クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

【新記録】1日のアクセスUU(ip)数544。心電図検定の合格基準(再)

2023年01月10日 | 心電図検定
2023年1月10日。昨日(1月9日)は、アクセスUU(ip)数が544あったらしい。どひゃっ。当ブログ18年ちょっとの歴史の中で、これは異変と言ってもいいぐらいの大きな数字である。ちなみにアクセスページ数の方は1131pvで、順位は827/3,142,117位。うちみたいな零細ブログが827位とかって、ちょっと普通じゃない。検索エンジンのロボットが巡回してきていることを差し引いても、昨日は500人超の読者が訪問してきたことになる。「普段は100台、たまに200台に乗ることもある」というのが、当ブログの日頃のアクセスUU(ip)状況なのだが、昨日の数字はいったい何事だろう・・。

無料会員向けの解析ページを見ると、どうやら「心電図検定の合格基準」という記事にアクセスが集まっていたらしい。ああ、なるほど・・。いよいよ今回(第8回)の試験日(2023年1月14~15日)が迫っているから、受検する人たちが「いくつ正答できれば、受かるのかな」と思って検索してみたら、当ブログがヒットしたということなのだろう。

合格基準については、当該記事に書いてあるとおりで、だいたい合っていると思う。改めて具体的に言えば、「級ごとに固定された合格率が実現するように、合否の分かれ目がその都度決められる」というパターンだ。1級が大変なのは、上位約55%だけが合格となるように設定されていること。言い換えれば、100人中45人ぐらいは、(何点取っていても)必ず不合格にされるという仕組みになっている点である。基本的には7割、つまり全50問のうち35問正解するのが記念バッジを手にする条件と考えて良いように思うが、YouTubeに神動画『心電図マイスターチャンネル』が昨年登場して以来、1~2級受検者たちの得点能力は格段に上昇している。そのため、問題の難易度によっては、35問の正答数では足りないということになるかもしれない。心電図検定は、「みんなが高得点なら、みんなが合格」という試験ではないので・・。

しかし落ち着いて考えれば、他の人たちがどれぐらいできたかなんて、実は関係ない。自分が高い得点を取ればよいのだ。よっぽどのことがない限り、具体的には8割(50問中40問)以上正答できれば、間違いなく合格だ。誤答数を10個以内に抑えることを目標にして、頑張ることである。実際には本番で12~13個ぐらいの失敗をしても、おそらく大丈夫。受検者各位、気持ちを強く持って行かれたし。

Get yourself organized and give it your best shot. I cross my fingers.

【追記】

ブログ主は昨年の1級取得を以て、心電図検定については卒業と考えている。が、こうしてまた試験日が近づき、『マイスターチャンネル』で対策ドリルや直前模擬試験が新しくUpされているのを見ると、やおら気持ちがざわめいてくる。w 将来もし心電図検定に有段者コースが新設されて、新井陸先生が「【復元】心電図検定初段を受けてきました」なんて動画を上げる時代が来たら、“検定ハンター”復活かな(笑)?
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心電図検定1級のレベル(8)~副収縮、心室相性洞不整脈を伴う完全房室ブロック

2022年05月14日 | 心電図検定
第7回心電図検定1級に出た問題を振り返る特別記事シリーズも、今回で終了。極め付けの2つが、掉尾(ちょうび)を飾る。

●副収縮(※厳密に言えば、心室副収縮)

―いかにも、1級らしいネタ。副収縮。これの発生機序を理解するのは、かなり大変。「保護ブロックと進出ブロックの二重発生」という難しい概念を把握するには、相当高度な理解力が求められるから。正直、今のブログ主には無理。しかし、この副収縮、出題される波形自体は、そんなに難しいものではない。「PVC(心室期外収縮)が、一見ランダムなようだが、実は間隔が整数倍となる規則的なテンポを保ちながら出現している」というパターンなので、ディバイダーで尺を採れば一応の鑑別が出来るから。具体的な例は『パーフェクトマニュアル』の248~249ページ、あるいは『実力心電図』の246ページ等で見ることができる。今回の試験に出た心電図は、やはりという感じで、『実力心電図』に載っている物にとてもよく似ていた。あと、ネット上で無料閲覧できる物としては、下記↓のサイトに出てくる波形が理解しやすいと思う。

◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →一番右下にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-複雑な心電図の解析編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「第Ⅱ章 異所性収縮」をクリック →そこから「>」のクリックで、1ページずつQuestion & Answerを見ていく。

(※ちなみに、今回の心室副収縮よりもレアで、さらに高度な判読能力を要求される「心房の副収縮」についても、上記のサイトでその恐るべき姿を目にすることができる。興味の向きは、御参照の程。)

―さて、神がかり的な力を以て、『マイスターチャンネル』の新井陸先生が【復元】動画で再現した47問に加え、後日他の受検者たちから寄せられた情報により、残る3つのうち2つまでが埋まった。その2つとは、「マッギン&ホワイトのパターン、いわゆるSⅠQⅢTⅢ(エスいち、キューさん、ティーさん)が見られる心電図を基に、肺血栓塞栓症を選ぶ問題」と、「不安定狭心症を選ぶ問題」である。(※当ブログ主は狭心症を選んで塗った記憶が無いので、多分×になってしまった物だろう。どんな問題だったのか、全く思い出せないが。)これで、計49問が揃ったことになる。・・・で、“神の子”新井陸先生の記憶からこぼれ、他の人たちからもフォローされなかった最後の1問、ミッシング・リンクは、これ↓である。

●心室相性洞不整脈を伴う完全房室ブロック

『パーフェクトマニュアル』なら291~292ページ、『実力心電図』なら177ページ。ネット上の無料サイトで御覧になりたい方は、こちら↓にアクセスされたい。

◎日本不整脈心電学会のHPで「会員および医療関係者の皆様へ」をクリックして開いたページから、少し下へscroll →「教育関連(書籍・情報)」をクリック →右列の上から2番目にある「臨床心電図解析の実際-どこをどう見るか-不整脈編」をクリック →青い字で章番号が並んだ長四角の「第1章・第2章」をクリック →電子ブックの表紙が出たら、左端にある「目次」をクリック →「1.洞不整脈 15」をクリック →そこから「>」のクリックを何度か繰り返してECG S007へ。

―上記S007の問題図を一瞥(いちべつ)しただけで、1級受検者のレベルなら即座に、これが房室解離を起こしている心電図であることに気づかれると思う。問題は、そのあと。RR間隔は規則的なリズムを保っているけれども、PP間隔の方は不規則バラバラ。・・ということは、定義に当てはまらないから、これは完全房室ブロックではない?じゃ、何?・・・ここで注目すべきは勿論、PP間隔である。心電図をよく見ると・・・

QRS complex(=心室興奮)を間に挟んだPP間隔(以下【A】)と、そうではないPP間隔(以下【B】)の2種類に、実は分かれる。そして【A】と【B】は、それぞれが独自に一定のリズムを保った規則的なパルスを刻んでいる。つまり、ぱっと見がバラバラなPP間隔(=洞結節の興奮周期)が、実はちゃんと規則的な【A】と、これまた独自に規則的な【B】が混ざって出ている姿なのだ。それが傍目には、バラバラの不規則に見えてしまう結果になっている・・そういう心電図なのである。その結果、ある意味皮肉な話になるけれども、2級までの勉強で完全房室ブロックの定義をしっかり身につけた人の方が、この問題に正解できないことになる。「RR間隔はレギュラーなのに、PPはバラバラだ。・・ってことは、これ少なくとも、完全房室ブロックじゃないな」と、いきなり正解を除外してしまうことになりかねないから。しかし結論を言うと、これは正真正銘、完全房室ブロックの心電図なのである。だからこその、1級問題。2級までではおそらく絶対に出ないネタだと、はっきり言えちゃうのだ。なお、上記S007の解説ページにある通り、両PP間隔の長さを比べると【A】<【B】となっているのが、1つのポイント。このような姿を示す不整脈を、“心室相性洞不整脈” と呼ぶわけである。臨床でも、完全房室ブロックを示す症例全体の約30~40%で、これが見られるとのこと。決してレアな物ではないようだ。ちなみに英語版だが、これがまた長くて難しい。“ventriculophasic sinus arrhythmia / ヴェントゥリキュロフェイズィック・サイナス・アリズミア”。(←早口言葉かよ。w )

