クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

2011年2月近況。若きカラヤン&PO、歌劇<ゴイェスカス>

2011年02月28日 | エトセトラ
今日で2月も終わりだ。早いものである。随分前から予告されていたことではあるが、今年の花粉症はやはり厳しいものになりそうだ。今日(2月28日)はたまたま雨で少し楽になっているけれども、おとといから昨日にかけては相当きつい症状が出た。この何年かは鼻に塗るタイプの市販薬とマスク、メガネの着用で殆ど問題なく過ごせていたのが、今年はとてもそんなことでは済みそうもない。私などよりもっと症状が重い人は、さぞかし大変だろうと思う。と言いつつ、今またくしゃみが連発。目もかゆい。やれやれ・・・。(ところで、前回ちょっと書いた電気毛布だが、これは大正解!風呂に入る前にスイッチを入れて布団を暖めておくと、寝るときにはポカポカしていて、もう幸せそのもの。w やせ我慢せずに、もっと早く買えばよかった。)

今ワープロ原稿を打ちながら、去る20日の日曜日に放送されたFM番組『名演奏ライブラリー』のエアチェックMDを聴いている。カラヤン、フィルハーモニア管の演奏によるムソルグスキー(ラヴェル編曲)の<展覧会の絵>である。良い演奏だ。力強くダイナミックで、手綱のよく引き締まった名演。恰幅の良いサキソフォンをはじめ、管楽器群が皆良い味を出している。『キエフの城門』に入った瞬間のパワフルな響きなど、いかにもカラヤンらしい。と、へぼな手つきでワープロを打っているうちに、番組は進んで、グラナドスの歌劇<ゴイェスカス>(※1)間奏曲になった。これも巧い演奏である。カラヤンはこういう小曲を上手に仕上げて聴かせる名人だったが、この種の小品集に於いても、私はベルリン・フィルとの録音よりフィルハーモニア時代の古い演奏の方がずっと好きである。当グラナドス作品を含んだカラヤン、フィルハーモニア管による「オペラの序曲・間奏曲集」は、LPレコード時代、私のお気に入りの1つだった。特にフランツ・シュミットの歌劇<ノートルダム>間奏曲など、後のベルリン・フィルとの再録音(いずれもEMI)などより遥かに好ましい名演だった。

上記2月20日の放送当日は、番組の前半をリアルタイムで聴き、後半を録音する形にして用事に出かけたのだが、その前半に流れた3曲(R・シュトラウスの<ドン・ファン>・1951年録音、モーツァルトの交響曲第38番<プラハ>・1958年録音、オッフェンバック原曲によるバレエ音楽<パリの喜び>・1958年録音)の中では、特に<パリの喜び>が傑出した名演だった。これは流麗にして、なお且つ生き生きとした生命感に溢れる素晴らしい演奏で、軽妙な味わいからロマンティックな表情付けまで、カラヤンの巧みな音楽作りの技が最高度に発揮されていた。オーケストラも優秀。モーツァルトの交響曲で感じられた音色に対する不満も、この曲では全くと言っていいぐらいに無かった。ロザンタールの編曲による同曲は確か50分弱の作品だったはずだが、当カラヤン盤の演奏時間は28分弱。つまり、ハイライト盤。うーん、これほどの名演なら、是非とも全曲の録音をやってほしかった。

前にも書いた話だが、私がカラヤンの録音を何か聴く時は、(オペラの全曲盤を別とすれば)ウィーン・フィルとのデッカ録音、または今回の例にあるようなフィルハーモニア時代の古い録音にほぼ限られてくる。理由は単純明快で、ベルリン・フィルとのグラモフォン(及びEMI)録音は、オーケストラの磨き上げの見事さに反比例するような内容の無さ、そのこけおどしの様な空虚な音響にうんざり、げんなりさせられることが多いからである。勿論、フィルハーモニア管との録音にも曲による出来不出来の差はあるけれども、今回FMで聴けた<パリの喜び>や<展覧会の絵>のような、他では得難い快演も相当数存在する。で、結局「フィルハーモニア時代の方が良い」という結論に到達するのだ。

さて、ネットで見たNHKの番組表によると、次回3月6日(日)の『名演奏ライブラリー』は、若い頃のジェイムズ・レヴァインを特集する予定のようだ。好漢の本領ともいうべきオペラは殆ど紹介されないようだが、それでもちょっと楽しみではある。当日特別なことがなければ、これも一応聴いてみようかと思っている。

―今回は、これにて・・・。

(※1) グラナドスの歌劇<ゴイェスカス>は全曲の演奏時間にして約60分前後の短いオペラで、ストーリーも至って単純なものである。こういうマニアックなオペラはなかなか取り上げる機会がないので、ここでちょっとだけご紹介させていただこうかと思う。

第1幕・・・闘牛士のパキーロ(Bar)は上流階級の娘ロザリオ(S)に一目惚れし、彼女をフィエスタに誘う。しかしロザリオには、フェルナンド(T)という恋人が既にいる。王室の衛兵隊長を務める誇り高きフェルナンドはパキーロの行為を知って怒り、自分もそのフィエスタに行こうと決意する。一方、パキーロにも元々ペパ(Ms)という恋人がいた。ペパは自分の恋人の気を惹きつけたロザリオに対し、激しい敵意を燃やす。

第2幕・・・フェルナンドの尊大な態度は、フィエスタに集まった平民の若者たちに不快な気分をもたらす。ペパはフェルナンドを挑発し、ロザリオに喧嘩を挑む。若者たちがフェルナンドに襲いかかると、ロザリオはあまりの事に失神してしまう。そんな騒ぎの中、パキーロとフェルナンドはついに決闘することを決める。やがて意識を取り戻したロザリオは、フェルナンドとともにその場を去る。

第3幕・・・庭のベンチに座りながら夜啼きうぐいすの声を聞いていたロザリオは、自らもそれに合わせて歌い始める。そのあと家に入った彼女は、そこでフェルナンドと二重唱。やがて、決闘の時刻を告げる鐘が鳴り、パキーロがやってくる。フェルナンドは止める恋人を振り払い、決闘の場に赴く。ロザリオも、フェルナンドの後を追う。その彼女の眼の前で、フェルナンドは致命傷を負って倒れる。ロザリオの腕に抱かれて、フェルナンドは息絶える。

―このオペラの音楽的な特徴としては、まず「合唱が場面や状況を説明するような感じで活躍している」ことが挙げられる。単独でも演奏されることの多い有名な間奏曲以外では、第3幕でロザリオが歌うアリアが佳作。あと、夜啼きうぐいす(ナイチンゲール)を表す音型もなかなか良い。ただ、このオペラ、スペイン情緒みたいなものは豊かに出ている一方で劇的な構成感には乏しく、いささか一本調子な印象を与えてしまう面もあるように思われる。
コメント (2)
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