クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

寒い8月の終りに聴く福島章恭のブルックナー

2015年08月30日 | 演奏(家)を語る
2015年8月30日(日)。今月前半までの猛暑に比べて、今の東京の天気は一体どうなっているのだろう。曇りや雨の日ばかりが延々と続いて、まるで梅雨時のようだ。この週末もやはり、曇りから雨。戸外でやる予定だった事は(必要な買い物以外)すべて中止せざるを得なくなり、何ともヒッキーな土日となった。

そんな状況で今日昼前の時間は、福島章恭氏の指揮によるブルックナーの<交響曲第8番>ライヴを「ようつべ」で視聴することにした。(平日は忙しくて、こういう長い曲にゆっくり付き合っている余裕がない。)で、この動画、どうやら福島氏御本人がアップしておられる物らしい。おそらく、「なるべくたくさんの人に見てもらいたい、聴いてもらいたい」という演奏家としての思いが反映されてのことと拝察する。

思いっきりゆっくりしたテンポ設定で、一音、一音に思いのたけを込め切った、実に重厚なブルックナーである。昔宇野功芳氏が指揮するオーケストラ演奏会に足しげく通っていた頃、今回の動画と同じブルックナーの<第8番>が一度採り上げられたことがあった。「宇野センセーならやはり、クナッパーツブッシュみたいな“ゆったり型”の演奏をするのかな」などと期待していたら、思いのほかさらりとしたスタイルだったので、当時は何となく肩すかしをくったような気分になったものである。あれから相応の年月を経て、宇野道場の師範代(?)みたいな福島氏が、「宇野師匠が仮にその気になっても、そこまではやらんでしょう」というレベルの、どっし~んと重たいブルックナーを披露することになったわけである。

この動画を拝見した上で当ブログ主に言えることは、「ブルックナーの第8についてやりたいことをほぼやり切って、福島氏はさだめし深い充足感を得たことだろうな」ということ。それ以上の(褒貶取り交ぜた)細かい演奏評は控えさせていただき、動画の視聴中にふと思いついたことを一点だけ、ここに書いておくことにしたい。それは、「今回みたいな演奏スタイルで是非、いつか伊福部作品の演奏を聴かせてください」という希望(あるいは、リクエスト)である。これだけのスローテンポで粘りに粘り、全編に亘って高いテンションを保ちながら、なお且つ盛り上げる箇所では一層音量をアップさせることができる福島氏の指揮をもってすれば、土俗のパワーに横溢する伊福部ワールド、あの独特の音楽世界を十全に表現しきれるのではないかと私は思ったのである。勿論、かつての芥川也寸志氏や石井眞木氏のように、伊福部音楽への熱い共感がなければ話にならないのだが、福島氏はどうだろうか。可能性としては、「共感はありますけど、限られた時間の中で、他にもっとやりたい曲がいっぱいありますから」という感じでやんわり拒否されてしまいそう。w

でも、<SF交響ファンタジー>全3曲とか、映画『大魔神』の音楽とか、できたらやってみてほしいなあ。特に、前者。<第1番>だけなら小松一彦指揮東京交響楽団の1989年4月8日ライヴ(交響じゅげ<釈迦>の初演時に行なわれた演奏)という極めつけの名演があるのだけれど、<第2番><第3番>にはまだそういう決定的なのが出ていないから・・・。

―ということで、今回はこれにて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする