クラシック音楽オデュッセイア

2009年の大病以来、月1回程度の更新ペース。クラシックに限らず、身の回りの事なども、気の向くままに書いております。

ハンス・ホッターが歌う『ドッペルゲンガー』~2つの録音

2019年06月29日 | 演奏(家)を語る
2019年6月29日。前回の記事(※レーヴェの<エドワルド>~聴き比べ)に登場したバリトン歌手の一人、ハンス・ホッターが録音に遺した名唱をもう一つ。シューベルトの歌曲集<白鳥の歌>から、ハイネの詩による『ドッペルゲンガー』である。この曲の題名は長いこと「影法師」と訳されてきたが、今は「分身」とか「生き霊」とかいった和訳を当てることが多くなっているようだ。

【歌詞大意】

ひっそりと、静まりかえった夜。かつて好きだった人の家の近くまで来た。彼女はとうの昔に町を去り、今は家だけがそのまま残っている。そこに誰だかもう一人の男が立っていて、身をよじらせている。やがて月明かりに照らし出された男の顔を見たとき、俺はぎょっとした。そいつは、俺だった。よう、俺の分身。青ざめた、もう一人の俺よ。その昔、俺を幾晩も苛(さいな)んだあの愛の苦悩を、なんでまたそこで蒸し返しているんだ。

●ジェラルド・ムーアのピアノ伴奏による1954年のEMIセッション録音。

当ブログでかつてホッターの<冬の旅>を語った際に軽く言及していた、<白鳥の歌>全曲録音からの1曲。ぐっと抑えた歌い出しから劇的なエンディングに向けて盛り上げていく、その声と表情の配分が巧い。※この動画については、やや大きめの再生ボリュームがお薦め。



●ミヒャエル・ラウハイゼンのピアノ伴奏による1950年の録音

ドイツ・リートの王様D・F=ディースカウの歌唱でさえ“迫力に欠ける、きれい事”に聞こえてしまうほどの、途轍もない威力を持った名唱。上記1954年盤に比べると声のコントロールが十全ではないけれども、超人的なパワーと表現が聴く者を圧倒してやまない。なお、この音源は<白鳥の歌>全曲ではなく、ドイツ・リート名曲集みたいなレコードに収められていたものらしい。※こちらは、元の音量が大きめ。



―今回は、これにて。
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