クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

特別番組「ブログ主へのインタビュー」(1)

2011年08月30日 | エトセトラ
―皆さま、こんにちは。東吾こよみでございます。今日は夏の特別番組といたしまして、「ブログ主へのインタビュー」をお送りさせていただくこととなりました。この番組が急遽組まれることになりましたのは、先頃、当ブログ読者の方から熱心なコメントをいただいたことがきっかけとなっております。普段は該当するコメント欄にそのまま返答をしていたブログ主さんも、「レナータ・テバルディの記事に寄せられたBさんからのコメントにお答えするには、欄が小さすぎる。これは独立したエントリーにしよう」と決意し、このたびの特番編成となった次第でございます。私もアナウンサー現役時代にクラシック関連のお仕事を多く持たせていただいたご縁で、お話の聞き役としてお呼びをいただいたのでした。では、宜しくお願い致します。ブログ主(以下★)さん、宜しくお願い致します。

★あ、どうも、宜しくお願い致します。早速なんですが、今回コメントをいただいた「レナータ・テバルディの訃報」は2004年12月、つまり私がこのブログを立ち上げてから僅か2ヶ月目の記事で、もう本当に大昔って感じのものなんですよね。他にもマスネの歌劇みたいな、「ああ、そういうシリーズやっていたことあったなあ」と懐かしく思われる記事に複数の方からコメントをいただいたりして、そのあたりは多分検索でヒットするんでしょうね、結構古いものが読まれているらしいことを実感いたしました。でね、その事についての私の正直な気持ちを言うと、昔書いた文章には、「今だったら、ここはもっと別な言い回しをするよな」とか「句読点の使い方がまずいなあ」とか、いろいろ引っかかる箇所があるんですよ。ちょっと恥ずかしい、みたいな。あ、それと、昔書いた記事だと、内容の点でも「今の気持は、これとはちょっと違うんだよなあ」みたいな例もありまして。

―つまり、できたら、古い記事はもう一度順に読み直して推敲したい、書き直したいと・・。

★まあ、できれば。でも、今はその気力もないってことで、結局放置プレイになっちゃっているんですけどね(苦笑)。しかしそれにしても、結構な年月が経ちましたね。ブログ立ち上げから、7年ですか。手持ちのPCも、私の場合Me(ミレニアム・エディション)から始まって、XP、VISTA、そして今はウィンドウズ7と、もう4台目の機械を使っているわけで、その間には身内の不幸やら、私自身のがん入院やら、本当にいろいろな事がありました。あ、gooブログさんの仕様にも変わったところがあって、これ、前にも書いたんですが、VISTA以降、当ブログの白抜き文字がやけに小さく出るようになってしまったんですよね。私が2004年の開始当時にこの真っ黒テンプレを選んだ理由は、白抜きの文字が大きくて読む人の目に優しかったことと、敢えて何もない真っ黒な背景にすることで文章だけに落ち着いて集中してもらえるということでした。それが今、やけに小さい文字で出るようになってしまって、残念な思いがしています。読者の方にはお手数をおかけしますが、できましたらPCモニターの右下にある倍率調整を使って、125~150%に拡大してお読みいただけたら有り難いです。それが私の本意なわけですから。

―そうですね。年月の流れはいろいろなものを変えていきますね。私が勤めておりました放送局も、当時と今では随分中の様子が変わったように聞いております。ところで、「内容の点でも、今は気持が違っている例がある」と先程おっしゃっておられましたが、具体的にはどのあたりの記事のことでしょうか。

★例えば指揮者のジュリーニ、あるいは歌手のイワン・ペトロフですかね、すぐ思いつくのは。まずジュリーニですが、彼が亡くなった時に、追悼記事という形で一つまとまった文章を書きました。当時はまあ、あれぐらいの内容が精一杯だったわけです。で、つい先月の事なんですが、マエストロが全盛期にシカゴ交響楽団を指揮した録音をまとめて聴きまくったんですよ。グラモフォンとEMIの両方を。そしたら、それぞれの演奏に対する感じ方が、昔と今では随分変わってしまったことを痛感したわけなんです。

―あの追悼記事の中では、<新世界より>と<展覧会の絵>に言及しておられましたね。

★はい。<新世界より>は学生時代にLPで、<展覧会の絵>はずっと後になってFM放送のエアチェックで聴いていたものでした。まず<新世界より>ですが、これ先月CDで本当に久しぶりに聴いて、あれれ、って感じだったんですよ。ティンパニーは冴えないし、金管ももっとパワーがあったはずでは、と随分がっかりしちゃったんです。結局学生当時はまだ曲自体に感動できるレベルだったから、あれで十分だったんでしょうね。その後、それこそ生の演奏会も含めて非常にたくさんの名演奏を聴いてきた結果、ジュリーニ、シカゴ響の<新世界より>はもう、私にはどうでもいい部類に入ってしまったってことなんです。<展覧会の絵>の方も、先月CDをフル・コンポで聴いたら、昔FMで聴いたときとは印象がまるで変わってしまいまして、これは大きなスケール感というより、凝縮した音像設計に特徴がある演奏だったんだな、と思ったりしたわけです。で、全録音を俯瞰したところで極めて大雑把な感想を独断的に言ってしまうと、ジュリーニ&シカゴ響の演奏はグラモフォンよりもEMIに行なったものの方が面白い、と私は思います。

