2018年11月29日。先日、ムーティが指揮した<アイーダ>全曲のライヴCDを聴いた。これは1979年3月22日にバイエルンで行なわれた公演の記録である。何年も前に買って以来、ずっと“つんどく状態”にしてあったオルフェオ盤のCDだが、今月やっと落ち着いて全曲を聴くことができた。ムーティにとっては、あの誇り高きオペラ・デビュー盤(EMI)以来、およそ5年後の同曲ライヴということになる。で、いきなり感想の結論だが、ここでのムーティの成長ぶりには目覚ましいものがあり、バイエルン国立歌劇場のオーケストラとコーラスの優秀さも特筆に値する。
録音状態も、良好。この時代のライヴ音声としては、かなり良い。オケの細かいニュアンスも、歌手たちの声の表情も、非常に良くとれている。また、この種のライヴ音源を出す時のオルフェオ・レーベルは粗悪なリマスターを行なっていることが多く、購入者をがっかりさせるのがいつものパターンなのだが、当CDの音声は珍しく良質なものであると言える。
さて、歌手陣。栄光のEMI録音に比べると、正直言って、かなり落ちる。文句なしに立派なのは、ラダメスを歌うドミンゴ。「いつもながら、さすがですね」というところ。次いで、アムネリスを歌うブリギッテ・ファスベンダーが渾身の熱演。この人は声に厚みがあるタイプの歌手ではなく、イタリア・オペラにはちょっと厳しいものがあるが、役柄になりきったその打ち込みぶりは賞賛すべきだろう。問題を感じたのは、アイーダ役のアンナ・トモワ=シントウの声。この人、こんな癖のある声だったっけかなあ、とちょっと考え込んでしまった。(少なくとも当ブログ主にとっては)決して耳当たりの良い声ではない。このCDを今後また聴き直すことがあっても、アイーダの声を聴かなくて済みそうな場面ばかりを選んでしまいそうだ(笑)。で、一番駄目なのが、アモナスロ役のジークムント・ニムスゲルン。あのカプッチッリと比べるのが気の毒になるぐらい、出来が悪い。ランフィス役のロバート・ロイドはまあ、可もなく不可もなくというところ。ギャウロフの存在感とは、比べようがない。
緊張感溢れるスピーディな音楽の進行、歌手陣の非力さを補って余りあるオケの雄弁さ、そしてパワーあふれる合唱団の声。ここでのムーティの指揮は、本当に見事な世界を作り出している。実のところ、EMI盤に於いては、絢爛を極めた歌手陣に比べて合唱が薄く、幾分不満が感じられたものだったが、当バイエルン・ライヴではその渇きが一気に癒やされることとなった。一方、ちょっと引っかかったのは、「凱旋の場」でトランペット・ソロが音を外してしまったところと、第2幕のエンディングでテンポをいじったところ。ライヴの場合、ソロの人が難しい音を外してしまうミスは割とありがちで致し方ない部分もあるが、あの第2幕の終曲は(EMI盤でやっていたように)速めのインテンポでしっかりした造型を保ったまま、きっちりと締めた方がずっと感動的に仕上がって良いのではないかと当ブログ主は考える。(※と言っても、この部分、あのアバドでさえ、スカラ座のミュンヘン公演でムーティ以上にかっ飛んだストレッタを効かせていたので、そのようにしたくなる要素が何かあるんだろうなとは思うが・・。)
―というところで、今回はこれにて。
録音状態も、良好。この時代のライヴ音声としては、かなり良い。オケの細かいニュアンスも、歌手たちの声の表情も、非常に良くとれている。また、この種のライヴ音源を出す時のオルフェオ・レーベルは粗悪なリマスターを行なっていることが多く、購入者をがっかりさせるのがいつものパターンなのだが、当CDの音声は珍しく良質なものであると言える。
さて、歌手陣。栄光のEMI録音に比べると、正直言って、かなり落ちる。文句なしに立派なのは、ラダメスを歌うドミンゴ。「いつもながら、さすがですね」というところ。次いで、アムネリスを歌うブリギッテ・ファスベンダーが渾身の熱演。この人は声に厚みがあるタイプの歌手ではなく、イタリア・オペラにはちょっと厳しいものがあるが、役柄になりきったその打ち込みぶりは賞賛すべきだろう。問題を感じたのは、アイーダ役のアンナ・トモワ=シントウの声。この人、こんな癖のある声だったっけかなあ、とちょっと考え込んでしまった。(少なくとも当ブログ主にとっては)決して耳当たりの良い声ではない。このCDを今後また聴き直すことがあっても、アイーダの声を聴かなくて済みそうな場面ばかりを選んでしまいそうだ(笑)。で、一番駄目なのが、アモナスロ役のジークムント・ニムスゲルン。あのカプッチッリと比べるのが気の毒になるぐらい、出来が悪い。ランフィス役のロバート・ロイドはまあ、可もなく不可もなくというところ。ギャウロフの存在感とは、比べようがない。
緊張感溢れるスピーディな音楽の進行、歌手陣の非力さを補って余りあるオケの雄弁さ、そしてパワーあふれる合唱団の声。ここでのムーティの指揮は、本当に見事な世界を作り出している。実のところ、EMI盤に於いては、絢爛を極めた歌手陣に比べて合唱が薄く、幾分不満が感じられたものだったが、当バイエルン・ライヴではその渇きが一気に癒やされることとなった。一方、ちょっと引っかかったのは、「凱旋の場」でトランペット・ソロが音を外してしまったところと、第2幕のエンディングでテンポをいじったところ。ライヴの場合、ソロの人が難しい音を外してしまうミスは割とありがちで致し方ない部分もあるが、あの第2幕の終曲は(EMI盤でやっていたように)速めのインテンポでしっかりした造型を保ったまま、きっちりと締めた方がずっと感動的に仕上がって良いのではないかと当ブログ主は考える。(※と言っても、この部分、あのアバドでさえ、スカラ座のミュンヘン公演でムーティ以上にかっ飛んだストレッタを効かせていたので、そのようにしたくなる要素が何かあるんだろうなとは思うが・・。)
―というところで、今回はこれにて。