―上述の副収縮同様、心室相性洞不整脈も、「こういうのが、あるんだな」と頭の中に形が一旦インプットされたら、後はそんなに苦労することなく鑑別できるようになる。しかし、その発生機序はやはり、相当難しい。現在最も有力な説について、心臓病学教育研究会のサイトにある「心電図データベース」の症例32で解説を見ることができるが、ブログ主は正直キューピーちゃん(お手上げ状態)。

―これにて、第7回心電図検定1級の試験問題を振り返るシリーズは終了。お疲れ様でした。なお、ブログ主は最近、手指の異常(※神経内科医によると、動作特異性ジストニアの可能性あり)で、生活の一部につらい支障が出てきている。幸い、今回でシリーズ記事が一区切りついたので、しばらく休もうと思う。
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心電図検定1級のレベル(7)~急性心膜炎、たこつぼ心筋症

2022年05月07日 | 心電図検定
今回のテーマは、「急性心膜炎と、たこつぼ心筋症」。いずれの題材も1つずつ、全く迷わずに回答できる簡単な問題が出た。しかし、それら以外にもう1題、予想外の深さを持つ物があった。この↓問題である。

「カテーテルアブレーション後の患者が、胸痛を訴えた。心電図所見から、その原因と考えられる物を選べ」。

問題の心電図を見ると、一目瞭然で急性心膜炎。ほぼ全誘導に亘って、STが上昇。aVRでは、ST低下とPQ上昇。さらに「V6誘導でのST/T比>0・25」という決定的な条件も、十全に満たしている。これで何を迷うのか、というぐらい。

しかし、当ブログ主は、その完璧さに対して逆に違和感を覚えた。往年の“検定ハンター”としての勘(あるいは、嗅覚みたいな物)が、しきりに胸の中でざわめき立つ。「これ、心膜炎じゃねえぞ、多分」。だが、根拠がない。・・・とりあえずのきっかけは、V1誘導の様子。おそらく瀰漫(びまん)的と思われる炎症を急激に起こしていながら、ちょっと静かすぎないか、この波。それと、aVRの波形。これは、「たこつぼ」でもあり得る。だが、(あちこちに異常Q波でも見つかったなら、ともかく)V1誘導が大人しいというだけでは、急性心膜炎を否定する根拠には全くならない。もっとしっかりした何かが、ほしい。(・・・で、ここからが、笑える与太話。以下に述べる展開は、受け狙いの冗談や作り話などではない。本当にこうだった。)

考えあぐねたブログ主が試験中、試みたことは何か。それは、出題者の深層心理にダイブすることだった。(←おいおい。w )「心膜炎と、たこつぼ心筋症。術後に起きる案件として、オペの執刀医には、どちらがより受け入れられるか」。答えは多分、後者。手術後の急性心膜炎に考えられる原因は普通、感染症である。事態の深刻さによっては、アメリカあたりだと下手をするとM&M conferenceが招集され、オペの担当者は針のむしろに座らされる。そして「感染の経路は?」「それが起きた理由は?」「その責任は?」と、鬼のように詰められて・・・。一方、たこつぼ心筋症はどうか。次のような感じで、申し開きがしやすいのではないか。

「はい、なにぶん心筋焼灼(※クライオなら、冷凍)という高侵襲なオペですので、患者様によっては、その、肉体的なストレスが誘因となって、心臓の壁運動異常(※心基部の過収縮と、心尖部のハイポキネシス)を偶発的に起こしてしまう方も、いらっしゃることかと。はい、ある意味、不可抗力・・・」。

