クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

2017年終了、シューリヒトの<第9>(1965年)

2017年12月31日 | 演奏(家)を語る
2017年12月31日(日)。先月から今月にかけて、タワレコさんの企画CDやら、他のサイトで見つけた中古CDやら、ちょっと奮発していろいろ買いこんでみた。しかし、それらをゆっくり聴く時間がほとんど持てなかったのが、つらいところ。昨夜になってようやく、長い1曲をちゃんと最後まで聴き通すことが出来た。カール・シューリヒトがフランス国立放送管、他を指揮したベートーヴェンの<交響曲第9番>(Altus盤 ALT364/5)である。何10年ぶりになるだろうか、1年間を第9で締めくくるというビギナーっぽいことをするのは。これは1965年6月15日に、パリのシャンゼリゼ劇場で行われたコンサートのライヴ録音とのこと。この時代の記録としては、かなり音が良い。立派なステレオ録音で、オーディオ的な不満は(デジタル・レベルの物を求めさえしなければ)ほとんど無いと言ってもいいぐらいだ。

演奏も聴き応えがある。全編に亘ってハイ・テンションな音楽が展開されるが、普通の演奏よりもティンパニーのアクセント付けを強調した第1楽章の姿勢は続く第2楽章でさらに顕著なものとなり、時折聴き手をびっくりさせる。「ちょっと、ちょっと、<春の祭典>じゃないんだから」と(笑)。LP時代からよく知られたパリ音楽院管とのEMI録音では、指揮者の解釈や表現以上に、(特に第3楽章で強く感じられた)管楽器のユニークな音色が記憶に残るのだが、当シャンゼリゼ・ライヴでは圧倒的に指揮者の個性の方が際立っている。昔読んだクラシック関係の本の中で、「シューリヒトが使っているスコアを見たら、どのページにもびっしりと書き込みがあって驚いた」というような文章を見たことがあるけれども、この<第9>を聴きながらふとそれを思い出し、「ああ、いかにも」と得心がいった。基本的にはやや速めのテンポ設定で曲が進むものの、あちこちで独特な楽器のバランス配置が行われ、またアゴーギクも使われる。その手管のすべてに共感する聴き手は限られようけれども、それが名匠らしい“音楽のコク”を生んでいるのは間違いないところだろう。忙しい1年を聴き応えのあるCDで締めくくれた事に、心から感謝。組み合わされたもう1枚、同じベートーヴェンの交響曲第3番<英雄>も年明け早々に時間を見て聴くことになりそうだが、今から楽しみである。

―あと3時間弱で、2017年も終了。どうぞ、良いお年を。
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