心電図検定シリーズの続き。今回から、検定2級の受検勉強に当ブログ主が使った教材の話。まずは、書籍編。
●『公式問題集&ガイド<改訂3版>』(日本不整脈心電学会編 メディカ出版)
心電図検定は試験終了時に解答用紙だけでなく、問題用紙も回収される。そして創設以来ずっと、具体的な出題内容は一切公開されることがなく、秘匿され続けている。各種の外国語検定などとは対照的に、過去問題集のような本も出ていない。「級別問題集とかが、あればいいのに」などとも思うのだが、おそらく今後とも、そういうのは出ないだろう。当ブログ主の感ずるところ、その徹底した秘密主義を埋め合わせるかのように、出題者は毎回、それこそ愚直なまでに、『公式問題集&ガイド』に準拠した問題を出し続けている。今回(第6回)の2級受検にあたって、「この本を勉強したからこそ、回答できた」と実感した例をとりあえず3つだけ挙げるなら、問題5、18、そして68あたりになるだろうか。問題5については、各種の障害がそれぞれどういう波形をしているか、試験直前に再チェック。それがそのまま、得点につながった。問題18はまさにこの本でこそ知り得た題材で、「おおっ。こ、これが出たか・・」と本番中、目頭が熱くなった(笑)。問題68については、同書に掲載されているカテコラミン誘発性の物とはおそらく違う症例(ジギタリス中毒か、アンデルセン症候群)が今回の試験では採用された(と、当ブログ主は推測している)。・・・そして勿論、これら3つ以外の題材も、(本当に、あれもこれも皆そうじゃんと、感心するぐらい)この本に出ているネタが大量に使われていた。
―ということで、結論。これは、心電図検定受検に絶対必須の1冊。
【注記】 今回(第6回)の2級にも出題されたtorsade de pointes(TdP)だが、この本にはカタカナの読み方が付いていない。日本語で「多形性(あるいは、倒錯型)心室頻拍」と呼ばれる同疾患名は元々、「尖った先端が、より糸のようにねじれた状態」を意味するフランス語である。従って、原語の発音になるべく近い書き方をするなら、“トルサド・ド・ポアント”が正しいということになる。たまに「ポアンツ」というのを見かけるのだが、あまりお勧めできない表記である。フランス語は複数形のsが付いても、ツとは発音しないからだ。
●『12誘導心電図 よみかたマスター<トレーニング編>』(栗田隆志編著 MCメディカ出版)
収録された問題数は50しかないけれども、どれもよく練られた良問。そして、本番の検定試験そっくりに選択肢が並んでいる。当ブログ主はこの本(と、上記の『公式問題集&ガイド』)を定期的な“学習進捗度確認テスト”として利用し、最後は試験日直前の“実戦モードの模擬テスト”として使った。
ネタバレになるので題材名と解答は言わないが、この本のQ10、Q22、Q28が今回(第6回)の2級で出題された。また、Q16の題材は今回こそ出題されなかったものの、いしゃたまチャンネルのなかじー氏がYouTube動画「心電図検定2級の全てを語ります。」の中で言及しているとおり、過去に出題された実績があり、典型的な2級問題と言ってよいものである。それと、Q42&Q46。この2問に共通する材料自体は紛れもなく2級の範囲で、実際今回の試験にも出ていたように記憶しているが、この本にあるような難しいパターンはおそらく1級レベル。また、Q番号は伏せておくが、1:1伝導の心房粗動も1級レベルの題材と言っていいだろう。
ところで、今回(第6回)の検定2級では、(この本にも勿論、収録されている)たこつぼ心筋症について、意外な角度から攻められるという体験をした。患者の現病歴に精神的なショックを偲ばせる事項が書いてあり、心電図上も、胸部誘導に巨大陰性T波が並ぶ。而(しか)して、正解の選択肢は「QT延長」。思いがけない角度から来たなあと、妙に気持ちを煽られた。同書に於いて、それと類似した“意外な角度からの攻撃”が体験できる題材は、ARVC(不整脈原性右室心筋症)である。「ε(イプシロン)波に様々な形態があることは数を重ねた練習で承知していたが、まさかこういう風に来るとは・・」が、初めてその問題をやったときの感想だ。なお、「右脚ブロックが顕現している心電図にあっては、ε(イプシロン)波の同定は困難である」という実例を、臨床心臓病学教育研究会の『心電図データベース』で見ることが出来る。ネタバレを避けるために症例番号は書かないので、興味の向きはそちらのサイトにて御確認の程。
―ということで、当ブログ主が2級の受検用に使った問題集は、上記の2冊。あと参考までに、一応買って目にした教材としては、以下↓の3つが挙げられる。