―ジュリーニ、シカゴ響のEMI録音といいますと、マーラーの<第1番>、ベートーヴェンの<第7番>、ブルックナーの<第9番>、ブラームスの<第4番>、あとはベルリオーズやストラヴィンスキーの作品がいくつか、というところでしょうか。

★はい。どれも非常に立派な演奏なのですが、特にブルックナーの<第9番>には、かつてLPで聴いたときよりもずっと強い感銘を受けました。巨匠のタクトから生み出される引き締まった音とゆるぎない造型、そしてシカゴ響というヘヴィー級オーケストラが持つ途轍もない底力。聴き終えてしばし、「う~ん」と唸ってしまいました。これはいわゆるオーストリア的なブルックナーではないのですが、器楽的な純度の高さで非常に強い説得力を持った名演に仕上がっていると思います。で、オーケストラがどれほど大きな音を出しても、あのショルティなんかがしばしば聴かせたような無機的な響きには陥らないところがまたいいんですよね。続いては、マーラーの<第1番>。これは特に終楽章でオーケストラの地力の凄さが発揮されて、本当に圧倒的な豪演を聴かせてくれます。ジュリーニ、シカゴ響の全録音からベストを選べと言われたら、この2曲を私は挙げたいですね。ベートーヴェンの<第7番>は、普通に良い演奏というところ。ブラームスの<第4番>は天井吊り下げマイクで取ったように聞こえる奥まった録音で、このコンビとしては思いがけないほど柔かみのある音楽になっているのが面白かった。グラモフォンに録音された演奏には、これらに匹敵するような楽しい例が見当たりません。シューベルトもマーラーも、あるいはプロコフィエフもそうですが、いずれも堂々たる音楽、非常に立派な演奏にはなっているのですが、何というか、どうも私にはピンとこないんですよね。あ、勿論、これは全く私の個人的な感想にすぎませんけど。

―ブログ主さんが挙げておられたもう一つの例ですが、旧ソ連時代の名バス歌手イワン・ペトロフについては、どのような・・・。

★イワン・ペトロフについて独立した記事を書いたのもブログ初期でしたが、あれから何年かの間に、私もいろいろと新しい発見をしましてね、この歌手のイメージというか、ロシア・オペラの演奏史における位置づけみたいなものが随分と修正されたんですよ。もう少し突っ込んだお話をしますと、彼が登場する前の時代に、実はロシア・オペラの演奏史における黄金時代が築かれていた。おおよそ1940~50年代です。当時のソビエト連邦が国家政策として、「ボリショイ集中主義」みたいな方針を打ち出して、オペラ歌手でもバレエ・ダンサーでも、各地から飛びぬけた演奏家たちをひたすらモスクワに集めさせたんですね。バス歌手ならアレクサンドル・ピロゴフ、マルク・レイゼン、マクシム・ミハイロフといった人たちですが、そういった重量級の歌手たちが作ったボリショイ黄金期の、その次の世代にペトロフは属するわけです。そして彼の声と歌唱スタイルはちょうど旧東ドイツのバリトン歌手テオ・アダムを思わせるような端正なもので、ある意味清新な印象を与えるものだった。そして彼の後に続くのが、日本でもおなじみのニコライ・ギャウロフやエフゲニ・ネステレンコといった人たちになるわけです。尤も、ギャウロフさんは活動の軸がもっぱら西側にありましたので、ちょっと扱いが違ってくるんですけどね。まあ、そういった流れの中で、この辺はあらためて語り直す必要があるだろうな、ということをずっと考えているんです。今回はこれ以上詳しくお話しする余裕がありませんけれども、もし将来<ボリス・ゴドゥノフ>の演奏史みたいなシリーズをやれる機会(と気力)があったら、そこで改めて触れてみたいなとは思っています。そんな大儀なシリーズが実現するかどうかは、わかりませんが(苦笑)。ついでながら、イタリアのバリトン歌手ローランド・パネライに対しても、独立した記事を書いたブログ初期の頃よりも、今の方が高い評価をあげられる気持ちになっています。あの後、彼がのこしたライヴの名演にいろいろ触れることができましたから。

―イタリアのバリトン歌手と言えば、コメントを下さったBさんがジュゼッペ・タッデイに触れておられますね。テバルディと共演した<トスカ>のスカルピアで。

~以下、特別番組「ブログ主へのインタビュー」(2)に続く。(Bさんのコメント内容への直接的なレスは、次回です。)
コメント (1)
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