goo blog サービス終了のお知らせ 

クラシック音楽オデュッセイア

2025年正月、ついに年賀状が1通も来なくなった“世捨て人”のブログ。クラシック音楽の他、日々のよしなし事をつれづれに。

<イカロスの飛翔>

2004年12月16日 | 作品を語る
イカロスというのは、古代ギリシャ神話に登場する名工ダイダロスの息子の名前である。父親が作った翼で、一緒に迷宮から飛んで脱出したはいいけれど、空を飛ぶ快感に有頂天になってしまい、父の注意も聞かずに高く高くへと舞い上がり、ついに太陽の熱でその翼の接着剤(蝋とも膠とも伝えられる)が溶けてしまい、墜落。そのまま海面に激突して、死んでしまったおニイチャンである。前回登場した本物の鳥たちとは違って、鳥のように翼をつけて飛び立って、イカロスは命を落とした。

さて、歴史に埋もれた音楽作品や今では顧みられなくなった曲というのは、確かにつまらない作品も多く、「まあ、埋もれて当然かな」と納得できてしまうケースが少なくないのだが、中には「いや、打ち捨てる前に、これを一度いい演奏で聴いてみたい」と執行猶予(?)を与えてみたくなるものも、一方では存在する。例えばチュルリョーニスの二つの交響詩、即ち<海>と<森の中で>あたりがまずその好例だし、石井歓の<シンフォニア・アイヌ>などは打ち捨てるどころか、良い演奏が行なわれてそれがCD化されれば、必ずやファンが生まれるであろうと私は思っている。(あの終楽章の土俗的な力感は、伊福部ワールドに近いものがある。)

一般には指揮者として(のみ)知られるイーゴリ・マルケヴィチが若い頃に作曲した<イカロスの飛翔>もまた、「良い演奏で聴きたい」と切に願われる作品の一つである。若き日のマルケヴィチが、四分音やらポリリズムやらといった大胆な技法を駆使して書いたこの秘曲、忘却の淵に打ち捨てるにはちょっと惜しい作品なのである。CDとしては、リンドン・ジーという人がアルンヘム・フィル(知らない・・)を指揮したマルコポーロ盤を一度購入して聴いたのだが、結果はかなりトホホであった。で、ほどなく売却。とても評論家の片山杜秀氏が言う「かっこ良すぎて、鼻血が出ちゃうぜ」な演奏ではなかった。

しかし、この曲のハイライトとなる「飛翔」の場面は確かにかっこいいところがあって、良い演奏で聴けたらかなり乗れそうな感じがする。キラッ、キラッと輝く陽射しと、浮き立つ若者の心が重なり合ったような独特の昂揚感が何とも素敵なのだ。それゆえにまだ、打ち捨てるのは猶予したいと思っているのである。

この曲の他の録音としては、若い頃のバーンスタインがNYPとやったものがあるらしいのを、『レコ芸』か何かの広告で昔見たことがあるのだが、確かそれは10何枚かのBOXセットの中に入っているものだった。この20分弱の一曲のために、他の欲しくもないCDの大箱を買う気にはとてもなれず、結局見送りにしたのであった。先述のリンドン・ジー(←だから、誰よ?)よりは間違いなく、バーンスタインの方が良い演奏をやっているだろうとは思ったのだが・・。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <カントゥス・アルクティクス> | トップ | イワン・ペトロフ »

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。