●『これならわかる!心電図の読み方』(大島一太・著 ナツメ社)
beginner-friendlyな、人気の1冊。実際、これは内容的にかなり優れた入門書であり、価格も非常に良心的。当ブログ主も、学び始めの頃によく開いた。レベルの点でも情報量の点でも2級受検用には足りないが、重要な基礎知識を幅広く網羅しているので、最初に手にする教科書としては好適な名著。特に、カラー図解が秀逸。また、ある程度学習レベルが進んでからでも、この本は読み直すたびに何らかの発見が得られるので、コスパの高さも相当な物。
●『続 やってみようよ!心電図』(高階經和・著 インターメディカ)
検定練習向きの、選択肢型問題集。パート1(全50問)の心電図波形問題は簡単なレベルの物ばかりなので、4級の受検勉強~3級の基礎確認用に向いている。パート2のセルフ・アセスメントについては、④に当たるQ121~144の波形問題が、2級受検の練習にも使えるレベル。それ以外の①②③⑤は、文章の穴埋め問題。これらは知識の整理には良いかもしれないが、受検に必要な実戦的判読能力の涵養にはあまり役に立たないように思える。「そういう定義や能書きを言葉で覚えるより、1つでも多くの心電図を見るよう努めるべき」という考えから、当ブログ主は④以外のページは無視した。(※ただ、見方を変えれば、ここに出題されている文章の穴埋めを全部きっちり回答できるぐらいに定義が頭の中で整理されているとしたら、それはそれで凄いレベルの人だと思う。)
●『心電図ナビカード』(生天目安英・著 Gakken)
遊びに使うトランプよりも大きめの、横13cm×縦7cmのカード(全25枚)。透明プラスチックで出来た01番「正常洞調律」のカードから始まり、各種の不整脈や心疾患を24枚の紙カードに整理したセット。4級の受検勉強、及び3級受検に向けての基礎確認をいつでも好きなときにできるよう、ポケットに入れて持ち運べるように作られた便利な教材。紙の質もしっかりしており、出来の良い商品と言える。但し、レベル的にはあくまで“基礎的な波形の確認用”の物なので、2級受検者には不要である。(※当ブログ主は買ってパラパラと見ただけで、結局、勉強にはほとんど使わなかった。)
―次回は、ネットのサイト編。
●『公式問題集&ガイド<改訂3版>』(日本不整脈心電学会編 メディカ出版)
心電図検定は試験終了時に解答用紙だけでなく、問題用紙も回収される。そして創設以来ずっと、具体的な出題内容は一切公開されることがなく、秘匿され続けている。各種の外国語検定などとは対照的に、過去問題集のような本も出ていない。「級別問題集とかが、あればいいのに」などとも思うのだが、おそらく今後とも、そういうのは出ないだろう。当ブログ主の感ずるところ、その徹底した秘密主義を埋め合わせるかのように、出題者は毎回、それこそ愚直なまでに、『公式問題集&ガイド』に準拠した問題を出し続けている。今回(第6回)の2級受検にあたって、「この本を勉強したからこそ、回答できた」と実感した例をとりあえず3つだけ挙げるなら、問題5、18、そして68あたりになるだろうか。問題5については、各種の障害がそれぞれどういう波形をしているか、試験直前に再チェック。それがそのまま、得点につながった。問題18はまさにこの本でこそ知り得た題材で、「おおっ。こ、これが出たか・・」と本番中、目頭が熱くなった(笑)。問題68については、同書に掲載されているカテコラミン誘発性の物とはおそらく違う症例(ジギタリス中毒か、アンデルセン症候群)が今回の試験では採用された(と、当ブログ主は推測している)。・・・そして勿論、これら3つ以外の題材も、(本当に、あれもこれも皆そうじゃんと、感心するぐらい)この本に出ているネタが大量に使われていた。
―ということで、結論。これは、心電図検定受検に絶対必須の1冊。
【注記】 今回(第6回)の2級にも出題されたtorsade de pointes(TdP)だが、この本にはカタカナの読み方が付いていない。日本語で「多形性(あるいは、倒錯型)心室頻拍」と呼ばれる同疾患名は元々、「尖った先端が、より糸のようにねじれた状態」を意味するフランス語である。従って、原語の発音になるべく近い書き方をするなら、“トルサド・ド・ポアント”が正しいということになる。たまに「ポアンツ」というのを見かけるのだが、あまりお勧めできない表記である。フランス語は複数形のsが付いても、ツとは発音しないからだ。
