2月15~16日に「米大統領選挙の日本への影響」という拙文を書いた。
http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=995031660c9e4039f9a663fcdaa12ecd
http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=c5e62a59d912de2783b24274d6dba7eb
そこに、次のようなことを書いた。
わが国のマスコミは、ヒラリーとオバマの戦いを連日のように報道している。初の女性大統領の誕生か、それとも初の黒人大統領の誕生か、確かに今回の候補戦は大衆の耳目を引く。これらの候補がどのような政策を掲げており、それが実行されるようになった場合、わが国にはどういう影響が予想されるか、それが大事なのだが、そういう報道は少ない。
ヒラリーは最も親中的で、日本にはやや敵対的ですらある。オバマも親中的だが、日本への関心は低いようで、どういう政策をしようとしているか、まだ明確でない。いずれにしても、民主党大統領になった時は、わが国は、米中の狭間で厳しい立場に立たされるだろう。これに対し、マケインは、台頭する中国への対処を重要課題と位置付けて、日米同盟を重視している。マケインは、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「安全保障パートナーシップ」を構築する構想を明らかにしている。また、有力大統領候補の中でただ一人、日本人の拉致事件に触れ、北朝鮮との交渉で弾道ミサイルの問題に加え、拉致事件も考慮に入れると言明している。
日本人としては、日本を重視し、中国の危険性を知り、拉致問題にも強い関心を持った大統領候補の主張に、もっと注目すべきだろう、と。
以上のような拙文を書いてから1ヶ月以上たつが、マスコミの多くの報道姿勢は変わっていない。有識者の言論でも、対日政策という点から各候補を論じているものは、少ない。こうした中で、今朝の産経新聞「正論」に、佐々淳行氏がメディア報道の偏りを指摘し、3候補の政策を検討した上で、マケイン候補を支持する意見を載せた。傾聴すべき意見として以下に転載する。
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●産経新聞 平成20年3月28日付
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080328/amr0803280309001-n1.htm
【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 マケイン候補の勝利を願う
2008.3.28 03:08
≪偏ったメディア報道≫
日本のメディアの米国大統領選挙の報道ぶりは明らかに公正さを欠いている。初めから共和党はイラク・ブッシュ失政でダメと決め込み、ヒラリーか、オバマか、初の女性大統領かいや黒人大統領成るかというセンセーショナルな二者択一に新聞もテレビも埋めつくされている。共和党のマケイン候補はフルネームさえ紙面・画面にのらず、まるで泡沫(ほうまつ)候補扱いだ。
だが本当にそうなのだろうか。筆者はわずか200年と歴史の浅いアメリカ民主主義が、女性又は黒人の大統領をたやすく受け入れる程成熟しているとは思わない。オバマへの最悪の極端な反発もあるかもしれない。
マケインは英国系WASPの代表、与党共和党の統一候補、祖父も父も海軍大将という名門の白人、ベトナム戦争で空母艦載機パイロットとして参戦し、撃墜され、拷問と虐待に5年半耐えた元海軍少佐の「英雄」であり、2000年大統領選でブッシュを追い上げた有力な下院・上院議員経験者である。71歳の百戦錬磨の政治家、ジョン・シドニー・マケイン候補が本選挙で史上初の女性候補、もしくは黒人候補と対決したとき、アメリカの有権者は果たしてどちらを選ぶだろうか。
マケインは負けると先入観で決めこんでいて、埒(らち)もない福井県小浜市の“オバマ・フィーバー”の狂態の報道に、あんなに紙面や画面を割いていいのだろうか。
≪3候補の政策評価を≫
外国の首長選挙ではあるが、中国と北朝鮮からの各種の脅威にさらされている今の日本にとって同盟国アメリカの大統領選挙の結果は、少なくとも向こう4年間の日本の国運を左右しかねない大問題である。核・ミサイル・拉致の一括解決を拒否されて6カ国協議から締め出されて孤立無援の日本にとって、日本の味方になってくれる候補者が米国大統領になることこそ望ましいことだ。
首相官邸や外務省は内政干渉になるからコメントできないが、マスコミは少なくとも3候補のアジア政策、とくに対日・対中国政策を、日本の国益という観点から分析評価し、国民に誰が一番いいのかその利害得失を解説するのがその任務ではないのだろうか。
