クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

ベーム、VPOのブルックナー/交響曲第3番、第4番(デッカ録音)

2015年05月31日 | 演奏(家)を語る
2015年5月。先月に続いて今月もまた、グラモフォンとデッカのオリジナルス・シリーズ24ビット盤CDを何枚か購入した。昨年の消費税増税以来、食糧などの必需品以外は極力買い控えしてきた当ブログ主ではあるが、税込み767円という(おそらく期間限定であろう)超特価に惹かれ、この機会に懐かしい名盤をハイビット・リマスターの音でいくつかまた聴き直してみようと思ったわけである。消費税率は3%上がっても、本体価格がここまで安くなれば関係ないという気持ちもあった。

そうして買い集めた中から今回は、カール・ベームがウィーン・フィルを指揮してデッカに録音したブルックナーの交響曲第3番と第4番についての感想文を書いてみようかと思う。(※厳密な話をすると、今月767円で買ったのは第4番の方だけ。同じシリーズに含まれる第3番はセールの対象外だったため、全く別のルートから、もうちょっと高い値段で買った。)これらはいずれもLPレコードの時代によく聴いた懐かしい音源だが、今月まとめて聴き直してみて、両方の演奏に対してほぼ共通した感想を持つこととなった。

第1楽章を聴きながら最初に感じたのは、オーディオ的な肩すかし感。デッカ音源の24ビット・リマスターということで、ちょっと期待し過ぎたかも。当然のことながら、昔のLPレコードや初期CDの音に比べれば遥かに豊かな響きで、各楽器の分離も明晰。ダイナミック・レンジも広く、レコード発売当時の高い評価が十分に偲ばれるものではある。ただ、これはもっと良い音での再生が可能なんだろうな、という思いが抑えがたく湧き上がってくることも否定できない。このあたりは、うちで使っているオーディオ機器の限界というのもあるだろう。プレイヤーはSACD登場以前の“年代物”だし、何と言ってもアンプが昭和時代のプリメインだから(苦笑)。

そのあたりの話はともかくとして、ベームの演奏スタイルは、第1楽章から既に鮮明に感じ取れる。ウィーン・フィルの音色を随所で活かしつつ、各声部をバランスよく克明に浮かび上がらせる。曲の細部に至るまで、およそ緩みというものがない。結果、楽曲全体が非常に引き締まった印象を与える物に仕上がっており、音の彫琢が曲の隅々にまで行き届いている。とにもかくにも、“堂々たるブルックナー演奏”といってよいものだ。ただ、指揮者カール・ベームは同郷の大作曲家が遺した作品の偉大な構築性―壮大且つ堅牢に組み上げられた音響の伽藍としての音楽の佇まい―に強い敬意と共感を抱きつつも、作家の魂の逍遥に付き合うほどにはsympatheticでなかった。そこまで寄り添うべくして、ベームの精神はいささかザッハリッヒ(即物的)に過ぎた。今回2枚のCDを聴き直して、私はそのような感想を持った。

そんな風に思う最大の根拠は、両曲の第2楽章の演奏にある。特に第4番には格好の比較材料があるから、話がよりわかりやすい。クナッパーツブッシュの指揮による、有名なモノラル期の名演だ。同じオーケストラ、同じデッカ・レーベルへの録音なのに、同楽章の印象がこんなにもかけ離れて違うとは!尤も、このあたりの比較論を始めると、当ブログの場合、行きつくところが見えてしまう。宇野評論の後追い、二番煎じの文章に成り上がって終了だ。なので、この第2楽章の比較議論は省略(笑)。で、もう一方、第3番の第2楽章となると、ベームの指揮は4番以上につまらない。今回2枚聴き直した中で、ここはちょっと退屈してしまった。第4番第2楽章の方は指揮が幾分ザッハリッヒであったとしても、まだ楽しめる余地があるのだが、3番の第2楽章をこんな風にやられたら本当につまらない。音楽は立派に鳴り続けているのだが、「仏作って、魂どこよ」状態なのだ。

逆に第3楽章は、ベームの演奏スタイルと曲の性格が幸福な一致点を見出し、類例の見出しがたい成功を収めることとなる。第4番の方も勿論立派だが、第3番のスケルツォ楽章は極めて完成度が高く、聴後の充実感が半端でない。ベームのブルックナーに対しては総じて辛口の宇野センセーでさえ、この3番のスケルツォ演奏に関してだけは、「ベーム盤が完璧無類。ここだけでも価値がある」と絶賛激賞している。このあたりにベームのブルックナー演奏の、良くも悪くも真髄が示されているように思える。

で、いよいよ最後、第4楽章。第3番と第4番、どちらに於いても、演奏家の気迫漲る力演を堪能することができる。オーディオ的な面でも、第1楽章で感じていた「これ、もっといい音で聴けるはずなんだよな」という軽い失望感みたいなものが、ここではほとんど無くなる。このCDでも、あるいはうちの機械のレベルでも、これだけの音が聴ければとりあえず文句はないという気分だ。曲自体の充実ぶりもあって、第4番の方が全体的に聴き栄えのするものになっているが、最後の締め(結尾部)は第3番が格好いい。まさに、胸がすく思い。おおっ、決まったあ!と。w  将来SACDプレイヤーを買う時が来て、当ベーム盤にさらなる優秀リマスター盤が作られるまで、今回買った2枚はしっかりとCD棚に愛蔵しておくことにしよう。

―というところで、今回はいくぶん駆け足でベームのブルックナー2曲についての感想文を書いてみたが、他にも「今さらまた、そんなのを?」と自分ながら思ってしまうようなCDを今月何枚か買った。それら他のCDについても、また今後機会を見て触れていけたらと思う。

今回は、これにて。
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