●『12誘導心電図 よみかたマスター<トレーニング編>』(栗田隆志編著 MCメディカ出版)
収録された問題数は50しかないけれども、どれもよく練られた良問。そして、本番の検定試験そっくりに選択肢が並んでいる。当ブログ主はこの本(と、上記の『公式問題集&ガイド』)を定期的な“学習進捗度確認テスト”として利用し、最後は試験日直前の“実戦モードの模擬テスト”として使った。
ネタバレになるので題材名と解答は言わないが、この本のQ10、Q22、Q28が今回(第6回)の2級で出題された。また、Q16の題材は今回こそ出題されなかったものの、いしゃたまチャンネルのなかじー氏がYouTube動画「心電図検定2級の全てを語ります。」の中で言及しているとおり、過去に出題された実績があり、典型的な2級問題と言ってよいものである。それと、Q42&Q46。この2問に共通する材料自体は紛れもなく2級の範囲で、実際今回の試験にも出ていたように記憶しているが、この本にあるような難しいパターンはおそらく1級レベル。また、Q番号は伏せておくが、1:1伝導の心房粗動も1級レベルの題材と言っていいだろう。
ところで、今回(第6回)の検定2級では、(この本にも勿論、収録されている)たこつぼ心筋症について、意外な角度から攻められるという体験をした。患者の現病歴に精神的なショックを偲ばせる事項が書いてあり、心電図上も、胸部誘導に巨大陰性T波が並ぶ。而(しか)して、正解の選択肢は「QT延長」。思いがけない角度から来たなあと、妙に気持ちを煽られた。同書に於いて、それと類似した“意外な角度からの攻撃”が体験できる題材は、ARVC(不整脈原性右室心筋症)である。「ε(イプシロン)波に様々な形態があることは数を重ねた練習で承知していたが、まさかこういう風に来るとは・・」が、初めてその問題をやったときの感想だ。なお、「右脚ブロックが顕現している心電図にあっては、ε(イプシロン)波の同定は困難である」という実例を、臨床心臓病学教育研究会の『心電図データベース』で見ることが出来る。ネタバレを避けるために症例番号は書かないので、興味の向きはそちらのサイトにて御確認の程。
―ということで、当ブログ主が2級の受検用に使った問題集は、上記の2冊。あと参考までに、一応買って目にした教材としては、以下↓の3つが挙げられる。
●『これならわかる!心電図の読み方』(大島一太・著 ナツメ社)
beginner-friendlyな、人気の1冊。実際、これは内容的にかなり優れた入門書であり、価格も非常に良心的。当ブログ主も、学び始めの頃によく開いた。レベルの点でも情報量の点でも2級受検用には足りないが、重要な基礎知識を幅広く網羅しているので、最初に手にする教科書としては好適な名著。特に、カラー図解が秀逸。また、ある程度学習レベルが進んでからでも、この本は読み直すたびに何らかの発見が得られるので、コスパの高さも相当な物。
●『続 やってみようよ!心電図』(高階經和・著 インターメディカ)
検定練習向きの、選択肢型問題集。パート1(全50問)の心電図波形問題は簡単なレベルの物ばかりなので、4級の受検勉強~3級の基礎確認用に向いている。パート2のセルフ・アセスメントについては、④に当たるQ121~144の波形問題が、2級受検の練習にも使えるレベル。それ以外の①②③⑤は、文章の穴埋め問題。これらは知識の整理には良いかもしれないが、受検に必要な実戦的判読能力の涵養にはあまり役に立たないように思える。「そういう定義や能書きを言葉で覚えるより、1つでも多くの心電図を見るよう努めるべき」という考えから、当ブログ主は④以外のページは無視した。(※ただ、見方を変えれば、ここに出題されている文章の穴埋めを全部きっちり回答できるぐらいに定義が頭の中で整理されているとしたら、それはそれで凄いレベルの人だと思う。)
●『心電図ナビカード』(生天目安英・著 Gakken)
遊びに使うトランプよりも大きめの、横13cm×縦7cmのカード(全25枚)。透明プラスチックで出来た01番「正常洞調律」のカードから始まり、各種の不整脈や心疾患を24枚の紙カードに整理したセット。4級の受検勉強、及び3級受検に向けての基礎確認をいつでも好きなときにできるよう、ポケットに入れて持ち運べるように作られた便利な教材。紙の質もしっかりしており、出来の良い商品と言える。但し、レベル的にはあくまで“基礎的な波形の確認用”の物なので、2級受検者には不要である。(※当ブログ主は買ってパラパラと見ただけで、結局、勉強にはほとんど使わなかった。)
―次回は、ネットのサイト編。