ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

集団的自衛権は行使すべし31

2008-03-01 09:07:12 | 憲法
 また連載を続ける。

●1990年代以降の世界における日本の危うさ

 米ソ冷戦下において、わが国は、ほとんど奇跡的に生存・繁栄することが出来た。米ソの力が拮抗し、アメリカは極東の基地として利用できる日本を防衛することで、ソ連に対し有利に処することが出来た。しかし、ソ連の崩壊によって冷戦が終結した後は、国際社会の構造が、大きく変化している。その世界において、わが国の存在は危ういものとなってきている。戦勝国によって押しつけられた主権制限憲法を改正せず、国防を外国に依存し、集団的自衛権の行使を否定し、専守防衛の守り一辺倒の政策で自縄自縛している日本は、世界の急速な変化の中で、自ら自己の存立を危ういものにしている。
 1990年代のアメリカは、唯一の超大国として世界に君臨した。アメリカの大統領は地球大統領であるかのように、力の絶頂にあった。ところが、その盛期は長く続かなかった。サミュエル・ハンチントンが著書『文明の衝突』で分析・予測したように、世界は、文明を単位として対立する方向に変貌してきた。とりわけシナ文明とイスラム文明が台頭し、西洋文明との緊張を高めている。
 平成3年(1991)の湾岸戦争では、アメリカがイスラム諸国に対し、圧倒的な優位を誇った。しかし、10年後には早くもそうはいかなくなった。平成13年(2001)、9・11という謎の多い事件を経て、アメリカはアフガニスタンに侵攻し、15年(2003)5月にはイラク戦争に突入した。大巨人アメリカが、イラクの砂漠で足を取られ、ベトナム戦争以来の混迷に陥っている。
 9・11以後、わが国はアメリカへの追従を一層強めている。アメリカの混迷は、わが国により深い混迷をもたらしている。

●わが国の安全保障は戦後かつてなく重大な課題に

 アメリカの世界支配が傾くなかで、1980年代から急速な経済成長を続けてきた中国は、過去18年連続して軍事費を10%以上増加させている。今やかつてのソ連に替わって、中国がアメリカのライバルの地位にのし上がっている。石油・資源の争奪戦を繰り広げる米中の対立は、諸大陸に広がっている。この状況を米中の冷戦ととらえる識者は多い。

 わが国では、冷戦の終焉というと、共産主義が全面的に後退し、自由主義・デモクラシー・資本主義が全世界に普及したかのように錯覚している人が多い。確かにユーラシア大陸の西部・北部では、ソ連・東欧の共産政権が倒れた。ベルリンの壁の崩壊によって、西ドイツと東ドイツは、統一ドイツになった。しかし、ユーラシアの東部では、共産中国が強大化し、台湾と正統性を巡って対立している。朝鮮半島では、韓国と北朝鮮が依然として、38度線をはさんで対峙している。東アジアでは、冷戦は終わっていないのである。
 わが国は、こうした国際環境に、半世紀以上、生存している。北朝鮮による日本人拉致も、金政権の南進政策の一環として行なわれた。拉致は、昭和50年代、1970年代後半から80年代前半に集中している。まさに冷戦下の事件である。それが、冷戦が終結した平成初年代、1990年代以降、現在になってもなお解決していない。これは、東アジアでは、冷戦は終わっていないことの一証左である。こうした冷戦の継続する東アジアに、新たに米中冷戦という構図が加わったのである。
 その上、一度は解体した旧ソ連から、ロシアが息を吹き返した。ロシアは、核と石油を持つ新興大国として、BRICSの一角を占め、東アジアで存在感を強めている。中国は、ロシアと手を結び、そこにイスラム諸国が加わって、反米で連携している。アメリカは、イラク戦争の収拾と中東での石油支配の確立という課題を優先し、東アジアでは中国との正面対決を避けようとしている。下手をすると、わが国は、アメリカから軽んじられ、中国にじわじわと併呑されていく恐れがある。

 今日ほど、わが国の安全保障が重要になった時は、昭和10年代以来ないのである。だからこそ憲法の改正や集団的自衛権の行使が、戦後のどの時期における以上に、重大な課題になっているのである。
 21世紀の世界において、わが国はどうあるべきか。従来のように単なる従米や、中国への乗り換えで、済む状況ではない。独立主権国家としての主権の回復・確立と、世界戦略の策定が必要である。

 今日の国際社会を展望して、わが国のあり方を整えるには、1990年代の湾岸戦争の時点から今日に至るわが国の外交・安全保障政策を振り返って、よく検証する必要がある。集団的自衛権の行使に関する政府解釈の見直しが起こってきたのも、湾岸戦争後だった。この点を次に概述したい。

 次回に続く。