クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

交響詩<青いユリのために>

2004年10月31日 | 作品を語る
2004年10月31日。ブログ開始。記念すべき第一回投稿は、ひらがな50音の最初の「あ」で始まる曲。

遺伝子工学の進歩によって、ついに青いバラが作られたというニュースを少し前、目にした。バラの品種改良に勤しむ人々にとって、青いバラを作り出すことは永年の夢であった。ドイツのTantauなる人物が「ブルームーン」を発表したのは、もう40年ぐらい前になるだろうか。しかし、この青バラ、色としては決して鮮やかなブルーではなく、むしろ少し紫がかって藤の花の色に近いものであった。一度だけその実物を見た記憶があるのだが、それがいつ頃、どこでだったかはもう思い出せなくなっている。先頃TV等で紹介された遺伝子組み替えによるバラの色はかなり見事なブルーであり、花弁の形も立派なものだった。が、正直言って、私の心に感動はなかった。「ああ、遺伝子いじくるアレで、とうとう出来ちゃったんだ」というぐらいのシラケ気分だった。何だか、うれしくもないのである。

閑話休題。<青いユリ>と題された交響詩を先頃、CDで聴いた。青いバラと同様、自然界には決して存在しないであろう幻の花をモチーフにした作品だ。これは、ギターと管弦楽のための<アランフェス協奏曲>がとりわけ有名な、近代スペインが産んだ協奏曲の鬼(?)ホアキン・ロドリーゴ若き日の佳作である。珍しい作品の発掘に力を入れているナクソス・レーベルから、ロドリーゴ・チクルスの一環として廉価のCDが発売されている。

CDに付属した英語の解説書によると、この作品のもとになっているバレンシア伝説の概要は、以下の通り。

{ ある国の王が、病気になる。3人の息子達が、その病を治す霊力を持つとされる幻の青いユリを探す旅に出る。末の息子が見事そのユリを発見するのだが、野心に燃える兄達によって彼は殺されてしまう。 }

ファンファーレに続いて出てくる一大メロドラマ風の名旋律がいきなり心を惹きつけるのだが、残念ながらその後の展開(構成や管弦楽法など)に作曲家の“若気の至り”が出てしまっていて、全体的な感銘としてはさほどのものが残らない。演奏も、その弱点を補えているものとは言いがたい。

このCDではむしろ、併録された小品のうち、<3つの伝統的な舞曲の調べ>の中の「パストラル」が、しみじみ胸に沁みる美しい旋律を持っている。また、最後に収められた<はるかな彼方を訪ねて>で使われている妖しげなシンバルのクレシェンドや、チェレスタと各木管が織りなすSF的な響きに、興味深いものが感じられる。

若き日のロドリーゴは、こんな曲も書いていたのだ。

【2019年3月11日 おまけ】

ロドリーゴ <3つの伝統的な舞曲の調べ>~パストラル

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