この“偶発的”とか“不可抗力”とかいう言葉が使えたら、担当者はかなり気が楽になるはず。つまり、自分たちの落ち度が場合によっては厳しく追及されかねない心膜炎よりも、(言い方は相当悪いが)患者さんには「たこつぼ」を起こしてもらった方がずっとありがたいのではないかと。試験の出題者だって、心外(しんげ)のドクターではないにしても、おそらく医療関係者だろう。自分、あるいは身内が鬼詰(きつ)めのオ○コにされそうな症例は、無意識に避けるんじゃないか。・・・で、一旦マークシートを塗り始めた手を止めて消しゴムをかけ、「たこつぼ心筋症」を選んで塗り直したのだった。よしっ!今日の試験、これで勝つる!我が決断に、一片の悔いなし(ドォーン)!(←ちょっと何言ってるかわからない。)

―これだけの話なら、今回の記事は起こさない。素人の妄想炸裂で、ひたすら滑稽だから。実はこの案件、続きがある。試験後かなり日が経ってから、ふと思いついて、「アブレーション たこつぼ」と並べてググってみたのだ。そうしたら、出てきた。当ブログ主を喜ばせてくれる検索結果が。以下、その一部をコピペ。

★カテーテルアブレーション関連秋季大会2019(日本不整脈心電学会)
第 4 会場 16:30〜17:30 合併症④
演 者 O102. 心房細動アブレーション後に心肺停止を呈した医原性たこつぼ心筋症 岡崇史

★安岡 良文(ヤスオカ リョウブン)J-GLOBAL ID:201401057894722096 更新: 2020年06月03日
アブレーション終了直後にたこつぼ型心筋症を発症した通常型房室結節回帰性頻拍の一例
(第111回 日本循環器学会近畿地方会 2011)

★岡英一郎 2018年12月(※下の本文は長いため、ブログ主が所々カット。)
持続性心房細動に対する肺静脈隔離術後にたこつぼ心筋症を発症した1例
{ ・・・76歳女性。有症候性の持続性心房細動に対してカテーテルアブレーション施行目的で入院。・・・心筋焼灼に伴う疼痛を訴えたため、プレセデックス増量とミダゾラムを投与したところ、喀痰排出が困難となり酸素飽和度の低下をきたした。・・・拡大両側肺静脈隔離術を施行した。・・・術翌日に心電図上前胸部誘導でT波の陰転化を認め、その後呼吸困難が出現し、心エコー検査では心尖部の壁運動低下がみられた。・・・術後にアブレーション焼灼時の疼痛を我慢していたことが判明し、カテーテルアブレーションを誘因とするたこつぼ心筋症と診断した。心房細動に対するカテーテルアブレーションを契機にたこつぼ心筋症を発症した1例を経験した。 }

―では、本稿の結論。下記の2つの根拠をもって、素人が敢えて傾(かぶ)いたことを言ってしまおう。

根拠1.(ブログ主自身は試験中に気づけなかったが、)新井陸先生をはじめ複数の受検者が、「心膜炎らしからぬ“concave型でないST上昇”が、問題図の中に見られた」と、証言しておられること。

根拠2.(試験後何日も経ってから得た検索結果なので、後出しジャンケンになってしまうが、)上のコピペにあるとおり、アブレーション後にたこつぼ心筋症を発症した事例が複数、報告されていること。

【結論】 { 今回(第7回)の、検定試験1級問題。「カテーテルアブレーション後の患者を襲った胸痛は、何が原因か」。正解はおそらく、急性心膜炎ではない。医原性のたこつぼ心筋症だ。 }

―次回は、「2級までではおそらく、絶対に出てこない」と断言できる、これぞ1級!というネタが2つ登場。
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心電図検定1級のレベル(6)~電解質異常

