ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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イスラム過激組織に気を取られて中国に油断するな

2015-04-16 08:45:01 | 国際関係
 わが国は、1月20日に起こったISILによる日本人人質事件以降、イスラム過激組織に関する話題で沸騰した。マスメディアは事件に関する報道を繰り返し、国会では事件への対応が多く論じられた。テロへの対応は重要である。だが、わが国には迫り来るもっと大きな危険がある。それは、中国による尖閣奪取への動きである。イスラム過激組織に気を取られて、中国に対して油断してはならない。
 中国は昨年中ごろ、「東シナ海合同作戦指揮センター」を設置した。将来、海空の合同作戦を展開する計画だろう。その計画の一環と思われるのが、尖閣諸島近くでの新たな軍事基地の建設である、
 中国は尖閣諸島から300キロ北西にある逝江省温州市沖の南キ列島に、新軍事基地を建設している。基地の位置は、沖縄からよりも尖閣諸島に100キロ近い。昨年秋数百人の軍人が上陸して基地建設を進め、今では島の高所に複数の大型レーダーが設置され、軍事用の超高速通信網の敷設が行われている。ヘリポートや大型巡視船の艦載機に使用されると見られる滑走路の建設も行われている。基地は今年中に完成予定と伝えられる。今後、陸海空軍が駐留する計画である。
 昨年12月22日付のジャパンタイムズは滑走路がすでに舗装されている写真を載せた。この滑走路が使えるようになれば、中国の戦闘機は那覇から尖閣諸島に向かう航空自衛隊の戦闘機よりも早く到達することが可能になる。空自の戦闘機が尖閣諸島に接近する中国機をスクランブルすることが出来なくなるかもしれない。中国が東シナ海の制海、制空権を確保しようとしていることは明白である。中国は本気である。本気で尖閣奪取のための準備をしている。
 昨年11月には中国政府傘下の軍事企業である「保利集団」が、「WB-1」と呼ばれるレーザー兵器を開発した。これが南キ列島の新軍事基地に配備される可能性が高まっている。自衛隊関係者によると、この兵器は強力な電磁波を発し、人体の水分を沸騰させる。ビームを当てられた人間は命に別状はないものの、電子レンジに入れられたような耐え難い熱さを感じ、ヤケドを負った感覚になる。尖閣上陸作戦の折にこれを阻止する海保隊員らに用いるのに最適と見られる。

 こうした重大な出来事が、わが国では大きく報道されない。国会でも、活発に議論されない。だが、わが国の対応が遅れれば、中国はどんどん覇権主義的な計画を進めることは、南シナ海での動きを見ればわかる。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は中国との間で南シナ海の紛争を回避するため、平成14年(2002)に南シナ海行動宣言(DOC)を採択した。そこには、一方的な主張を武力によって進めることを双方が控えるという主旨が盛られた。だが、中国は自ら採択した宣言にお構いなしに、領土の拡張を進めている。
 平成24年(2012)に中国はパラセル(中国名・西沙)諸島の永興島に三沙市人民政府を設立した。パラセル諸島はベトナム戦争末期の昭和49年(1974)、米軍撤退の隙を突いて中国が実効支配した。中国は同諸島を「中国固有の領土」と主張し、ベトナムはこれに反発している。
25年(2013)8月末にブルネイで開催されたASEAN拡大国防相会議では、南シナ海での行動を規範化(COC)することに中国は合意した。だが、中国は永興島にあった2700メートルの滑走路の拡張工事を進め、昨26年(2014)10月に3千メートルの軍用滑走路を完成させた。永興島は、島の面積を4割拡大する埋め立てを行ったと伝えられる。

 昨26年(2014)5月には、中国は南シナ海のベトナムが自国領と主張する海域に巨大な石油掘削機を持ち込み、一方的に海底油田の調査を進めた。これを阻止しようとするベトナム船と中国公船が衝突を繰り返し、南シナ海に緊張が高まった。中国は、アメリカがアジア太平洋地域にどこまで本気で関与しようとしているのかを試したものと見られる。だが、米国およびベトナムが断固たる姿勢を示すと、中国は掘削施設を撤収した。次のチャンスをうかがうものと見られる。
ASEAN側は「宣言」を拘束力をもつCOCにすることを主張しているが、中国は2国間協議を主張し、いまだにCOCは実現していない。中国はASEAN諸国との協議を重視すると口では言いながら、着々と領土拡張を進めている。

 2月22日の産経新聞の記事は、南シナ海での最近の中国の動きを伝えた。
http://www.sankei.com/world/news/150222/wor1502220021-n1.html
 記事は、国際軍事専門誌IHSジェーンズ・ディフェンス・ウイークリーによるもので、中国が南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で進めている人工島の建設が、拡大の一途をたどり急ピッチで進められていることを伝えている。
 スプラトリー諸島は中国のほか、ベトナムやフィリピンなどが領有権を主張している。中国は近隣諸国などの抗議を無視する形で、また米国が対中対応に苦慮する間に、着々と工事を拡大している。
 人工島の建設が進められているのは、ヒューズ(東門)礁、ジョンソン南(赤瓜)礁、ガベン(南薫)礁、ファイアリークロス(永暑)礁、クアテロン(華陽)礁の5岩礁などである。
 ヒューズ礁は、フィリピンの西方約340キロにある。ここでは、サッカー場14面ほどに相当する人工島が建設されている。2004年2月撮影の人工衛星の画像では380平方メートルにすぎなかったものが、今年1月24日付の画像では7万5000平方メートルと、面積が約200倍に拡大したという。
 中国はこの人工島に昨年8月以降、護岸工事を施して岸壁を完成させ、2つの埠頭とセメント工場、ヘリコプター発着場を整備した。さらに、対空高射砲塔とみられる軍事施設も建設中とみられている。
 ガベン礁では昨年3月末以降、人工島の建設が進められている。1月30日付の画像で舗装路やヘリの発着場などが確認された。ファイアリークロス礁でも軍艦やタンカーが接岸できる大規模な軍港施設などの建設が進み、3千メートル級の軍事用滑走路滑走路ができたといわれる。
記事は、こうした工事のほとんどは習近平国家主席が権力を掌握した2012年以降に始まったようだと述べ、岩礁を軍事拠点化し、海域はもとより空域も支配する狙いがあるとみられると書いている。防衛専門家は、中国は南シナ海に防空識別区を設ける計画だろうと見ている。南シナ海では、実効支配を着々と強化する中国の動きに歯止めがかからない状態である。
 
 こうした南シナ海での中国の覇権主義的な行動を見れば、東シナ海で中国が何をしようとしているか、分かる。尖閣諸島近くに新軍事基地を建設しているのは、尖閣諸島を取るためである。中国は、尖閣を奪取したら、次に沖縄を狙う。沖縄を押さえられたら、わが国は窮地に陥る。わが国は、尖閣を守り、沖縄を守り、日本を守るために、最善の努力をしなければならない。

関連掲示
・拙稿「荒れる南シナ海と米中のせめぎ合い」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12u.htm
・拙稿「南シナ海で中国を駆り立てる中華ナショナリズム」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/06d4e3d4e4ba60f383c9f2301f514234
・拙稿「尖閣を守り、沖縄を、日本を守れ」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12o.htm
・拙稿「中国は沖縄に独立宣言をさせる~恵隆之介氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/04d54eddda25a619aab628d9be7cca9a
・拙稿「中国で沖縄工作が公言~石平氏」
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/a3ac2550ec7308d805acfe732eb25d4a


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