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クラシック音楽オデュッセイア

2025年正月、ついに年賀状が1通も来なくなった“世捨て人”のブログ。クラシック音楽の他、日々のよしなし事をつれづれに。

YouTubeで聴ける伊福部昭の舞踊曲<サロメ>

2019年02月23日 | 演奏(家)を語る
2019年2月23日。前回扱ったシュトラウス作品からの連想で、今回は伊福部昭の舞踊曲<サロメ>。この曲については昔、平凡な演奏のCDを1回だけ聴いた。正直、あまりパッとした印象がなく、「まあ、伊福部先生らしい曲ではあるよね」ぐらいの感想しか、当時は持てなかった。それが、少し前に「ようつべ」で良い演奏に出会ったおかげで、作品自体のイメージというか、評価みたいなものがグンとアップしたのだった。

まずは、『7つのヴェールの踊り』から。山田一雄&新星日響による1987年の熱演。



次いで、全曲。一般のクラシック・ファンは上の『踊り』だけを話の種程度に聴けば十分かと思うが、伊福部ファンなら当然、全曲を聴かずにはおられまい。w こちらも、優れた演奏が「ようつべ」に載っている。広上淳一&日フィルによる名演で、これを聴いたことが、伊福部サロメに対する評価の上昇につながったと言っても過言ではない。

実は、広上が指揮する伊福部作品については、当ブログ主はずっと批判的だった。<タプカーラ>にしても、<SF交響曲ファンタジー>にしても、ただ上手にオーケストラの交通整理をしているだけの、ただひたすら自分の耳の良さを誇示しているだけの、そのどこか冷めたような演奏態度に苛立ちを禁じ得なかったからである。「あんた、怪獣映画の音楽とか、内心、馬鹿にしてるだろ」「タプカーラ(特に、第3楽章)の熱狂に、あんた、全然共感してないだろ」と、ちょっと問い質してみたくなるような(でも、実際に本人が目の前に現れたら、「いえいえ、何でもございません。内輪の冗談でして」と、<雪娘>に出てくるブルシーラみたいにヘタレそうな)当ブログ主の趣味に全く合わない分析的な演奏が、どうにも好きになれなかった。しかし、この<サロメ>全曲は随分、印象が違う。山田一雄に比べればずっとすっきりした、いかにも広上らしいスタイリッシュな演奏ではあるのだが、作品への共感というのか、何か熱いものが感じられるのである。

(※注意。この動画は曲の区切り目ごとにバチッ、バチッという耳障りなノイズが出る。おそらく、これを載せた人の使用機に何か不具合があるのだろう。気にはなるが、現段階で唯一の全曲動画なので、貼っておこうと思う。)



―今回は、これにて。
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YouTubeで聴けるカイルベルトの2つの<サロメ>

2019年01月23日 | 演奏(家)を語る
2019年1月23日。YouTube動画の貼り方を覚えた先月以来、当ブログで昔書いていた珍しい曲や、お気に入りの演奏が今どれぐらい同サイトに載っているものかと、ちょっと調べてみた。過去に言及した作品を全部チェックできているわけではないのだが、主だったところをざっと見た範囲で言えば、びっくり仰天の結果だった。ほとんどが、載っている!あらまあ、こんなのまで有るのかと、ただもう驚くばかり・・・。つくづく、時代は変わったなあと思う。(※ただ、「ようつべ」動画はある日突然削除されて消えたりすることがあるので、その点は注意しておく必要がある。)

―と言うわけで(←何が?)今回は、ヨゼフ・カイルベルトの指揮によるR・シュトラウスの<サロメ>を採り上げることにした。「<サロメ>の演奏史(1)」という過去記事の中で、当ブログ主が“私を一番ゾクゾクさせてくれるサロメ”と絶賛していた若きインゲ・ボルク主演による1951年のバイエルン・ライヴである。先月のオルロフ盤<オネーギン>と同様、今回も“論より証拠”を示す記事となる。時間的な都合などで全曲聴くのは無理という方は、サロメがヨカナーンの首を求めるところから幕切れまでの約30分をお聴きいただけたらと思う。

●インゲ・ボルク主演による1951年7月21日のバイエルン・ライヴ

『サロメの踊り』は[59:40~]、「ヨカナーンの生首がほしいの」とサロメが可愛らしく言うところから、ヘロデとの激しい応酬が展開されるのは[1:09:46~](←ボルク主演盤は、ここが最高)、皿に盛られたヨカナーンの首が出てくる場面は[1:21:30~]、生首を手にしてサロメが恍惚状態に入るのは[1:34:29~] 。なお、当音源は、ボリュームを普段よりかなり大きめにしての再生がお薦め。




