THE KILLER暗殺者/チェ・ジェフン監督
元暗殺者で裕福な生活をしている男の妻が、友達と旅行に行くという。そうして妻の友人の娘である女子高生を、旅行の間面倒を見るように言われる。男は愛する妻のいう事を、はねつけることが出来ない性分のようだ。そうして妻を空港に送った後、その女子高生とその友人は、夜のまちに遊びに行くというので、小遣いを渡して送ってやる。しかし彼女らは売春組織に拉致誘拐されてしまうのである。状況がまずいので、彼女らを救い出すために、悪の巣窟に殴り込みに行くことになるのだった。
荒唐無稽なアクション映画なのだが、テンポもいいし、鉈やナイフや拳銃もふんだんに使われて派手だし、なかなかに盛り上がって観ることができる。預かった女子高生は、単なる馬鹿なのだが、だからと言って誘拐していいとは言えない。悪の組織も段階を経て、闇が深くなる感じもする。強力なライバルのような手強い敵も存在する。それらの敵を顔色一つ変えることなく、どんどん殺して先に進んでいく。悪い警官もいて、利用したりする。ふつうなら体がいくつあっても足りないところだが、超人なので、絶対に死なないのである。
しかしながら、こういう活劇のさらに面白くなる要素として、主人公もダークな悪人だということかもしれない。いわゆる正義の味方だと、いろいろと制約があって、例えば敵をやっつけるにしても、残酷にやってはならないようなところがあると、観ている方は結構シラケる。この主人公は、手段を択ばない上に、いくら悪人だとはいえ、拷問にかけたり、誘導してひっかけて、結局虫けらのように殺したり、ひどく残忍なところがある。それはクールさというか、かっこよさの演出ではあるのだが、そういうところがかえって清々しいところがあって、観ていて気持ちがいいのである。悪い奴だから殺しているというだけでなく、自分が困るから(奥さんに怒られるかもしれないからだという、なんとなくの情けなさもあるが)めんどくさいけどやらざるを得ないのである。金もたくさん使うし、もちろん命だって削っている。もともとやり手の殺し屋だった設定だし、以前の狂暴な血が目覚めてきて、クールにはやっているが、楽しんでもいるのかもしれない。ヤバい感じもあるはずなのに、そういうところが仕方なくて良い訳である。
そうではあるが、いったいどこまでやるべきかというのはある。一種の罠にはまっている訳なのだが、巻き込まれる理由は何なのだろうか。ふつうはここまでやる必要など無い訳だが、それはやはり愛なのかもしれない。そういうところはちょっと笑ってしまうのだけど、そのぶっ飛びどころが行き過ぎているので、許してやるより仕方ないのである。