クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

大腸癌の切除と、今後の治療

2009年06月09日 | エトセトラ
先月末に退院してから、今日(6月9日)で2週間ほどになる。約20日間の入院期間中、私は大きな手術を受けた。大腸の一部が切り取られて無くなってしまったが、そのかわり命拾いをした。(※手術自体は全身麻酔による深い眠りの中で行なわれるので、何も怖くない。恐ろしいのは、目が覚めてから始まる激痛である。手術後の数日間たるや、まるで地獄のようだった。)

さて、癌の病巣を切除したことはそれでよいのだが、その後気になるのは転移の問題。大腸癌の場合、主に次のような3通りの転移パターンがある。

1.血行性転移

血液の流れに乗って、癌細胞が身体の他の部位に移っていくこと。大腸癌は門脈を通って肝臓に移るか、あるいは肺に転移する例が多いとのこと。手術前のX線検査で、その有る無しが大体分かる。

2.播種(はしゅ)

大きく増殖した癌細胞が腸壁を突き破って飛び出し、腹膜等へ飛び散る転移。X線は勿論のこと、CTやMRIといった最新機器でも見つけるのは困難で、医師が患者の腹部を切開し、肉眼でその有無を確認する。看護師さんの言葉によると、それは白い米粒のような形をしているらしい。

3.リンパ行性転移

大腸近辺にあるリンパ節に、癌細胞が転移すること。癌が出現すると、体内の防衛組織であるリンパ節がすぐに反応し、荒れてくる。ただ、その荒れ方を目で見ただけでは、それが単なる炎症にとどまっているものなのか、癌が転移してしまった後の姿なのかは判断できない。癌の摘出手術では病巣そのものだけでなく、リンパ節を含む周辺組織も一緒に切除(郭清)するのが普通で、そこで切り取った組織を専門の調査機関に依頼し、精密な分析を行なってもらう。そのため、結果が分かるまでには、ある程度の日数が必要となる。

―結論から言えば、私の場合、上記1、2、3のどれにも当てはまらずに済んだ。転移はなかったのである。大腸の約3分の1をすっぽり覆いつくすほどの進行癌であったにもかかわらず、それがよそに移ることなく腸管内に収まっていたというのは、ほとんど奇跡と言ってもいいような僥倖(ぎょうこう)であった。ただ、医師の所見では、「転移まではいかなかったけれども、そのギリギリ直前の状況だったので、今後は薬での治療をお勧めしたい」とのことで、結局私は抗がん剤をいただくこととなった。あとは、それが続けられるかどうか、である。この分野の薬は決して、患者に対して優しくはないからだ。

(PS) 入院時に持っていったクラシックCD 【順不同】

●田部京子(Pf)のメンデルスゾーン:《 無言歌集 》 (DENON盤)

●アンセルメのコヴェントガーデン・バレエ・ガラ・コンサート (RCA盤 2枚組・ゴールドCD)

●バックハウス(Pf)とシューリヒトの<皇帝>(1961年4月27日ライヴ・Ermitage盤)

●バルビローリのグリーグ:<ペール・ギュントの劇音楽>、他 (EMI盤)

●カルミニョーラのヴィヴァルディ:<四季>旧録音 (スイスDIVOX盤)

●モントゥー、LSOのラヴェル管弦楽曲集 (デッカ音源も含んだフィリップス盤)

●クイケンのモーツァルト:歌劇<コジ・ファン・トゥッテ>全曲 (Brilliant盤)

これらのCDを選んだ理由や、それぞれについての思い入れみたいなものを語るのは、今回は断念せざるを得ない。正直言って今の私には、「趣味を熱く語る文章」は書けないのである。気力もさることながら、身体がついてこないのだ。(どれも非常に良い物ですよ、と言うだけなら簡単なのだが。)

あえて一つ書くとすれば、「オペラ全曲は、身体が悪くなると聴くのがつらくなる。どんなに好きであっても」というところだろうか。病室に持ち込んだ上記7点のCDのうち、オペラだけは1枚目の前半ですぐに聴くのをやめてしまった。クイケン盤<コジ>の演奏の良さについては当ブログで過去に語らせていただいたことがあるが、その名演でさえ、病院のベッドに横たわる私にはしんどかった。そのあたりは退院してからも相変わらずで、先日から少しずつまた自宅でクラシックのCDを聴き始めているのだが、オペラにはいまだ手を伸ばせずにいるのである。
コメント (4)
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