さて、当時の蠱惑的(こわくてき)なボルクに比肩し得たもう一人のサロメ歌いと言えば、やはりという感じで、クリステル・ゴルツである。と言っても、ここに貼り付ける音源はよく知られたクレメンス・クラウス、ウィーン・フィルのデッカ録音ではないし、かつて当ブログで扱ったミトロプロスのメト・ライヴでもない。上と同じカイルベルトの指揮による1948年のドレスデン・ライヴだ。今回<サロメ>を採り上げる気になったのは、同音源を「ようつべ」で発見し、初めて聴いて強い感銘を受けたから。現在録音で聴けるゴルツのサロメは蓋(けだ)し、これが↓最高である。この頽廃的官能美!録音状態が意想外に良いのも、嬉しいポイント。

●クリステル・ゴルツ主演による1948年5月20日のドレスデン・ライヴ

『サロメの踊り』は[59:04~]、「ヨカナーンの生首がほしい」は[1:09:47~]、皿に盛られたヨカナーンの首が出てくる場面は[1:21:55~]、生首を手にしてサロメが恍惚状態に入るのは[1:34:56~](←ゴルツ主演盤は、ここがハイライト)。それともう一つ、 [1:33:14~]の所。ここで聞かれるサロメの声・・・。



―上記2つの名演を比べての総合的な評価は聴く人それぞれの判断に委ねるが、サロメ役について言えば、「東西の横綱ががっぷり四つという感じで、ちょっと優劣がつけられない」と、当ブログ主は思っている。キャピキャピした猫耳ギャル(ただし、性格は残酷)を取るか、若い美人OL(ただし、内面はドロドロ)を取るか、あとは聴く側の趣味・好みの問題であろう。w 

―今回は、これにて。
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YouTubeで聴けるデル・モナコ、コレッリ、バスティアニーニの凄い声

2019年01月02日 | 演奏(家)を語る
2019年1月2日(水)。新年、明けましておめでとうございます。今回は、先月覚えた「ようつべ」の動画貼りをまたやりたくて、お正月早々の特別投稿。当ブログ主のお気に入り音源を、3つ。

◎若きマリオ・デル・モナコの超人的な“Esultate(=喜べ)!”(1951年のライヴより)



◎フランコ・コレッリのセッション録音盤“Nessun dorma(=誰も寝てはならぬ)”(1962年)※日本語対訳付き



◎エットレ・バスティアニーニが歌う<道化師>トニオのプローロゴ(=前口上)

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YouTubeで聴けるボリショイ劇場黄金期の<エフゲニ・オネーギン>

2018年12月24日 | 演奏(家)を語る
2018年12月24日(月)。天皇誕生日の、振替休日。今月、ひょんなきっかけから、YouTubeの動画をブログに貼り付ける方法を覚えた。各動画の画面下にある「共有」をクリックしてから埋め込みコードを呼び出し、それを自分のブログ原稿ページにコピペすれば完了とのこと。ああ、そうやればいいのかと、今頃・・・(苦笑)。で、新しい記事で早速何か載せてみようと思ったのだが、さて、どの音源を選んだものかと、しばし思案の思案橋。

結論。検索を通してたびたびアクセスをいただいているらしい<エフゲニ・オネーギン>を採り上げることにした。と言うのも、つい先日、当ブログ主にとって最高の<エフゲニ・オネーギン>全曲が、YouTubeに載っているのを発見したから。「<エフゲニ・オネーギン>の歴史的名演(1)」という過去記事の中で、当ブログ主が “ベスト・オネーギン”と書いていた、アレクサンドル・オルロフ指揮ボリショイ劇場管弦楽団、他による1948年の録音である。具体的な賞賛箇所については当該過去記事に記してあるのと、今回は論より証拠があるということで、この場で贅言を並べるのは控えたい。

時間的な都合などで全曲聴くのは無理という方は、第2幕の後半部分だけでもお聴きいただけたらと思う。オネーギンに決闘を挑み、死を覚悟したレンスキーが愛するオリガに向かって叫ぶ壮絶な「さようなら!」[1:44:17]、迫力に満ちた濃厚なボリショイ・サウンドが響く間奏曲[1:45:15~]、有名なアリア『我が青春の日々は、いずこへ』[1:48:38~]、そしてオネーギンの銃に撃たれてレンスキーが絶命する幕切れまでの、合計約17分。<ボリス・ゴドゥノフ>のユロージヴイを一番の当たり役にしていた名歌手イワン・コズロフスキーの、一世一代とまで言えそうな圧倒的名唱が聴かれる。

続いては、[2:01:38]から始まる第3幕がお薦め。タチヤーナを歌うエレナ・クルグリコワ(※ヴィシネフスカヤやミラシキナが登場する前の時代に活躍していた人)が「手紙の場」を持つ第1幕より、この第3幕の方で良い出来映えを見せているということ、重鎮マルク・レイゼンが歌う貫禄満点のグレーミン公が聴けるということ(※有名なアリアは、[2:12:39~])、そして第1幕の登場シーンからずっとオネーギン役で素晴らしい存在感を示してきたアンドレイ・イワノフの物凄い声「この恥、このタスカー(注1)、みじめな運命!」がラスト・シーンで聴けるということ・・これらが、その理由である。



