クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

2012年3月・近況、ベーム、セル、ヴンダーリッヒの買い直し

2012年03月31日 | エトセトラ
前回の記事を投稿してから、もう1ヵ月経ってしまった。全く、あっという間である。さて、修理に出していたCDプレイヤーが今月の頭にようやく戻ってきた。しかし、「いろいろ聴くぞー」と意気込んだのも束の間、その僅か2日後にまたしても同一症状。バリバリっという痛いノイズとともに激しく音が飛ぶ。直ってない・・・。そして、その翌日も、ビビッと音飛び。くやしいのうwwwくやしいのうwww 早速メーカーさんに電話して、状況を報告。向こうもすっかり恐縮していたが、「やっと機械が戻ってきたと思ったらいきなりこれで、またすぐ荷造りする気にはなれませんので、しばらくの間様子を見ます。来月か再来月になったら、あらためて修理をお願いします」と伝えて電話を切った。

―というわけで、時折発生する不快な音飛びに悩まされつつも、今月は往年の名演CDをいくつか聴きこんだ。具体的なところを並べると、「今更そんなのを?」と言われてしまいそうなものばかりだ。カール・ベーム&ベルリン・フィルのブラームス<交響曲第1番>とシューベルトの<グレート>(いずれもグラモフォンのOIBP盤)、ジョージ・セルのドヴォルザーク<スラヴ舞曲集(全16曲)>(ソニーのDSD盤)、オイストラフとセルの共演によるブラームスの<ヴァイオリン協奏曲>(EMIのART盤)、フリッツ・ヴンダーリヒのグラモフォン録音集・7CDボックス等である。笑ってしまうほど定番中の定番ばかりだ。しかし、前にも書かせていただいたとおり、アンプが購入20数年目の大規模修理を経て大きくパワーアップしたことがきっかけで、私は昔懐かしい名演を改めて新しいリマスターのCDで聴き直してみたかったのである。

ベームの<ブラ1>には現在相当数の録音が存在するが、このベルリン・フィルとの初期ステレオ盤と、1975年3月にウィーン・フィルと来日したときのライヴ(NHKが映像付きで収録)、そして名匠が珍しくバイエルン放送交響楽団を指揮した1969年のライヴといったあたりが、現在普通に入手しやすい音源の中でのベスト3ではないかなと思ったりしている。(私が知らないだけで、他にもっと凄い物があるかもしれないけれど。)ちなみに、3つ目に挙げたバイエルン・ライヴはベルリン・フィルとの定評あるセッション録音をも顔色なからしむるド迫力の名演なのだが、残念ながらCDの音質がよろしくない。オルフェオ・レーベルのリマスター担当者には、本当に心がない。このCDを入手した方は、とりあえずミニコンポでお聴きになるのがよいと思う。怒りの爆発音みたいなティンパニーの激烈な打ち込みや、オーケストラの圧倒的な畳みかけなど、実演で燃えるベームの凄さが、ミニコンポの音のサイズなら十分に伝わってくる。

セルの<スラヴ舞曲集>は、最高の名盤。私の個人的な意見としては、ジョージ・セルの数ある録音の中でもこれこそがベストであるとさえ思う。作品への熱い共感と郷愁の吐露、そしてその一方にある比類なき器楽的完成度。この一見背反しそうな2つの要素が、極めて高い次元で同居しているのだ。これは驚嘆に値する名演である。そのセルと名ヴァイオリニストのダヴィッド・オイストラフが共演したブラームスの<ヴァイオリン協奏曲>も、やはり見事な演奏だ。この超有名曲についても私は随分たくさんの演奏に触れてきたが、結局オイストラフ&セル盤に最後は戻ってくる。うまく言い表せないが、この演奏に備わっている何かが、私の趣味に合うようである。晩年のオイストラフは同じEMIにクリュイタンスとの共演によるベートーヴェンも録音しているが、そっちはあまりにもひどい出来。その分一層、このブラームスが光って見えるのだった(笑)。

ドイツが生んだ不世出の名テナー、フリッツ・ヴンダーリヒの声も懐かしい。私がこのほど入手したBOXセットには<美しき水車小屋の娘>こそ収録されていないものの、名歌手が遺した他のグラモフォン音源はあらかた網羅されているように思える。特に、最後の6~7枚目に収められたポピュラー・ソング集は絶品。これを私は学生時代、2枚のLPで繰り返し、繰り返し聴いたものである。今こうして音の良くなったCDで聴き直していると、懐かしさが胸に込み上げてくる。コンチネンタル・タンゴの名曲<奥様お手をどうぞ>の魅惑、美声が弾けて歌がぶっ飛びまくる<フニクリ・フニクラ>の迫力、そして<ターラウのエンヒェン>、ドヴォルザークの<ユモレスク>に歌詞をつけた歌曲等に漂うチャーミングな雰囲気など、名歌手ヴンダーリヒだけが持っていた“人類史の奇跡”とも言うべき美声とハートのある歌い回しが、心ゆくまで堪能できる。中でもララの名作<グラナダ>の歌唱は圧倒的で、歌詞がドイツ語で曲も少しアレンジされてはいるが、この信じ難い声とパッションに触れたら、イタリアやスペイン系のテノール歌手達も顔が青ざめてしまうことだろう。

ついでながら、これまで多くの歌手達によって録音されてきた名曲<グラナダ>の歌唱について、最も強く私の印象に残っているベスト2は、今回取り上げたヴンダーリヒのドイツ語版と、あともう一つは、若い頃のホセ・カレーラスがロベルト・ベンツィの伴奏指揮で歌ったフィリップス録音での歌唱である。当時のLPジャケットは、「カタリ~カレーラスはうたう」というタイトルだった。これもまた私には懐かしい音源で、この機会にCDで聴き直してみようかと思って、先日ネットで調べてみた。結果は残念。何年か前にCD化されたものの、現在は販売終了で入手困難になっている模様である。こちらもまた、いつか復活させてほしいものだ。

―今回は、これにて。
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