2022年04月30日 | 心電図検定
第7回心電図検定1級に出題された問題を振り返るシリーズ。第6回となる今回は、電解質異常。このテーマについては、典型的な高K(カリウム)血症の分かりやすい心電図が出て受検生は下駄を1つ履かせてもらえたが、その一方で、かなり厄介な問題も出された。

―その「厄介な」心電図の所見は、著明なロングQT。電解質異常を示唆する5つの選択肢から考えられる正解候補は、3つ。まず、低Mg(マグネシウム)血症。これについては、ブログ主の勝手な思い込みで、普通他の電解質異常に併発して起こる物というイメージがあり、それだけを一本釣りみたいに選ぶ考えは持ちにくかった。また、実臨床での意義はともかく検定試験の場合、Na(ナトリウム)はたいてい囮(おとり)か、“かませ犬”の役目を負わされていることが多いので、これもスルー。高K血症は、ないない。全然違う。―となると、答えは低K(カリウム)血症か、低Ca(カルシウム)血症。で、問題の指示は、「1つ、選べ」。

―試験当時、さっと見た感じでU波が増高してロングQTUになっているような印象を受けたので、当ブログ主は低K血症を選んだ。そして、すぐに次の問題へ。・・・ところがこれ、思っていた以上に controversial(物議を醸し、意見が割れるよう)な問題であることが、試験終了後に判明する。その日の夜以降、ツイッター上で何人かの受検者(※いずれも医療従事者、それも循環器のプロと見られる方々)が、この問題についての疑義を表明したのである。まず、そのうちのお一人・・・

●まるく @knochenpoppun Jan 12

{ 心電図検定にてQT延長してる心電図の原因を1つ選べで、低Ca血症、低K血症、低Mg血症が並んでて分からんかったですね。(先天性QT延長の3型っぽい形だった【注1】) 正直全部検査オーダーするべきだと思うし(Mgを慌てて追加オーダーするのが目に見える)この問題臨床的に意味があるのかよく分からなかったですね。 }

【注1】 上のツイートにある“先天性QT延長の3型っぽい形”について、ブログ主より補足。まず、きっちりした名称は、「先天性QT延長症候群 ロマーノ=ウォード(Romano=Ward)Ⅲ型」。具体的には、“平坦なST segmentがズズズッと長く伸びた後、寝坊して起きてきたプッチンプリンみたいに陽性T波がぴょこんと顔を出す”波形を示すもの。(※その発生機序からメキシレチン処方に至るまでの詳しい話を、『心電図マイスターチャンネル』の動画「先天性QT延長症候群」で、じっくり聞くことができる。視聴推奨。)

―あら、困った。ロマーノ=ウォードⅢ型だと、ブログ主が見た気になっていたTU complexは形成されない。・・で、実は『マイスターチャンネル』の新井陸先生も【復元】動画の中で、「U波はなかったので、低K血症は除外しました」って。・・・やだ、どうしましょう。じゃ、正解は低Ca症?

―続いて、もうお一方のツイート。

●aidvioa38 @ironmusk_titan Jan 18

{ 心電図検定1級の試験で唯一かつ最大の疑問点が残った問題が一つ。QT延長の電解質異常を答える問題で、低K、低Ca、低Mgなどが選択肢に並んでいた。QT延長→3つの電解質異常を全て選ぶ問題はよくあったが、そのうちひとつを選ぶのは見たことがなかった。・・・問題の心電図は、低Mgのようなテント状Tはなかったにしても、低Kを示唆するTU複合/2峰性Tや低Caを疑うやや平坦なQT部分延長の両者が認められ、電解質異常の所見を知っていた上で挑んでも答えは選べないと思った。・・・電解質異常は様々な変化をきたすことは臨床でよく経験しているし、高Kなどは選べないのはわかるが、低K/Ca/Mgの心電図変化は感度・特異度の問題で、そもそもどれも選べないじゃないかと思った。公式の問題としてのあの心電図は微妙だと思ったのと、実は複数回答もありえるのかと思った。心電図検定試験作成委員の方よかったら解答を教えてください! }

