クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

ムーティの<アイーダ>~バイエルン・ライヴ(1979年)

2018年11月29日 | 演奏(家)を語る
2018年11月29日。先日、ムーティが指揮した<アイーダ>全曲のライヴCDを聴いた。これは1979年3月22日にバイエルンで行なわれた公演の記録である。何年も前に買って以来、ずっと“つんどく状態”にしてあったオルフェオ盤のCDだが、今月やっと落ち着いて全曲を聴くことができた。ムーティにとっては、あの誇り高きオペラ・デビュー盤(EMI)以来、およそ5年後の同曲ライヴということになる。で、いきなり感想の結論だが、ここでのムーティの成長ぶりには目覚ましいものがあり、バイエルン国立歌劇場のオーケストラとコーラスの優秀さも特筆に値する。

録音状態も、良好。この時代のライヴ音声としては、かなり良い。オケの細かいニュアンスも、歌手たちの声の表情も、非常に良くとれている。また、この種のライヴ音源を出す時のオルフェオ・レーベルは粗悪なリマスターを行なっていることが多く、購入者をがっかりさせるのがいつものパターンなのだが、当CDの音声は珍しく良質なものであると言える。

さて、歌手陣。栄光のEMI録音に比べると、正直言って、かなり落ちる。文句なしに立派なのは、ラダメスを歌うドミンゴ。「いつもながら、さすがですね」というところ。次いで、アムネリスを歌うブリギッテ・ファスベンダーが渾身の熱演。この人は声に厚みがあるタイプの歌手ではなく、イタリア・オペラにはちょっと厳しいものがあるが、役柄になりきったその打ち込みぶりは賞賛すべきだろう。問題を感じたのは、アイーダ役のアンナ・トモワ=シントウの声。この人、こんな癖のある声だったっけかなあ、とちょっと考え込んでしまった。(少なくとも当ブログ主にとっては)決して耳当たりの良い声ではない。このCDを今後また聴き直すことがあっても、アイーダの声を聴かなくて済みそうな場面ばかりを選んでしまいそうだ(笑)。で、一番駄目なのが、アモナスロ役のジークムント・ニムスゲルン。あのカプッチッリと比べるのが気の毒になるぐらい、出来が悪い。ランフィス役のロバート・ロイドはまあ、可もなく不可もなくというところ。ギャウロフの存在感とは、比べようがない。

緊張感溢れるスピーディな音楽の進行、歌手陣の非力さを補って余りあるオケの雄弁さ、そしてパワーあふれる合唱団の声。ここでのムーティの指揮は、本当に見事な世界を作り出している。実のところ、EMI盤に於いては、絢爛を極めた歌手陣に比べて合唱が薄く、幾分不満が感じられたものだったが、当バイエルン・ライヴではその渇きが一気に癒やされることとなった。一方、ちょっと引っかかったのは、「凱旋の場」でトランペット・ソロが音を外してしまったところと、第2幕のエンディングでテンポをいじったところ。ライヴの場合、ソロの人が難しい音を外してしまうミスは割とありがちで致し方ない部分もあるが、あの第2幕の終曲は(EMI盤でやっていたように)速めのインテンポでしっかりした造型を保ったまま、きっちりと締めた方がずっと感動的に仕上がって良いのではないかと当ブログ主は考える。(※と言っても、この部分、あのアバドでさえ、スカラ座のミュンヘン公演でムーティ以上にかっ飛んだストレッタを効かせていたので、そのようにしたくなる要素が何かあるんだろうなとは思うが・・。)

―というところで、今回はこれにて。
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過去の記事タイトル一覧(401~450)

2018年11月29日 | 記事タイトル一覧表
今回は、第401~450番。

401. 過去の記事タイトル一覧(401~最新) : 2018年11月29日
402. 酷暑の7月 : 2018年7月31日
403. FMで聴いたバーンスタイン初来日の<春の祭典>と、生涯最後のシューマン :2018年8月31日
404. 床板の修理依頼、マゼールの30枚組ボックス : 2018年9月30日
405. ブログ14周年、バーンスタインのベルリオーズ<レクイエム> : 2018年10月31日
406. ムーティの<アイーダ>~バイエルン・ライヴ(1979年) : 2018年11月30日
407. YouTubeで聴けるボリショイ劇場黄金期の<エフゲニ・オネーギン> : 2018年12月24日
408. YouTubeで聴けるデル・モナコ、コレッリ、バスティアニーニの凄い声 : 2019年1月2日
409. YouTubeで聴けるカイルベルトの2つの<サロメ> : 2019年1月23日
410. YouTubeで聴ける伊福部昭の舞踊曲<サロメ> : 2019年2月23日
411. アンドレ・プレヴィン追悼(1)~<南極交響曲><鎮魂交響曲> : 2019年3月2日
412. アンドレ・プレヴィン追悼(2)~<真夏の夜の夢><動物の謝肉祭> : 2019年3月16日
413. アンドレ・プレヴィン追悼(3)~グリーグの<Pf協奏曲>、モーツァルトの<Pf協奏曲第24番> : 2019年4月1日
414. 平成時代最後の一日 : 2019年4月30日
415. レーヴェの<エドワルド>~4人のバリトン歌手聴き比べ : 2019年5月20日
416. ハンス・ホッターが歌う『ドッペルゲンガー』~2つの録音 : 2019年6月29日
417. 検査入院、手術入院。カラヤンのドヴォルザーク<交響曲第8番>(デッカ盤) : 2019年7月30日
418. がん入院からの帰還。若きカラヤンの<軽騎兵>序曲と、<スケーターズ・ワルツ> 2019年8月26日
419. 超音波内視鏡検査入院。ケンペ、VPOのレハール<金と銀> : 2019年9月22日
420. 手術入院前の胃カメラ。カレーラスとヴンダーリッヒの<グラナダ> : 2019年10月30日
421. ブログ15周年。近衛秀麿の<新世界より> : 2019年10月31日
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430. 給付金10万円。ボールトの<トリスタン>~第3幕前奏曲 : 2020年6月29日
431. 近づく梅雨明けと、手術入院 : 2020年7月31日
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433. 退院後1ヶ月半 : 2020年9月27日
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445. ファイヤータブレットの快適化設定 : 2020年11月28日
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449. 心電図検定2級合格 : 2021年3月2日
450. 心電図検定2級合格までの道のり : 2021年3月10日
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