ヒラリー、オバマ両候補の選挙演説をきくと、いずれもアジア政策は中国重視で、日本や日米同盟についての言及はゼロに等しく、いずれが勝っても日米関係は冷え切るだろう。一方ネオコンでもリベラルでもない“マーヴェリック(一匹狼)”の異名をとるマケイン候補の政見は、3候補中ただ一人「日米同盟強化」「日本の国連常任理事会入り支持」「プーチンの覇権主義反対」「強硬な外交介入主義」「人権外交の立場からの拉致問題重視」を主張、さらに共和党でただ一人の「地球環境保護・公害防止論者」である。苛烈な戦争体験をもつ軍人だからこそイラク戦争について現実派の立場をとる。
今の日本に必要な米国大統領は、このマケイン候補だと思う。100年前日露戦争の際、帝政ロシアの覇権主義的南下政策に反対して、日英同盟の英国と協力して日本の味方をしてくれたセオドア・ルーズベルト大統領の再来となるかもしれないからだ。
≪直言受け入れる度量≫
セオドア・ルーズベルトが1905年日本を支持して締結した「桂・タフト協定」はブッシュ=ライス=ヒルの対中鮮宥和(ゆうわ)政策により6カ国協議で中国に朝鮮半島の優越的支配を認める「逆桂・タフト協定」状態となっている。マケイン候補の最も尊敬する米国政治家がセオドア・ルーズベルトであることも奇遇である。もし彼が勝てば、アーミテージら共和党の知日・親日派がカムバックし、副大統領、国務・国防両長官、駐日大使など日本重視のホワイトハウス、ペンタゴン(国防総省)の布陣も夢でない。
1990年1月8日、前内閣安全保障室長だった筆者は、アマコスト駐日大使邸で日米防衛関係の両国高官が出席した席で、マケイン上院外交委員長と日米同盟について激しい議論を交わした。日本の防衛努力の不足を、小柄だが精悍(せいかん)な同議員は厳しく批判し、「日米同盟の破棄を米国議会が決議したらどうする」と日本側に迫った。
筆者は「私は同盟堅持派だが、米側が破棄通告してきたら直ちにマッカーサー憲法改正、核武装派となる」と応じた。「では私にどうせよというのか」と尋ねる同議員に筆者は乱暴な軍人英語で「口出しは無用」と直言した。驚いたことに激しい気性でなる同議員は「率直な意見だ。ではそうしよう」と筆者の非礼な直言を受け入れた。その度量の広さに感服した筆者は以来、同氏を高く評価しているのである。(さっさ あつゆき)
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http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=995031660c9e4039f9a663fcdaa12ecd
http://blog.goo.ne.jp/admin.php?fid=editentry&eid=c5e62a59d912de2783b24274d6dba7eb
そこに、次のようなことを書いた。
わが国のマスコミは、ヒラリーとオバマの戦いを連日のように報道している。初の女性大統領の誕生か、それとも初の黒人大統領の誕生か、確かに今回の候補戦は大衆の耳目を引く。これらの候補がどのような政策を掲げており、それが実行されるようになった場合、わが国にはどういう影響が予想されるか、それが大事なのだが、そういう報道は少ない。
ヒラリーは最も親中的で、日本にはやや敵対的ですらある。オバマも親中的だが、日本への関心は低いようで、どういう政策をしようとしているか、まだ明確でない。いずれにしても、民主党大統領になった時は、わが国は、米中の狭間で厳しい立場に立たされるだろう。これに対し、マケインは、台頭する中国への対処を重要課題と位置付けて、日米同盟を重視している。マケインは、日米とオーストラリア、インドの4カ国による「安全保障パートナーシップ」を構築する構想を明らかにしている。また、有力大統領候補の中でただ一人、日本人の拉致事件に触れ、北朝鮮との交渉で弾道ミサイルの問題に加え、拉致事件も考慮に入れると言明している。
日本人としては、日本を重視し、中国の危険性を知り、拉致問題にも強い関心を持った大統領候補の主張に、もっと注目すべきだろう、と。
以上のような拙文を書いてから1ヶ月以上たつが、マスコミの多くの報道姿勢は変わっていない。有識者の言論でも、対日政策という点から各候補を論じているものは、少ない。こうした中で、今朝の産経新聞「正論」に、佐々淳行氏がメディア報道の偏りを指摘し、3候補の政策を検討した上で、マケイン候補を支持する意見を載せた。傾聴すべき意見として以下に転載する。
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●産経新聞 平成20年3月28日付