―来ました。「低Kを示唆するTU複合/2峰性T」。うひゃひゃ。やっぱり、あったんだ。QTU。きゃぴっ。・・で、結論なんだけど、これ多分、正解が複数ある。「低K、低Ca、低Mgの、どれでも良い」みたいな。ちなみに、前回の記事でご登場いただいたマイスター認定のT @t_cardio_ecgさんは、この問題については低K血症を選んでおられたらしい。一方、低Ca血症を選んだ新井陸先生は今回、成績優秀者。つまりお二方とも50点満点~それに近い得点だったわけで、どちらでも正解だったと考えるのが妥当でしょうと。

―ある意味、この問題は一種の「不適切設問」だったんじゃないかな。問いかけ方としては、「考えられるものを3つ選べ」とするか、「考えにくいものを2つ選べ」という風に出せば良かったのだと思う。

【 おまけの話 】

今回の受検で使った本の中に、『主訴から攻める心電図』(EMI Alliance教育班 羊土社)という素晴らしい一冊がある。その最初の方のページに、「意識障害を伴う徐脈性ショックを起こした87歳女性の心電図」が提示され、原因を問われる問題が出ている。心電図所見は、P波が消失した促進性の房室接合部調律。QTも長い。ブログ主は回答できなかったが、正解は高Mg血症。え?血清マグネシウム値が低下しているのではなく、逆に上がっているって?う~ん。何なんでしょう?・・・解説ページによると、この患者さんは酸化マグネシウムの過剰摂取をしていたことが後に判明したらしい。どうやら、高齢者にありがちな「頑固な便秘」に対する処方薬を、本人の判断でやたら飲み過ぎていたということのようだ。(ああ、そういう事なの。)患者自身は体に良かれと思っての行動だったんだろうが、その結果が意識障害を伴う徐脈性ショックとなると、ちょっと怖い。実臨床では、いろいろな事があるようで・・。

―次回は、「急性心膜炎と、たこつぼ心筋症」。ブログ主の素人パワーが炸裂する。w
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心電図検定1級のレベル(5)~小児の心電図、先天性心疾患

2022年04月23日 | 心電図検定
第7回心電図検定1級の問題を振り返るシリーズ。今回は、小児の心電図と先天性心疾患について。

●小児の心電図

当ブログ主が今でも思い出せる範囲だけに限ると、小児心電図に関する問題は、2つ。1つは、「何か大事(おおごと)かと思わせながら、実は単なる洞不整脈」という心電図。これについては、特になし。

問題は、もう1つの方。これがエグい。例えば胸部誘導の陰性T波が出されたなら、『公式問題集&ガイド』で、おそらく誰もが勉強済み。年齢を確認しながら、正常という診断を出していく。右軸偏位や右室肥大など、いわゆる右心負荷を示唆する波形についても同じ。これも、(年齢を鑑みながら)基本的には正常扱いで良いことが多いというのも、1級受検者なら皆勉強済みだろう。ところが今回出題されたのは、QTが長い心電図。何がエグいって、先の2例と違って、これは心電図だけにとどまらず、更なる精査が必要とされるケースが必ずあるように思われるから。つまり、先天性QT延長症候群を、その子が持っている可能性。その事が脳裏をよぎったので、当ブログ主は「正常」という選択肢を選べなかった。而(しか)して正解は、「子どもなら、これぐらい長いQTでも正常」【注1】。・・・やられた。あな、くちおし。(おや、どこからか負け犬のオーボエが)・・・ねえ~、遺伝子検査は~?いいの~?しなくて~。

【注1】 「正常な心電図」をここでの正解と認めた根拠は、今回の試験でマイスター認定を取ったT @t_cardio_ecgさんという方が、『マイスターチャンネル』の新井陸先生に寄せたツイートで、この問題に対して「正常」を選んだ旨書いておられること。)