―ところでレンスキー役と言えば、当録音のコズロフスキーとしのぎを削っていたもう一人の名テノール歌手セルゲイ・レメシェフが、長きに亘って同役の代名詞的な存在だった。ただ、当ブログ主の感想としては、複数の音声録音で聴ける歌よりも、こちら↓の映像に記録された物こそ、レメシェフ最高のレンスキーであると絶賛したい。声、歌唱、そして風貌と揃って、これはもう究極のレンスキーと言ってよい。オネーギン・ファンを自認する人は是非、見てほしい。



―最後に、もう一つ。当オルロフ盤で重厚なグレーミン公を演じているマルク・レイゼンは何と、90歳の時にも同役のアリアを舞台で歌っている。そのときの記録映像が、これ↓。凄すぎるだろ、この人。w



―今回は、これにて。

(注1)タスカー ・・・この言葉については、当ブログ2007年4月9日の記事『エフゲニ・オネーギンを巡って』に解説あり。
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ムーティの<アイーダ>~バイエルン・ライヴ(1979年)

2018年11月29日 | 演奏(家)を語る
2018年11月29日。先日、ムーティが指揮した<アイーダ>全曲のライヴCDを聴いた。これは1979年3月22日にバイエルンで行なわれた公演の記録である。何年も前に買って以来、ずっと“つんどく状態”にしてあったオルフェオ盤のCDだが、今月やっと落ち着いて全曲を聴くことができた。ムーティにとっては、あの誇り高きオペラ・デビュー盤(EMI)以来、およそ5年後の同曲ライヴということになる。で、いきなり感想の結論だが、ここでのムーティの成長ぶりには目覚ましいものがあり、バイエルン国立歌劇場のオーケストラとコーラスの優秀さも特筆に値する。

録音状態も、良好。この時代のライヴ音声としては、かなり良い。オケの細かいニュアンスも、歌手たちの声の表情も、非常に良くとれている。また、この種のライヴ音源を出す時のオルフェオ・レーベルは粗悪なリマスターを行なっていることが多く、購入者をがっかりさせるのがいつものパターンなのだが、当CDの音声は珍しく良質なものであると言える。

さて、歌手陣。栄光のEMI録音に比べると、正直言って、かなり落ちる。文句なしに立派なのは、ラダメスを歌うドミンゴ。「いつもながら、さすがですね」というところ。次いで、アムネリスを歌うブリギッテ・ファスベンダーが渾身の熱演。この人は声に厚みがあるタイプの歌手ではなく、イタリア・オペラにはちょっと厳しいものがあるが、役柄になりきったその打ち込みぶりは賞賛すべきだろう。問題を感じたのは、アイーダ役のアンナ・トモワ=シントウの声。この人、こんな癖のある声だったっけかなあ、とちょっと考え込んでしまった。(少なくとも当ブログ主にとっては)決して耳当たりの良い声ではない。このCDを今後また聴き直すことがあっても、アイーダの声を聴かなくて済みそうな場面ばかりを選んでしまいそうだ(笑)。で、一番駄目なのが、アモナスロ役のジークムント・ニムスゲルン。あのカプッチッリと比べるのが気の毒になるぐらい、出来が悪い。ランフィス役のロバート・ロイドはまあ、可もなく不可もなくというところ。ギャウロフの存在感とは、比べようがない。

緊張感溢れるスピーディな音楽の進行、歌手陣の非力さを補って余りあるオケの雄弁さ、そしてパワーあふれる合唱団の声。ここでのムーティの指揮は、本当に見事な世界を作り出している。実のところ、EMI盤に於いては、絢爛を極めた歌手陣に比べて合唱が薄く、幾分不満が感じられたものだったが、当バイエルン・ライヴではその渇きが一気に癒やされることとなった。一方、ちょっと引っかかったのは、「凱旋の場」でトランペット・ソロが音を外してしまったところと、第2幕のエンディングでテンポをいじったところ。ライヴの場合、ソロの人が難しい音を外してしまうミスは割とありがちで致し方ない部分もあるが、あの第2幕の終曲は(EMI盤でやっていたように)速めのインテンポでしっかりした造型を保ったまま、きっちりと締めた方がずっと感動的に仕上がって良いのではないかと当ブログ主は考える。(※と言っても、この部分、あのアバドでさえ、スカラ座のミュンヘン公演でムーティ以上にかっ飛んだストレッタを効かせていたので、そのようにしたくなる要素が何かあるんだろうなとは思うが・・。)

―というところで、今回はこれにて。
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