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080328/amr0803280309001-n1.htm
【正論】初代内閣安全保障室長・佐々淳行 マケイン候補の勝利を願う
2008.3.28 03:08
≪偏ったメディア報道≫
日本のメディアの米国大統領選挙の報道ぶりは明らかに公正さを欠いている。初めから共和党はイラク・ブッシュ失政でダメと決め込み、ヒラリーか、オバマか、初の女性大統領かいや黒人大統領成るかというセンセーショナルな二者択一に新聞もテレビも埋めつくされている。共和党のマケイン候補はフルネームさえ紙面・画面にのらず、まるで泡沫(ほうまつ)候補扱いだ。
だが本当にそうなのだろうか。筆者はわずか200年と歴史の浅いアメリカ民主主義が、女性又は黒人の大統領をたやすく受け入れる程成熟しているとは思わない。オバマへの最悪の極端な反発もあるかもしれない。
マケインは英国系WASPの代表、与党共和党の統一候補、祖父も父も海軍大将という名門の白人、ベトナム戦争で空母艦載機パイロットとして参戦し、撃墜され、拷問と虐待に5年半耐えた元海軍少佐の「英雄」であり、2000年大統領選でブッシュを追い上げた有力な下院・上院議員経験者である。71歳の百戦錬磨の政治家、ジョン・シドニー・マケイン候補が本選挙で史上初の女性候補、もしくは黒人候補と対決したとき、アメリカの有権者は果たしてどちらを選ぶだろうか。
マケインは負けると先入観で決めこんでいて、埒(らち)もない福井県小浜市の“オバマ・フィーバー”の狂態の報道に、あんなに紙面や画面を割いていいのだろうか。
≪3候補の政策評価を≫
外国の首長選挙ではあるが、中国と北朝鮮からの各種の脅威にさらされている今の日本にとって同盟国アメリカの大統領選挙の結果は、少なくとも向こう4年間の日本の国運を左右しかねない大問題である。核・ミサイル・拉致の一括解決を拒否されて6カ国協議から締め出されて孤立無援の日本にとって、日本の味方になってくれる候補者が米国大統領になることこそ望ましいことだ。
首相官邸や外務省は内政干渉になるからコメントできないが、マスコミは少なくとも3候補のアジア政策、とくに対日・対中国政策を、日本の国益という観点から分析評価し、国民に誰が一番いいのかその利害得失を解説するのがその任務ではないのだろうか。
ヒラリー、オバマ両候補の選挙演説をきくと、いずれもアジア政策は中国重視で、日本や日米同盟についての言及はゼロに等しく、いずれが勝っても日米関係は冷え切るだろう。一方ネオコンでもリベラルでもない“マーヴェリック(一匹狼)”の異名をとるマケイン候補の政見は、3候補中ただ一人「日米同盟強化」「日本の国連常任理事会入り支持」「プーチンの覇権主義反対」「強硬な外交介入主義」「人権外交の立場からの拉致問題重視」を主張、さらに共和党でただ一人の「地球環境保護・公害防止論者」である。苛烈な戦争体験をもつ軍人だからこそイラク戦争について現実派の立場をとる。
今の日本に必要な米国大統領は、このマケイン候補だと思う。100年前日露戦争の際、帝政ロシアの覇権主義的南下政策に反対して、日英同盟の英国と協力して日本の味方をしてくれたセオドア・ルーズベルト大統領の再来となるかもしれないからだ。
≪直言受け入れる度量≫
セオドア・ルーズベルトが1905年日本を支持して締結した「桂・タフト協定」はブッシュ=ライス=ヒルの対中鮮宥和(ゆうわ)政策により6カ国協議で中国に朝鮮半島の優越的支配を認める「逆桂・タフト協定」状態となっている。マケイン候補の最も尊敬する米国政治家がセオドア・ルーズベルトであることも奇遇である。もし彼が勝てば、アーミテージら共和党の知日・親日派がカムバックし、副大統領、国務・国防両長官、駐日大使など日本重視のホワイトハウス、ペンタゴン(国防総省)の布陣も夢でない。
1990年1月8日、前内閣安全保障室長だった筆者は、アマコスト駐日大使邸で日米防衛関係の両国高官が出席した席で、マケイン上院外交委員長と日米同盟について激しい議論を交わした。日本の防衛努力の不足を、小柄だが精悍(せいかん)な同議員は厳しく批判し、「日米同盟の破棄を米国議会が決議したらどうする」と日本側に迫った。
筆者は「私は同盟堅持派だが、米側が破棄通告してきたら直ちにマッカーサー憲法改正、核武装派となる」と応じた。「では私にどうせよというのか」と尋ねる同議員に筆者は乱暴な軍人英語で「口出しは無用」と直言した。驚いたことに激しい気性でなる同議員は「率直な意見だ。ではそうしよう」と筆者の非礼な直言を受け入れた。その度量の広さに感服した筆者は以来、同氏を高く評価しているのである。(さっさ あつゆき)
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