―さて、当ブログ主が持っている本の中で、小児心電図の独立した解説ページを持っているものは・・・

◎『日本医師会雑誌 第144巻・特別号(2) Electrocardiography A to Z 心電図のリズムと波を見極める』より、S268~S277 [4]小児の心電図

単に「小児の心電図」という漠然とした言い方でなく、胎児期、新生児期、幼少期と順を追って、それぞれの心電図的特徴を述べるところから記事が始まる。まあ、さすがと言うか・・。その後、「どういう状況(あるいは、条件)が揃ったら、病的意義を認めるか」の解説に移っていく。医師向けにsome tipsを与える良記事になってはいるが、必ずしも心電図検定に直結する物ではなさそう。

◎『レジデントノート 2016-4 Vol.18 No.1 救急の心電図 どう読む?どう動く?』(羊土社)より、68~81ページ 【各論】小児の心電図判断

救急搬送されてきた子どもの症例を3つ取り上げ、レジデント向けの助言を行なっている。例えば、「近医で胃腸炎の診断を受けた女の子が、その後も状況の改善がなく、搬送されてきた。心電図をとったらVT(心室頻拍)で、それが全然収まらない。更なる検査により、劇症型心筋炎と判明。緊急入院となった」とか。怖。この特集もあまり検定向けの物とは言えなそうだが、実臨床に即した好企画の記事ではある。

●先天性心疾患

続いて、小児の心電図と強い関連性を持つテーマ。先天性心疾患。今回は(も?)、ASD(心房中隔欠損症)が出た。・・・で、やはりと言うか、レア症例の一次孔欠損よりも発生率がずっと高い、二次孔欠損の方が登場。問題の心電図所見は、右軸偏位と不完全右脚ブロック。ただ、もう一つASDに特徴的とされる“クロシュタージュ・サイン【注2】”は、今回の問題図には見られなかった(と記憶している)。孤立性の陰性T波は・・・忘れた。w ちなみに、『心電図・心エコー コンパクトナビ』 (一色高明&杉村洋一著 医学教育出版社)の103ページに、一次孔欠損と二次孔欠損の違いを簡略化して描いたモデル図がある。興味の向きは是非、ご参考に。

【注2】 クロシュタージュ(crochetage)=「錠破り、ピッキング等に使う鉤(かぎ)針」を意味するフランス語。

―さて、先天性心疾患についての検定対策お勧め本。やはり何と言っても、これ↓だろう。

◎『心電図の読み方 パーフェクトマニュアル』(渡辺重行・山口巖著 羊土社)

検定試験のネタとして妙に偏愛されている心房中隔欠損(ASD)をはじめ、心室中隔欠損(VSD)、動脈管開存、肺動脈弁狭窄、Fallot四徴症(ToF ※指定難病215)、エプスタイン奇形(※指定難病217)、修正大血管転位(※指定難病208)、さらには心内膜床欠損まで、主立った先天性心疾患を手広くカバーしている。作りが受検生向きでありがたいのは、各疾患の波形的特徴を簡潔な文とフローチャートにまとめてくれていること。例えば、「ファロー四徴症は、尖状P波+右軸偏位+右室肥大」「エプスタインは、WPWのB型+肺性P波」「修正大血管転位はV5、V6でq 波がなく、V1で認められる。時に、房室ブロックを併発」等。いずれも覚えやすく、「このうちのどれかに、本番で出会えたら嬉しいねえ」と思わせるほど、実際の試験に即している。学習者の間でライバル視されることもある『実力心電図』との比較だが、先天性心疾患に関しては、『パーフェクトマニュアル』の圧勝と言ってよさそうだ。その一方で、心電図検定では『実力心電図』に準拠した物が多く出されるという毎度の傾向を考えると、「ASD、VSD、ToFの3つは絶対、頭に入れておかねばならない」ということも、間違いなく言えるだろう。

―次回のテーマは、電解質異常。実は今回出題のこれ、受検者たちの間から試験後に疑義が続出し、かなりcontroversial(物議を醸すよう)な問題であることが判明したのだった。詳しくは、次回。
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