井陸先生の記憶からこぼれ、他の人たちからもフォローされなかった最後の1問、ミッシング・リンクは、これ↓である。
●心室相性洞不整脈を伴う完全房室ブロック
『パーフェクトマニュアル』なら291~292ページ、『実力心電図』なら177ページ。ネット上の無料サイトで御覧になりたい方は、こちら↓にアクセスされたい。
◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →右列の上から2番目にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-不整脈編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角の「第1章・第2章」をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「1.洞不整脈 15」をクリック →そこから「>」のクリックを何度か繰り返してECG S007へ。
―上記S007の問題図を一瞥(いちべつ)しただけで、1級受検者のレベルなら即座に、これが房室解離を起こしている心電図であることに気づかれると思う。問題は、そのあと。RR間隔は規則的なリズムを保っているけれども、PP間隔の方は不規則バラバラ。・・ということは、定義に当てはまらないから、これは完全房室ブロックではない?じゃ、何?・・・ここで注目すべきは勿論、PP間隔である。心電図をよく見ると・・・
QRS complex(=心室興奮)を間に挟んだPP間隔(以下【A】)と、そうではないPP間隔(以下【B】)の2種類に、実は分かれる。そして【A】と【B】は、それぞれが独自に一定のリズムを保った規則的なパルスを刻んでいる。つまり、ぱっと見がバラバラなPP間隔(=洞結節の興奮周期)が、実はちゃんと規則的な【A】と、これまた独自に規則的な【B】が混ざって出ている姿なのだ。それが傍目には、バラバラの不規則に見えてしまう結果になっている・・そういう心電図なのである。その結果、ある意味皮肉な話になるけれども、2級までの勉強で完全房室ブロックの定義をしっかり身につけた人の方が、この問題に正解できないことになる。「RR間隔はレギュラーなのに、PPはバラバラだ。・・ってことは、これ少なくとも、完全房室ブロックじゃないな」と、いきなり正解を除外してしまうことになりかねないから。しかし結論を言うと、これは正真正銘、完全房室ブロックの心電図なのである。だからこその、1級問題。2級までではおそらく絶対に出ないネタだと、はっきり言えちゃうのだ。なお、上記S007の解説ページにある通り、両PP間隔の長さを比べると【A】<【B】となっているのが、1つのポイント。このような姿を示す不整脈を、“心室相性洞不整脈” と呼ぶわけである。臨床でも、完全房室ブロックを示す症例全体の約30~40%で、これが見られるとのこと。決してレアな物ではないようだ。ちなみに英語版だが、これがまた長くて難しい。“ventriculophasic sinus arrhythmia / ヴェントゥリキュロフェイズィック・サイナス・アリズミア”。(←早口言葉かよ。w )
―上述の副収縮同様、心室相性洞不整脈も、「こういうのが、あるんだな」と頭の中に形が一旦インプットされたら、後はそんなに苦労することなく鑑別できるようになる。しかし、その発生機序はやはり、相当難しい。現在最も有力な説について、心臓病学教育研究会のサイトにある「心電図データベース」の症例32で解説を見ることができるが、ブログ主は正直キューピーちゃん(お手上げ状態)。
―これにて、第7回心電図検定1級の試験問題を振り返るシリーズは終了。お疲れ様でした。なお、ブログ主は最近、手指の異常(※神経内科医によると、動作特異性ジストニアの可能性あり)で、生活の一部につらい支障が出てきている。幸い、今回でシリーズ記事が一区切りついたので、しばらく休もうと思う。
●副収縮(※厳密に言えば、心室副収縮)
―いかにも、1級らしいネタ。副収縮。これの発生機序を理解するのは、かなり大変。「保護ブロックと進出ブロックの二重発生」という難しい概念を把握するには、相当高度な理解力が求められるから。正直、今のブログ主には無理。しかし、この副収縮、出題される波形自体は、そんなに難しいものではない。「PVC(心室期外収縮)が、一見ランダムなようだが、実は間隔が整数倍となる規則的なテンポを保ちながら出現している」というパターンなので、ディバイダーで尺を採れば一応の鑑別が出来るから。具体的な例は『パーフェクトマニュアル』の248~249ページ、あるいは『実力心電図』の246ページ等で見ることができる。今回の試験に出た心電図は、やはりという感じで、『実力心電図』に載っている物にとてもよく似ていた。あと、ネット上で無料閲覧できる物としては、下記↓のサイトに出てくる波形が理解しやすいと思う。
◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →一番右下にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-複雑な心電図の解析編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「第Ⅱ章 異所性収縮」をクリック →そこから「>」のクリックで、1ページずつQuestion & Answerを見ていく。
(※ちなみに、今回の心室副収縮よりもレアで、さらに高度な判読能力を要求される「心房の副収縮」についても、上記のサイトでその恐るべき姿を目にすることができる。興味の向きは、御参照の程。)
―さて、神がかり的な力を以て、『マイスターチャンネル』の新井陸先生が【復元】動画で再現した47問に加え、後日他の受検者たちから寄せられた情報により、残る3つのうち2つまでが埋まった。その2つとは、「マッギン&ホワイトのパターン、いわゆるSⅠQⅢTⅢ(エスいち、キューさん、ティーさん)が見られる心電図を基に、肺血栓塞栓症を選ぶ問題」と、「不安定狭心症を選ぶ問題」である。(※当ブログ主は狭心症を選んで塗った記憶が無いので、多分×になってしまった物だろう。どんな問題だったのか、全く思い出せないが。)これで、計49問が揃ったことになる。・・・で、“神の子”新井陸先生の記憶からこぼれ、他の人たちからもフォローされなかった最後の1問、ミッシング・リンクは、これ↓である。
●心室相性洞不整脈を伴う完全房室ブロック
『パーフェクトマニュアル』なら291~292ページ、『実力心電図』なら177ページ。ネット上の無料サイトで御覧になりたい方は、こちら↓にアクセスされたい。
◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →右列の上から2番目にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-不整脈編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角の「第1章・第2章」をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「1.洞不整脈 15」をクリック →そこから「>」のクリックを何度か繰り返してECG S007へ。
―上記S007の問題図を一瞥(いちべつ)しただけで、1級受検者のレベルなら即座に、これが房室解離を起こしている心電図であることに気づかれると思う。問題は、そのあと。RR間隔は規則的なリズムを保っているけれども、PP間隔の方は不規則バラバラ。・・ということは、定義に当てはまらないから、これは完全房室ブロックではない?じゃ、何?・・・ここで注目すべきは勿論、PP間隔である。心電図をよく見ると・・・
QRS complex(=心室興奮)を間に挟んだPP間隔(以下【A】)と、そうではないPP間隔(以下【B】)の2種類に、実は分かれる。そして【A】と【B】は、それぞれが独自に一定のリズムを保った規則的なパルスを刻んでいる。つまり、ぱっと見がバラバラなPP間隔(=洞結節の興奮周期)が、実はちゃんと規則的な【A】と、これまた独自に規則的な【B】が混ざって出ている姿なのだ。それが傍目には、バラバラの不規則に見えてしまう結果になっている・・そういう心電図なのである。その結果、ある意味皮肉な話になるけれども、2級までの勉強で完全房室ブロックの定義をしっかり身につけた人の方が、この問題に正解できないことになる。「RR間隔はレギュラーなのに、PPはバラバラだ。・・ってことは、これ少なくとも、完全房室ブロックじゃないな」と、いきなり正解を除外してしまうことになりかねないから。しかし結論を言うと、これは正真正銘、完全房室ブロックの心電図なのである。だからこその、1級問題。2級までではおそらく絶対に出ないネタだと、はっきり言えちゃうのだ。なお、上記S007の解説ページにある通り、両PP間隔の長さを比べると【A】<【B】となっているのが、1つのポイント。このような姿を示す不整脈を、“心室相性洞不整脈” と呼ぶわけである。臨床でも、完全房室ブロックを示す症例全体の約30~40%で、これが見られるとのこと。決してレアな物ではないようだ。ちなみに英語版だが、これがまた長くて難しい。“ventriculophasic sinus arrhythmia / ヴェントゥリキュロフェイズィック・サイナス・アリズミア”。(←早口言葉かよ。w )
―上述の副収縮同様、心室相性洞不整脈も、「こういうのが、あるんだな」と頭の中に形が一旦インプットされたら、後はそんなに苦労することなく鑑別できるようになる。しかし、その発生機序はやはり、相当難しい。現在最も有力な説について、心臓病学教育研究会のサイトにある「心電図データベース」の症例32で解説を見ることができるが、ブログ主は正直キューピーちゃん(お手上げ状態)。
―これにて、第7回心電図検定1級の試験問題を振り返るシリーズは終了。お疲れ様でした。なお、ブログ主は最近、手指の異常(※神経内科医によると、動作特異性ジストニアの可能性あり)で、生活の一部につらい支障が出てきている。幸い、今回でシリーズ記事が一区切りついたので、しばらく休もうと思う。